お金の返済を求めるためには相手の住所がわかっていることが大切です。

相手の住所がわからなければ手紙で催促することもできないからです。

法的手続きをとる際にも調停や支払督促を利用するには相手の住所が必要となります。

 

このように相手の住所を把握しておくことはとても大切なことですが、相手方と音信不通となってしまい住所が分からなくなることがあります。

また、最近ではインターネットで知り合っただけで、名前も住所もわからない相手にお金を貸してしまいトラブルとなるケースが増えています。

 

一般の人が住所を調べるには住民票の写しを取得するなどの方法がありますが限界もあります。

 

この記事では、お金を貸した相手の住所が分からない場合の対処法について解説していきます。

 

相手の住所を探し出す方法

お金を回収するためには相手の住所を知ることが基本となります。相手の住所がわからなくても法的手続きをとる方法もありますが、住所がわからなければお金を回収できる可能性が低くなってしまいます。督促状を送りたくても送れませんし直接会って話し合うこともできません。

 

そこで、まずは一般的な方法で相手の住所を調べられるか考えてみたいと思います。

 

実家に問い合わせる

現在の住所が不明であっても実家がわかるのであれば家族に連絡先を訪ねることで居場所を特定できる可能性はあります。お金を貸した相手が昔からの知り合いのようなケースであれば実家を知っていることもめずらしくありません。

連絡が取れない理由が病気や事故で入院していたり亡くなっていたりするケースもありますが、実家に問い合わせることでそのような原因がわかることもあります。

 

ただし、たとえ家族であっても保証人や相続人となっていなければ借金の返済義務はありません。そのため家族に借金の返済を請求することはできません。また、借金のことを家族に話してしまうことも問題となります。名誉毀損やプライバシーの侵害になるおそれがあるからです。そのため、実家に問い合わせる方法はおすすめできません。

 

勤務先に問い合わせる

勤務先がわかっていれば勤務先に問い合わせる方法も考えられます。お金を貸した相手が連絡先として勤務先を伝えている場合、他に連絡手段がないのであれば電話をして取り次いでもらうことが考えられます。その際、借金について知られないように注意する必要があります。名誉毀損やプライバシーの侵害として問題にされる恐れがあるからです。

ただし、一般の人が勤務先に問い合わせたとしても社員の住所を教えることは考えにくいといえます。

これに対し弁護士であれば、弁護士会を経由して相手方の住所を開示するように請求することで住所を特定できる可能性があります。

 

友人や知人に聞き込み

お金を貸した相手と共通の知り合いがいる場合には、その人から連絡をとってもらう方法も考えられます。この場合にも借金の存在を知られないように注意する必要があります。

 

SNSを見てみる

相手のSNSから現在の連絡先が分かることもあります。連絡が取れない原因が病気やケガ、長期出張中であることがわかったり、転居して実家に住んでいることが分かったりするかもしれません。

 

専門家に頼る

住民票を調べる方法もあります。一般の人でも取得できますが正当な理由があることを証明する必要があります。具体的には、「借用書」や「宛先不明で戻ってきた郵便物」、「身分証明書」などが必要となります(自治体によって異なります。)。

 

適法に無理なく相手の住所を調べるには弁護士に依頼されることをおすすめします。

探偵や興信所を検討される方もいるかもしれませんが、あくまで目的はお金の回収であり行方不明者の捜索ではありません。債権回収の専門家は弁護士であり探偵や興信所ではありません。法的に現住所を調査するためには住民票や戸籍などを調べる必要がありますが、正当な理由がある人(お金を貸しているなど)や弁護士等の一部の士業にしか認められていません。

 

したがって、債権回収に関しては弁護士に依頼されることをおすすめします。

 

住所が判明したらするべきこと

あくまで貸したお金を返してもらうことが目的であり、住所を調べることは前提でしかありません。

相手の住所が特定できたのであれば貸したお金の返済を求めていくことになります。

 

内容証明郵便で催告する

住所が判明すれば郵便によりお金の返済を求めることが可能になります。

特に内容証明郵便で催告書を送ることにより相手に強いプレッシャーを与えることができます。

内容証明郵便とは、誰から誰に対して、どのような内容の書面を送ったかを郵便局が証明してくれるものです。そのため、法的手続きをとる際に証拠としても利用できるためよく利用されます。

文書の内容としては支払期限を明確にして、期限までに支払いがないときには法的手続きをとると予告することが一般的です。

 

できれば弁護士から送付した方がいいでしょう。その方が「はったり」だと思われず支払いに応じてもらいやすくなります。

 

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裁判所で調停を行う

簡易裁判所の「民事調停」を利用する方法もあります。合意があれば地方裁判所を利用することもあります。

調停とは、調停委員や裁判官を交えて話し合いをするものです。相手が話し合いに応じてくれなければ利用することができませんが、円満な解決がしやすい手続きです。話し合いがまとまれば「調停調書」というものが作られます。これは確定判決と同じような効果があるため、万が一、相手が約束を破った際には相手の財産を差し押さえることもできます。

差し押さえられる財産はいろいろなものがありますが、「銀行預金」や「給料」なども差し押さえることができます。

 

簡易裁判所の支払督促を利用する

簡易裁判所の「支払督促」もよく利用されます。

支払督促とは、簡易裁判所の書記官から相手方に支払いを命じてもらう方法です。書面審理だけで利用することができるため訴訟よりも負担が少ない方法といえます。費用も訴訟よりかかりません。

支払督促が送付されると相手は異議を申し出ることができますが、一定の期間内に異議がないときには相手の財産を差し押さえることができます。

 

ただし、相手から異議が出されてしまうと訴訟手続きに移行することになっています。そのため、異議が出されることが予想できるときには気をつける必要があります。

 

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回収したいなら弁護士に相談する

弁護士であれば探偵ではできない方法により相手の住所を調査することができます。住民票や戸籍の調査を行ったり、弁護士会照会という手続きによって電話番号などから住所を調べたりすることも可能です。

 

住民票・戸籍の調査

弁護士は業務上の必要性がある限り住民票の写しや戸籍事項証明書(戸籍謄本(抄本))を取得することができます(職務上請求)。

引っ越してしまっていて現住所が分からない場合であっても住民票を調査することで居場所が分かる可能性があります。住民票(の除票)には転出先の住所が記載されているからです。

 

ただし、転居したのにもかかわらず住民票を移していないケースでは住民票の調査だけでは相手の住所は判明しません。例えば、実際に住んでいるのは別の場所なのに役所で手続きをとっていないため住民票の記載が旧住所のままというケースです。

このようなケースでは他の方法で調査することになります。

 

戸籍から現住所を調査する方法もあります。戸籍には「戸籍の附票」が一緒に保管されています。これには戸籍が作られてから現在までの住所が記録されています。ただし、戸籍の附票も住民登録がされていなければ現住所が判明しません。

 

弁護士会照会

住民票や戸籍の調査で現住所が分からない場合でも、「弁護士会照会」により住所を調べられることがあります。

弁護士会照会とは、弁護士が弁護士会を通じて公私の団体から情報を取得する制度です。

例えば、電話番号が分かっていれば電話会社に対して契約者の情報を明らかにするように求めることができます。ただし、必ず回答してもらえるとは限りません。

ですが弁護士会照会がなされた場合には報告を求められた組織は回答する義務があります。そのため、電話番号(解約済み含む。)しか知らない相手であってもあきらめる必要はありません。

 

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まとめ

・お金を貸した相手の住所や名前が分からないときであっても回収できる可能性があります。

・住民票を調べることで相手の現住所を特定できることがあります。債権者であれば住民票を調べることも可能です。ただし、正当な理由があることを証明する必要があります。

弁護士であれば法律で認められた権限によって住所の調査を行うことが可能です。

・「弁護士会照会」という制度を使うことで、相手の電話番号や勤務先などから住所を調べられる可能性があります。

・住所が判明したら「内容証明郵便」、「支払督促」、「民事調停」などにより返済を求めていきます。

 

債権回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

お金を貸した相手の住所がわからず困っている方へ。

 

当事務所では、債務者が行方不明など他事務所では難しい債権の回収も可能です。

 

相手の現住所が分からなくても、「昔の住所」や「電話番号」、「勤務先」、「銀行口座」、「車のナンバー」など相手を特定できる情報があれば現住所や氏名を調べられる可能性があります。

 

ただし、住所の調査は債権回収などの業務の一部として行うことになります。住所調査のみのご依頼はお受けすることができません。

 

お金を貸した相手方と連絡が取れず困っているときには一度ご相談ください。