解除 かいじょ

〇 解除とは ―債権者の救済手段としての解除―

解除とは、契約の終了原因として表される法律行為の一つとなります。日常生活でも解除という言葉は用いられていますが、意味としてはそれとほぼ同じです。しかしながら、法律用語としてこれから解説していく「解除」のもつ意味合いは、より重大なものであるといえます。

解除は、契約が締結されたにもかかわらず、契約当事者の一方が債務を履行しない(目的物を引渡さない、代金を支払わないなど)といった場合に、債権者がとりうる法的措置として挙げられる手段の1つです。

解除の類型と法的位置づけ

債務不履行に基づく解除の要件

まとめ ―迅速な債権回収のために―

解除以外に債権者がとりうる法的措置として挙げられる手段としては、強制履行や損害賠償が挙げられます。強制履行とは、裁判所などの国家機関の力を借りて、強制的に債務を履行させるための手段をとることです(民法414条)。

わが国では、相手方が債務を履行しないからといって、自らの力で強引に債務を履行させること(自力救済といいます)は認められていませんが、その代わりに債権者の債権を実現させるために国家権力が助力する制度が強制履行なのです。損害賠償とは、債務者が債務の本旨に従った履行をしなかったこと(債務不履行)によって債権者に何らかの損害が発生した場合には、上記のような強制履行や契約解除とともに(または、それに代えて)、債権者は、その損害を債務者に請求することができるというものです(民法415条)。話を解除についての話に戻しますが、民法は、特に契約の場合に、契約当事者の一方が債務を履行しなければ、他方の当事者(債権者)は契約を解除することができるものとしています(民法540条以下参照)。解除によって契約は、原則として、契約成立の時に遡って効力を失うこととなります(これを遡及効といいます)。

また、契約成立の時に遡って効力を失うという点から、解除権が行使された場合には、契約当事者は原状回復義務を負うことになります。原状回復義務については、用語解説の該当ページをご覧ください。それでは、以下で解除に関するさらに具体的な内容について解説をしていきたいと思います。

 

○ 解除の類型と法的位置づけ

解除には、法律上定められた原因を満たすことで発生する法定解除と、当事者間の合意に基づく任意解除があります(任意解除については用語解説を参照してください)。

では、解除とはそもそもどのような考え方の下で、設けられている制度なのでしょうか。その点について、伝統的な理論によれば、解除の本質とは、債権者が相手方に対して特定の行為を請求するとこと、すなわち履行請求権にあると考えます。それは、契約を解除して原状回復を求める権利が債権そのものに含まれているわけではないことを前提にしています。そして、民法の大原則である「過失責任主義」に基づいて、解除を損害賠償と並ぶ債務者の責めに帰すべき不履行に対するサンクションとして位置づけているのです。

そのため、法定解除は、契約の不履行に基づくものとされており、契約当事者の一方の契約不履行が存在し、かつその履行が望めないような場合について、債務者の帰責性が認められる場合には、契約関係を存続させる必要がなくなるため、契約がなかったことのするための制度として解除が機能することになるのです。

 このような伝統的な考え方に対しては、有力な反対意見があります。それは、解除の趣旨・本質は、契約の拘束力から当事者を解放するためにあると考える立場です。契約の相手方がきちんと債務を履行しない場合、他にもっと有利な条件で契約を結んでくれる他人がいるのであれば、敢えてその債務不履行をした相手方にこだわって債務の履行を強制する手続をとるよりも、むしろ契約関係を早めに解消したうえで、新たに他の者と契約を締結し直した方がよい場合もあるといえます。こうした場合に、契約関係を契約前の状況に戻すことができるのが解除という手段であり、そのために法により解除という制度が定められていると考えるのです。

 

〇 債務不履行に基づく解除の要件

 ここまで、解除に関する概論や法的位置づけなどについて解説をしてきました。そこでここからは、具体的に解除の要件はどのようなものか、法定解除の中でも特に代表的なものの1つである債務不履行に基づく解除を例に挙げて、より具体的な内容について解説を加えていきたいと思います。

債務不履行に基づく解除には、ⅰ)履行遅滞による解除(541条)とⅱ)履行不能による解除(543条)、そして、ⅲ)不完全履行による解除の3つの種類があります。以下それぞれについて、具体的な内容とその要件について解説をしたいと思います。

・ⅰ)履行遅滞による解除(541条)

541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 履行遅滞とは、おおまかにいうならば債務者が債務の履行期日を超えてもまだなお債務の履行を行わない場合のことをいいます(厳密にいうと、①履行期に履行が可能である債務を有する債務者が、②その債務者の責めに帰する事由により、③違法に④債務の履行期を徒過した場合のことをさします)。

このような場合に、債権者が債務者に対して「相当の期間」を定めた上で「催告」を行ったのにもかかわらず、債務者が債務を履行しないとなると、債権者はその契約を解除することができるのです。

規定上、「相当の期間」を定めて「催告」とありますが、仮に相当期間を定めずに「催告」をしてしまった場合や、不相当な期間を指定して「催告」をしてしまった場合でも、催告自体は有効であると考えられ、「相当」期間が経過すれば解除を行うことが可能となります(最高裁昭和31年12月6日判決)。しかしながら、どんな形であれ「催告」は必要であると考えられており、裁判所も、たとえ債務者が債務不履行をする意思が明確な場合であっても、債権者は催告をしなければ解除を行使することができないと判断しています(大審院大正11年11月25日判決参照)。

・ⅱ)履行不能による解除(543条)

543条 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。履行不能とは、債務者が債務の履行期日までに債務を履行することが不可能になってしまった場合のことをいいます。

履行が不能であるか否かは、社会の取引観念によって決められるとされています。履行不能の場合には、そもそも履行することが不可能でありますので、催告をしたところであまり意味がないといえ、そのため履行遅滞に基づく解除(541条)の場合と異なり、解除の要件として「催告」は求められていません(ただし、債権者が催告をすること自体は認められており、その場合には催告期間が満了した時点で解除の効力が生じることになります)。

・ⅲ)不完全履行による解除 不完全履行とはその名の通り、履行が不完全である場合のことをいう

具体例を挙げるならば、「売買契約の対象となる製品が腐食してしまっていた」といった様な場合がそれに該当します。不完全履行の場合の解除権行使の要件は、状況に応じて2つに分けられます。問題となっている債務について、債務者が追完することが可能である場合には、履行遅滞に準じるものと判断され、541条にならい解除の行使のためには催告を要します。

一方で、債務者が債務を追完することが不可能である場合には、履行不能に準じるものと判断され、543条にならい解除の行使のために催告は要しないと考えられています。

 

〇 まとめ ―迅速な債権回収のために―

以上が解除の解説になります。解除がなされた場合、契約は当初から無かったこととなり、全ての契約関係が遡及的に消滅します。また、契約に従って一定の債務を履行していたような場合は、履行してしまった債務分を解除後に請求することができます。

このような原状回復をめぐる関係においては、当事者間で紛争が発生することが少なくなく、円滑に債権回収を実現するには弁護士を通じた交渉が肝要と言えます。

また、売買契約を基礎とした継続的な契約関係が構築されている場合の解除については、未だに議論が錯綜しています。より具体的に解説していくと、継続的契約関係とは、存続期間が存在し、その間に履行が反復・継続して繰り返されるような取引のことをいい、典型的には、賃貸借契約や雇用契約、委任契約といった役務提供型の契約がこれに該当するといえるのですが、物の供給契約(売買契約)においても、継続的契約関係は存在し、それは日々のビジネスにおける取引でも頻繁に用いられているものといえます。例えば、親事業者であるメーカーが下請け事業者である部品製造会社に対して、定期的に部品を納入するという契約も、売買契約の1つですが、反復・継続して履行が繰り返されているものとして、継続的契約関係にあたるといえます。このように売買契約を基礎とした継続的契約関係は、ポピュラーな法律関係といえますが、しかしながら現行法上の民法では、売買契約は1回限りの契約関係を前提としている規定しか存在せず、継続的な供給取引についての規定を欠いているのです。今は個別具体的な事情から様々な対応がなされていますが、この様な契約関係下で解除を検討している場合は、いちはやく契約関係の全体を把握するとともに、専門家である弁護士への相談を行うことを推奨いたします。

 

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