マンション管理費の滞納を未然に防ぐために必須の知識・方法とは?

目次

■ はじめに

■ 管理費の滞納は起こりやすい

■ 管理費の滞納を防ぐために管理会社にできること

① 管理費の支払い期日と支払い方法の周知を徹底する

② 規約に遅延損害金と弁護士費用を請求できる旨の定めを置く

③ 規約に滞納者の名前を総会で公表する旨の定めを置く

④ 規約に督促に関する定めを置く

■ もし滞納されてしまったら?

① 最初は「催告」から

② それでだめなら支払督促を使おう

③ 民事訴訟へ…でもここから先は管理会社の出番なし?

管理会社は代理人になって訴訟することはできない

国土交通省の指針

④ 管理費滞納者を相手どった訴訟!

「管理者」が区分所有者のために当事者になる

請求額が140万円以下なら簡易裁判所の管轄

請求額が60万円以下なら少額訴訟が使える!

⑤ 和解という選択肢も

⑥ 場合によっては強制執行

■ まとめ 

■ はじめに

マンションの管理費・・・

もしあなたがマンションの区分所有者であったり、マンションの管理会社の関係者であったりするならば、この言葉に悩まされたことが1度や2度はあるのではないでしょうか。

 改めて説明しておくと、マンションの管理費とは、マンションの共有部分やマンションの建築物そのものの管理に使う費用です

 具体的には、マンションの廊下の蛍光灯の交換費用や、エレベーターの検査費、ゴミ捨て場の清掃費用、管理会社へ支払う経費などを支払うために使われています。

 マンションの区分所有者全員が関係する部分の管理維持に使う費用であるため、これを管理会社が毎月、各区分所有者から集めているのです。

 この管理費がきちんと集まらなければマンションの管理が行き届かなくなってしまい、住民はもちろん管理会社も困ってしまいます。

 しかし、管理費の滞納というのは意外と起こりやすいものなのです。

 そこで、この記事では、マンション管理会社が取りうる管理費滞納の予防・対策の手段等について説明していきます

■ 管理費の滞納は起こりやすい

 マンション管理になくてはならない管理費ですが、その滞納率は高くなっているのが現状です。

 国土交通省の平成25年度調査によると、管理費もしくは修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンション管理組合は 37.0%にも上っています。つまり、マンションの3つに1つは管理費滞納の問題を抱えており、多くのマンション管理会社にとって滞納問題は他人事ではないといえます

 管理費の滞納が起こりやすい原因の一つに、管理費自体は高額でないことが挙げられます。

 先述のように家賃に比べると低額であるため、支払う側も管理する側も、家賃の支払に比べて軽視しがちなのです。

 しかし、滞納も3ヶ月、4ヶ月…と重なってくると、「ちりも積もれば山となる」で、気がつけば数十万円という高額な管理費が滞納されていたりするのです。

 当然ですが、管理費を滞納されてマンションにとって何も良いことはありません。 

 まず、管理費とは共用部分の管理に使われるものであるため、同じマンションに住んでいて自分が払っているのに払っていない人がいるとなると、誰しもおもしろくない気持ちになります。区分所有者の間に不公平感が生じ、空気が悪くなるのです。

 そして、その不公平感が「あの人が支払っていないのだから、自分も少しくらい支払が遅れてもいいや…」という考えを助長することも十分考えられます。滞納が別の住民の滞納を招くのです。

 こうして管理費の滞納が嵩むと、当然、費用が不足しマンション全体の管理が行き届かなくなってしまいます。特に区分所有者数の少ないマンションにとっては一人一人の滞納によって生じるダメージが大きく、重大な問題となります。

 そして結果的に、管理が行き届かなくなることによってマンションの資産価値まで下がってしまうこともあるのです。

■ 管理費の滞納を防ぐために、管理会社にできること

 上述のような事態はなんとしても未然に防がなければなりません。もちろん理想は、区分所有者が一人も管理費を滞納しないことです。

 そのために管理会社がとりうる滞納予防策としては、以下のことが考えられます。

① 管理費の支払い期日と支払い方法の周知を徹底する

 残高不足等によってうっかり支払い損ねるといったことを防ぐために、掲示板などの目立つところに次回の引き落とし日を掲示して、周知するようにしましょう。

② 規約に遅延損害金弁護士費用を請求できる旨の定めを置く

 予め管理組合の規約に、管理費の支払が遅れた区分所有者は遅延の期間に応じた遅延損害金と、弁護士に法的措置を依頼した場合の費用を支払わなければならないという定めを置くことができます。

 支払が遅れると損をする仕組みを作っておくことで、間接的に管理費の支払を強制することができるのです。

 もちろん、この規約の内容も事前にしっかり周知しておかなければ意味はありません。

③ 規約に滞納者の名前を総会で公表する旨の定めを置く

 同じように間接的に支払を強制する仕組みとして、誰が管理費を滞納しているのかを管理組合の内部で公表するということが考えられます。心理的に圧力をかけることによって支払を促すのです

④ 規約に督促に関する定めを置く

 「管理費を○月分滞納したら督促状を送る」、「○月分滞納したら総会で法的措置を検討する」などと細かく定めることで、管理組合の理事等がマンション内の人間関係を気にして督促をしなくなるといったことを防ぎます。

■ もし管理費を滞納されてしまったら?

 いくら防ごうとしても、どうしても滞納してしまう区分所有者は1人くらい出てくるものです。1度や2度、少し支払が遅れてしまうくらいなら、「うっかりしてしまったのだな」くらいで済むかもしれません。

 しかしこれが3ヶ月分やそれ以上の滞納となると、上述のような悪影響が生じてくるため、対策を講じないわけにはいきません。

 具体的に、滞納している管理費を回収するにはどのような手段を取れば良いのでしょうか。

① 最初は「催告」から

 まずは穏当に、滞納している区分所有者に自ら進んで支払ってもらうよう働きかけましょう。「滞納管理費を支払ってください」という旨を伝える、催告という手段です。

 確実に伝わるのであれば、手紙を郵便ポストに入れても良いですし、直接訪問して口頭で頼んでも良いですし、メールを送信しても良いです。

 このように支払を催告することで、定期給付債権としての管理費の消滅時効が中断されるという法的な効果もあります。

 つまり、「払ってくださいよ」と伝えることで、滞納管理費の請求権が消滅時効にかかって無くなってしまうのを防ぐこともできるのです。

 なお、滞納管理費は民法169条に定められる「定期給付債権」に当たります(最判平成16年4月23日でこのように判断されました)。

 そのため、一般的な金銭債権の時効(10年)よりも消滅時効が短く、たったの5年で消滅してしまいます。

 また厳密に言うと、催告だけでは時効は完全には中断されません。

 催告をした後、6ヶ月以内に「裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分」をしなければ、時効中断の効力は失われてしまいます。

 そのため、管理費の消滅時効が完成しようとしている時は、催告をするだけでは足りず、催告の後の動きについて早めに弁護士に相談しておかなければなりません。

 さらに、催告する際の注意点を少し。

 催告は上述のとおり、口頭で行っても文書で行っても効力を生じます。しかし、後々裁判となった場合には催告したことを証明しなければならなくなる可能性もあるため、内容証明郵便などを使って証拠を残すのが得策です

② それでだめなら支払督促を使おう

 それでも管理費を支払ってもらえないときは、訴訟に移行する前に、より簡便な手段である支払督促を使うことが考えられます。

 支払督促とは、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払を命じる手続です。

 書類だけで審査されるため、訴訟の当事者が裁判所に出向く必要がなく、また手数料も訴訟の場合の半額であるため、手間もコストも少なくすみます。

 一方で、支払督促に仮執行宣言を付けてもらうことで、それをもとに強制執行の申立てもすることができるようになります(このように、それをもとに強制執行を申立てることのできる公の文書のことを「債務名義」といいます)。

 このように支払督促は、簡便な手続の割に大きな効力を持っているのです。

 また、支払督促を使うには相手方の住所が分かっている必要がありますが、マンションの管理費請求に使う場合は、住所はわかっていることがほとんどなので、問題ありません。

 ただし、支払督促に対して相手方が異議を申立てた場合は、自動的に通常の民事訴訟が始まります。

 そのため、相手方が異議を申立てることが予測される場合は、初めから民事訴訟を提起したほうが手間もコストも削減できるでしょう。

③ 民事訴訟へ…でもここから先は管理会社の出番なし?

・ 管理会社は代理人になって訴訟することはできない

 支払督促を送っても滞納者が支払督促に異議を唱えていて管理費を支払わないとなると、次はいよいよ民事訴訟に移行することになります。

 しかし、管理会社ができるのは支払督促を送ることまでで、管理組合を代理して訴訟手続を進めることまではできません。

 これは、弁護士法で「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、…その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と定められているためです。

 管理会社は管理の対価として、管理組合から委託業務費を受け取っているため「報酬を得る目的」に当てはまるのです。訴訟だけではなく、仲裁なども取り扱うことは禁止されています。 

 これに反すると、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。

・ 国土交通省の指針

 そのため、国土交通省が作成した「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」も、以下のa,bのような内容の条項及びコメントを置いています。

(これらの文書は、管理組合とマンション管理会社との間で管理委託契約書を作成する場合の指針となるものです。以下a,bの内容は、この中から関連する部分を抜粋・編集したものです。)

a. 管理費等滞納者に対する督促

 管理会社はマンション管理組合の組合員に対して、以下のbの督促を行ってもなお当該組合員が滞納した管理費を支払わないときは責任を免れ、そ滞納した管理費の請求は管理組合が行

 この場合において、管理組合が管理会社の協力を必要とするときは、両者はその協力方法について協議する。

b. 管理費等滞納者に対する督促

一 毎月、管理組合の組合員の管理費等の滞納状況を、管理組合に報告する。

二  組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話もしくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。

三  二の方法により督促しても組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、管理会社はその業務を終了する

 以上のとおり、管理会社が管理費滞納者に対してできる働きかけは支払督促までで、それ以降の訴訟において管理会社はあくまで協力者にすぎず、管理組合自身が弁護士と相談して手続を進めていくことになります。

■ 管理費滞納者を相手どった訴訟!

 では、管理組合が管理費滞納者を相手に管理費を請求する訴訟を提起するにはどのような手続が必要なのでしょうか。

「管理者」が区分所有者のために当事者になる

 管理費滞納者を訴えるためには、まず管理組合の総会を開いて、「管理者」(規約で、理事会の理事長が管理者になると定められていることが多いです。)が訴訟の当事者になるという内容の決議をします。

 ただし、規約の定めによってはこの決議を省くことができる場合もあります。

 国土交通省が作成した「標準管理規約」(マンション管理の適正化を推進するための指針です)には、「理事長は、理事会の決議を経て」区分所有者のために訴訟当事者になれると定められています。

 もちろん、これによって訴訟の当事者になったときは、速やかに区分所有者に通知しなければなりません。

・請求額が140万円以下なら簡易裁判所の管轄

 請求しようとする管理費が140万円以下ならば、地方裁判所ではなく簡易裁判所の管轄になります。

 相手方である管理費滞納者の住所のある地区の裁判を受け持つ簡易裁判所に申立てをするのですが、管理費請求の場合はマンションのある地区を受け持つ簡易裁判所になることがほとんどでしょう。

 その簡易裁判所に、必要書類(訴状申立手数料相手方に書類を送るため郵便切手添付書類等)を郵送又は直接提出することで訴えを提起します。

・請求額が60万円以下なら少額訴訟が使える!

 少額訴訟とは、原則として1回の審理で判決が出される、即時解決のための特別な訴訟手続です。請求額が60万円以下の場合のみ使えます。

 何度も裁判所に出向かなくて済むため、手間を省いて早期に解決したい場合にはとても便利です。

 ただし、被告の申立て等によって通常の訴訟に移行することがある、仮に管理費の請求権が認められたとしても分割払いや支払猶予、訴え提起後の遅延損害金免除も同時に認められることがある、といった注意点があります。

 少額訴訟を提起する場合は、以上の注意点をよく把握した上で事前準備をしてから手続を始めましょう。

⑤ 和解という選択肢も

 訴訟を提起した後、裁判官や相手方から和解の提案がなされる可能性もあります。

 判決を待つよりも紛争が早く解決する場合も多く、不利な判決が出るリスクもなくすことができるため、提案の内容によっては話合いに応じてみる価値があるでしょう。

 和解が成立すると和解調書が作成されますが、これは確定判決と同じように、これによって強制執行をすることが認められている債務名義です。

⑥ 場合によっては強制執行

 訴訟で勝訴判決を得ても、和解が成立しても、必ずしも滞納管理費が回収できるとは限りません。

 どうしても支払ってもらえない場合は、強制執行によってマンションの区分所有権等を競売にかけるといった手続を取る必要があります。

 強制執行を行う場合もまた、訴訟と同じように書類をそろえて裁判所に申立てる必要があります。

■ まとめ

 管理費はマンションの区分所有権自体を担保とした債権であるため、全く回収できないということはほとんどありません。

 しかし、訴訟や強制執行といった手段によって回収するのが大変であることは、他の債権と変わりません。

 まずはやはり滞納させないこと、そして滞納されてしまったら少額のうちに弁護士に相談するなどして迅速に対応することが何よりも重要です。

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