ネット上で会社が誹謗中傷された!どのように対処すべき?

目次
はじめに
代表的な対処法
・まずは落ち着いて削除依頼を
・専門家に相談する
・裁判所で「削除仮処分命令の申立て」をする
・訴訟に向けて発信者情報の開示を請求する
・送信防止措置を請求する
・民事訴訟(損害賠償請求)など
どのような書き込みが対象となる?
まとめ 

■ はじめに

現代社会はインターネットの発達によって、スマホ一つであらゆる企業の情報を収集することが可能になりました。
企業が自ら自分の魅力をアピールするために情報発信することもあれば、消費者が匿名や実名で、企業を評価するコメントを発信することもあります。実際にそのような口コミサイトを参考に、飲食店や美容院を選ぶ人も多くいます。
 
そして、その評価が良いものであれ悪いものであれ、一度インターネット上に発信されてしまった情報はなかなか消えることがありません。
そして悪いことに、悪ふざけや八つ当たりで企業の悪い噂を書き込む人も中にはいるというのが現実です。
インターネット上の情報を受け取った人は、果たしてそれが正しい情報なのか、間違った情報なのか、判断する術がほとんどありません。そのため、悪い噂のある企業よりも、そうでない企業を利用したほうが無難だと考えて、そちらに流れて行ってしまうのです。
 
そのため、ネット上の間違った悪評価には早めに対応する必要があります。
しかし、そういった悪評を書き込んでいるのは、多くの場合は匿名のユーザーなので、企業側には誰が書き込んだのかもわかりません。
このような場合に、どのような手段が取れるのでしょうか。今回の記事では、ネット上で悪い噂を書き込まれた場合の対処法を説明していきます。

■ 代表的な対処法

  • まずは落ち着いて削除依頼を

自分の会社についての誹謗中傷を見つけると、つい焦ってしまい、同じサイト内で反論してしまうこともあるかもしれません。しかし、ここはぐっとこらえてください。
ここで反論してしまうと、反論が反論を呼び、「炎上」という状態になりかねません。そうなってしまうと、誹謗中傷が余計に多くの人の目につくことになってしまい、望む結果とは真逆の結果を引寄せてしまいます。
また、サイト上で反論したとしても、第三者の立場にしてみれば、誰が正しいのかは全くわからないので、水掛け論で終わってしまうだけです。
誹謗中傷をみかけたとしても、まずは深呼吸。落ち着いて対処しましょう。
 
落ち着いたら、とりあえず発信者やサイト管理者に対して直接連絡を取れるかどうか調べてみましょう。
裁判所などに行かなくともすぐにできる対処法が、直接に削除を依頼することです。
情報の発信者の名前や連絡先が分かっている場合には発信者に直接連絡しても良いでしょう。ブログの場合は作成者のメールアドレスがサイト内のどこかに記載してあることもありますので、よく探してみましょう。
 

それがわからない場合は、サイトの管理者やプロバイダに対して、対象となる書き込みの削除を依頼することになります。
プロバイダとは、インターネットへ接続するサービスを提供する会社です。有名なところでは、BiglobeやNiftyなどが挙げられます。

 
連絡フォームがある場合は、まずそれを使って連絡します。フォームがない場合には、メールアドレスや住所といった連絡先が記載されていないか、サイト内を探します。
 
そして、削除を依頼するときには、「自分の権利が侵害されている」ことがはっきりと伝わるようにしてください。
まず、対象となるのがどの書き込みのことなのかをハッキリと相手に伝えられるようにしましょう。
つまり、書き込みのページのURLや、書き込まれた日時、ハンドルネーム、書き込みの具体的な内容などを明確にしておくのです。キャプチャや印刷によって保存しておいても良いでしょう。
保存しようと思っていた該当の投稿が削除されてしまっていたら、お使いのブラウザ(Googleなど)のキャッシュを確認してみましょう。削除されていても、キャッシュには残っている可能性があります。
これを印刷しておきましょう。
 
また同時に、自分の立場(書き込みの内容によって迷惑を被ること)や、削除してほしい理由も明確かつ簡潔に伝えられると、削除してもらえる可能性が高まります。
また、プロバイダに対して削除依頼する場合は、本人確認書類のコピーが必要になることもありますので、事前に相手方に確認しておきましょう。
 
依頼してしばらくしても返答がない、削除もされない場合には、送信した内容を確認して不備が無いかどうか確かめます。不備があった場合にはもう一度送信して様子を見ます。

  • 専門家に相談する

それでも削除依頼を聞き届けてもらえない場合には、各種相談機関に相談してみることをおすすめします。
 
例えば、以下のような相談先があります。
・ネット上の誹謗中傷等に詳しい弁護士(事務所)
・法務局の常設相談窓口
・法務局のインターネット人権相談受付窓口
・各都道府県警察の一般の被害相談窓口
・各都道府県警察のサイバー犯罪対策課
・違法・有害情報相談センター(総務省支援事業)
など
 
これらの中には、電話やメールで簡単に相談できるところもあります。
相談するだけでも気持ちが落ち着くこともありますし、次に何をすべきかが早めに明確になることで、時間を無駄にすることもなくなり、被害を最小限に抑えることに繋がります。

  • 裁判所で「削除仮処分命令の申立て」をする

とりあえずの応急措置として、書き込みを削除してもらうために裁判所に仮処分命令の申立てをすることができます。
もちろん、民事訴訟を提起して勝訴の確定判決を得れば、それによって削除してもらうことも可能です。しかし、それには長い時間がかかってしまいます。
そのため、被害が拡大しないようにするためのとりあえずの処置として、裁判所からサイト管理者などに対して「仮にこの投稿を削除しておきなさい」といった命令を発してもらうことができる場合があるのです(民事保全法24条)。
裁判所によるこうした仮の命令を「仮処分命令」と言います。この仮処分命令は、申立てが認められた場合は、通常申立てから数週間〜3,4ヶ月で発されます。あくまで「仮」処分であるため、本訴の判決では結論が逆になってしまうことも十分にありえます。
 
この仮処分命令を発令してもらうためには、特定の書き込みによって自分の権利が侵害されていることを裁判所に示す必要があります(民事保全法13条1項、同23条2項)。
この段階では、「とりあえず本当に権利が侵害されているみたいだな」と裁判官が考える程度に権利侵害があった証拠を示すことができれば十分です。このことを「疎明」と言います(民事保全法13条2項)。
 
権利侵害を疎明するためには、上の項目「削除依頼」で説明したのと同様に、書き込みのページのURLや、書き込まれた日時、ハンドルネーム、書き込みの具体的な内容をキャプチャや印刷によって保存・印刷して、申立て時に裁判所に提出するのが良いでしょう。
このとき、「仮処分命令申立書」も一緒に提出するのを忘れないでください。
 
ちなみに、本番の民事訴訟の段階で勝訴するためには、裁判官が「確かに権利侵害があったと認められる」と考える程度に証拠を示す必要があります。
仮の処分ではない終局判決が出される段階なので、裁判官に確信を持たせる程度にしっかりとした証拠が必要なのです。このことを疎明に対して「証明」と言います。
 
 
削除仮処分命令の申立てが受理されると、裁判所が申立書や証拠の内容を審理します(この審理のことを「審尋」と言います。)。このとき、追加の資料を提出するように求められることもあるので、その際にはできるだけ迅速に対応しましょう。
このとき、裁判所は公平のために、相手方であるサイト管理者などにも事情を聴くことになっています。
 
審尋を経て、裁判所が「とりあえず本当に権利が侵害されているみたいだな」と考えるに至った場合(つまり疎明に成功した場合)には、晴れて削除仮処分命令が発されます。
そして、相手方にこの命令が送達された時に仮処分命令の効力が発生します(民事保全法7条、同43条3項、民事訴訟法119条)。
 
しかし、ここで安心してはいけません。
仮処分命令が発されただけでは書き込みの削除を強制することはできないのです。

仮処分命令の効果が発生した後、さらに仮処分命令執行の申立てをする必要があります。また、申立て期間は保全命令が送達された日から2週間以内と限られています(民事保全法43条2項、この期間を執行期間と言います。)。

このとき気をつけておきたいのは、仮処分を申立てた側が保全執行開始前に担保金を供託する必要があるということです(民事保全法14条1項、同46条、民事執行法30条2項)。この担保の額は、多い場合で50〜60万円程度、と思っておきましょう。
この担保は、仮処分が不当であることが後からわかった場合に、それによって生じた相手方の損害を補填するために用いられます。そのため、不当な仮処分ではなかったと確定した場合には、後から返してもらうことができます。
裁判所が担保を立てなくても良いと判断する場合もありますが、ほとんどの場合は担保が必要になるので、心に留めておきましょう。

また、保全命令の申立てが却下された場合には即時抗告することができます(民事保全法19条1項)。

その期限は告知を受けた日から2週間以内です。
この即時抗告も却下されてしまった場合は、残念ながら、もうこれ以上抗告することはできません(同条2項)。
 
削除仮処分命令の申立てについて説明してきましたが、こうした仮処分は名誉毀損やプライバシー侵害といった権利の侵害の場合ももちろん、著作権や商標権が侵害されている場合にも認められますので、覚えておくと便利かもしれません。
 
ただ、仮処分命令の申立ては「仮の処分」を求めるものとはいえ難しい手続になっています。
また、あくまで「仮の」処分であり、後から本案の訴えを提起しなければ、仮処分命令は取消されてしまう可能性も大いにあります(民事保全法37条1項〜3項)。
そのため自分一人でどうにかしようとはせず、本案の訴訟提起も視野に入れながら弁護士と一緒に手続を進めていくことをおすすめします。

  • 訴訟に向けて発信者情報の開示を請求する

これより下の項目でも説明しているように、ネット上の書き込みで権利を侵害された場合には民事訴訟を提起することも十分に考えられます。
しかし訴訟を提起するには、書き込んだ相手の氏名などといった個人情報を把握する必要があります。
 
そのため、まずは訴訟の前準備として、IPアドレスやタイムスタンプ(発信時間)、SIMカード識別番号など誹謗中傷情報の発信者を特定するのに必要な情報を開示するよう、サイト管理者などに対して請求することになります。

この開示請求権は、プロバイダ責任制限法(正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)によって規定されたものです(プロバイダ責任制限法4条1項各号)。
(また、開示請求できる項目については、プロバイダ責任制限法第4条1項についての省令を参照ください。)

 
開示請求をするためにはまず、誹謗中傷を証拠として残さなければなりません。
この場合もまた、書き込みのページのURLなどを保存しておいて、提出することになります。
 
そしてこの開示請求も、裁判所に対して仮処分命令を申立てるという形で行うことが多いです。
なぜなら、サイト管理者などがこうした発信者特定のための情報を保存している期間は一般的に数ヶ月間しかなく、急がなければ発信者を特定する情報が消えてなくなってしまう可能性が高いからです。
仮処分命令の効果が発生したら、削除仮処分命令の場合と同様、2週間以内に執行の申立てを行いましょう。
 
 
こうして発信者を特定するための情報が開示されると、そこからインターネット業者(接続プロバイダ)が特定されるので、今度はそのインターネット業者に対して発信者の氏名や住所といった個人情報の開示を請求することになります。

この開示請求については、裁判所に仮処分命令を発してもらうことは望めません。
というのも、上の開示請求でプロバイダから発信者特定のための情報を得て、それを保持しているので、急がなければ発信者が特定できなくなるといった緊急性が認められないからです。

そのため、ここではじっくりと本案訴訟を進めていく必要があります。
この本案訴訟に勝訴してやっと、氏名や住所といった発信者の個人情報が得られるのです。

  • 送信防止措置を請求する

送信防止措置とは、プロバイダなどが誹謗中傷に該当する情報の送信を止めることです。
誹謗中傷の書き込みの対象となってしまった人は、この措置をプロバイダに請求することができます(プロバイダ責任制限法3条2項2号)。

この請求自体には法的拘束力はなく、聞き届けられるとは限りません。しかし、プロバイダなどは「他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」もしくは「知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」に送信防止の措置を講じなければ、その被害者に対して損害賠償責任を負うとされています(プロバイダ責任制限法3条1項各号)。
つまり、防止措置請求によって権利侵害の事実をプロバイダなどに知らせ、「もし送信防止措置を講じなければ後から損害賠償金を支払うことになる」という状態を作ることで、間接的に送信防止措置を促すことになるのです。
(一方でプロバイダなどは、他人の権利が侵害されていることを知らず、かつ知ることができなかった場合や、送信防止措置を採ることが技術的に不可能な場合には損害賠償責任を負わないとされています。)

 
また、プロバイダなどが発信者の書き込みを勝手に削除した場合、発信者側からの損害賠償請求を受ける可能性もありますが、プロバイダ責任制限法はこのリスクを軽減する規定も置いています。
すなわち、「権利を侵害されたので書き込みを削除してほしい」との申出があったことを発信者に通知してその削除に同意するかどうかを問い合わせ、7日が経っても「同意しない」という内容の返答がない場合には、プロバイダなどは投稿を削除しても発信者に対して損害賠償責任を負わずに済むのです(プロバイダ責任制限法3条2項2号)。
送信防止措置の請求はこの「申出」に当たるため、送信防止措置をすることでプロバイダが発信者に対し損害賠償責任を負う可能性を限りなく小さくすることができるのです。

  • 民事訴訟(損害賠償請求)

ネット上の誹謗中傷によって会社に何らかの損害が生じた場合は、会社はその情報を書き込んだ発信者に対して損害賠償請求をすることになります。
たとえ、書き込みが削除されたとしても、削除したのが遅く、その間に多くの人が書き込みを閲覧した可能性が高いとなると、損害が生じているといえます。
 
発信者情報開示請求によって得られた発信者の個人情報を使って民事訴訟を提起し、勝訴して確定判決を得てしまえば、あとは通常の債権回収と同じ手続を踏むことで損害賠償金を回収することができます。
 
また、発信者だけでなくプロバイダなどに対する損害賠償請求も場合によっては可能です。

ただし、上述のとおりプロバイダなどは、他人の権利が侵害されていることを知らず、かつ知ることができなかった場合や、知っていても送信防止措置を採ることが技術的に不可能であった場合には損害賠償責任を負いません(プロバイダ責任制限法3条1項各号)。

このあたりの立証責任は条文の構造上、損害賠償を請求する側にあるので、少し立証が大変になるかもしれません。訴訟に際しては、ネット上の誹謗中傷に詳しい弁護士とよく相談する必要があるでしょう。
 
 
また、民事訴訟だけではなく、書き込みが名誉毀損罪や業務妨害罪に当たるとして刑事告訴することができる可能性もあります。
しかし、これはなかなか難しいというのが現実です。民事訴訟で不法行為に当たると判断されても、刑事訴訟でも違法と判断されるとは限らないのです。
やってみる価値はありますが、そう上手くはいかないというのを念頭においておきましょう。

■ どのような書き込みが対象となる?

気に入らない投稿であれば、なんでもかんでも削除請求できるといったわけではありません。

プロバイダ責任制限法による発信者情報開示請求や損害賠償責任制限の対象となるのは、不特定多数が閲覧する電気通信によって侵害される権利に限られています。

 
対象となる権利には、名誉やプライバシー権、著作権などが挙げられます。
 
そして、不特定多数が閲覧する電気通信とは何かというと、webページや電子掲示板などがこれに当たります。
しかし、テレビやラジオといった放送については放送法の規律に服するためプロバイダ責任制限法の対象とはなりませんので気をつけましょう。

■ まとめ

全く他人事ではないネット上の誹謗中傷、これにはどのように対処していけばよいのかを説明してきました。
仮処分にしても、発信者情報の開示請求にしても、うまく要点を押さえて主張・証拠の提出をしなければ、徒労に終わってしまいます。意外と難しいこれらの手続を迅速に効果的に進めるには、誹謗中傷対策に詳しい弁護士に相談するのが一番です。
ネット上の誹謗中傷に関して少しでも悩みがあるならば、被害が拡大しないうちに早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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