任意整理をすると官報に掲載される?掲載ケースやリスクを理解しよう

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債務整理をすると官報に掲載されることがあります。ですがすべての債務整理が官報に掲載されるわけではありません。官報に掲載されることで生じるリスクは複数あり、掲載されるケースを含め事前に把握しておくことが大切です。また、信用情報機関について知っておくことも重要です。

この記事では任意整理をすると官報に掲載されるのか、信用情報機関への登録の影響などを解説します。

任意整理をしても官報には掲載されない

任意整理をしたとしても官報に掲載されることはありません。

任意整理は裁判所を利用するものではなく債権者との話し合いにより返済の負担を軽減してもらうものだからです。

<関連記事>任意整理しない方が良い場合は?任意整理の概要とリスクを解説

そもそも官報とはなにか

官報とは国の発行する機関紙のことです。政府の情報を国民に対し正確に伝えるために発行されています。発行元は内閣府であり行政機関の休日を除いて毎日発行されています。官報の編集や印刷、配信は国立印刷局が担当しています。

掲載される記事は国の機関が国民に広く知らせる必要のある公文のほか法令に基づき公告されるものがあります。

公文

法令や条約、各省庁の人事異動、国家試験に関する事項など

公告

入札告知や会社の決算公告、裁判所公告など

債務整理に関しては法令で定められているものが裁判所公告として掲載されることになります。

官報に掲載されるケースとは?

債務整理には種類があり主に任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。

このうち個人再生と自己破産の2種類が官報に掲載されることになっています。

個人再生と自己破産はともに裁判所を利用した手続きであり元本を含め債務の大幅な減額や免責が認められていることから債権者に与える影響が大きく公告されることになっています。掲載される内容としては氏名や住所などがあります。

一方で任意整理であれば裁判所を利用することはなく債権者は交渉に応じるかは自由であり官報に掲載することにはなっていません。

特定調停も掲載されない債務整理の方法

債務整理には裁判所を利用した話し合いである特定調停というものもあります。これも債権者が応じるかは自由であり官報にも掲載されません。

特定調停とは、簡易裁判所で行われる話し合いであり民間人である調停委員と裁判官に債権者との交渉を調整してもらう手続きです。

<関連記事>特定調停とは?4つのポイント

官報に掲載されることによるリスク

債務整理によって官報に掲載されるとどのような問題が発生するのでしょうか。

悪質闇金業者から融資の勧誘がある

債務整理を行うと一定の期間が経過するまで新規の融資を受けることが難しくなります。そのためヤミ金業者が官報に掲載された住所をもとに融資を勧誘してくる可能性は否定できません。貸金業登録をしていない違法な業者ですので利用しないように注意してください。

1度掲載された情報は削除できない

住所や氏名の掲載は破産法や民事再生法に根拠があるため秘密にできません。すでに掲載されてしまった住所氏名を削除する方法もありません。

ただし、ストーカーやDVによる被害を考慮し旧住所を掲載するなど現住所を秘匿できることがあります。ケースによって異なるため弁護士にご相談ください。

自己破産の申し立て時に料金が発生する

官報への掲載も無料ではないため1万数千円程度の費用がかかります。

事故情報として参照される可能性がある

金融会社や信用情報機関の中には官報に掲載された情報をもとに自社のデータベースに記録していることがあります。

ローンやクレジットカードの申し込みをすると審査のため信用情報機関や自社のデータベースに照会し事故情報の有無が確認されます。事故情報が確認できると審査に通ることは難しくなります。

周囲にバレる可能性は低いが0ではない

官報に掲載される以上知り合いにバレる可能性はゼロではありません。

ですが官報は法令や人事異動、会社の公告など膨大な情報が掲載されており周りに知られる可能性は低いといえます。破産者だけでも大勢いるため目的を持って探そうとしない限り普通は見つけられません。

官報の情報が公開された「破産者マップ」事件

20193月に起きた問題でありGoogleマップ上に官報から得た情報をもとにピン(目印)を立て破産者や再生債務者の住所を容易に特定できる状態にした事案です。名誉毀損やプライバシー侵害、個人情報保護法違反などの問題が指摘され数日で閉鎖されています。

今後も同様の問題が生じる可能性がありますが国としても違法な行為であるとして対策を進めています。例えば、無料のネット配信の官報情報は画像データで提供される形となりデータベース化することが困難となっています。政府の個人情報保護委員会が類似の事業者に対し運営停止命令を出したこともあります。

個人情報保護法に違反すれば罪に問われることもあり民事でも損害賠償や差止め請求が可能と考えられるためこのようなサイトは出現しにくいといえます。

基本的に官報を見る機会は無い

官報を日常的に読んでいる人自体多くはありません。一般新聞紙のように楽しいものではないからです。ただし、一部の業務についている人が職務上読んでいることはあります。

<主な官報購読者>

・金融機関の業務担当者

・法律や税金関係の業務担当者

・不動産会社の従業員(破産者の不動産は売却されるため)

・会社の法務担当者(決算やMA等に関して公告義務がある)

・国家試験の合格者(合格の確認や記念に購入することがある)

官報を閲覧する方法

官報を読む方法には官報販売所での購入や図書館、インターネットサービスを利用する方法があります。官報を紙媒体で購入する人は国家試験の合格者など一部と考えられます。インターネットを使えば30日分のデータであれば無料で閲覧できるからです。それ以前のデータについては有料サービスに登録しなければならないため官報から債務整理の事実を知られるおそれは低いといえます。キーワード検索も無料版では利用することができません。

任意整理は官報ではなく「信用情報機関」に登録される

任意整理では官報に掲載されることはありませんが信用情報機関には登録されます。もちろん自己破産や個人再生の場合も同様です。

5年間ブラックリストに掲載

信用情報機関の事故情報は一般にブラックリストと呼ばれています。

登録期間は債務整理の種類や信用情報機関により異なりますが任意整理であれば基本的に完済時から5年程度です。

もっとも、事故情報は債務整理した場合だけでなく数か月滞納した場合にも行われるため債務整理する前にすでにブラックリスト入りしていることがあります。

登録されると生活に影響する?

事故情報が記録されている間は多くの金融会社で融資やクレジットカードの発行を受けることができません。保証人になることも難しくなります。

家族などにバレることを心配されるかもしれませんがその必要はありません。信用情報機関の情報は金融業者などの会員企業か本人が開示請求しなければ原則として提供されないからです。

<関連記事>債務整理後の生活への影響は?仕事や住宅ローンへの影響など解説

まとめ

任意整理や特定調停であれば官報に掲載されることはありません。自己破産と個人再生では官報に掲載されますが官報の購読者は少ないため掲載されても周囲にバレる可能性は低いといえます。

任意整理であっても信用情報機関には登録されることになります。そのためローンを組むこと等が難しくなりますが長期の滞納でも事故情報が登録されるため債務整理をしなければ大丈夫というわけではありません。むしろ債務整理の選択肢を狭めることになるため早めに弁護士に相談することが大切です。

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本記事の監修弁護士  前田 祥夢(東京弁護士会所属)

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