リース料未払いやリース目的物の差押え…どう対処する?

目次

はじめに 

リース契約の種類 

例を挙げて説明しましょう 

リース料を支払ってもらえない場合 

契約の解除へ向けて

損害賠償請求ができる場合もあります 

リース中の目的物が差押えられた場合 

差押えに注意しましょう 

第三者異議の訴え 

まとめ  

■ はじめに

リース契約とは、リース事業者がユーザーの代わりにサプライヤーから目的物を購入し、それをユーザーに一定期間(3年以上の長期であることがほとんどです。)貸し出す契約です。

このリース契約の一方当事者、すなわちサービスを提供するリース事業者は、リース料未払いといったトラブルが生じた場合、どうすべきなのでしょうか。

今回の記事では、リースの仕組みやそういったトラブルへの対処法について説明します。

・リース契約の種類

一口にリース契約といっても、リース契約には2種類あります。

 

①ファイナンス・リース

ファイナンス・リースにおいて、ユーザーは、リース会社が目的物を購入するために支払った費用を、リース期間中にリース料として全て支払うことになっています。

また、ユーザーの方から途中で解約することはできないという内容が契約で定められています。仮に途中で解約する場合も、契約の残りの期間の分のリース料を全て支払わなければならないのです。

 しかし、ユーザーが目的物を指定できる(例:あのコピー機を買って貸してくれ、と言える)のが利点でしょう。

医療機器といった、特定の目的に使用する高額の機械が目的物になることが多いです。

物の貸し借りがあるため、一見賃貸借契約のようにも見えますが、日本の最高裁判所はファイナンス・リース契約について融資に近いものと考えているようです。

 

②オペレーティング・リース

ファイナンス・リース以外のリース、つまり、中途解約禁止の制限がないリースはオペレーティング・リースと呼ばれます。賃貸借契約に近いリースです。

自動車などといった汎用性の高いものが目的物になります。ユーザーによる中途解約が認められていることも多いです。

 

以下、この記事で「リース」と言った場合はファイナンス・リースを指すものとします。

・例を挙げて説明しましょう

上述の説明だけではわかりづらいので、例を出してリースの仕組みを説明します。

まず、リース事業者Aが業務用プリンタのメーカーであるサプライヤーBに代金を提供して、プリンタを購入します。

そして、ユーザーCがAからそのプリンタを借ります。ここでは賃貸借契約の形をとります。

そして、CはAに対して、48回払いでリース料を支払います。このリース料の合計は、AがBに対して支払ったプリンタの代金とほぼ同じになります(手数料などがそれにプラスされています)。

 

つまり、AがCにお金を融通し、Cはリース料という形で借りたお金を返済していくのです。

その後、Cが無事に代金相当のリース料を全額支払うと、その後のリース料は急に低くなり、Cはほんの手数料程度を支払えば目的物を使い続けられるようになります。

リース契約はレンタル契約と似ていますが、わかりやすい違いとしては、目的物の違いが挙げられます。

レンタル契約がCDなど安価な物を対象とすることが多い一方で、リース契約は、医療機器や大型の工事用機器、業務用コピー機など、比較的高額な目的物を対象としていることが多いです。

また、レンタル契約とリース契約は法的性質も異なります

レンタル契約は、民法でいう賃貸借契約にあたります。

しかし、リース契約は民法典に載っている契約類型に当てはまるものがありません。こういった契約類型を「非典型契約」といいます。

リース契約は1960年代以降に広まった比較的新しいタイプの契約であるため、明治時代に起草された民法には入っていないのです。

民法改正でこのリース契約を明文化しようという動きもありましたが、結局なされないままです。

ではなぜ、わざわざ民法典にない契約類型を使い始めたのでしょうか。

それは、ユーザーが節税できるというメリットがあったからです。

リース事業者に目的物の所有権があるとすることによって、ユーザーはその目的物に対してかかる固定資産税を免れることができました。高額な機器は固定資産税も高額になるため、このメリットはかなり大きいのです。また、面倒な税務処理もリース業者がやってくれるので、その手間も省けます。さらに、リース料は損益計算書の中で負債として計上できました。

 

このように、リース契約には税務上、ユーザーに大きなメリットがあったのです。

しかし、「メリットがあった」と過去形で書いたのには理由があります。

現在は、税務署はリース料を負債として控除していません。また、リースで借りている資産はユーザーの所有する固定資産として扱われ、課税されています。

そのため、今ではリースの大きな旨味もなくなってしまったと言えるでしょう。

■ リース料を支払ってもらえない場合

・契約の解除へ向けて

ユーザーにリース料を支払ってもらえなくなった、もしくは支払が遅れだした、というのもよくある事態です。そういった場合は、リース事業者側としてはどう対処すればよいのでしょうか。

契約の内容によっては、ユーザーのリース料支払いが弁済期に

遅れた場合には、リース事業者側から一方的に契約を解除できるということもあります。しかし、催告すればリース料を支払ってもらえる可能性も0ではないため、必ずしもいきなりの解除が得手とは言えません。

まずは穏便に、遅れているリース料の支払を履行してもらえるよう、ユーザーに連絡・催告してみましょう。

 

そして、どうしても支払ってもらえない場合は、支払督促や契約の解除、損害賠償請求といった手段を検討しましょう。

リース契約では、「ユーザーが期限までに利用料を支払わなかった場合は、リース事業者は催告なしにリース料全額の支払いを請求でき(ユーザーは期限の利益を喪失する)、さらに、リース契約を解除して、目的物を回収できる。また、規定の額の損害賠償も請求できる。」といったような内容が定められているのが通常です。

この場合、ユーザーの債務不履行があれば催告なしに契約解除できることは、先ほども軽く触れたとおりです。

また、特約で解除について定めていない場合でも、民法の規定によって契約を解除できる場合があります。

これによって解除するには、事前に先ほど説明した催告をしておくことが必要です。

催告の後、相当の期間(この期間は一般に2〜3日間と解されます。)のうちにリース料の支払いがなければ、ユーザーの債務履行遅滞を理由に一方的に契約を解除することができます。

解除をするときは、相手に対して「契約を解除します。」という意思表示をしなければなりません。しかし、催告の際に前もって「もし相当期間内に支払ってもらえなければ、契約は解除します。」と伝えておけば、相当の期間の経過後に改めて解除の意思表示をしなくても、契約は解除されたことになります。さらに、「ユーザーが倒産手続の申立てをしたときは、リース事業者は催告なしに契約を解除できる」という内容も特約で定められていることが一般的です。

しかし、最高裁の判例では、この特約は無効と判断されているため、注意しましょう。仮にこの特約を定めていても裁判上は意味が無いということです。

なぜこの特約が無効とされたかというと、仮にこの特約を有効にしてしまえば、利害関係人の利害を調整するという会社更生手続の趣旨に反することになってしまうからです。

リース契約では目的物はあくまでユーザーに「貸し出し中」というだけで、その所有権はリース中もずっとリース事業者側にあります。リース契約が解除されてしまえば、ユーザーが手元に目的物を置いておく正当な理由はなくなってしまうのです。

そのため、リース事業者は、所有権を理由として、ユーザーに対し「その目的物をこちらに引き渡してください。」という請求ができます。

契約解除が成立しているのに目的物をなかなか返してもらえない場合は、訴訟を提起する必要があるかもしれないため、早めに弁護士に相談しましょう。

リース目的物を契約期間の途中で返還された場合、リース料がどうなるかが気になるところです。

これについて昭和57年の最高裁判決は、ユーザーの債務不履行が原因で契約期間の途中で目的物が返還された場合でも、リース事業者は全契約期間分のリース料を請求できるとしました。

リース契約の融資的側面を重視して、「借りたお金は返しなさい」という意味で、リース料の全額請求を認めたのです。

そのうえで、返還時のリース目的物の価値から予定していた契約終了時に目的物が持っている(と推定される)価値を引いた分はもらいすぎになるとして、ユーザーに返還すべきであると判断しています。

つまり、リース事業者は途中で目的物を返してもらっても、全期間分のリース料を請求できるけれど、そうなると得をしすぎるため、返還時の目的物の価値が予定より多かった分はユーザーに返しましょう、と判断されたわけです。

・損害賠償請求ができる場合もあります

ユーザーがリース料を支払わなかったためにリース事業者が損害を被った場合(未払いリース料以外の損害がある場合はそれについても)、因果関係の認められる範囲で、リース事業者はユーザーに損害賠償を請求できます。

これは、リース契約を解除した場合でも、そうでない場合でも可能です

 

また、債務不履行があった場合の損害賠償額を事前に契約の中で定めている場合は(「賠償額の予定」といいます。)、それ以上の損害があったとしても規定の額しか請求できません。

 

■ リース中の目的物が差押えられた場合

・ 差押えに注意しましょう

ユーザーが何かしらの売掛金債権といった金銭債務を履行しなかったがために他の債権者に訴えられると、リース事業者にとってもその訴訟は他人ごとでなくなる可能性があります。

なぜなら、リース事業者が貸し出し中の目的物はユーザーの手元にあるため、ユーザーが敗訴すると、その目的物も間違えて差押えられ競売にかけられてしまうおそれがあるからです。

強制執行では、差押える物が本当に債務者のものであるかどうかをいちいち確認しません。そんなことをしていては、いつまで経っても執行ができないからです。そのため、とりあえず債務者の物であることが推測されるようなら(動産なら債務者が占有している事実があれば)、差押えできることになっています。

しかし、そのまま競売にかけられてしまっては、本当の持ち主としてはたまったものではありません。

もしリースの目的物が間違えて差押えられてしまった場合、リース事業者としてはどう対処すれば良いのでしょうか。

・ 第三者異議の訴え

ユーザーの所有物と間違えて自分の所有物を差押えられてしまった場合、リース事業者側からは、「それは債務者(ユーザー)のものではなく私のものです。執行をやめてください。」という内容の訴えを提起することになります。

この訴えを第三者異議の訴えと言います。

ちなみに、債務者が「そもそも自分に対して強制執行するのがおかしい」と主張する場合の訴えは「請求異議の訴え」と言い、第三者異議の訴えとは別物で、管轄する裁判所も異なります。

何も悪いことをしていないのに所有物を差押えられて、わざわざ持ち主側から訴えを提起しなければならないのは納得がいかないかもしれませんが、

強制執行の迅速性を確保するためにこのような制度設計になっているのです。また、第三者異議の訴えは、執行裁判所、つまり、強制執行を担当している裁判所に管轄があります

さらに、執行停止についても説明しておきます。執行停止とは、第三者異議の訴えの判決が出るまでの間、強制執行を一時的に停止する措置です。

第三者異議の訴えを提起後に、本当の所有者(と主張する人、ここではリース事業者)が執行裁判所に申立てると、裁判所が執行停止をするかどうかを判断します。

本当の所有者が担保を提供するという条件付きで執行停止が認められることもあります。
執行停止がなされなければ、第三者異議の訴えを提起していたとしても強制執行の手続は進んでいってしまうため、注意が必要です。

この執行停止は動産執行の場合は特に重要です。

なぜなら、民法には「即時取得」という規定があるからです。この規定があるため、執行官が目的物(動産)を差押えて売ってしまうと、たとえそれが債務者のものではなかったとしても、競売でそれを買った人に所有権が認められる可能性が高いのです。

そうなってしまうと、リース事業者に目的物は返ってきません。もし第三者異議の訴えを提起することになったら、執行停止の申立ての手続は怠らないようにしましょう。

■ まとめ

リース料を支払ってもらえない場合や、リースの目的物が間違えて差押えられてしまった場合の対処法についてみてきました。

しかし、こうした問題は未然に防ぐことができるならそれが一番です

目的物が高額な場合は特に、リース契約を結ぶ前に契約相手であるユーザーの財務状況等について可能な限り調査し、慎重に審査をすることが大事です。

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