任意整理ができない原因は?任意整理の条件や対処法などについて解説
2022/07/13 06:17
目次
滞納が長期になっていたり3社以上から借り入れていたりする場合には債務整理を検討する必要があります。債務整理には種類がありますが比較的利用しやすいものとして任意整理があります。ところが任意整理ができないケースが存在します。
任意整理ができない原因は安定した収入がなかったり取引期間が短かったりすることなどがあります。任意整理は利息をカットした元本を3~5年で返済していくものであり収入が安定していることが必要なのです。
この記事では任意整理ができる条件や任意整理ができない場合の対処法などについて解説していきます。
任意整理については、こちらの記事「任意整理とは?4つのポイント」もご参照ください。
任意整理ができない原因
任意整理はどのようなケースでもできるわけではありません。
任意整理は債務整理の一種ですが、話し合いにより返済の負担を軽くする方法であるため債権者に交渉に応じてもらわなくてはならないからです。
この項目では任意整理ができない原因をくわしく見ていきます。
借金額が大きく返済ができる程度の収入がない
任意整理は交渉により利息をカットしてもらい3~5年の分割払い(36回~60回)にしてもらう方法です。
つまり、3年以内(長くても5年以内)に完済できる見込がないのであれば任意整理できません。借金の総額よりも毎月いくら返済できるかがポイントです。
<任意整理できる目安>
毎月返済できる金額 |
任意整理後の債務額 |
1万円 |
60万円まで |
2万円 |
120万円まで |
3万円 |
180万円まで |
4万円 |
240万円まで |
5万円 |
300万円まで |
6万円 |
360万円まで |
7万円 |
420万円まで |
8万円 |
480万円まで |
9万円 |
540万円まで |
10万円 |
600万円まで |
11万円 |
660万円まで |
12万円 |
720万円まで |
13万円 |
780万円まで |
14万円 |
840万円まで |
15万円 |
900万円まで |
※債務額は利息カットの範囲や過払金の有無により変わるので弁護士にご相談ください。上記の表より債務額が大きい場合であっても期限内に返済可能であれば利用可能です。
<参考>過払い金って何?対象期間やメリット・デメリットについて徹底解説!
借入先が和解に応じてくれない
任意整理は話し合いにより返済の負担を軽減してもらう方法です。つまり債権者は任意整理に応じないこともできるのです。
ですがほとんどの金融業者は任意整理に協力的です。というのも自己破産など他の債務整理の方法をとられると債権の回収が非常に難しくなるからです。任意整理であれば回収できる可能性が高くなるため債権者にとってもメリットがあるのです。
例外的にブラックリストに載っているなど借入れが難しい状況にもかかわらず融資を受けられる業者は交渉に応じないケースが多いです。このような業者からの借り入れがあると弁護士が依頼を断るケースもあるため借金を増やす前に弁護士にご相談ください。
任意整理に適していない債務である
債務にも種類があり任意整理の対象とならないものがあります。
銀行や消費者金融からの借金、クレジットカードの債務、商品やサービスを利用した代金などは任意整理することができます。
ですが税金や年金、社会保険料は債務整理の対象となりません。自己破産したとしても免責対象外となっています。
ただし、税金などは役所に相談することで分割払いや支払い猶予を認めてもらうことが可能となっています。滞納すると支払い猶予などを認めてもらいにくくなるので早めに相談することが大切です。
保証人や担保がついている借金
担保が設定されている債務も注意が必要です。債権者が担保をとっている場合には任意整理に応じる理由が乏しいため交渉が難しくなるからです。例えば、住宅ローンなど不動産に抵当権が設定されている場合には返済が滞ったとしても抵当権を実行し競売することができるため利息も含めて回収可能だからです。
保証人のいる債務についても注意が必要です。主債務者が債務整理したとしても保証人の責任まで軽減されるわけではないからです。任意整理すると保証人が返済を求められることになり一括請求されることもあります。このように保証人に迷惑がかかるためできるだけ保証人のいる債務を除外して任意整理したり、事前に保証人に相談し保証人と一緒に債務整理したりすることを検討します。
すでに借入先から差押えにあっている
任意整理は債権者と交渉することで返済の負担を減らしてもらうものです。そのため債権者が話し合いを拒否するような状況では利用することができません。
債権者がすでに訴訟を起こしていたり財産に対し仮差押えをしていたりするときには交渉が難しくなります。
そのため任意整理したい場合には債権者が法的手段をとる前に行動することが必要です。滞納が長引くと訴訟や支払督促などの法的手段をとられるリスクが高まるため早めに弁護士に相談することが大切です。
差押えについては、こちらの記事「給料が差し押さえられてしまう?対処法や手続きなどを徹底解説!」もご参照ください。
任意整理ができる条件とした方がいいケース
これまで見てきたように任意整理ができないケースや向いていないケースがあります。任意整理できる条件や任意整理した方がいいケースを見ていきます。
3〜5年で返済できる安定した収入がある
任意整理は自己破産と異なり返済を継続していくため安定した収入が必要です。3年から長くて5年で完済できる程度の安定した収入が求められます。もし十分な収入がなければ債権者が交渉に応じてくれないからです。
安定した収入があればアルバイトやパートであっても任意整理することは可能です。
収入だけでは足りず借金している
次に任意整理した方がいいケースについて見ていきます。
返済のためにさらに借金を増やす自転車操業になっている場合には早急に債務整理が必要です。特に3社以上から借り入れているケースは多重債務状態と呼ばれ借金返済の目処が立たなくなり放置すれば借金が雪だるま式に増える危険性があります。
このように返済のために借金をしていたり3社以上の消費者金融から借入れたりしているケースでは債務整理を早めに行うことが必要です。
滞納による督促を受けていて、法的措置がとられる寸前
他社から借入れして返済する方法にも限界があります。総量規制(年収による借入額の制限)により借金の額が増え過ぎると新たに融資を受けられなくなるからです。
このような状況になると滞納が長期化することになりますが、債権者はいつまでも滞納を放置しておくことはなく法的措置をとってきます。債務整理をすればとっておくことのできた財産も強制執行によって失うこともあります。
債権者が強制的な回収手段に乗り出すと話し合いに応じてもらうことは難しくなるため、滞納が長引いている状況にあれば早めに弁護士に相談することが必要です。
<参考>自己破産しても財産は残せるの?
任意整理ができない場合の対処法
任意整理は債権者が応じてくれないとできません。債権者に承諾してもらいやすくする工夫や任意整理以外の債務整理の方法について解説します。
取引期間が短い場合はもう少し返済を継続する
任意整理は債権者との信頼関係が必要です。融資を受けたばかりで数か月しか取引していないようなケースでは任意整理できないことがあります。
取引期間が短ければそれだけ利息も支払っていないことになり協力してもらいにくいのです。特に返済をほとんどしていないようなケースでははじめから返済するつもりがなかったのではないかと疑われたり、和解してもまた返済をしないのではないかと判断されたりするのです。
このように返済期間が短いケースで交渉がうまくいかなかったのであれば返済をしばらく継続することで交渉に応じてもらいやすくなります。
自己破産や個人再生も検討する
任意整理ができないケースや向いていないケースも存在します。そのような場合には自己破産や個人再生といった別の債務整理手続きを検討します。
自己破産や個人再生であれば基本的に債務者側で手続きを進めることが可能です。
収入が十分あるのであれば個人再生を利用することができます。任意整理よりも債務を大幅に圧縮可能であり住宅ローンを残すことも可能です。債務の額が大きいケースで特に効果を発揮します。
収入があまりなく返済ができないケースについては自己破産が向いています。債務の大半を免責してもらうことが可能であり債権者が反対していたとしても利用可能です。
自己破産や個人再生については、こちらの記事「自己破産とは?5つのポイント」や「個人再生とは?4つのポイント」もご参照ください。
個人で交渉せず専門家に依頼する
任意整理は裁判所を利用する手続きではなく単なる和解交渉にすぎないため個人で行うことも可能です。
ですが債権者からすれば専門家でない債務者から交渉を持ちかけられたとしても妥当な返済プランなのか疑念を抱かれ承諾してもらうことは難しいといえます。
弁護士であれば専門家であり第三者としての立場から無理のない妥当な条件を出すことが可能であるため任意整理に応じてもらえる可能性が高くなります。
もし任意整理ができなかったケースで債務者本人が交渉していたのであれば、弁護士が交渉しなかったことが原因である可能性が高いといえます。
任意整理ができるケースなのかそれともできないケースであるのかは個別の事情によって異なります。一人で悩まずに専門家である弁護士に相談することが大切です。
まとめ
任意整理ができないケースの多くは安定した収入がないことが原因となっています。任意整理は3年から5年で完済を目指すため債務整理後の債務額を60回以内で返済できる収入があることが必要です。任意整理ができない場合の対処法としては個人再生や自己破産を検討することが有効です。
滞納が長引くと任意整理が難しくなります。任意整理ができないケースなのか一度弁護士に相談されることをおすすめします。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)