海外債権の回収

目次

はじめに

債権回収会社の利用

国際法律事務所を利用する

国内法律事務所を利用する

まとめ 

■ はじめに

 世界のグローバル化が進み、国境を超えた取引もリアルタイムで行える現在では、会社の規模を問わず海外取引が行われています。

しかし、この海外取引において未回収の債権などが発生すると、その回収には大きな手間がかかります。海外での債権回収となると、言語が変わることによる交渉のハードルが生じます。また、国が変われば法律も変わるまで、どういった方法をとれば債権が回収できるのか不明確といった問題もあります。こういった海外取引で生じる債権特有の問題について、どのような点に気をつければ良いかを解説します。

■ 債権回収会社の利用

 日本国内にもサービサーと呼ばれる債権回収業者が存在しますが、海外にもCollection Agency(債権回収代行会社)と呼ばれる専門業者が存在しています。

 日本におけるサービサーの場合は、金融機関が保有している貸付債権やリース債権といった特定金銭債権しか回収代行の対象になりませんが、Collection Agencyの場合は回収できる債権の制限はないため、海外取引で生じた債権であれば、広く回収を依頼できます。

 民間業者による回収代行なため、確実に回収できるかどうかはわからず、訴訟を提起する場合に比べれば債権回収の確実性は低下しますが、債権回収において発生するコストは削減することができます。

基本的にCollection Agencyの回収代行業務については、No collection,No fee が原則と成っているため、債権回収に成功して初めて支払うべき対価の算定に入ります。一般的な相場としては、回収成功額の10〜35%と言われており、業者によって差が大きいと言えます。

 このCollection Agencyは主に米国において広く展開されているビジネスですが、東南アジア圏でも一定数認められるため、海外取引先の国にCollection Agencyが存在する場合は、債権回収を依頼することを考えるのも一つの手と言えます。

 もっとも、この場合に問題となるのは、英語によるコミュニケーションが必須となる点です。まず、業者選びの段階で英語のwebサイトを閲覧し、吟味した上で、英語での連絡を入れて契約することになるため、英語ができるかどうかがCollection Agency利用時の大きなポイントとなります。

 頻繁に海外取引を行っており、英語でのコミュニケーションに支障がないのであれば、Collection Agencyを利用して債権回収を行うことも一つの手段としてありえます。

■ 国際法律事務所を利用する

 世界各地に展開している大型の国際法律事務所の場合、事務所のネットワークを利用して海外債権の回収に着手することができます。この場合、一般的なフローとしては、国際法律事務所の弁護士に債権回収を委任し、受任弁護士が海外取引先に警告文を送付して支払いを求めた上で、なお、支払いがお行われない場合は訴訟を提起するといったものが一般的です。

 国際法律事務所を利用するメリットとしては、独自のネットワークを駆使して債権回収を行ってくれるため、債権回収への期待が相当程度高いことが言えます。

 また、国際法律事務所の拠点が日本国内にある場合は、日本拠点において相談することができるため、Collection Agencyに直接依頼をする場合に比べて言語的なハードルが低いと言えます。

 他方、デメリットとしては着手金や成功報酬がかなり高額なことが挙げられます。国際法律事務所は能力が高く、仕事に対する信頼が厚い反面、報酬が高額なケースが少なくないため、債権回収に成功しても、手取り分がほとんど残らないといった可能性があります。この可能性は、海外取引先が債務を履行せず訴訟にまで発展した場合はさらに顕著と言えます。

 そのため、海外取引先に対して有する債権額が高額で、確実に回収したいと考える場合は、国際法律事務所に依頼することも手段として考えられます。

■ 国内法律事務所を利用する

 国際法律事務所は、世界各地に展開した拠点というネットワークを利用して業務を行いますが、国内で業務を行っている通常の法律事務所であっても、海外取引の債権を回収することを依頼することは可能と考えられます。

 この場合、海外取引先の現地国弁護士ではない日本国弁護士が業務を行うため、基本的に取りうるアクションとしては、弁護士名義で債務履行を求める警告書を送付する程度にとどまります。もっとも、弁護士名義による警告書はそれ自体が相手に対して大きなプレッシャーを与えるものであるため、国内法律事務所による警告書であっても、事実上の影響力は相当程度あると考えられます。また、現地国に精通した日本人弁護士がいる法律事務所である場合は、現地国の商慣習や法律を前提とした緻密な交渉が行えるため、債権回収をスムーズに実現することへの期待を持つことができます。

 次に、警告文などを交えた交渉だけでは債権回収が行えず、海外取引先の国において訴訟を提起しなければならなくなった場合は、国内法律事務所がコネクションを有する、現地法律事務所を通じて対応していくことになります。

 この場合、日本国内の法律事務所は現地国で訴訟を行うための弁護士資格を有していないため、直接現地において訴訟を指揮することができず、国内法律事務所と提携している現地法律事務所が実際の訴訟指揮を担当することになります。こういった2カ国にまたがって法律事務所が関与する事案においては、国内法律事務所は日本語や日本文化に精通していない現地法律事務所とクライアントの橋渡しとして大変重要な役割を持ちます。海外取引先から債権回収を行おうとしている時において、このようにクライアントをよく理解した法律事務所が、間に入っているかどうかは、スムーズに訴訟を進行させるためには重要と言えます。

 このように国内法律事務所を通じて、海外取引先から債権回収を行う場合法律事務所選びを慎重に行う必要があります。国際法律事務所の場合、海外取引先の国に拠点があれば交渉から訴訟まで対応が可能なので、選ぶにあたっての問題は少ないですが、一般的な国内法律事務所を選ぶ場合は、どこまで対応できるかについての吟味が必須と言えます。

 まず、債権回収の相談の段階で、どこまで見通しが立っている事務所なのかという点が第一に重要です。法律事務所によっては、提携している海外の法律事務所が少なく、訴訟まで対応できないところも少なくありません。その場合は、将来的に訴訟にまで発展する可能性が高い場合は、その事務所に依頼するメリットが小さいため、訴訟まで対応できる事務所を選ぶ方が無難と言えます。

 次に、海外取引先のある国においてどれほど現地法律事務所との提携実績があるかという点が第二に重要です。海外の法律事務所と提携しているけれども、この国だけは対応していない、あるいはあまり経験がないといった事務所の場合、自分と現地法律事務所との橋渡しとしてうまく機能しない場合があるため、経験豊富の法律事務所に依頼するのが無難と言えます。

 国内の法律事務所は数多くあるため、その中で自分が取引している相手の国でも十分にパフォーマンスを発揮出来る事務所というのを探し出すには、無料法律相談などを通じて質問をしてみるといった方法が直接的と考えられます。スピーディに債権回収を実現するには、うまく立ち回れる法律事務所を見つけるのが重要なため、無料法律相談やメール、電話での相談を通じて、自分の要望を満たせる法律事務所を探すのが重要と言えます。

■ まとめ

 海外取引先から債権を回収するにあたっては、どういった手段を講じるかといった問題もありますが、事前に契約条項レベルで、債権未回収のリスクが生じないようにするという点も大きな問題です。

 特に、海外取引先との間で作成する契約書は英文形式のものも多く、相手が用意した契約書をきちんとチェックすることなく契約を締結したり、契約書の雛形をそのまま使ってしまうといったことも少なくありません。しかし、海外取引こそ事後的なリスクを減らすために、あらかじめ契約条項をきちんと設定する必要があるので、可能であれば契約締結前に、弁護士に契約書のレビューを依頼することが重要と考えられます。

 グローバル化の進む社会において、効果的にビジネスを実現するには事前の予防策と事後の解決策の両方において、意識的な検討を行う必要がありそうです。

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