借金を踏み倒した場合のデメリットは?罪に問われるかも解説
2022/09/26 03:50
目次
借金の踏み倒しをする方法はありますがデメリットもいくつかあります。借金は民事上の問題であるため踏み倒したとしても基本的に罪に問われることはありませんが状況によっては犯罪となることもあるため注意が必要です。
この記事では借金を踏み倒した場合のデメリットや方法、罪に問われる可能性について解説していきます。
借金の踏み倒しが成立する条件
借金の踏み倒しとは「お金を借りたまま返さずに済ませること」です。
それができるのか疑問に思われるかもしれませんが一定の要件を満たせば可能です。
消滅時効が成立すれば返済義務はなくなる
借金の踏み倒しを確定的に成功させるには消滅時効が成立することが必要です。
消滅時効とは、「一定期間権利の行使がないときにその権利を消滅させる制度」のことです。貸主にはお金を返してくれと要求できる「貸金返還請求権」がありますが一定期間が経過するなど要件を満たせば権利を失い支払いを請求できなくなるのです。
消滅時効の成立には「一定期間の経過」と「時効の援用」の2つが条件として必要です。
2020年4月1日以降の借金については原則として5年で消滅時効にかかります。つまり返済期日から5年経過すれば踏み倒すことが可能です。
厳密に言えば権利を行使できることを知った時から5年、知らなくても権利を行使することができる時から10年となっています。ですが普通は返済期日が明確ですので5年となることがほとんどです。
<借金の消滅時効>
起算点 |
時効期間 |
権利を行使できることを知った時から |
5年 |
権利を行使することができる時から |
10年 |
※2020年4月1日より前の借金については期間が異なることがあります。
時効の援用も消滅時効成立のために必要な条件となります。
時効の援用とは、「時効によって利益を受ける人が利益を受けたいと意思表示すること」です。証拠に残すため内容証明郵便(配達記録付き)で貸主に送付します。
時効には一つ注意点があります。時効期間は絶対的なものではなく更新(リセット)されたり猶予されたりすることがあるのです。
さまざまなケースが規定されていますが貸主が単独で行う方法と債務者が関係するものに分けることができます。貸主単独でも訴訟や強制執行など法的手段をとると時効期間の更新や猶予がなされます。
債務者が注意すべきなのは「権利の承認」です。
ここでいう権利の承認とは借金の存在を認めることです。これにより期間は更新されその時から再び5年経過しないと時効が成立しなくなります。
「借金が残っています」と念書を書いた場合はもちろん借金の一部を支払ったり返済の猶予を求めたりすることも承認にあたります。
<関連記事>借金時効の制度とは?時効の条件や手続き方法について徹底解説!
借金の踏み倒しは罪に問われる?
借金の踏み倒しで特に気になるのは罪に問われるのではないかという疑問です。
借金の踏み倒しに刑罰はない
借金は民事上の問題であるため借金の踏み倒しは基本的に犯罪とはなりません。
ただし、気をつけなければならないのは借金をした当初から返すつもりがなかったケースです。そのようなことを知っていたら相手はお金を貸すことはありえませんから「詐欺罪」に問われることになります。一度も返済していなかったり返済していても少額であったりする場合には初めから返すつもりがなかったのではないかと疑われることがあるため注意が必要です。
また、現実に強制執行を受けるおそれのある状態で財産の隠匿等の行為をすると「強制執行妨害罪」が成立することがある点にも気をつけてください。
借金の踏み倒しは可能か?
借金の踏み倒しが理論上できるとしても現実的にできるかは別問題です。
引っ越しをしても住所を突き止められる
借金をしたときに契約書に書いた住所から引っ越せば借金を踏み倒せるのではないかと思うかもしれません。しかし住民票を調査すれば現住所を突き止めることは容易なため取り立てが止むことはありません。住民票の写しは債権者や弁護士であれば請求することが可能だからです。
遠隔地に引っ越せばあきらめるだろうと考えるかもしれませんが金融業者はそんなに甘くはありません。そのようなことをすれば訴訟を起こされるリスクが高くなり状況を悪化させることもあります。訴訟は債権者の住所地を管轄する裁判所に提起できるためかえって不利になります。
住所不明でも債権者は裁判が可能
転出届けや転入届を出さなければいいのではないかと考えるかもしれません。いわゆる夜逃げですがこれも現実的ではありません。
訴訟を起こすには相手の住所が判明している必要はないのです。相手の居場所がわからなくても公示送達と呼ばれる手続きをとることで行方の分からない相手に対し訴訟を起こし判決をとって強制執行することが可能だからです。
また、実際問題として市区町村から行政サービスを受けられなくなるためとても危険な行為といえます。健康保険も利用できない状態では病気やけがをすることもできませんし就職も難しくなります。
結婚や養子縁組で名字を変えても同一人物と分かる
婚姻や養子縁組によって名前を変えれば別人になりすますことができ借金を踏み倒せると思うかもしれません。しかし貸金業者はその程度でごまかされたりはしません。一緒に住所を変更したとしても同様です。
このような方法によって借金を踏み倒そうとする人達がいることを金融会社も十分に承知しています。そのためさまざまな調査手段を使い本人特定を行っています。生年月日や電話番号、本人確認書類はもちろん戸籍を調査することもあります。信用情報機関を通じて複数の業者が情報を共有しており姓名の変更も筒抜けとなります。隠し通すことはまずできないと思ったほうがいいでしょう。
借金踏み倒しのデメリット
借金を踏み倒すこと自体が難しいため成功することはあまりありませんがその過程で生じるデメリットにも注意しなければなりません。
遅延損害金が発生する
返済期日に支払いをしなければ遅延損害金が発生することになります。通常は利息よりも高額な利率が設定されています。借金の踏み倒しを図り長い間行方をくらませ消滅時効が成立したと思い込み時効の援用通知を送付したところ、時効期間が更新されていたため遅延損害金を含んだ高額な借金の返済を求められることもあります。
取立てが行われる
借金を踏み倒す方法は消滅時効が成立するまでひたすら逃げ回るしかありません。その間自宅や職場などに債権者からの取り立てが行われることになります。最低でも5年間はそのような生活が続くことになります。実際には時効期間を更新するための手続きを債権者はとってくるため5年では済まないと考えたほうがいいでしょう。訴訟を起こされ勝訴判決をとられてしまうとそのときから10年間時効期間が伸びることになります。判決の場合には更新期間が長くなっており5年ではすみません。
債務整理であれば弁護士が受任通知を出した時点で取り立てがストップします。
自己破産しても最短で5年ほどでクレジットカードの発行やローンの利用が可能になることを考えると借金の踏み倒しは割に合わないといえます。
ブラックリストに情報が登録される
信用情報機関の事故情報は一般に「ブラックリスト」と呼ばれています。銀行や信販会社、消費者金融などの金融会社はクレジットカードの発行やローン審査の際に信用情報機関のデータベースを検索します。事故情報が確認できるとほとんどの金融業者は審査を通してくれません。事故情報の種類や信用情報機関にもよりますが事故情報は5年程度残ることになります。延滞情報も事故情報となるため記録が残ることになり途上審査や更新時の審査によりクレジットカードが解約となったり新規の発行やローンを組むことができなくなったりします。
ブラックリストや信用情報機関については、こちらの記事「債務整理後の生活への影響は?仕事や住宅ローンへの影響など解説」もご参照ください。
強制執行で財産が差し押さえられる
銀行預金や不動産、自動車、給料など何らかの財産があるときには強制執行を受け差し押さえられることになります。たとえ夜逃げして住所をわからなくしたとしても訴訟を起こすことは可能ですし勝訴判決をとられると財産に対し強制執行が可能となります。財産を調査する方法はいくらでもあるため隠しきれるものではありません。
例えば、銀行預金であれば取引している可能性のある金融機関に調査を求めることで口座の有無や取引支店名、残高等が開示されます。
債務整理の場合には任意整理や個人再生であれば財産の処分は強制されませんし、たとえ自己破産であったとしても99万円以下の現金や生活や職業上必要な物など手元に残すことも可能です。債務整理していれば残せたはずの財産を失うこともあるため早めに弁護士に相談してください。
<関連記事>自己破産のデメリットとは?
連帯保証人・保証人が借金を負う
もしも踏み倒そうとしている借金に保証人がいるとしたらその人に迷惑をかけてしまうことにもなります。債権者は債務者が支払うことができなくなると保証人に対し請求していくことになります。もとの借金が分割払いであっても一括で請求されることもあるため保証人の生活を一変させてしまうおそれがあります。
任意整理であれば保証人のいない債権のみ債務整理の対象とすることができるため保証人に迷惑をかけずに借金の問題を解決することができます。
以上のように借金の踏み倒しはデメリットが大きく割に合わないといえます。債務整理をするほうが根本的な解決になり精神的な負担も軽いです。債権者からの取り立ても直ちにストップし罪に問われることもありません。
まとめ
借金の踏み倒しをする方法はありますがデメリットが大きいといえます。消滅時効が成立するまで逃げ回ることが必要となりますが時効期間はリセットすることが可能であり確実に踏み倒せるわけではありません。初めから返済するつもりがなかったり財産を隠匿する行為をしたりすれば罪に問われることもあります。
債務整理をしたほうが問題の根本的な解決になりもとの生活に早く戻ることもできます。借金の踏み倒しを考える前に弁護士に相談することをおすすめします。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)