平成27年5月20日東京高裁判決

平成27年5月20日東京高裁判決
外国裁判例に基づく日本国内での養育費執行

「事実の概要」

共に日本人である原告と被告は日本国内で結婚し、その後生まれた子ども3人を連れ、家族で米国カリフォルニア州へ移り住んだ。数年後、原告は被告に対し、米国カリフォルニア州内で離婚等請求訴訟を提起し、離婚の認容及び、被告が原告の下で生活する子どもらの養育費として3416ドル支払うことの判決を言い渡し、確定した。

その後、原告は日本へ帰国した被告から養育費を回収するために、執行判決を求める訴えを提起し認容された。これに対し、被告は為替レートを踏まえて円換算した場合の養育費は150%も上昇するため、そのような高額な養育費は許されないと主張した。

「判決の要旨」

我が国の民事執行法24条は,外国裁判所の確定判決が民事訴訟法118条所定の要件を具備する場合には,その効力を認める旨規定しているから,為替レートの変動があるというだけでは,当該外国判決の内容が我が国の公序良俗に反するとはいえない。

被告は平成24年以降も年間約1400万円程度の収入を継続的に得ていて,本件外国判決が命じた額の養育費を支払っても,被告の生活に大きな支障が生ずるとは認め難いことからすると,本件外国判決後の事情を考慮しても,本件外国判決の内容の妥当性が失われているとはいえない。

「解説」

最近は家族が国外に転勤などの事情で移動したのち、離婚となるケースも増えてきました。この場合、養育を受けるべき子どもが国外に居住したままで、養育費を支払う義務のある者が日本に帰国している場合どのように判断すべきかが問題となります。

まず、裁判所の力を借りて強制的に養育費を回収する場合、海外で獲得した外国判決を元に、日本国内で強制執行という手続きを実施してもらうための裁判を実施することとなります。(民事執行法24条)この事案でも、この手続き通り進行し、東京地裁では訴えは認容されています。

しかし、養育費を受ける子どもは国外にいるのですから、支払われる養育費もその国の通貨を支払う必要があり、その結果為替の変動で実質的に支払額が増加しているような場合にどのような判断をすべきかが問題となりました。

今回のように支払う側と受け取る側の間で通貨の違いがある場合、必ず為替変動のあおりを受けることとなります。そのため、受け取る側の額面が3416ドルで額面が一切変わらなくても、支払う側としては、当初予定していた3416ドル分の日本円以上の額を支払う必要が出てくるといった可能性も出てきます。この為替変動のリスクは当事者のどちらに原因があるわけではないため、どのようにリスクを負担していくかは大きな問題となります。

しかし、養育費というものが子どもの成長のために不可欠なものと考えると、多少為替が変動したとしても、子どものために必要なものとしてやむを得ないものとして、支払う側は受け入れざるをえないと考えられます。一方で、養育費は支払う側が生活できる程度で算出されるものですから、為替の変動によって支払う側の負担があまりに増大し、その養育費を支払うことによって支払う側の生活が困窮してしまうような場合は、為替レートの変動に合わせて、支払額が減額されると考えられます。

つまり、養育費の性質を考えると原則的には為替レートが変動しても支払額に変動は生じないと思われますが、例外的に、為替レートの変動幅や、支払う側の収入などの生活面を考慮して、為替レートを反映したままの額を支払わせることが、支払う側にあまりに酷と言えるような場合は、そのような支払を求める判決は公序良俗に反する(民事訴訟法1183号)として、効力が否定される可能性があると考えられます。

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