任意整理しない方が良い場合は?任意整理の概要とリスクを解説
2022/07/13 06:20
目次
任意整理しない方が良いケースもあります。借金など債務の返済に困っている場合には基本的に債務整理が必要です。ですが債務整理にも方法はいくつもあり任意整理しない方が良い目安を知ることが大切です。任意整理しない方が良い理由を知ることで不安が解消できるかもしれません。
この記事では任意整理しない方が良い場合としてその目安やケースを理由とともに解説します。
任意整理をしない方が良い場合
任意整理をしない方が良いケースには、債務整理全般をしない方が良い場合と自己破産や個人再生など別の債務整理の方法をとった方がいいケースがあります。そのため任意整理しない方が良い理由に注意してください。
任意整理については、こちらの記事「任意整理とは?4つのポイント」もご参照ください。
信用情報機関に事故情報を登録されたくない
信用情報機関とは、消費者の信用情報を記録しておき金融機関やカード会社が融資やカードの発行を判断する際に利用する組織です。
事故情報とは、滞納があったり債務整理があったりして返済が通常通りに行われていない事実の記録を指します。いわゆるブラックリストに載った状態です。
事故情報が記録されるとローンやクレジットカードの申込みをしても審査に通ることは難しくなります。現在持っているクレジットカードも途上与信で解約されたり更新を拒否されたりすることになります。
任意整理も債務整理の一種であり事故情報として信用情報機関に記録されることになります。
クレジットカードの利用ができなくなることを心配される方もいますがデビットカードやプリペイドカード、スマホ決済、デポジット型クレジットカードなど決済方法が多様化しているためあまり心配する必要はありません。
借金の金利が低い場合
任意整理とは利息や遅延損害金をカットし長期の分割払いにする債務整理方法です。つまり原則として元本は減りません。ただし、利息制限法を超える金利を取っているケースでは引き直し計算をして元本が減ることや過払金が請求できることがあります。
住宅ローンや教育ローンなど借金の金利が低いケースでは利息をカットしたとしても大して負担は軽減されません。手続きにかかる費用も考えると任意整理に向いていないといえます。
住宅ローンなど金利の低い借金については持ち家を維持できる個人再生や自己破産を検討していきます。
(参考)個人再生とは?4つのポイント
3〜5年で元金を返済できない場合
任意整理は利息カット後の元本を原則3年、長くても5年で完済できることが目安とされています。5年以内に返済できないケースでは自己破産や個人再生を検討します。
<5年で返済できる目安>
返済額/月 |
任意整理後の債務額 |
1万円 |
60万円 |
2万円 |
120万円 |
3万円 |
180万円 |
4万円 |
240万円 |
5万円 |
300万円 |
6万円 |
360万円 |
7万円 |
420万円 |
8万円 |
480万円 |
9万円 |
540万円 |
10万円 |
600万円 |
11万円 |
660万円 |
12万円 |
720万円 |
13万円 |
780万円 |
14万円 |
840万円 |
15万円 |
900万円 |
自己破産については、こちらの記事「自己破産とは?5つのポイント」をご参照ください。
貸金業者が強制執行の準備をしている
任意整理は話し合いにより借金の負担を減らす債務整理手続きです。相手が交渉に応じてくれなければ成立しません。
債権者が訴訟や強制執行を行う段階に入っていると交渉に応じてもらうことが難しくなります。
特に敗訴したり支払督促に異議を申し立てなかったりした場合には強制執行をいつされてもおかしくありません。このようなケースは交渉の余地が少ないため任意整理にあまり向いていません。自己破産や個人再生なら強制執行を止めることが可能ですが任意整理では差押えを止めることもできません。
差押えについては、こちらの記事「給料が差し押さえられてしまう?対処法や手続きなどを徹底解説!」もご参照ください。
任意整理をした方が良い場合
任意整理をした方がいいケースや目安について解説していきます。
借金総額が年収の1/3を超えている
消費者金融などの貸金業者は年収の3分の1までしか原則として融資することができません。これ以上の金額となると返済が困難となるため法律で規制されているのです。
ですが銀行や信用金庫などの金融機関は対象外であり自動車ローンなど一部の融資も規制の対象外となっています。そのため規制を超える債務を負うケースがあります。
このように年収の3分の1を超える債務を負担している場合には返済が困難となりやすいため任意整理をした方が良いケースといえます。
もちろん住宅ローンなど年収を超えることが当たり前の借金もあるため単純に金額のみで判断することはできません。任意整理した方がいい目安は年収の3分の1を超えていて、さらに返済に余裕がない場合です。
特に、金利の高い消費者金融やカード会社に対する債務が年収の3分の1近くあれば任意整理した方がいい目安となります。
借金を返済せずに延滞している場合
任意整理をするとブラックリストに登録され融資を受けたりクレジットカードの発行を受けたりすることが困難となります。
しかし債務整理をしていなくてもしばらく滞納してしまうとそれだけで事故情報として記録されることになります。信用情報機関は現在3社ありますが概ね2~3か月以上の延滞により事故情報として記録されます。
任意整理による主なデメリットが信用情報機関への事故情報の登録であるためすでに2~3か月以上滞納している場合には早急に任意整理を検討すべきケースといえます。
毎月返済しても借金が減らない場合
返済を続けているのに債務が減らないケースも任意整理をしたほうが良い目安となります。このようなケースは利息が高いために返済金が利息に充てられるばかりで元本が減らないことで起こります。返済額を多くすれば元本も減りやすくなりますが無理のない範囲で返済額を増やせないのであれば利息をカットできる任意整理をしたほうが良いケースといえます。
任意整理は高金利ほど効果を発揮します。任意整理の主なメリットは利息のカットにあるため金利や手数料が高いほど返済の負担が軽くなるからです。
どれくらい返済の負担が軽くなるのか一度弁護士に相談されることをおすすめします。
任意整理の費用と手続きの流れ
任意整理しない方が良いケースなのか、それとも任意整理した方が良いケースなのかを判断するには任意整理の費用や手続きの流れを知ることが必要です。もし費用が利息を上回るのであれば任意整理しない方が良い理由となるからです。
任意整理の費用は弁護士会や司法書士会が報酬のガイドラインを作っています。費用の相場は債務額や債権者数により異なりますが1社あたり2~5万円程度です。
ただし、任意整理しない方が良いケースに当てはまったとしても借金の返済に困っているのであれば一度弁護士に相談されることをおすすめします。任意整理以外の方法もありますし相談するだけで心配事が解消されることもあるからです。
弁護士への相談・委任契約
まず専門家である弁護士に相談するところから始めます。債務整理には任意整理だけではなく自己破産や個人再生といったさまざまな方法があります。その中からもっともふさわしい債務整理の方法をアドバイスしてもらうことができます。
任意整理がふさわしいと提案されて納得したのであれば正式に委任契約を結びます。
弁護士が受任通知を送る
任意整理は債務整理の対象とする債権者を選ぶことができます。
任意整理の対象となった債権者に対しては弁護士から依頼を受けた旨の通知を送付します。これにより貸金業者による取り立てがストップします。同時に取引履歴の開示も請求します。
債権者と和解交渉
数週間から2か月程度で取引履歴が送られてくるため利息制限法に基づき必要な計算を行い債務額を確定させます。債権者と交渉するための和解案を作成し合意できれば和解契約を結びます。交渉はすべて弁護士が行います。
過払金が発生していることがわかればこちらが債権者となるため弁護士があなたに代わり金融業者に払いすぎた利息を請求します。
返済開始
和解契約に基づき返済を行っていきます。指定された口座に約束した返済額を振り込んでいきます。完済まで3~5年かかることが通常です。
まとめ
任意整理しない方が良い場合としてブラックリストに載りたくないケースや住宅ローンや奨学金のような金利の低いケース、5年以内に返済できない長期のローンなどがあります。ですが延滞が継続するとそれだけでブラックリストに登録されますし返済が困難となっているときには何らかの債務整理が必要となります。
任意整理しない方が良い場合に当たるケースであっても一度弁護士に相談されることをおすすめします。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)