任意整理してもカーローンは組める?時期・審査通過のコツとは?
2022/12/06 10:59
目次
任意整理を行うと基本的にカーローンを組むことは難しくなります。しかし、時期や申請のポイントを押さえることでカーローンを組めた事例もあります。
この記事では、任意整理中・後のカーローンの扱いについてご紹介します。
任意整理中にカーローンが組めた人はいるの?
任意整理中であってもカーローンを組める可能性はあります。カーローンにも種類があり、「銀行系カーローン」、「ディーラーローン」、「自社ローン」に大別できます。それぞれに審査基準などが異なるため詳しく解説していきます。
基本的に任意整理中はカーローンを組めない
任意整理中は「銀行系カーローン」と「ディーラーローン」を組むことはとても難しいです。
ローンを提供する金融機関や自動車ディーラーはきちんとお金を返済してもらえるかを気にしています。そのため任意整理中の人にローンを組むことに抵抗があるのです。
ではどうして任意整理中であることが分かってしまうのでしょうか。そのことと関係しているのですが中古車販売店の提供する「自社ローン」の場合にはローンを組める可能性が高くなります。
任意整理中にカーローンが組めないのはなぜ?
任意整理とは債務整理の一種で、話し合いにより借金の利息をカットしてもらい長期の分割払いにしてもらう方法です。任意整理をすると信用情報機関に事故情報として登録されることになります。
銀行系カーローンとディーラーローンの審査では信用情報機関に照会されるため任意整理中であることが分かります。返済がうまくいかなかったことや他に借金があることになるため返済していけるのか疑問に思われてしまうのです。
そのため、信用情報機関を利用する「銀行系カーローン」と「ディーラーローン」の2つはローンを組むことが難しいのです。
<関連記事>任意整理とは?4つのポイント
【事例】任意整理中にカーローンが組めたケース
任意整理中にカーローンを組むことは難しいですが不可能ではありません。信用情報機関の情報だけで審査するわけではないからです。職業や収入、資産などから返済してもらえる可能性が高いと判断してもらえればカーローンを組むことも可能です。
例えば、日産エルグランド(500万円)の購入のためにJACCSのオートローンを組むことができた人もいます。
・任意整理3年目 ・ローン総額500万円(支払い回数84回) ・年収450万円(勤続5年) ・賃貸住宅 ・4人家族 ・連帯保証人あり |
この方は日産のディーラーローンには審査落ちされています。JACCSでローンを組むことができた理由は信用のある連帯保証人がついていたからだと考えられます。債権者から見るとお金を借りた本人でなくともきちんと返済してもらえれば問題ないからです。
もっとも、基本的には本人の属性が重視されるため上記のケースは例外的と考えたほうがいいかもしれません。
<関連記事>任意整理しない方が良い場合は?任意整理の概要とリスクを解説
カーローン審査時に照会される3つの信用情報機関
カーローンの審査の際に利用される信用情報は主に以下のものです。
・各種ローンの残債額、遅延の有無等 ・債権回収、債務整理に関する情報 ・氏名、生年月日、住所、勤務先名、勤務先電話番号等 ・加盟会員による審査照会の事実(他社による審査の有無) |
信用情報機関は「JICC(日本信用情報機構)」、「CIC」、「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」の3つがあります。それぞれに登録情報や加盟企業などが異なります。一つの企業が複数の信用情報機関に加盟していることもあります。それぞれの特徴について詳しく説明していきます。
①「JICC」株式会社日本信用情報機構
消費者金融が主な加盟会員ですが銀行などの金融機関や保証会社なども会員となっていることがあります。任意整理の事実も記録されます。
②「CIC」割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関
クレジットカード会社と消費者金融が主な会員企業です。任意整理の事実そのものは登録されません。ただし、保証会社による代位弁済がされると「異動」情報として記録されます。「異動」というのは事故情報のことです。2~3か月以上滞納するとそれだけで「異動」が記録されます。
③「KSC」全国銀行個人信用情報センター
銀行が主に加盟しています。任意整理の事実そのものは記録されません。ただし、保証会社による代位弁済の事実は記録されます。また長期間滞納しているとその事実も記録されることになります。
任意整理後にカーローンを組めるのはいつから?
信用情報機関に登録された事故情報も永久に記録されるわけではありません。記録が抹消されればカーローンを組むことが可能となります。
完済から5年が目安
任意整理に関する事故情報は、完済時から「5年」で抹消されることが多いです。任意整理は3~5年かけて返済していくことから少なくとも8年間はローンを組みにくくなります。自己破産したほうが早くローンを組めることもあります。
<事故情報登録期間>
信用情報機関 |
任意整理 |
個人再生 |
自己破産 |
JICC |
5年 |
5年 |
5年 |
CIC |
5年 |
5年 |
5年 |
KSC |
5年 |
10年 |
10年 |
事前に信用情報を確認すると良い
事故情報が抹消されるはずの期間が経過していたとしても本当に記録が削除されているとは限りません。何かの手違いで記録が残ったままになっていることもあります。このような状態でカーローンに申し込んだとしても審査落ちとなってしまいます。その場合に注意すべきなのは審査落ちした事実も信用情報から分かってしまう点です。ローンの申込情報は6か月間記録されるからです。審査に落ちたことがわかると他社の審査が厳しくなります。
そのため事前に信用情報機関に開示請求をして事故情報の有無を確認することが大切です。
<情報開示請求>
信用情報機関 |
請求方法(手数料) |
JICC |
スマートフォン(1,000円) 郵送(1,000円) 窓口(500円) |
CIC |
インターネット(1,000円) 郵送(1,000円) 窓口(500円) |
KSC |
インターネット(1,000円) 郵送(1,124円~1,200円) |
※本人からの開示請求は記録されないので審査に影響しません。
任意整理中・後にカーローンを通過するためのコツ
任意整理中や任意整理後にカーローンを組むにはいくつか注意点があります。少しでも審査に通過できる可能性を高めていく工夫をすることが重要です。
保証人を立てる
連帯保証人を立てることができれば審査に通過しやすくなります。ローンの担当者は返済してもらえるのか不安なため任意整理した方の審査を厳しくしています。そうであれば債務者以外に信用力の高い人が保証人になってくれれば返済の心配が少なくなりローンを組みやすくなるからです。安定した職業で収入や資産のある方がポイントです。
<関連記事>自己破産すると連帯保証人はどうなる?その影響や対処法について解説
事前に仮審査を行う
仮審査とは本審査の申し込みの前に行う簡易的な審査です。事前審査ともいいます。インターネット上で申し込みできる所もあります。審査項目はローン会社により違いますが氏名や生年月日、職業、住所、収入や資産などを回答し申し込みます。
審査は簡易的であるため審査期間は短く即日回答してもらえることもあります。信用情報機関に照会するかはローン会社によります。銀行系カーローンでは照会する傾向が高いといえます。そのため信用情報機関に6か月間履歴が残る可能性があるため短期間に複数の審査を申し込むのは控えたほうがいいかもしれません。
任意整理をした金融機関は選ばない
任意整理の対象となったローン会社については審査に通りません。たとえ5年の期間が経過していたとしても社内のデータベースに事故情報が残るからです(社内ブラック)。カーローンを申し込む際には任意整理しなかった金融会社を対象にして下さい。
もしも任意整理中・後に車が必要になったら…
生活や仕事上の理由から自動車が必要になることもあります。そのような場合の対策について解説します。
自社ローンに申請する
自社ローンとは販売店自体が独自に提供するローンサービスのことです。信販会社を通さず独自の審査基準で分割払いに対応してくれるものです。信用情報機関に照会されないため任意整理中や債務整理後5年経過する前であってもローンを組める可能性があります。ただし、通常のカーローンよりも支払総額が高くなりやすい点に注意が必要です。
家族の名義でカーローンを組む
信用情報に問題のない家族の名義でカーローンを組む方法もあります。つまり、家族に自動車を買ってもらいそれを使わせてもらう方法です。親がローンを組んで子供に使わせることはよくあることです。
これに対して、家族ではない他人にローンの名義人になってもらうことは名義貸しとして違法行為となるおそれがあります。
ローンを利用せず一括で購入する
ローンを利用しなければ任意整理中であっても自動車を持つことができます。中古車であればかなり安く販売されているものもあるため任意整理中の人であっても購入可能といえます。もっとも中古車については修繕費用や車検費用、保険、ガソリン代などが新車よりもかかりやすい点に注意が必要です。
カーリース(車のサブスク)を活用する
カーリースとは、契約で定めた期間について毎月定額で自動車を利用できるサービスです。よく似たものにカーシェアがありますが自分一人だけで利用するものではないので好きなときに利用できない問題があります。
カーリースだと専有できるためその心配がありません。ただしカーリースについても審査があります。カーローンよりも審査が通りやすいとされていますが、その理由は「予定残存価格」にあります。これは契約終了時の下取り価格のことです。予定残存価格を車両価格から差し引いた金額が審査の対象となるため下取り価格分だけ審査が軽くなるからです。
例えば、300万円の自動車について3年後の価値が100万円だとすると200万円が審査の対象となるのです。
レンタカーを利用する
レンタカーであれば審査はありません。長期貸出型のレンタカーでは審査を行う所もありますがカーローンのような審査はまずありません。任意整理をするとクレジットカードが利用できなくなりますが支払い方法として現金を利用できることも多いです。ただし、利用料金は高くなりがちなため年末年始の帰省など車をあまり利用しない方に向いています。
<関連記事>借金返済方法のコツは?注意点や早く終わらせる方法など徹底解説
まとめ
任意整理中にカーローンを組むことは難しいですが不可能ではありません。自社ローンを利用したり連帯保証人をつけたりすることでカーローンを組めた事例もあります。任意整理後は完済から5年経過していれば信用情報機関の登録が抹消されるためカーローンを組むことが可能となります。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)