借金救済制度とは?利用するメリット・デメリットを解説
2023/07/17 07:01
目次
インターネットなどの広告で、「借金救済制度」、「借金減額制度」などの言葉を見かけたことがあるかもしれません。
これらは一見あやしい印象を受けるかもしれませんが、国が認めた合法的な借金の解決方法です。
この記事では、借金救済制度の仕組みや、費用などを解説していきます。
借金救済制度とは
借金救済制度とは、簡単に言えば「債務整理」のことです。
「債務整理」という言葉は、一般的な言い回しではないので分かりにくいという問題があります。
「債務ってなんのこと?」、「債務はわかるけど整理するってどういうこと?」など、うまく伝わらないことが多いのです。
そこで、「借金救済制度」や「借金減額制度」など、お金の返済に困っている人を助けるための仕組みだと、分かりやすくするために言い換えられているのです。
もっとも、「借金救済制度」という名称の制度があるわけではないので、怪しげな詐欺商法なのではないかという誤解を持ってしまう人もいるようです。
あくまで借金救済制度というのは、「債務整理」のことですので心配する必要はありません。
「債務整理」とは、借金などの返済の負担を軽くしたり、責任を免除してもらったりする手続きのことです。
弁護士が法律に基づいて適切に処理するもので危険なものではありません。
返済ができないのに借金を背負わせたままでは、その人にとっても社会にとっても良いことではありません。そのため、法律で生活を再建するための手続きが用意されているのです。
債務整理には、「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」などの種類があります。
それでは、その違いについて見ていくことにします。
任意整理
任意整理とは、話し合いで返済を楽にしてもらう手続きのことです。
利息を減らしてもらったり、返済期間を長くしてもらったりすることで返済をしやすくします。
話し合いをするだけなので裁判所を利用せずにすみます。
返済期間は、3年~5年くらいが一般的です。
利息を減らしたり、なくしてもらったりするので、利率の高い借金で効果を発揮します。
例えば、カードローンやリボ払いは利息や手数料が高いため返済の負担がだいぶ楽になります。
<関連記事>任意整理とは?メリット・デメリットや費用について詳しく解説
個人再生
個人再生とは、借金などの返済金額を減らし、減らした金額を3年~5年で分割返済する計画を立てて裁判所に提出し認可をもらうことで、計画通りに返済できれば残りの借金を免除してもらえるというものです。
借金の金額にもよりますが、5分の1~10分の1程度に減額してもらうことが可能です。
個人再生には、「小規模個人再生」と、「給与所得者等再生」という2つの種類があります。
小規模個人再生
個人事業者など小規模な事業を営んでいる人を想定した手続きですが、給与所得者なども利用することができます。
一般的に「給与所得者等再生」よりも返済額が少なくなりやすいため、多くの人がこちらの手続きを希望します。
ただし、次の条件をクリアする必要があります。
・住宅ローンを除く借金などの総額が5,000万円以下 ・継続的な収入の見込みがある ・一定の債権者の反対がない |
給与所得者等再生
サラリーマンや公務員など安定した収入がある人を対象とした手続きです。
債権者の反対があっても利用できるという利点がありますが、小規模個人再生と比べると返済額が多くなりやすいというデメリットがあります。
<関連記事>個人再生でやってはいけないことは?注意点や対処法など徹底解説
自己破産
自己破産とは、借金などの返済に困っている人が裁判所に申し立てることで、財産を清算して返済の責任を免除してもらう手続きです。
高価な財産は処分することになりますが、生活や仕事の関係で必要なものは処分されずに済みます。
任意整理や個人再生では借金の返済を継続していく必要がありますが、自己破産により免責されれば借金の返済責任がなくなります。
借金救済制度のメリット
借金救済制度のメリットは、返済の負担が減ることにあります。
もっとも、それぞれの債務整理の種類によってメリットに違いがあります。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは、話し合いで返済の負担を減らせることにあります。
裁判所を利用しないため、手続きのハードルが低く時間や費用がかかりにくいという利点があります。
また、債務整理をする借金を選ぶことができます。例えば、住宅ローンや自動車ローンを任意整理しなければマイホームや自動車を残せる可能性があります。
話し合いをするだけですから家族などに借金のことを知られにくいメリットもあります。
元本を減らしてもらうことは難しいですが、高金利の借金であれば、利息を減らしたりカットしてもらったりするだけでも月々の返済が楽になります。
<関連記事>任意整理しない方が良い場合は?任意整理の概要とリスクを解説
個人再生のメリット
個人再生のメリットは、利息だけではなく元本を含めて借金を大きく減額できることにあります。
借金額にもよりますが、5分の1~10分の1程度に借金を減らすことが可能です。
自己破産と異なり、高価な財産であっても必ずしも処分する必要がありません。そのため住宅や自動車などの財産を維持したい場合には有力な選択肢となります。
住宅ローンの残っている不動産についても手放さなくて済む可能性があります。
「住宅ローン特則」という制度を使えば、住宅ローンを残すことが可能となりマイホームを維持できる可能性があるのです。
自己破産のメリット
自己破産のメリットは、借金などの多くの債務について、返済する責任を免除してもらえることです。
ほかの債務整理の方法では、借金が減額されてもゼロにはならないため返済し続ける必要があります。ですが自己破産をして免責をもらうことができれば基本的に借金を支払う責任がなくなるのです。
しかも、現金を含めて生活や仕事に必要な一定の財産は残すことが可能です。
借金をなくして再出発することがしやすいというメリットがあります。
<関連記事>自己破産すると連帯保証人はどうなる?その影響や対処法について解説
借金救済制度のデメリット
借金救済制度を利用すると、しばらくの間はローンを組んだり、クレジットカードが利用できなくなったりするなどのデメリットがあります。
債務整理の種類によってデメリットが異なるため詳しく解説します。
任意整理のデメリット
任意整理のデメリットとしては、利息をカットできても元本の減額が難しいことが挙げられます。ですが高金利のカードローンなどであれば返済はだいぶ楽になります。
例えば、150万円(年利15%)の借金を5年で返済するケースでは、利息を免除してもらうことで毎月1万円以上返済額が減り、64万円ほど支払額が減ることになります。
安定した収入がなければ利用できないというデメリットもあります。
アルバイトやパートであっても収入が安定していれば利用できる可能性があります。
信用情報機関に事故情報が記録されてしまうという問題もあります。
「ブラックリスト」に載るといった方が分かりやすいかもしれません。
任意整理の場合、完済から5年程度はブラックリストに載ってしまうため、その間クレジットカードを作ったりローンを組んだりすることが難しくなります。
もっとも、61日以上延滞すると、それだけでブラックリストに載る可能性があります。
<関連記事>クレジットカードのブラックリストとは?確認方法や対処法をご紹介
個人再生のデメリット
個人再生の場合にもブラックリストに載ってしまうデメリットがあります。
安定した収入も必要です。
官報(国の発行する機関誌)に個人再生をした事実も載ってしまいます。といっても、官報を読んでいる人はほとんどいません。
一番のデメリットは、手続きが複雑で難しいことかもしれません。自分一人で手続きをすることは現実的ではありません。必ず専門の弁護士に相談してください。
<関連記事>ブラックリストの消し方とは?信用情報をきれいにする方法を解説
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットとしてブラックリストに載ることが挙げられます。
官報に自己破産したことが掲載されることもデメリットにあたります。
また、高価な財産が処分されてしまうというデメリットもあります。
裁判所やケースによって異なりますが、99万円以下の現金や、20万円以内の財産については処分しなくて済むことも多いです。生活に必要なものといえるからです。
一時的に一定の職業につけないこともデメリットの一つです。ただし、免責が下りれば制限が解除されるため3~6か月程度で制限がなくなります。
<関連記事>自己破産しても財産は残せるの?
借金救済制度を利用するための費用
借金救済制度(債務整理)の費用の目安についてまとめておきます。
※事務所によって費用は異なります。また、相談料がかかることもあります。
任意整理
話し合いをするだけなので基本的に裁判所費用はかかりません。
<弁護士費用>
着手金 |
2万円~5万円くらい ※無料のこともある |
基本報酬金 (解決報酬金) |
原則:1社あたり2万円以下 例外:商工ローンは5万円以下 |
減額報酬金 |
減額分の10%以下 |
※債務整理事件処理の規律を定める規程及び施行規則(日本弁護士連合会)参照
個人再生
裁判所を利用するため裁判所費用と弁護士費用の両方が必要です。
<裁判所費用>
申立手続費用 (収入印紙) |
1万円程度 |
予納金等 (公告費用、郵便切手) |
2万円程度 |
個人再生委員報酬 ※選任された場合 |
15~22万円程度 |
<弁護士費用>
着手金 |
20万円~50万円くらい |
報酬金 |
減額分の10%~20% (20万円~) |
自己破産
裁判所を利用するため裁判所費用と弁護士費用の両方が必要です。
<弁護士費用>
報酬金 |
30万円~ |
<裁判所費用>
申立手続費用 (収入印紙) |
1,500円程度 |
予納金等 (公告費用、郵便切手、管財人報酬) |
同時廃止事件:1~2万円程度 少額管財事件:20万円~ 管財事件:50万円~ |
※ケースによって手続きが異なります。
自己破産の場合には、少なくとも弁護士費用込みで30万円以上必要です。管財事件の場合には50万円以上が目安となります。
費用については分割払いなどに対応してもらえる可能性があるので、弁護士にご相談ください。
借金救済制度の手続きの流れ
手続きの流れを簡単に説明します。
任意整理
1.弁護士に相談 2.債権者に依頼を受けたことを通知(取り立てがストップ) 3.取引履歴の取得、利息の計算 4.債権者と交渉・和解(利息の減額、長期の分割払いを求めます) |
弁護士が貸主に受任通知を送付すると取立てが止まります。
和解が成立したら3~5年をかけて返済していきます。完済から5年くらいでブラックリストが抹消されます。
個人再生
1.弁護士に相談 2.債権者に依頼を受けたことを通知(取り立てがストップ) 3.取引履歴の取得、利息の計算 4.裁判所への申立て 5.個人再生委員の選任(選任されないことも) 6.(履行可能性テスト) 7.再生手続き開始決定 8.再生計画案の提出 9.債権者の議決または意見聴取 10.再生計画認可決定 |
計画通りに返済できなければ再生計画が取り消されることがあります。
自己破産
1.弁護士に相談 2.債権者に依頼を受けたことを通知(取り立てがストップ) 3.取引履歴の取得、利息の計算 4.裁判所への申立て 5.開始決定 6.財産の処分・債権者集会(管財事件のケース) 7.免責手続き |
財産が少なく費用にも足りないときには、管財人による調査が必要な場合を除き、開始決定と同時に手続きが廃止となり(同時廃止)、免責手続きに移ります。
借金救済制度をスムーズに行うには
借金救済制度は、債務者(お金を借りた人)自身が手続きをとることも不可能ではありません。
ですが実際には、利息の計算や必要な書類の作成などを素人が行うことは現実的ではありません。
借金救済制度には種類がありますが、その人に合った方法をとることが大切です。
弁護士に相談することで自分に最適な方法を診断してもらうことができます。
弁護士に依頼することで取り立てをストップできることも重要です。
特に、財産を差し押さえられる可能性があるときには、一刻も早く弁護士に相談してください。大切な財産を守れるかもしれません。
<関連記事>債務整理後の生活への影響は?仕事や住宅ローンへの影響など解説
まとめ
・借金救済制度とは、「債務整理」のことです。
・借金救済制度には、「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」などの方法があります。
・任意整理は、交渉によって利息をカットしたり返済期間を長くしてもらったりする方法です。
・個人再生は、裁判所が認可した計画に基づき返済することで借金を大幅に減らしてもらう方法です。
・自己破産は、裁判所に申し立てることで財産を清算し、借金の返済責任を免除してもらう方法です。一定の財産は残すことができます。
債務整理でお悩みなら 東京新橋法律事務所
借金救済制度(債務整理)の方法には種類があります。
その人に合った方法を選ぶことがとても大切です。
そのためには、借金で悩んでいる方の話をよく聞き、抱えている問題を理解し、適切な判断ができる必要があります。
私たちは、「正しい知識が適切な選択を導く」をモットーに、1.中立・客観的で、2.正確かつ高度な専門的情報を、3.信頼性に責任を持って、提供します。
↑無料で簡単に借金をどのくらい減らすことが出来るのかを診断できるシミュレーターです。是非ご活用ください。
本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)