自己破産ができない確率は?免責不許可の具体例や対処法など解説!
2022/03/26 03:38
目次
借金がかさんで「自己破産」という選択肢が見えてきてしまった、という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「自己破産を申請しても借金がなくならないのでは?」「1回自己破産をしてしまったら、もう2回目は借金がなくならないのでは?」など様々な不安があるかと思われます。
そこで、今回の記事ではどのような仕組みで自己破産で借金が免除されるのか、されない場合はあるのか、されなかった場合はどうすれば良いのか、などを解説いたします。
また、「自己破産」そのものについては、詳しくはこちらの記事「自己破産とは5つのポイント」をご参照ください。
自己破産できない確率は?
免責とは?
まず、「免責」とは何かについて説明いたします。
破産をして借金を免除されるには2段階があり、まず「破産します」という旨を裁判所に申請する段階、それから裁判所の方で「確かにこの人は借金を返すことは出来ないだろう」と判断し、それから「借金を免除します」という許可を与える「免責手続き」と呼ばれる段階があります。
つまり、破産申請をすれば必ず借金は免除されるというわけではないのです。借金が免除されるには免責手続きを経なければなりません。
そして、「あなたの借金を免除します」という免責決定が裁判所から出されるためには一定の条件を満たす必要があります。
自己破産ができない確率は約3%
もっとも、殆どの場合は問題なく、免責決定を得ることができます。
そもそも「自己破産」という制度が法律で認められた目的の1つに、借金で生活が苦しくなった人を救済するため、ということがあります。
そのため、「この人なら借金がなくなれば、きちんと生活ができるだろう」と裁判所から判断がされれば、法律で決められた免責の条件を満たさなくとも免責を受けることができることも多々あります(これを「裁量免責」と言います)
日本弁護士連合会が出している「2020 年破産事件及び個人再生事件記録調査」によりますと、自己破産の申し立てを行った人の97%が免責が認められていることが分かります。
もっとも、残りの3%という少ない確率ですが、免責が出来ないケースもありわけです。以下では、どのような場合に免責が下りないのかを説明していきます。
自己破産ができない場合
以下では、免責ができない場合を代表的なものに絞って説明させていただきます。
ギャンブルや浪費で借金を作った場合
競馬競輪競艇といったギャンブル、ブランド物の購入、ホストやキャバクラでの浪費は免責不許可事由に該当します。
財産を隠した場合
破産をする場合、持っている財産で一定以上価値のあるものは没収されてしまうことになります(貴金属や不動産などがこれに該当します)
しかし、「没収されたくない」と考え、その財産を持っていないことにして、裁判所から隠した場合は、免責不許可事由に該当します。
自己破産することを前提に借金を作った場合
破産することが分かっているにも関わらず、新しくお金を借りた場合は、「しっかり返すつもりがないのにお金を借りた詐欺行為だ」と判断されてしまい、免責不許可事由に該当する場合があります。
クレジットカードを現金化した場合
クレジットカードで購入した商品を現金化する行為(いわゆる「クレカの現金化」)は免責不許可事由に該当する可能性があります。
破産手続きの開始が遅れることとなりますし、クレジットカードで購入した商品はお金をクレジットカード会社に払うまでは、正式には自分のものではなく、カード会社のものになっているため、これを勝手に売ってしまうことは、横領罪に該当してしまう恐れもあるのです。
一部の債権者だけに借金を返済した場合
自己破産は破産者の保護という目的の他に、破産者に対してお金を貸している人全員が平等にお金を獲得できるようにする、という目的があります。
そのため、1つの借入先にだけお金を返してしまう、といったことは免責不許可事由に該当します。
例えば、借金をしている人の中に、親戚の人がいて「早く返してくれないと困る」とせがまれ、仕方なく返してしまった場合などはまさしく一部の人にだけ偏った返済をしていることに該当するため、注意が必要です。
過去7年以内に自己破産をしたことがある場合
過去7年以内に自己破産をしたことがあり、再び破産を申し立てることになった場合は、免責不許可事由に当たります。
何度も同じ人が借金を免除され続けることになるのは不合理であるからです。
裁量免責
もっとも、以上の免責不許可事由に該当したとしても、裁量免責が下りることは十分にあり得ます。
「ギャンブルが原因の借金がある場合は、破産はできないのか…」とお思いかもしれませんが、そんなことはありません。
先程挙げた日弁連が出しているデータによれば、自己破産の原因がギャンブルである人は約7%ですが、一方で免責が下りなかった人の割合は先ほど申し上げた通り、約3%ほどです。そのため、ギャンブルが原因で破産をした場合でも半数以上の人が免責を得ているのです。
たとえギャンブルが原因だったとしても「この人ならきちんとこれから借金を無くせば生活できるはずだ」と裁判所から判断されれば、殆どの場合免責が下りることになるのです。
免責が下りるか下りないかといった判断がつかない状態で破産の申請をするのはとても不安が残りますし、そうした判断を仰ぐためにも破産を検討する場合は、まず弁護士等に専門家に相談することを強くお勧めいたします。専門家に相談して破産を申請することによって、免責不許可事由に当たる行動をしないよう注意することも出来ます。
自己破産不許可の際の対処法は?
では、もし万が一、免責が下りなかった場合はどうなるのでしょうか。この場合、借金は無くなることなく、そのまま返し続けなければいけません。
しかし、自己破産の免責が下りなかった場合の対処法もあります。以下にその対処法を紹介させていただきます。
即時抗告
破産の免責が下りないことに対して、異議申し立てをすることができます。
ただし、この即時抗告が出来る期間は免責不許可決定が出てから1週間以内にしなければなりませんので、迅速な判断が必要となります。
もっとも、元々免責が下りない可能性は非常に低いため、免責が下りなかった場合には相当の理由があります。そのため、異議申し立ては認められない可能性は高いと言えるでしょう。
任意整理・個人再生
自己破産では免責が下りなかったという場合は、他の債務整理手続き「任意整理」、「個人再生」を選択するという方法もあります。
任意整理とは、自己破産と異なり裁判所を介さずに直接借入先と交渉することで、借金を減らしてもらう手続きとなります。
任意整理について詳しくはこちらの記事「任意整理とは?4つのポイント」をご参照ください。
個人再生とは、自己破産同様、裁判所を介して借金を減らしてもらう手続きとなります。
自己破産と異なり、借金を0にすることは出来ませんが、最大で1/5まで圧縮することができますし、持ち家といった資産を残したまま手続きを行うことができます。
個人再生については詳しくはこちらの記事「個人再生とは?4つのポイント」をご参照ください。
時効援用
借金は、一定の期間が経過すると「時効」が成立し、借金そのものが無くなることがあります。
自己破産の免責が下りなかった場合であっても、裁判所は特に借入先に通知といったものを出したりはしないため、借入先に気づかれないまま時効が成立する可能性もあります。
もっとも、借入先はお金を貸すプロですので、時効にならないように注意を払っていることは殆どのため、時効の成立は一般的に難しいとされています。
時効について詳しくはこちらの記事「借金時効の制度とは時効の条件や手続き方法について徹底解説」もご参照ください。
まとめ
今回の記事では、自己破産の免責手続、そして免責が下りなった場合について説明いたしました。
自己破産に関しては、免責が下りないことは殆どありませんが、免責が下りない、ということがないようにするためには様々なことに注意する必要があります。
そのため、自己破産を検討する場合は何よりも先に弁護士等の専門家に相談することを強くおすすめします。
専門家であれば、免責が可能かどうかの判断を下すこともできますし、また、自己破産以外の手続きの方が適切な場合に、それを案内してくれることもあるでしょう。
本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)