商事債権とは?回収や時効対策をわかりやすく解説
2023/11/07 06:32
目次
債権は、通常の民事債権と「商事債権」に分けることができます。
商事債権は時効期間が民事債権と異なることがあります。
法改正により時効期間は商事債権も民事債権も基本的に同じですが、法改正前の時効期間が適用されることもあるので注意が必要です。
この記事では、商事債権とはなにか、商事債権を回収する際に注意すべき消滅時効について解説していきます。
商事債権とは
商事債権とは、商行為によって発生した債権のことをいいます。通常の民事債権とは時効期間が異なることがあるため注意が必要です。当事者の一方でも商行為にあたれば商事債権の時効が適用されます。
商事債権の時効の期間
時効期間は、2020年4月1日に法律が改正されたことにより昔と異なっています。改正後に生じた債権については、原則として時効期間が5年となっています。
<時効期間(原則)>
起算点 |
時効期間 |
権利を行使できることを知った時から |
5年 |
権利を行使することができる時から |
10年 |
商事債権であれば支払期限を債権者は知っているため、通常「5年」となります。
改正前は、民事債権の時効期間は原則10年、商事債権は5年とされていました。今は統一されて5年が原則となっています。
一つ注意した方がいいのは、改正前に生じた債権については昔の時効期間が適用される点です。
また、時効期間はリセットされることがあるので、支払期限から年月がだいぶ経過していたとしても時効が成立しているとは限りません。そのため、今でも改正前の時効期間に気をつける必要があります。
改正前は、一部の債権については5年よりも短い時効期間が定められていました。そのため、改正前に取得した商事債権があるときには注意してください。
<改正前の短期消滅時効(一部)>
債権の種類 |
時効期間 |
工事業者、設計士の報酬 |
3年 |
生産者、小売商人の売掛金等 |
2年 |
自己の技能により注文を受けて物の制作をし、又は自己の仕事場で他人のために仕事をした場合の報酬 |
|
学校や塾の授業料、教材費等 |
|
運送賃 |
1年 |
旅館、ホテル、飲食店の料金等 |
|
動産のレンタル料金 |
<関連記事>売掛金の時効はいつ?未回収にさせないためにするべきこと
商事債権の時効の起算点
時効期間は、支払期日の翌日から数え始めます。支払期日を定めていなかったときは契約した日の翌日を1日目として数えます。
例えば、2023年11月1日に商品を売却し支払期日を同月30日とした場合、12月1日が起算日であり、5年後の2028年12月1日に売掛金が消滅するおそれがあります。
時効の援用について
時効期間が過ぎても時効が成立するとは限りません。時効が援用されなければ商事債権は消滅しないのです。
時効の援用とは、時効によって利益を受ける人が時効の利益を受けるという意思表示をすることです。
例えば、売掛金の支払期日の翌日から5年が経過している場合に、債務者が「時効が完成したので支払うつもりはありません」と債権者に伝えることです。
意思表示の方法に特に決まりはありませんが、証拠に残すために「内容証明郵便」が使われることが多いです。相手に届いたことも重要なので配達証明付きで送ることが普通です。
仮に時効期間が過ぎていた場合に、時効を援用する前に返済をしたり、返済義務があることを認めたりすると時効の援用が認められなくなります。
つまり、時効期間が過ぎていても、時効が援用される前であれば商事債権の回収をしていくことは可能ということです。
<関連記事>債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!
商事債権の時効を中断する方法
商事債権の時効をリセットする方法もあります。これを「時効の更新」といいます。民法が改正される前は「時効の中断」と呼んでいました。
一定の事実があると時効期間がリセットされて始めから時効期間を数え直すことになります。
請求
請求をするだけで商事債権の時効が更新されたり、完成が猶予されたりします。
ただし、請求には「催告」や「裁判上の請求」などの種類があり効果が異なります。
催告
催告は、普通に債務者に支払いを求めることです。これにより6か月間だけ商事債権の時効が猶予してもらえます。口頭やメール、手紙でも可能です。ただし、あとで証明する必要が出てくるので内容証明郵便(配達証明付き)で送った方がいいでしょう。
ただし、一時的に時効が猶予されるだけなので猶予されている間に時効の更新ができる他の方法をとる必要があります。催告を続けても再猶予されないので注意してください。あくまで時効が迫っているときに一時しのぎで使う方法です。
<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説
裁判上の請求
訴訟を起こすことで時効をストップさせることができます。勝訴判決がもらえたら商事債権の時効期間はリセットされます。しかも、5年ではなく10年に期間が延びます。
簡易裁判所の手続きである「支払督促」や「民事調停」でも同じような効果があります。ただし、権利が認められないと6か月間の猶予しか与えられないので注意してください。
<関連記事>少額訴訟の費用相場は?費用倒れを回避する方法も解説
強制執行(差押え)
債務者の財産から強制的に債権を回収する方法として強制執行があります。債務者の預金や不動産、商品などを差し押さえて商事債権を回収していくわけです。
強制執行をすることでも時効期間が更新され始めからになります。抵当権などの担保権の実行でも同様です。
<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説
債務の承認
いちばん簡単な方法は債務者に借金などの債務が残っていることを認めてもらうことです。商事債権を承認してもらうことで時効期間が更新されてゼロから数えることになります。
承認の方法に特に決まりはないのでメールでも口頭でもいいですが、証明できないと困るので書面を作ってサインや印鑑を押してもらった方がいいでしょう。
商事債権の一部を返済してもらうことも債務の承認にあたります。支払いをしたのであれば、債務があることを認めたのと同じだからです。これも証明できることが重要なので、銀行口座に振り込んでもらったり、残高を書いた書面にサインをもらったりして証拠に残してください。
<関連記事>未収金を回収する方法は?回収期限や回収不可能にならないためのポイントを解説
まとめ
・時効期間は、法改正により2020年4月1日以降の債権は原則5年です。法改正前に生じた債権については旧法の期間になります。商事債権は法改正前から原則5年ですが、一部の債権は期間が異なります。
・時効期間の起算日は、支払期限の翌日です。
・時効期間が満了しただけでは商事債権の時効は成立しません。時効の援用が必要です。
・時効期間は、一定の事情があると猶予されたり更新されたりします。
・時効期間をリセットするには訴訟を行うなどの方法があります。債務者に商事債権の存在を認めてもらうことでもリセットされます。一部弁済でも承認にあたります。
債権回収や債務整理でお悩みなら 弁護士法人 東京新橋法律事務所
債権の回収は効率よく迅速に行う必要があります。
時効にかかったり債務整理をされたりすると債権の回収が難しくなります。
当事務所は債権回収に強い事務所であり実績も多数あります。
債権回収がうまくいかないときには資金繰りが悪化し返済が難しくなります。
もし、借金や買掛金などの返済にお困りの場合には債務整理のご相談に応じることも可能です。
当事務所は債務整理にも強い事務所です。
債権回収や債務整理でお困りの場合にはお気軽にご相談ください。
↑無料で簡単に借金をどのくらい減らすことが出来るのかを診断できるシミュレーターです。是非ご活用ください。
本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)