債務整理後の生活への影響は?仕事や住宅ローンへの影響など解説
2022/07/13 02:28
目次
債務整理後の生活への影響を心配し債務整理をためらっているかもしれません。たしかにしばらくの間ローンやクレジットカードの利用が難しくなります。ですがいつまでも使えなくなるわけではありませんしデビットカードやプリペイドカードなど決済方法はいろいろあります。仕事への影響も通常は心配ありません。
今回の記事では、債務整理後の生活への影響やローン申し込み時の注意点などを解説します。
債務整理後の影響
債務整理を行うと生活にさまざまな影響が出ることになります。クレジットカードや保険はどうなるのか、仕事への影響、将来ローンを組むことができるのかなど気になることがたくさんあるはずです。債務整理の種類により影響の出る範囲も異なります。
クレジットカードへの影響
債務整理を行うと信用情報機関のデータベースに事故情報(ブラックリスト)として記録されることになります。
信販会社などクレジットカードを発行する会社は申し込みを受けると信用情報機関の記録を照会します。その結果リスクが高いと判断されてしまうとカードの新規発行を受けることができなくなります。
事故情報が記録されている間はクレジットカードの発行を受けることは難しいといえます。
すでに持っているクレジットカードについては解約されることになります。任意整理の場合には債務整理の対象からカード会社を外すこともできるため事実上カードを使い続けることができますがカードの更新時や途上与信により利用が停止される可能性が高いといえます。
債務者名義で家族カードを発行している場合には家族カードも利用することができなくなります。そのためクレジットカード決済を利用していた人は他の決済方法に切り替える必要があります。
デビットカード
銀行などの金融機関が発行してくれる口座と連動したカードです。使用すると即時に引き落とされるため1回払いしか利用することができませんが審査不要で発行してもらえます。VISAなどの加盟店でクレジットカードと同様に使うことができます。
ただし、一部サブスク(月額課金サービス)などで利用できないことがあります。
プリペイドカード
事前にお金をチャージしておき利用するタイプのカードです。VISAの加盟店などで利用することができます。これも一部サブスクなどで利用できないことがあります。
デポジット型クレジットカード
保証金を預けておくことでその金額分を利用限度額として利用できるクレジットカードです。クレジットカードであるため審査は必要ですが保証金を預けるため審査に通りやすくなっています。
一般的に債務整理後にクレジットカードを発行してもらうには事故情報が抹消される必要があります。しかしクレジットヒストリー(信用情報)がまっさらな状態も新規発行が難しくなります。デポジット型であってもクレジットカードであることに変わりはないためクレヒスを作ることができ通常のカードを発行してもらいやすくなるメリットもあります。
他にも家族カードやスマホ決済(キャリア決済)を利用する方法もあります。決済方法が多様化しているためクレジットカードの利用制限の影響は昔ほど大きくありません。
クレジットカードについては、こちらの記事「クレジットカードの債務整理は可能?債務整理前の注意点など解説」もご参照ください。
生命保険・学資保険への影響
掛け捨てタイプの保険については特に影響はありませんが解約返戻金のある保険については影響を受けることがあります。解約返戻金があるということはそれだけ財産的な価値があるからです。
任意整理であれば解約する必要はありませんが、自己破産については金額によって解約が必要となることがあります。裁判所にもよりますが20万円以上の解約返戻金があるケースでは解約して債権者に分配することになります。ただし、重要な保険であるときには解約返戻金と同額の金銭を納めることで契約を維持できることもあります。
<参考>自己破産した際の家族への影響は?家族へのデメリットなど徹底解説!
仕事への影響
任意整理であれば債権者との話し合いをするだけですから誰かに知られてしまう可能性は低く影響が生じることは考えにくいといえます。
一方で自己破産や個人再生は裁判所を利用した手続きであり官報に掲載されることになります。もっとも官報を購読している人はあまりいないため他人に債務整理の事実を知られる可能性は低いといえます。
自己破産の場合には職業制限が設けられています。宅地建物取引士や警備員など一部の職業をしばらく行うことができないのです。ですが免責が認められるまでの数か月の間だけであり免責されれば制限はなくなります。
<参考>自己破産のデメリットとは?
債務整理をしたからといって職場から借入れしているような場合を除き裁判所から通知がいくわけではありません。そのため債務整理をしたことを知られるリスクは小さいといえます。
ローンへの影響
ローンへの影響については次の項目でくわしく解説します。
債務整理後のローンの影響について
債務整理をすることで利用している自動車ローンや住宅ローンに影響を与えることがあります。
債務整理後の自動車ローン
自動車ローンは債務整理の種類によって影響が変わります。
任意整理
任意整理であれば自動車ローンを債務整理の対象から除外することで自動車を維持することが可能です。
<参考>任意整理とは?4つのポイント
個人再生・自己破産
個人再生や自己破産の場合、自動車ローンに担保権が設定されていると担保権の実行により権利を失うことになります。
<参考>個人再生とは?4つのポイント
新規に自動車ローンを利用したい場合ですが事故情報が信用情報機関に記録されている間は審査に通らない可能性が高いといえます。
債務整理後の住宅ローン
住宅ローンについても債務整理の種類により影響が違います。
任意整理
任意整理は債権者との話し合いにより返済の負担を軽くする方法ですから住宅ローンの債権者を任意整理の対象に含めなければ住宅ローンをそのままにして住宅を維持することが可能です。
個人再生
個人再生の場合には「住宅ローン特則」を利用することで住宅ローンを残し持ち家を守ることが可能です。
自己破産
自己破産については個人再生におけるような特則がないため持ち家を維持することはできません。
住宅を維持したい場合には「任意整理」または「個人再生」を利用することになります。
自己破産については、こちらの記事「自己破産後に住宅ローンは可能?自己破産のデメリットなど徹底解説!」もご参照ください。
ローンが組めるようになる期間
債務整理した直後は住宅などのローンやクレジットカードの利用は難しくなります。ですが永久に利用できなくなるわけではありません。
住宅やクレジットカードのローンに通る期間
債務整理によりローンやクレジットカードの利用ができなくなる理由は信用情報機関に事故情報が記録されるためです。いわゆる「ブラックリスト」に載っているため銀行や消費者金融などの金融業者は申込みを拒否するのです。
つまり、金融会社は信用情報機関のデータを参考に審査を行っているので信用情報機関の事故情報がなければ審査に通る可能性があるのです。
信用情報機関は現在「CIC」、「JICC(日本信用情報機構)」、「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」の3社が存在します。
信用情報機関 |
加盟している企業 |
CIC |
主にクレジットカード会社や消費者金融が加盟 |
JICC |
消費者金融が多いですが金融機関や保証会社なども加盟 |
KSC |
主に銀行が加盟 |
※複数の信用情報機関に加盟することもあります。加盟している信用情報機関は金融会社のホームページで確認できます。
事故情報の登録期間はそれぞれの信用情報機関や債務整理の種類により異なります。
少なくとも債務整理後5年間はローンを組むことは難しいといえます。
<事故情報登録期間>
信用情報機関 |
任意整理 |
個人再生 |
自己破産 |
CIC |
5年 |
5年 |
5年 |
JICC |
5年 |
5年 |
5年 |
KSC |
5年 |
10年 |
10年 |
任意整理の場合には、金融業者や信用情報機関の取り扱いにもよりますが「完済時」から起算されることが多いといえます。任意整理の場合には3~5年の分割払いとなるため8年はローンを組むことが難しくなります。
ローンを申し込む際の注意点
債務整理後5~10年経過しローンを組もうとする場合いくつかの注意点があります。
信用情報機関から情報が消えているかを確認する
債務整理をしてから一定の期間が過ぎれば事故情報は抹消されることになります。ですが本当に削除されているか事前に確認することが大切です。
事故情報が消去されずに残ってしまっている状況でローンの申込みをしても審査に通る可能性は低いといえます。
ローンの申込情報は信用情報機関に登録されることになっており6か月間残ります。審査に落ちたことが記録されるため新たに融資の申込みをしても審査に通らない可能性が高くなります。
信用情報機関は本人からの情報開示請求を受け付けています。手数料はかかりますがインターネットなどから手軽に開示請求できるようになっています。本人による開示請求の事実は金融会社に知られることはないため審査に影響を与えません。
<情報開示請求>
信用情報機関 |
請求方法(手数料) |
CIC |
インターネット(1,000円) 郵送(1,000円) 窓口(500円) |
JICC |
スマートフォン(1,000円) 郵送(1,000円) 窓口(500円) |
KSC |
インターネット(1,000円) 郵送(1,124円~1,200円) |
なお、自己破産したケースで免責が下りているのに債務が記録されたままになることがありますがこのようなケースでは金融会社に免責の事実を証明できる資料を提出し訂正を求めることになります。
債務整理をした会社からは借りない
信用情報機関から事故情報が消去されたとしても債務整理した会社から融資を受けることはまず不可能です。
金融会社は独自の審査基準に基づいて貸付けを行うためリスクが高いと判断されると融資はしてもらえません。
債務整理の対象となった金融業者については独自に顧客情報を持っているため債務整理の事実が残ってしまうからです。
債務整理した会社にローンを申し込むとほぼ確実に審査を通らないため信用情報機関に審査落ちした事実が記録され他社の審査が厳しくなることがあります。
したがって債務整理をした会社を利用することは避けたほうがいいでしょう。
まとめ
債務整理後の生活への影響としてローンがしばらく組めなくなったりクレジットカードの利用が難しくなったりすることがあります。カードについてはデビットカードやプリペイドカードなど決済方法が多様化しているため影響は大きくありません。住宅や自動車ローンを維持する方法もあります。新規のローンも不可能ではなく最短で5年で借りられる可能性があります。
早めに債務整理を行えば生活への影響も小さくローンを組める可能性も高くなります。疑問や不安があれば弁護士に相談されることをおすすめします。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)