抵当権に基づく物上代位における債権回収

目次

はじめに

抵当権とは何か?

抵当権の及ぶ範囲

物上代位とは何か?

物上代位による債権回収

物上代位によって金銭を支払ってもらう方法

まとめ 

■ はじめに

 契約上の債権を担保するため、もしくは貸付金の返済を保全するために、何らかの担保権を設定することはよくあります。
担保権の設定とは、保証人を立てたり、家を抵当に入れたりすることで、お金を返してくれなかったときの返済手段を確保しておくことを言います。

 担保権の設定には人的担保と物的担保に分けられます。
人的担保の設定とは保証人を立てることであり、物的担保の設定とは抵当権や先取特権などの担保物権を設定することを言います。

今回は現実社会でもよくある、抵当権に基づく物上代位でお金を返してもらう場合を検討したいと思います。

 

■ 抵当権とは何か?

 住宅ローンなどでは、購入した家そのものを抵当に入れたりすることはよくあることです。
では、その抵当権の実行とは具体的にどのようなことなのでしょうか。

例えば家の購入者BがA銀行から住宅ローン1000万円を借りて、家を購入したとします。
そのうち、住宅ローンの返済が滞り返せなくなった場合、AがB所有の建物に抵当権をあらかじめ設定している場合、A銀行は抵当権があるので、Bの建物を差し押さえてその家を売りに出すことができます。
そしてその家を売った代金から1000万円をもらい、住宅ローンで貸し付けた資金を回収することができるのです。この一連の流れが抵当権の実行となります。

 

■ 抵当権の及ぶ範囲

 抵当権が不動産に及ぶのは当然ですが、では不動産に付属しているものについてはどうでしょうか。例えば抵当権の設定されている土地に、立派な庭木や石灯篭、庭石があった場合に、それについても抵当権は及ぶのでしょうか。

 これについては判例があり、最高裁判所は効力は及ぶとしています。理由は、庭木や庭石、石灯篭も宅地と切り離せないものであり、付加一体物となっているからとしています。

なので、前述の例でAがBの宅地に抵当権を設定していれば、Bの家にある庭石なども競売に出すことができるのです。

 また判例は、ガソリンスタンドの店舗に抵当権を設定した場合に、地下のタンク、洗車機などにも抵当権の効力が及ぶとしています。

価値から言えば、店舗建物より地下のタンクが圧倒的に高いので、抵当権者からすれば非常にありがたい判決ではないでしょうか。

 

■ 物上代位とは何か?

 抵当権は物権であるため、対象の不動産が消滅した場合は抵当権自体も消滅してしまいます。
しかし、その消滅した不動産について火災保険金などのその不動産に代わる価値がある場合は、それに存在します。これを物上代位といいます。(民法304条1項、民法372条)

 

■ 物上代位における債権回収

① 物上代位の要件

物上代位は非常に強力な権利ですが、抵当権者がなにもしなくても保険金などをもらえるわけではありません。民法は、保険金などの「払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定しています(民法304条1項)。よって以下では、物上代位の対象及び差押えの意味について、検討したいと思います。

② 物上代位の対象

先ほど不動産に変わる価値として、火災保険金を例に挙げましたが、目的不動産の売掛金や賃料などにも及ぶとされています。

③ 差押えの意味

判例は、差押えを必要とする意味を、第三債務者を保護するためとしています。(第三債務者とは、債務者に対して債務を負っている者を意味します)

 前述の例を使って説明すると、BはAに対して100万円の借金があるので、この場合Aが債権者でBが債務者となります。

一方で、Bは抵当権が設定された建物をCという別の人間に、月10万円で貸していたとします。この場合Cは債務者であるBから、さらに賃料という債務を負っていることになるので、第三債務者となるのです。

 そして第三債務者の保護とは、差押えをすることによって、第三債務者が弁済先を誤らないようにするためと判例では言及されています。
例でいうと、第三債務者であるCは、月々の賃料10万円を通常であれば貸主であるBに支払うこととなります。しかし、BはAに借金があり、さらに抵当権も設定されています。そしてAが物上代位を行使すれば、月々10万円の賃料債権はAに帰属することになり、結果CはBではなく、Aに支払う義務が発生するのです。

 しかしCはBとAの関係を知らなければ、Bに支払うことになるため、それを防ぐために、Aは賃料債権を差し押さえる必要があるのです。

 従って、Aの物上代位が認められるためには、CがBに賃料を支払う前に差し押さえる必要があります。CがBに支払った後は、債権が消滅し差押えをすることはできなくなるため、物上代位は行使できません。

 

■ 実際に物上代位により金銭を支払ってもらう方法

 以上で物上代位を行使するための要件や、その理論的意味について見てきましたが、では実際に行使した場合、どうやって金銭債権を回収するのか検討したいと思います。

具体的には、それらを定めた民事執行法を見ていく必要がありますが、そこでは①取立て、②転付命令、③譲渡命令等、の3つを規定しています。

なお物上代位の執行方法については、債権及びその他の財産権に対する強制執行を準用する形で規定されています(民事執行法193条1項後段)。

① 取立て

取立てとは、抵当権者が第三債務者に自ら差押えた債権を取り立てることを言います。
これが原則的な方法となります。

抵当権者は差押命令が債務者に送達された日から一週間を経過したときは、被差押債権 (債務者が第三債務者に対して有している債権)を取り立てることができるとしています(民事執行法155条1項本文)。また抵当権者は、第三債務者が任意に支払いに応じない時は、支払い督促及び取立訴訟によって取り立てることができます。

② 転付命令

抵当権者は、取立てに代えて転付命令の申立てをすることができます。転付命令とは、差し押さえられた金銭債権を支払いに代えて券面額で差押債権者に転付する裁判であるとされています(民事執行法159条1項)。

 定義だけでは中々わかりにくいため具体的に説明すると、AがBに100万円の貸付金があり、B所有の建物甲に抵当権を設定しており、またBがCに甲を月10万円で貸していたとします。

そしてAが物上代位を行使し、Bの有する賃料債権10万円を差し押さえたとします。この場合、AはCから10万円を直接支払ってもらうのではなく、Bの有する金銭債権そのものをAのものとしてもらうことができるのです。

これが転付命令です。

ただAはCに対する債権そのものを取得できる一方で、Cに財産がない場合には、お金を支払ってもらうことはできません。

 従って転付命令では、抵当権者に独占的な満足をもたらす反面、第三債務者の無資力    の危険は、抵当権者が負担しなければなりません。

③ 譲渡命令等

差押さえた債権に、条件や期限があったり、また反対給付に係るなどして、取立てや転付命令も難しい場合が存在します。
そのような場合には、裁判所は抵当権者の申立てにより譲渡命令、売却命令、管理命令その他の相当な方法による命令を発することができると されています(民事執行法161条1項)。

ⅰ)譲渡命令

譲渡命令とは、被差押債権を裁判所が定めた価格で、支払いに代えて抵当権者に譲渡する命令を意味します(民事執行法161条1項)。

転付命令と似ていますが、転付命令は券面額で債権が移転するのに際し、譲渡命令は裁判所が定めた価格の範囲で債権が移転するため、その点で異なります。

具体的には、②の転付命令での例では、BのCに対する債権10万円そのものがAに移転したのに対し、譲渡命令では裁判所が10万円より低い価格を認定することもあるということです。

 

ⅱ)売却命令

売却命令とは、被差押債権の取立てに代えて、裁判所の定める方法による被差押債権の売却を執行官に命ずる命令を意味します(民事執行法161条1項)。

執行官による売却手続きには、競売不動産の売却に関する規定が準用されています(民事執行法161条6項、65条、68条)。

具体的にいうと、執行官という国が定める公務員に、被差押債権を第三者に売却させて、その代金を抵当権者に支払う手続きになります。

ⅲ)管理命令

 管理命令とは、裁判所が管理人を選任して、被差押債権の管理を命ずる命令を意味します(民事執行法161条1項)。

管理命令には、不動産の強制管理に関する規定が準用されています(民事執行法161条6項)。

強制管理とは、執行対象不動産から生じる収益を債権者の配当財産とする執行方法であり、具体的には不動産を誰かに貸し、その賃借料から金銭の支払いを受ける方法です。

よって管理命令が債権執行及び物上代位に適用されると、貸付金から生じる利息から差押債権者である抵当権者が金銭を受け取り、そこから金銭債権を回収していくことになります。

 

■ まとめ

 以上、物上代位による金銭債権の回収について概観してきましたが、いかがでしたでしょうか。

抵当権での物上代位は、賃料債権に対するものが一番多いですが、これに対しては債務者側からの様々な執行妨害が、盛んに行われています。

 具体的な妨害方法は、賃料債権の譲渡であったり、転貸借契約の締結です。

これらの妨害に対しては、判例も様々な解釈により抵当権者を保護しようとしていますが、早期に対策をとらなければ、妨害に屈してしまうケースもあります。

また抵当権の登記をしていなければ、物上代位を第三者に対抗できず、結果金銭債権を回収できない点も忘れてはいけません。

 従って妨害対策や登記手続きなど、面倒な手続きも多数あることから、債権回収の得意な弁護士に早めに相談することをおススメします。

 

 

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