自己破産のデメリットとは?
2021/09/22 04:54
目次
はじめに
破産はその言葉のイメージからとても怖いもの人生が終わってしまうような印象をもっている人が少なくないようです。
たしかに自由が制約されることがあることも事実ですがそれほど大きなものではありませんし一時的なものにすぎません。
むしろ債務に縛られていた状況から開放されることでかえって自由になれるのであり人生を新たに始めることができます。
なにかに不安を感じるのはそれが何かよくわからないからです。不安の対象をよく調べてみると心配するほどではなかったと感じることは多くあるものです。
ここでは破産によって生じる悪影響についてくわしく解説しているため不安が解消されていくと思います。
財産への影響
他の債務整理手続きと比較しても特に影響が大きいのは財産を失う点にあるといえます。
自己破産は財産を清算するために行うため資産をそのままにはしておけないからです。管財人が財産を調査して必要に応じて処分し換金されたお金を債権者に分配するためです。
もちろんすべての財産を取り上げられてしまうと生活ができなくなってしまいますから一部を残すことは可能です。しかし不動産などの高価な財産については基本的に処分されてしまうことになります。
裁判所によって取り扱いが異なる可能性がありますが基本的に99万円以下の現金や20万円以下の物については処分を免れることが多いといえます。ほかにも日常生活や仕事に必要なものなどが対象外となっています。そのため家財道具など一切の所有物を失って無一文になるようなことはありません。
残念ながら持ち家について維持することは難しいといえます。ある程度の価格で売却できることが多いからです。そのため家を手放したくない理由があるときには別の債務整理手続きをとる必要があります。
例えば個人再生を利用すれば財産の処分は強制されません。ローンが残っている場合には担保権を実行されて権利を失うことになりますが住宅ローンを残す方法もあります。
借金の総額が小さいときには任意整理の方法をとることもできます。これも財産の処分は強制されないため家を残すことができます。
ここで家を失うという問題は持ち家に住んでいる場合の話です。もともとアパートなどの借家に暮らしている場合には出ていく必然性はありません。持ち家があるときには財産的価値が高いため売却する必要があり結果として出ていかざるを得ないというだけです。
破産したからといってそれだけで追い出されることはないので安心してください。ただし賃料を延滞し続けていると明け渡しを求められることには注意が必要です。
もちろん免責されれば新たに手に入れた財産については処分されることはありません。
プライバシー
破産した事実は官報に掲載されることになっています。そのような公のものに住所や名前が載ってしまうため多くの人に知られてしまうのではないかと心配されているかもしれません。確かに多くの人に知らせるために掲載しているわけですから心配するのはあたりまえともいえます。
ですが普通は他人が破産した事実を知ることはありません。ほとんどの人は官報など購読していないのです。普通の新聞のような内容ではなく新しい法律などが載っているだけで面白いものではないからです。国家試験に合格したときに氏名が掲載されるため記念に購入するくらいはあるかもしれません。
たとえ新しい法律を確認するため購読している人がいたとしても破産者のページを読むことはないため知り合いに知られてしまうことはまずないといえます。
破産した場合には戸籍や住民表には記録されませんが市区町村に保管されている名簿に登載されます。この名簿から他人に知られてしまうのではないかと心配される方もいます。ですがこれは一般の人が閲覧できるものではないため心配いりません。国家資格者として業務を行う際などに破産者でないことの証明書が必要なことがありその発行のために利用されています。つまり本人が申請して初めて破産の有無が明らかになるのです。
そもそも多くの場合記録さえされていません。破産すれば大半の人が免責されますが名簿に載るのは免責してもらえなかった人に限定されているからです。
管財人が選任されるケースでは郵便物は管財人の事務所に転送されます。財産の調査のためであり内容を確認されてしまいます。調査が終わればチェックされることはありません。
破産は一緒に住んでいる家族に内緒にするには難しい面があります。裁判所によって取り扱いが異なりますが家族の協力がないと作成できない書類を求められることがあるからです。そのため同居の家族にも秘密にして債務整理をするには借金の少ないうちに任意整理を検討したほうがいいかもしれません。
信用情報機関のデータベースに記録されることにもなります。記録されると5~10年の間はクレジットカードの発行などが難しくなります。もっとも延滞が長引いているとそれだけでブラックリストに掲載されることがあります。
手続きについて
必ず免責してもらえるわけではありません。例えばギャンブルで作った借金は許可されない可能性があります。もっともよほど悪質なケースでもない限り賭け事が原因であったとしても認めてもらえます。
免責の見込みが低いケースについては他の方法を検討することになります。
裁判所を利用した方法であり手間や時間がかかります。書類を作成したり裁判所に出かけたりしなければなりません。ただし弁護士に任せれば面倒な部分の多くを代わりに行ってくれるため身構える必要はありません。もちろん任意整理のように裁判所を通さない方法であればより簡単に解決できます。
すべての権利者を対等に扱わなければならないため一部の人のみを対象に手続きをすすめることができません。
例えば自動車ローンがある場合に任意整理であればその債務を除くことで車を手元に残すことが可能ですが破産ではこのような取り扱いはできません。
その他の影響
職業上の制限を受ける点にも注意が必要です。宅地建物取引士や警備員など一部の業種についてはその地位につくことができないなどの規制が存在します。
もっとも何年も制限されるわけではなく免責が下りれば業務につくことができます。ほとんどの人が免責されるため過度に心配する必要はありません。概ね3~6か月程度で制限が解除されます。
居住している場所から自由に移動できなくなることがあります。財産の調査や処分について協力することが求められるため連絡が取れなくなると困るからです。それゆえ勝手に旅行などをすることは許されません。
ただし一切移動できなくなるわけではなく裁判所から許可を得れば問題ありません。もちろん近所に買い物に出かけるようなことまで制限されるわけではありません。連絡が取れなくなることを防ぐ目的であり宿泊を伴うような長期の外出が対象です。許可が得られる限り旅行も不可能ではありません。
管財人が選任されないケースではこのような制限はありません。免責されたときも同じです。
保証人への影響についても注意する必要があります。もし誰かに債務を保証してもらっている場合にはその人に代わりに支払ってもらうことになります。たとえ債務者が免責を得たとしてもそれは変わりません。保証というのは債務者が支払えなくなった場合に備えた契約だからです。
その際一括で請求がいくことになります。元の債務が分割であっても一度に支払う義務が生じます。もし分割にしてもらうのであれば保証人自身が任意整理など債務整理が必要となります。債務者は保証人に対する返済義務もなくなりますが人間関係を考慮し免責後に保証人に対し返済していくことは可能です。
債務整理全般について言えることですが一部の債務については免責の対象外となっています。例えば税金については破産手続きを完了したとしても支払い義務が残ります。
このような債務については別途交渉して返済の猶予などをしてもらうことが考えられます。税金であっても支払いが滞る前に相談しておくことで分割払いに応じてもらえることがあります。
すでに免責を受けたことがある人は7年間は再度免責を得ることは原則としてできません。自己破産は生涯に一度だけというような回数制限はありません。何度でも利用することが可能です。もっとも免責を何度も与えることには問題があるため一定期間は利用できないように制限が設けられているのです。ただし期間が経過する前であっても事情によっては免責を得られる可能性もあります。
注意すべき点は2度目以降では審査が厳しくなることです。特に同じ理由で債務を背負ってしまったときには簡単ではありません。同じことを繰り返してしまうのではないかと裁判官に判断されやすいからです。そのため専門の弁護士に相談し万全の体制を整える必要があります。万が一免責を得られないときであっても任意整理や個人再生といった別の方法もあります。
これまで見てきたように大半の問題は免責や時間の経過によって解消されることになります。破産を検討するほどに追い詰められている状況にあるときには何もしないでいると事態は悪くなっていきます。早めに債務整理を行うことでデメリットは最小限に抑えることができます。破産以外にも方法はいくつもあります。困ったことがあれば早めに専門家に相談することが大切です。
まとめ
- 99万円を超える現金や20万円を超える物は処分されることが多いです。家などを残したいときには任意整理など他の方法を検討します。
- 官報に名前が載りますが閲覧する人はほとんどいないため他人に知られることはまずありません。
- 管財事件のときには郵便物が管財人にチェックされます。
- ブラックリストに載るため少なくとも5年はローンを組むことなどが難しくなります。
- 税金など一部の債務は支払い義務が残ります。
- 数か月程度警備員など一部の職業につくことができなくなります。
- 病気などでない限り少なくとも1回は裁判所に行く必要があります。
- 宿泊を伴う外出が制限されることがあります。