自己破産をするには?やり方・手続きの流れや費用など詳しく解説
2023/07/03 06:52
目次
自己破産という言葉を知っている人は多いですが、自己破産のやり方を知っている人は多くありません。
自己破産は借金などの債務をなくしてもらう手続きですが、だれでも利用できるわけではありません。また、具体的な方法も大きく2つに分かれています。
この記事では、個人が自己破産をするやり方について分かりやすく解説していきます。
自己破産をするには
自己破産により借金などの債務をなくしてもらうことを「免責」といいます。
免責してもらうためには一定の条件をクリアする必要があります。
自己破産により免責をもらうためには次の条件が必要です。
・「支払不能」であること ・「免責不許可事由」がないこと(例外あり) |
支払不能であること
自己破産手続きは、誰でも好きなときに利用できるわけではありません。
「破産手続開始原因」というものがなければならないのです。
個人の場合には、「支払不能」が破産手続開始原因です。無理なく返済していけるのであれば自己破産の必要はないからです。
「支払不能」にあたるか否かの判断は簡単ではありませんが、「支払停止」にあたれば支払不能と推定されます。
支払停止とは、債務者本人が支払いできない状態であることを示す行為のことです。
例えば、債務整理の依頼を受けた弁護士が債権者に返済を停止すると通知することにより支払停止となります。
免責不許可事由がないこと
自己破産手続きが開始されたとしても免責してもらえなければ借金はなくなりません。
免責には、「免責不許可事由」というものがあります。
<免責不許可事由(例)>
・ギャンブルや浪費で借金を作った場合 ・債権者を害する目的で財産を隠した場合 ・自己破産することを前提に借金をした場合 ・一部の債権者だけに返済した場合 ・過去7年以内に免責を受けた場合 |
免責不許可事由にあたると原則として免責されないことになっています。
ただし、これには例外があり免責不許可事由があっても裁判官が裁量によって免責をすることが可能となっています。実際、多くのケースで免責が認められており、よほど悪質なケースでもなければ免責は十分期待できるのです。
そのため、ギャンブルや浪費で作った借金であっても、あきらめる必要はありません。
<関連記事>自己破産ができない確率は?免責不許可の具体例や対処法など解説!
自己破産手続きの種類
自己破産手続きには種類があり、「同時廃止」、「管財事件」、「少額管財事件」に分かれます。
同時廃止事件
自己破産手続きは、債務者の財産を債権者に分配するための手続きでもあります。そのためには財産を調査・処分・分配をする必要がありますが時間や費用がかかります。
債務者の財産が手続きの費用にさえ足りないときには、破産手続きを行う意味がありません。そのため、このような場合には原則として破産決定と同時に手続きを終了することになります(同時廃止)。
一般的な目安として財産の中に20万円以上の価値のある物が存在しているときには同時廃止になりにくいとされています(裁判所の運用によって異なります。)。
同時廃止の場合、時間や費用が少なくて済むというメリットがあります。
管財事件
管財事件というのは、「破産管財人」を選任し財産の調査や処分・分配などを行う手続きのことです。自己破産の原則的な手続きです。
20万円以上の高価な財産を持っていたり、その可能性があったり、免責不許可事由が問題となるケースでは管財事件となりやすいとされます。管財人による調査が必要となるからです。
管財事件の場合、費用が高額であるという問題があります。
少額管財事件
管財事件の手続きを簡易化して費用も抑えた「少額管財」という方法もあります。すべての裁判所で行われているわけではありませんが東京地裁など多くの裁判所で実施されています。
ただし、弁護士が代理人となっていることが利用するための条件です。管財人が行っていた業務の一部を代理人弁護士が行うことで手続きを簡略化しているからです。
<関連記事>管財事件と同時廃止の違いとは?
自己破産手続きの流れ
自己破産の具体的な手続きの流れは次のようになります。ただし、裁判所やケースによって内容が異なることがあります。
1.弁護士への相談
借金などの返済に困ったら弁護士に相談することから始めます。債務整理の方法はいろいろあるため自己破産が適切なのかも判断してもらいます。
2.裁判所への申立て
自己破産手続きは裁判所に申し立てることによって行います。申立てには申立書や添付書類が必要となります。
3.裁判官との面接・破産手続き開始決定
東京地裁で弁護士が代理するときには申立日当日~3日以内に弁護士と裁判官が面接します(即日面接)。弁護士がいないときや他の裁判所では債務者本人が面接を受けることもあります。
この面接は、同時廃止とするか、(少額)管財事件とするかを判断する重要なものです。
4.財産の処分・債権者集会(管財事件のケース)
管財事件となった場合には管財人が選任され、必要な調査や財産の処分などが行われます。
管財人は通常弁護士から選ばれ破産者は管財人の事務所で面談を受けます。
郵便物は管財人に転送され内容の確認を受けることになります。
3か月ほどしたら裁判所で債権者集会が開かれます。管財人から財産の状況などについて報告がされます。
5.免責手続き
免責の判断の前に「免責審尋」が行われることがあります。
裁判官から債務が生じた原因などについて尋ねられます。個別に面談するケースと集団で面談するケースがあります。裁判所によっては書面審理のみで面談を実施しないこともあります。債権者集会と同時に行われることが多いです。
特に問題がなければ免責決定がなされ確定することで借金の支払い責任がなくなります。
自己破産に必要な書類
自己破産の申立てには書類の提出が求められます。裁判所やケースによって異なりますが代表的な書類は次のようなものです。
・申立書 ・陳述書 ・債権者一覧表 ・資産目録 ・住民票の写し ・その他(収入証明書、戸籍謄本等) |
※裁判所やケースによって必要な書類は変わります。
・申立書
破産手続きを求めるには、「破産手続き開始・免責許可申立書」を作成、提出することが必要です。
破産手続きと免責手続きは別の手続きですが申立書は一体となっています(裁判所により書式は異なります。)。
・債権者一覧表
弁済が必要なすべての債権者を届け出る必要があります。友人や親族からの借金についても漏れなく記載します。記入漏れがあると免責が不許可となるおそれがあります。
・陳述書
破産することになった原因や経歴などについて書面にして提出します。裁判所が書式を用意している場合にはそれを利用して作成します。
・資産目録
保有している財産をリストにして提出する必要があります。預金や不動産などすべての財産を正確に記載します。記入漏れがあると免責不許可事由に当たる他、刑事罰を受けることがあります。
・住民票の写し
申立ての3か月以内の住民票の写しを添付します。同居者全員が記載されていることや本籍の記載も必要です。
・その他
収入証明書や戸籍謄本など他にも必要となる書類があります。
自己破産申立ての費用
自己破産の申立てには、裁判所の費用(申立費用、予納金、郵便切手代等)と弁護士費用がかかります。
申立費用は1,500円です。
その他の費用は事件の種類によって異なります。
同時廃止事件
裁判所関連の費用として、1~2万円程度かかります。
弁護士費用としては、30万円以上が目安となります。
少額管財事件
裁判所関連の費用として、20万円以上が必要です。
弁護士費用としては、30万円~60万円程度が目安となります。
管財事件
裁判所関連の費用として、40万円以上が目安となります(東京地裁であれば50万円~)。
弁護士費用としては、少額管財事件以上が目安となります。
<裁判所費用(まとめ)>
申立手続費用 (収入印紙) |
1,500円程度 |
予納金等 (公告費用、郵便切手、管財人報酬) |
同時廃止:1~2万円程度 少額管財:20万円~ 管財事件:40万円~ |
<弁護士費用(まとめ)>
相談料 |
5,000円~/30分 ※無料のこともある |
報酬金 |
30万円~ |
自己破産の費用は弁護士費用込みで少なくとも30万円以上することになります。管財事件となれば50万円以上は必要です。
※実際の費用は裁判所やケースによって異なります。分割払いなどに対応できるケースもあるので弁護士にご相談ください。
<関連記事>借金返済ができないとどうなる?対処法や債務整理について徹底解説
まとめ
・自己破産のやり方で注意すべき点は、「支払不能」であることと、「免責不許可事由」がないことです。
・弁護士が手続きをすることで「支払不能」と認められやすくなります。
・借金をなくしてもらうためには「免責」してもらう必要があります。「免責不許可事由」に当たると原則として免責されないことになっていますが、実際には裁判官が裁量で免責してくれることが多いです。そのため、ギャンブルなどが原因の借金であってもあきらめる必要はありません。
・自己破産は、「同時廃止」、「少額管財事件」、「管財事件」に分かれます。簡易な手続きである「少額管財」を利用するには弁護士に依頼する必要があります。
・自己破産の費用は弁護士費用込みで30万円以上必要となります。分割払いなど負担の軽減ができることもあります。
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債務整理の方法は自己破産だけではありません。
ひとりひとりの状況に合った債務整理の方法を考えることが大切です。
本当に自己破産が適切なのか専門の弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産が適切な場合にも、なぜ自己破産が必要なのかを説明してもらうことが重要です。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)