任意整理とは?メリット・デメリットや費用について詳しく解説
2023/03/27 03:04
目次
「任意整理という言葉は知っているけれど、どういうものかよくわからない。」
この記事は、そういう疑問を持っている方のために分かりやすく、「任意整理とはなにか?」を解説しています。具体的な費用やメリットだけでなく、デメリットについても解説します。
任意整理とは
任意整理とは、話し合いによって返済の負担を軽くしてもらう債務整理の方法です。
利息をカットしてもらったり、返済の期間を延ばしてもらったりします。
つまり、相手と交渉して返済計画を無理のないものにしてもらうのです。
具体的には、将来の利息を免除してもらい、3年から5年の分割払いにしてもらいます。
もしも、これまでに支払いすぎた利息があるときには、利息制限法という法律を使って利息の計算をし直すこともあります。その場合は元本も減額できます。
利息をカットできるのが特徴なので利息の高いローンが効果的です。特にリボ払いや消費者金融からの借金、カードローンなどは返済の負担が大きく減らせます。
例えば、150万円のリボ払い(毎月3万円の返済、利率15%)について任意整理すると、2年以上返済期間が短くなり、80万円以上返済額が減ることになります。
あくまで話し合いで返済の負担を軽くしてもらうだけなので、家族を含めて周りの人に知られにくい債務整理の方法です。
財産の処分も特にしなくて大丈夫なので、マイホームや自動車などを守りたい人におすすめの債務整理です。
<関連記事>リボ払いは債務整理で減額可能?方法やメリット・デメリットも紹介
任意整理ができる条件
任意整理は無条件にできるわけではありません。いくつかの条件を満たす必要があります。
安定した収入があること
債権者としては返済してもらえるのか不安です。そのため、約束どおりに返済してもらうため安定した収入が求められます。
職業や年齢については特に心配しなくても大丈夫です。アルバイトやパートの人でも収入が安定していれば任意整理は可能です。
高齢者や障害者の方でも年金収入など安定した収入があれば任意整理できます。
3~5年で完済できること
安定した収入があっても借金の額が多すぎると返済が長期化してしまいます。債権者もいつまでも待ってくれるわけではありません。
一般的には、3~5年くらいで返済できることが目安とされています。
それ以上かかってしまうのであれば、借金に悩んでいる人にとっても、自己破産や個人再生など他の債務整理を選んだ方がいいといえるでしょう。
<5年で返済できる目安>
借金額 |
返済額/月 |
60万円 |
1万円 |
120万円 |
2万円 |
180万円 |
3万円 |
240万円 |
4万円 |
300万円 |
5万円 |
360万円 |
6万円 |
420万円 |
7万円 |
480万円 |
8万円 |
540万円 |
9万円 |
600万円 |
10万円 |
<関連記事>債務整理とは?5つの種類の特徴
弁護士に依頼すること
任意整理は話し合いで解決する方法のため、お金を借りている本人が交渉することも可能です。ですがそれは、あまり現実的とはいえません。
債務者本人が交渉しようとしても貸金業者は聞く耳を持ってくれないでしょう。返済をしてくれる保証がないからです。
実際には、弁護士が連絡することで初めて交渉に応じてもらうことができます。
第三者であり専門家である弁護士が返済の見通しを説明することで納得してもらうことができるからです。
任意整理の手続きの流れ
任意整理は2~6か月くらい手続きにかかります。取引相手や借入先の数によって期間は変わってきます。交渉がまとまれば3~5年かけて返済していくことになります。
弁護士に相談
任意整理をするかも含めて借金の相談をします。自己破産や個人再生など他の債務整理の方がいいかもしれませんし、ひょっとしたら債務整理の必要がないかもしれません。
任意整理した方がいいということになったら、費用や手続きの説明を聞いて、納得したら依頼をすることになります。
受任通知の送付
弁護士は依頼を受けるとすぐに債権者に「受任通知」を送ります。
「受任通知」とは、「代理人に選ばれたので連絡は弁護士にしてくださいね。」という通知のことです。
金融業者は、受任通知を受け取ると借金をした本人に直接催促することができなくなります。
弁護士から言われたら自発的な返済もしないようにしてください。借金の計算ができないからです。
取引履歴開示請求
受任通知を送るのと同時に「取引履歴開示請求」もしていきます。
「取引履歴開示請求」とは、金融業者とのお金をやり取りした日や金額などを明らかにしてくださいという通知です。
数週間から2か月程度で業者から取引の明細書が送られてきます。
債務額の確定
取引履歴を元にして正確な借金の額を計算します。昔は利息制限法に違反した高い利率で融資がされていたことがあるため、適法な利率に引き直して債務の額を確定します。
弁護士が面倒な計算をしてくれるので心配はいりません。
債権者と話し合い(和解交渉)
確定した借金の残高がわかったら金融業者と交渉します。利息をカットしてもらうことや3~5年での返済を交渉していきます。
あくまで話し合いなので債権者ごとに条件が異なる可能性があります。金融業者によっては譲歩してくれない会社もあります。
和解できなかった場合には自己破産や個人再生など他の債務整理手続きに移ります。
返済の開始
話し合いがまとまれば約束にしたがって返済を始めます。3~5年かけて返済をしていくことになります。
返済の途中で支払いが難しくなる事情が発生したら、支払いを滞納する前に弁護士に相談してください。無断で滞納してしまうと再度の交渉に応じてもらいにくくなります。
任意整理にかかる費用
任意整理費用の相場は、借金の額や債権者の数によって変わりますが、大体1社について2~5万円程度です。
相談料 |
5,000円~/30分 ※無料のこともある |
着手金 |
2万円~5万円くらい ※無料のこともある |
基本報酬金 (解決報酬金) |
原則:1社あたり2万円以下 例外:商工ローンは5万円以下 |
減額報酬金 |
減額分の10%以下 ※無料のこともある |
過払金報酬金 |
回収額の20%以下 訴訟の場合25%以下 |
任意整理の費用は、弁護士会が規制をしているため大きな違いはありません。ですが着手金は規制がないので気をつけてください。
任意整理のメリット・デメリット
任意整理をするとどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきたいと思います。
任意整理のメリット
任意整理の主なメリットには次のようなものがあります。
取り立てがストップする
消費者金融などの貸金業者は法律によって活動が規制されています。
弁護士が受任通知を送ると貸金業者は直接本人に催促することができなくなります。これは貸金業法によって規制されているためです。
借金など債務の返済に悩んでいる方は、借金そのものだけでなく催促を受けること自体にストレスを感じていると思います。催促の電話や郵便がなくなるだけで日常生活が楽になります。
債権回収会社(サービサー)も同じような規制があります。
銀行や信用金庫はどうなのかというと法律上の規制はありません。貸金業者と銀行などの金融機関は異なるからです。
ですが実際には弁護士を無視して直接本人に請求してくることは考えにくいです。
利息がカットされる
任意整理では利息のカットを交渉していきます。交渉がまとまった後の利息を「将来利息」といいますが、これをカットしてもらえれば返済の負担がとても軽くなります。
交渉がまとまる前の利息や滞納してしまった分の利息である「遅延損害金」についても免除を交渉していきます。
消費者金融やカードローン、リボ払いなどの利率(手数料)が高いものについては特に効果があります。
毎月の返済が減らせる
借金などの債務に悩んでいる方は毎月の返済が大変だと思います。任意整理によってどのくらい負担が軽くなるのかシミュレーションをしてみるのがわかりやすいと思います。
借金が150万円、年利15%のケースでシミュレーションした結果は以下のようになります。
<150万円(利率15%)を5年で返済する場合>
|
任意整理前 |
任意整理後 |
借金額 |
150万円(利率15%) |
150万円(利率0%) |
返済額/月 |
35,684円 |
25,000円 |
返済期間 |
60回 |
60回 |
利息 |
64万1,040円 |
免除 |
返済総額 |
214万1,040円 |
150万円 |
※元利均等方式で計算
返済期間を同じ5年としていますが毎月の負担が1万円以上変わります。支払総額は64万円も多く支払うことになります。
もちろん、毎月の返済額を多くすれば返済期間を短くすることも可能です。
例えば、毎月の返済額を4万2,000円にすれば3年もかからずに返済できます。
借金の返済に道筋がつく
借金などの債務に悩んでいる方の中には返済がいつ終わるのか分かっていない方もいらっしゃいます。特にリボ払いを利用していると返済額を意識的に高く設定していかないと元本がなかなか減らないため借金の返済の見通しが立ちません。返済をしていても利息しか支払っていないからです。
任意整理は利息をカットするので確実に借金が減ります。そのため、いつ返済が終わるのか道筋がつくことになります。
マイホームなど財産を残せる
自己破産の場合には高価な財産は処分しなければならないため、マイホームは手放すことになります。
「個人再生」でもマイホームを残すことができますが、任意整理でも守りたい財産を残すことができます。
個人再生では、ローンの残っている場合には、マイホームについては住宅ローン特則によって残すことができるのですが、自動車など住宅以外の財産については手放さざるを得ません。
任意整理の場合には交渉する相手を選ぶことができるので、自動車を残したいときには自動車ローンを任意整理しなければいいのです。
このように残したい財産を残せるメリットがあります。
<関連記事>個人再生とは?4つのポイント
手続きが楽である
自己破産や個人再生の場合には、裁判所を利用することになるため手続きに時間がかかりますし、書類の数も多く、裁判所に行く手間もかかります。
任意整理であれば債権者と話し合うだけですから手間や時間も少ないですし必要な書類も少ないです。しかも面倒なことは弁護士に任せてしまえるので自分でしなければいけないことはほとんどありません。
秘密が守られる
自己破産や個人再生の場合には官報に公告されます。官報を読んでいる人は普通いませんから家族や知人に知られる可能性は低いですがゼロではありません。
自己破産や個人再生は家族の協力も必要となります。自分だけでなく家族の生活も関係してくるため家計簿の提出などが求められます。そのため同居の家族に内緒で債務整理することは難しいといえます。
任意整理であれば債権者と交渉するだけですから官報には載りませんし、同居の家族に秘密にすることも可能です。
<関連記事>任意整理をすると官報に掲載される?掲載ケースやリスクを理解しよう
債務整理する借金を選べる
自己破産や個人再生では、債務整理の対象となる借金を選ぶことができません。勤め先や知人からの借金も債務整理の対象にしないといけないのです。
任意整理であれば知られたくない人や迷惑をかけたくない人の借金を除いて債務整理することができます。
任意整理のデメリット
任意整理の主なデメリットには次のようなものがあります。
元本は減らない
自己破産であれば借金は基本的に免除されますし、個人再生の場合にも大幅に債務が減額されます。
任意整理で目指すのは利息のカットと長期の分割払いです。そのため借金の減額の程度は他の債務整理の方法と比べると少ないといえます。
ただし、利息を多く支払いすぎていた場合には元本も大きく減らせることがあります。
任意整理では利息をなくしてもらうことが重要なので、金利が高い消費者金融やカードローン、リボ払いなどには有効です。言い換えると金利の低い住宅ローンや奨学金などには向いていません。
借金の額が大きい場合には向いていない
任意整理では3~5年で返済できることが目安です。あまり長期間になると債権者にとってメリットが少ないからです。
債務者にとっても長期間借金に追われるのであれば自己破産や個人再生をしてしまった方がいいといえます。
そのため、3~5年で返済できない大きな借金があるときには他の債務整理の方法を検討します。
<関連記事>任意整理ができない原因は?任意整理の条件や対処法などについて解説
ブラックリストに載る
「ブラックリスト」とは、「信用情報機関」のコンピューターに事故情報として記録されることです。
「信用情報機関」とは、金融業者などが加盟している個人情報を記録している会社です。融資をしたりクレジットカードを発行したりするときに滞納をしていないか等を確認します。
自己破産や個人再生でもブラックリストに載りますが、債権者との話し合いにすぎない任意整理でも記録されてしまいます。
ただし、数か月滞納しただけでブラックリストに載るためすでに滞納されている方はあまり気にしない方がいいでしょう。
また、ブラックリストにいつまでも載るわけではありません。
任意整理の場合には、完済から5年くらいで抹消されるので再びクレジットカードなどを持つことが可能となります。
<関連記事>債務整理後の生活への影響は?仕事や住宅ローンへの影響など解説
交渉が成立するとは限らない
任意整理は話し合いにすぎませんから、債権者が交渉に応じてくれないと成立しません。
金融業者によっては一切応じない所もありますし、応じてくれても条件の厳しい所もあります。
特に、無返済の業者や契約期間の短い業者のときには任意整理が難しくなります。業者にとって利益が出ていないからです。
<関連記事>任意整理を失敗しやすいケースは?ポイントや対処法について解説
まとめ
・任意整理とは、話し合いによって返済の負担を減らしてもらう方法です。利息をカットし3~5年の分割払いにしてもらいます。
・任意整理をするには安定した収入が必要です。アルバイトやパート、年金生活者でも可能です。
・任意整理は、2か月~6か月くらいかかります。面倒な手続きは弁護士がしてくれます。
・任意整理の費用は1社あたり2~5万円くらいです。債務の額や債権者の数で変わります。
・任意整理のメリットとして、取立がストップする、返済が楽になる、マイホームや自動車などの財産を残せる、家族にも秘密にできることなどがあります。
・任意整理はご自分で行うのは難しいといえます。まずは弁護士にご相談ください。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)