破産宣告とは?自己破産との違いやメリット・デメリットを詳しく解説
2023/12/21 02:09
目次
「破産宣告」という表現は、旧破産法の言い回しです。もっとも、今でも映画やドラマの影響で使う人が多くいます。
この記事では、破産宣告や自己破産とは何か、そのメリットやデメリットなどを詳しく解説していきます。
破産宣告とは
破産宣告とは、破産手続きを開始する裁判所の決定のことです。
「破産宣告」という言い方は、昔使われていた表現で、現在は「破産手続開始決定」と呼ぶのが正確です。
しかし、意味は基本的に同じですし使いやすいので、この記事の中では「破産宣告」という表現を使うことにします。
破産とは、裁判所に申し出て、借金などの債務を返せる見込みが無いと認められた場合に、自分の残りの財産を清算し借入先に分配する制度のことです。
また、借金の返済義務を消滅させることもできます。返済責任を免除する手続きを「免責」といい、個人で破産宣告を利用するときには免責を目的とすることが多いです。
不動産や自動車などの高価な財産は基本的に処分されてしまうため、一般的に返済に困ったときの最後の手段として位置づけられています。
自己破産との違い
破産宣告は、破産手続を開始する決定のことで、これにより破産のいろいろな効力が生じることになります。具体的な破産手続きはたくさんありますが、破産手続きのはじめの一歩が破産宣告ということです。
自己破産とは、自分で破産を申し立てることで破産宣告を受ける手続きのことです。個人の自己破産では、返済責任を免除する「免責」手続きも行われます。破産の申し立ては債権者が行うこともあります。
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破産宣告を受ける条件
破産宣告や免責は、借金の返済義務が最終的にはなくなるという重大なものであるため、簡単には行われません。いくつか条件が決められています。
支払不能であること
個人が破産宣告を受けるには、「支払不能」であることが必要です。
単に借金の額が多いというだけではなく、現在の生活状況などを踏まえて「これは返済をするのが厳しいであろう」と裁判所から認められる必要があります。
借金が非免責債権でないこと
破産宣告後、裁判所に認められれば、原則として借金などの債務が免除されますが、免責されない「非免責債権」もあります。
例えば次のようなものです。
・税金 ・公共料金(電気ガス等) ・社会保険料 ・悪意による不法行為の慰謝料など |
これらの債務は破産宣告を受けても無くならないため、そのまま支払いを継続する必要があります。
免責不許可事由に該当しないこと
免責不許可事由というものが法律で定められており、これらに該当すると、借金が免除されない可能性があります。
免責不許可事由には以下のようなものがあります。
・意図的に財産を隠す ・一部の借入先にだけ借金を返済する ・裁判所に対してウソの供述をする ・ギャンブルなどの浪費をする |
もっとも、これらに該当したからといって絶対に免責されないわけではありません。
救済策として、裁判所の裁量で免責できることになっているからです。
例えば、ギャンブルによる浪費といっても、その程度・頻度を考慮して判断されることがあります。
免責不許可事由については、「自己破産ができない確率は?免責不許可の具体例や対処法など解説!」をご参照ください。
破産宣告の流れ
破産宣告手続きが実際にどのように行われるかを見ていきます。ただし、ケースによって異なることがあります。
専門家に相談
破産宣告を受けるには裁判所での手続きが必要です。専門的な手続きなので、債務整理を専門にした弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に債務整理を依頼すると、取り立ても基本的にストップします。
自己破産の申立て
破産宣告を受けるには、裁判所にいろいろな書類を提出する必要があります。
例えば、収入を確認するための源泉徴収票や、預金残高を確認するための通帳などを提出します。
破産宣告(破産手続開始決定)
申立てに問題がなければ、裁判所が破産宣告(破産手続開始決定)を出します。
破産手続きには、「同時廃止事件」と「管財事件」があります。
財産が少ない場合には、破産宣告と同時に手続きが終了することがあります。これを「同時廃止」といいます。
財産が多い場合や調査が必要な場合には、「管財事件」となります。管財事件の場合、「破産管財人」が裁判所から選任されます。基本的には弁護士がなることが多いです。
管財事件の場合、数か月後に債権者集会が開かれて管財人から調査の報告がされます。
免責許可
免責の判断をするために裁判官と面談することがあります。面談せずに書面審理のみの所もあります。
問題がなければ裁判所から「免責許可」が出されます。この許可が出ることで、借金などの返済義務が原則としてなくなります。
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破産宣告するための費用。
破産宣告を受けるには裁判所に費用を支払う必要があります。
管財事件では、破産管財人に報酬を支払う必要があるため費用が高くなります。
<裁判所費用>
申立費用(収入印紙) |
1,500円 |
予納金など (公告費用、郵便切手、管財人報酬) |
同時廃止:1~2万円程度 少額管財:20万円~ 管財事件:40万円~(東京地裁は50万円~) |
少額管財というのは管財事件を簡単にしたもので東京地裁など一部の裁判所で利用できます。ケースにもよりますが個人の場合には通常管財ではなく同時廃止や少額管財になることが多いです。
このほかに弁護士費用(30万円~)がかかります。そのため、破産宣告を受けるためには30万円以上、管財事件であれば50万円以上が必要となります。
弁護士費用の分割払いなど、費用について気になることがあれば弁護士にご相談ください。
<関連記事>自己破産をするには?やり方・手続きの流れや費用など詳しく解説
自己破産手続完了までの目安期間
手続きの内容によって破産宣告から免責までの期間が異なります。裁判所やケースによって異なりますが、目安は以下の通りです。
同時廃止
同時廃止であれば裁判所に申し立てた時から2~4か月くらいが目安です。書類の用意など事前準備に数か月程度かかるため、相談から6か月~10か月くらいが目安です。
少額管財
少額管財であれば裁判所に申し立てた時から3か月~6か月くらいが目安です。事前準備と合わせて6か月~1年くらいが目安です。
管財事件
通常の管財事件であれば裁判所に申し立てた時から半年以上かかることが多いです。法人の破産など複雑なケースも多いので1年以上かかることもあります。事前準備と合わせると1年以上が目安となります。
※上記の期間は目安なので、実際の期間はケースや裁判所によって異なることがあります。
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破産宣告のメリット
破産宣告を受けるメリットは次のようなものです。
借金の支払い義務が免除される
借金などの支払い義務がなくなることが最大のメリットといえます。ただし、税金等の一部の債務は免除されないので注意が必要です。
生活する上で必要な財産は残してもらえる
破産宣告により、すべての財産が分配されてしまうわけではなく、ある程度の財産は破産者の手元に残しておくことが出来ます。
これは破産宣告手続きが、借入先のための制度であると同時に、破産者の経済的立ち直りを目的したものだからです。
裁判所によって異なりますが、99万円以下の現金や、20万円以下の物については処分を免れることも多いですし、仕事に必要なものも処分を免れることがあります。
破産宣告のデメリット
破産宣告にもデメリットがあります。
ブラックリストに載ってしまう
厳密には「ブラックリスト」という名前のリストがあるわけではありません。
個人の借金などの情報を管理している信用情報機関に、「破産宣告を受けました」などの事故情報が登録されてしまうことを「ブラックリスト」と表現しているのです。
この事故情報は5~7年間は登録されることになっています。その間はローンを組むのが難しくなります。ローンを申し込むと金融機関は事故情報があるかどうかをチェックするからです。
一定期間が過ぎると、事故情報は抹消されることになっています。
<関連記事>ブラックリストの消し方とは?信用情報をきれいにする方法を解説
引越しや旅行などの移動が制限される可能性がある
管財事件になると管財人が財産の調査や処分をすることになります。そのときに債務者と連絡が取れなくなると困るので、泊りがけの旅行などは許可が必要になります。免責されれば制限はなくなります。
郵便物は破産管財人に転送される
管財事件になると管財人が財産の調査をする必要があります。そのため、郵便物は管財人の事務所にいったん届けられ内容がチェックされます。調査が終了すれば転送も終わります。
職業・資格に制限を受ける
破産宣告を受けると一部の仕事がしばらく制限されることがあります。そのため、一時的であっても休職ができないときには自己破産以外の手続きを優先して検討するなどの対応が必要となります。免責されれば制限はなくなります。
制限を受ける職業・資格は主に以下のようなものがあります。
・警備員 ・質屋、古物商 ・宅地建物取引士 ・弁護士、公認会計士、税理士等 ・保険外交員など |
不安のある方は一度弁護士にご相談ください。
官報に掲載される
「官報」とは、国が発行している新聞のようなものです。
破産宣告がされると、官報に氏名や住所が掲載されることになります。
もっとも、官報を購読している人はあまりいないため、「官報に載ると破産宣告されたことが知り合いにバレてしまう」ということは、あまり心配しない方がいいでしょう。
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まとめ
・破産宣告とは、破産手続開始決定のことです。破産手続きの最初に行われるものです。旧破産法で使われていた表現です。
・自己破産は、債務者自身で申し立てて破産宣告を受けることです。つまり、貸金業者などの債権者も破産申し立てができます。
・破産宣告により免責してもらうことで借金などの支払い義務が原則としてなくなります。
・破産宣告を受けると高価な財産は処分されますが、すべての財産を失うわけではありません。
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借金などを解決する方法を「債務整理」といいます。
債務整理には、破産宣告のほかにも、話し合いで解決する「任意整理」、財産を残しながら大幅に減額できる「個人再生」などの方法もあります。
ご自身にあった解決方法を選択することが大切です。
お一人で悩まずに一度弁護士に相談されることをおすすめします。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)