くちコミサイトでの名誉毀損(信用毀損)による損害賠償債権の回収のコツと対処法

目次

はじめに

名誉毀損、信用毀損の違い

名誉

侮辱

信用

会員制サイトの場合

非会員制サイトの場合

サイト管理者、インターネットサービスプロバイダ

記録保存の仮処分

期間

費用

記事の消去や損害賠償請求をされた場合

自由に消去できるか

投稿する側の注意点

まとめ

 

■はじめに

インターネットの普及により、amazonなどの通販サイトや、レストラン、病院などの各種サービス、その他、就職活動などの便宜のために設けられた情報提供サービスが増えています。

 

これらのサイトには、商品やサービスの質、企業の実態などが、投稿者による「くちコミ」という形で記載されていることが普通です。

 

それらのサービスを利用しようとする際、利用者としては、まずそのお店や病院、会社などが悪い評価を受けていないかを確認することが一般的になりつつあります。

 

利用者としては、初めてそのお店や病院などを利用する場合、なにも知らないのではとても不安であり、このようなくちコミ情報はとてもありがたいものです。

 

しかし、中には投稿者が悪意をもって嫌がらせなどの目的で悪い評価を載せることがあります。また、悪意がなかったとしても投稿者の質が低く、主張の根拠となる客観的事実を一切示さないで、主観的な感想を述べるものもあります。

 

主観的な感想くらいなら大して問題がないと思う人もいるかもしれませんが、通常、くちコミを情報として様々な情報を提供するサイトでは、星の数や点数を同時に投稿できるようになっていることが多く、しかも商品やサービスを星や点数が多い方から表示する設定になっていたり、任意に設定できたりすることが多いため、星や点数を投稿されるだけでお店や病院などの事業関係者としては大きな打撃を受けます。

 

ここでは、くちコミサイトにおける名誉毀損や信用毀損による損害賠償債権の回収について必要な知識と、逆に請求されてしまった場合、また投稿者自身の気をつけるべきポイントについて見ていきたいと思います。

 

■名誉毀損、信用毀損の違い

名誉毀損や信用毀損は犯罪にも当たります。

犯罪に当たるということはそれだけ違法性が強く、損害賠償責任が認められやすいと考えられますので、ここでは犯罪の方向から考えていきたいと思います。

 

・名誉

「名誉」というのは、ある人物が社会一般からどういうふうに見られているかという評判的価値のことを言います。本人が自分のことをどう思っているかという主観的な名誉のことではないので、少なくともそのような名誉感情を害したとしても名誉毀損罪は成立しません。

 

そして、問題となるためには示された情報を多くの人が知る可能性が必要とされています。したがって、ごく少数の人しか知ることがないような極めて閉鎖的な状況で評判を傷つける発言をしたとしても、問題とはならないことになります。

 

インターネット上の書き込みであれば、通常、不特定多数の人が閲覧できる以上、たとえ会員制サイトであっても閲覧できる可能性が否定されるわけではありませんから、問題になる可能性が高いと考えられます。

 

評判を傷つけるためには、具体的な事実を示すことが必要となります。抽象的なものでは足りないわけです。「誰」の評判を傷つけたかという部分についていえば、人物(会社などの法人も含まれます。)を特定していなければなりません。したがって、「○○業界」というようなものでは足りず、「株式会社○○」というように具体的に示す必要があります。ただし、必ずしも直接表現しなくてもどの会社かということがわかれば足ります。

 

そして、指摘される事実については、一般的に見て社会的な評判を落とすようなものである必要があります。典型的な例は、犯罪を行っているなどの書き込みです。

 

特に注意すべきことは、たとえ真実であっても問題になりうるということです。

 

問題にならないためには、1.本当のことであり嘘や誇張ではないこと、2.社会一般の利益になること、3.書き込んだ理由が社会一般の利益を考えてのこと、という3つの要件を満たすことが重要です。

 

これらの要件が満たされている場合には、正当な表現行為として、差止めや損害賠償請求をすることが難しいわけです。

 

例えば、たとえ本当のことであったとしても、個人的な恨みを晴らすためだけに恨みを持ったこととはまったく関係のないことを書き、評判を害したのであれば、違法性は否定されないことになるのです。

 

・侮辱

名誉に対する犯罪としては、その他に侮辱の罪があります。

侮辱というのは、具体的なことを言うのではなく、人格に対して侮蔑するような主観的で抽象的な評価を示すことです。たとえば、「Aという会社は悪徳会社だ」ということを書き込んだりすることです。悪徳会社だということの根拠となる具体的なことが書かれていません。

具体的に「私はA会社の担当者に絶対に儲かると言われて、B会社の未公開株を買いましたが、B会社は存在せず、お金を騙し取られました。」、という書き方をしたのであれば、具体的なことを書いているのでこちらは成立しません。

 

こちらほうが違法性は低いのですが、その理由は事実を示したほうが社会的な評判が傷つきやすいからです。

 

・信用

「信用」というのは、ある人に対する社会的な評判的価値のうち、お金をどれだけ持っているかということや商品やサービスの品質など、経済的なことに対するもののことです。

 

つまり、名誉の一部ということになります。

一般の名誉からみて独立した価値があるということで、一応区別されています。

 

この問題になるためには、嘘の情報を書いたりすることが必要です。本当のことである限り犯罪にはならないのです。

本当のことであっても違法性が必ずしもなくならない一般の名誉とは異なります。

 

その他の違いとしては、名誉の方は不特定多数の人に伝えることが必要なのですが、最高裁判所の判例からすると、直接多数の人に伝える必要はなく、噂が広まっていく可能性があれば足りると考えているようですので、情報の伝え方には決定的な違いはないように思います。

 

あとは、名誉の方が告訴がなければ処罰されないのに対し、こちらの方は告訴がなくても処罰されるといった違い、また刑罰について、名誉の方には禁固刑がありますが、こちらには禁固刑がないという違いがあります。

 

もっとも、損害賠償請求という観点から見れば、あまり区別する実益はないかもしれません。

 

■会員制サイトの場合

通販サイトや企業の運営するクチコミ情報サイトでは、会員制をとっていることも多く、投稿者の住所氏名を把握していることも多いと考えられます。

 

そこで、このような会員制サイトにおいて評判を落とすような書き込みがなされた場合、サイト管理者に対して、投稿の消去と投稿者の情報の提供を請求していくことになります。

 

なお、サイト管理者に対して消去等の対応を怠ったとして損害賠償請求をしていくことも考えられますが、後述するように現実的には難しいところがあります。

 

・投稿の消去の請求と投稿者情報の提供の請求

まずはサイト管理者に対し、投稿記事を消去してもらうようにサイトの専用のフォームなどから依頼することが一般的かと思いますが、これによって消去してもらえなかった場合が問題です。

 

被害は刻一刻と拡大しますので、投稿の消去について人格権の侵害を理由に仮処分を申し立てることが一般的です。

 

消去だけであれば、仮処分が認められれば、記事が消去されますので事実上目的を達成できることになります。ただし、本案の訴訟をおこすように命じられた場合には、本格的な訴訟を起こす必要があります。

 

また、投稿者に対して損害賠償請求を行っていくには、投稿者の住所や氏名などが分からなければなりませんが、これらを知るには本格的な訴訟が必要となります。

 

いずれも時間がかかる上、専門的な知識が必要ですので、弁護士に相談してください。

消滅時効によって債権を失うこともありますので、手続は早めに取ることをおすすめします。

 

なお、手続の途中で投稿者と和解することができることもあります。

 

■非会員制サイトの場合

くちコミ情報を提供する場合、通常は会員登録されたそのサイトの正式な会員のみが投稿できるようになっていることが多いと思います。もし十分な本人確認をしないで投稿を認めると、サイト管理者自身が損害賠償責任などを問われるリスクが高まるおそれがあるからです。投稿者本人の特定が困難である以上、被害を受けた者としては身元を特定済みのサイト管理者に請求をすることを検討するはずだからです。

 

・サイト管理者、インターネットサービスプロバイダ

非会員制サイトの場合、書き込まれたサイトの管理者であっても投稿者の住所氏名を知らないことが普通です。

 

このような場合、サイト管理者に対して、投稿者のIPアドレスなどを提供することを求める仮処分を申し立て、この情報から特定されたインターネットサービスプロバイダに対して、訴訟を起こし書き込みをした投稿者の住所氏名等の提供を求めていくことになります。

 

・記録保存の仮処分

気をつけるべきなのは、投稿者を特定する際に必要となるIPアドレスなどの記録の保存期間です。法律上決まっているわけではないので、いつまで残っているか不明です。弁護士であれば、弁護士会照会という弁護士会を通じての照会手続きにより把握できたりすることもありますので、弁護士に早めに相談してください。

 

また、アクセス記録を残すように仮処分を申し立てることもできますし、仮処分を申し立てるときなどに、相手方が任意に記録を保存してくれることもあります。いずれにせよ記録が消去されるおそれがあることから早めの手続きが必要です。

 

■期間

発信者情報の提供がなされるまで、つまり訴訟による結論が出るまでは、少なくとも6か月以上はかかると見たほうがいいと考えられます。

 

■費用

投稿者の情報の提供の請求については、本案の訴訟費用として、印紙代だけで1万3,000円となります。損害賠償請求については、その金額に応じて異なります。また、別途弁護士費用が必要になります。

訴訟に関する費用については、無事に勝訴できれば相手方にある程度まで負担させることができますので、弁護士にご相談ください。

 

その他、仮処分の際に必要な担保を立てる必要がありますが、投稿者情報の提供と記録保全については、10万円から30万円程度が多いかと思います。また、くちコミの消去については、30万円から50万円程度が相場と考えられます。ただし、事案によっては異なる場合も考えられますので、弁護士に相談してください。

 

なお、担保については不要になれば取り戻すことができます。

 

■記事の消去や損害賠償請求をされた場合

これまでと異なり、サイトの管理者側であれば、投稿によって評判を傷つけられたとして、上記に見てきた投稿の消去や投稿者の情報の提供の請求、損害賠償請求を受ける立場になります。

 

・特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の提供に関する法律による制限

損害賠償責任は上記の特別な法律によって制限されています。

これによって、インターネットサービスプロバイダやサイト管理者、サーバー管理者などに対する損害賠償請求が制限されることになります。裏を返せば、損害賠償責任が限定されることで、これらの人々は保護されることになります。

 

具体的には、書き込みを放置していた場合に、

1.投稿された記事を消すことが現実的に可能であり、しかも、その投稿がなされることで、誰かの権利利益が害されたことを認識しているとき。

2.投稿された記事を消すことが現実的に可能であり、しかも、そのような投稿がなされたことを認識しており、そのような投稿により誰かの権利利益が害されたことを認識できたと判断できる十分な理由のある場合

これらの場合に初めて損害賠償責任を負うことになります。

 

・自由に消去できるか

記事を消去した場合、今度は記事を投稿した人から債務不履行などを理由に損害賠償を求められる恐れがあります。なぜなら、書き込みをさせるという契約を交わしているからです。これに違反している以上、原則として債務不履行となるのです。ただし、これについても責任が制限されています。

 

具体的には、

1.記事の消去がその記事が多くの人が見ることのできる状態を防ぐのにやむをえない範囲で行われたといえる場合であり、しかも、サイト管理者等が投稿された記事によって誰かの権利利益が害されたと判断することに十分な根拠があるとき。

2.記事の消去がその記事が多くの人が見ることのできる状態を防ぐのにやむをえない範囲で行われたといえる場合であり、しかも、記事により権利利益を害されていると主張する人から、権利利益を害されているとする事実と、害されているという権利利益、権利利益が害されているという根拠を差し出されて、記事の消去等の必要な対策をするように求められたときに、サイト管理者等が、記事の投稿者に対し、権利利益を害されていると主張する人から提供された事実を差し出して、消去等をしてもいいかという伺いを立てたことに対して、7日以内に記事の消去などに応じないとの回答がされないとき(つまり、記事を消してもいいかとたずねて返答が7日以内になかったら消してもいい。)。

 

これらの場合、記事を消したりしても損害賠償責任は生じないことになります。

 

ただし、念のため、なるべく記事を投稿する規約の部分に、他者の権利を侵害する記事などの投稿を禁止すると具体的に記載しておき、最後に、「管理者が禁止事項に該当すると判断したときは消去します。」との文言を入れて置くことが望ましいといえます。

 

このような文言が入っていれば、消去すべきか判断に迷うグレーゾーンにある記事を消去しても、規約に基づいた運営者としての正当な権利の行使だとして、損害賠償請求を突っぱねることができるからです。つまり、客観的事実というより、ある程度、主観的に記事の消去ができるようになるのです。ただし、明らかに問題のない記事を消去した場合については、違法となるおそれがありますので注意してください。

 

■投稿する側の注意点

投稿する側も十分な注意が必要です。

インターネット上の書き込みは、世界中の人に見られることから、人通りの激しい町中で記事を掲げて立っているようなものだと言われることがあります。

 

画面の向こう側に数え切れないくらいの人々が実際にいるのだということを意識することが重要とされています。

 

町中で掲げることができないような内容の記事であれば、書くべきではないのです。

 

文章を書く時には、なにを言いたいのかという結論となる明確な主張と、これを支える根拠を書かなければなりません。

 

根拠は事実に基づいているか、主張はそこから無理なく導かれているかということを確認する必要があります。

 

そして、ネット上に記事を出す場合には、たとえ事実であったとしても、それが社会一般の人々の利益になるか、なったとしてその文章を公表することが一般の人々の利益のためになされるものか、ということを自問自答する必要があります。

 

これらの条件を満たさない文章である場合、それが誰かの権利や利益を害するものであれば、損害賠償責任など、責任を追求される可能性があるのです。

 

■まとめ

商品やサービスの質、あるいは人や、会社などについて悪い評価を投稿すると、違法だと判断されることがあります。そしてそれらは犯罪になることもあります。

・信用とは、名誉のうち商品やサービスの質などの経済的な側面についてのことです。信用毀損罪が成立するためには、嘘の情報を書くことにより問題となります。

・名誉の方は、書かれた内容がたとえ真実であっても問題となります。ただし、記事の内容が社会一般の利益となり、しかも社会一般の利益のために書いたものであれば、違法ではなくなることがあります。

投稿された記事の消去を求めるには仮処分を申請することが普通です。ただし、本格的な訴訟をおこすように裁判所から命じられることもあります。仮処分の申し立てには担保が必要です。

・損害賠償を求めるには、本格的な訴訟を起こす必要があります。

・会員制のサイトが投稿者の住所氏名を把握しているときは、投稿者の住所氏名を直接提供することを求める訴訟ができるので、非会員制サイトよりも難易度が低いです。

・非会員制サイトや、会員制サイトであっても住所氏名等を把握していないサイトでは、投稿者のIPアドレスなどの提供を求める仮処分の後、提供されたIPアドレスや投稿時間などから、判明したインターネットサービスプロバイダに対し、投稿者の住所氏名等の情報を提供することを求める訴訟を起こします。IPアドレスなどの記録情報の保存期間は法律で決まっていないので、被害を把握したら速やかに弁護士に相談しましょう。

・サイト管理者やインターネットサービスプロバイダは、特別な法律によって損害賠償の責任が限定されています。

・サイト管理者等が記事を消去するには一定の要件を満たさなければなりませんが、特別な法律によって消去できることがあります。

・記事を書くときには、内容に誤りがないか、誤りがないとしてもそれが社会一般の利益になるかということを確認してからにしましょう。

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