平成18年5月26日広島簡裁判決
パチンコ必勝法冊子を売ったことが不法行為として損害賠償の対象となる事案

「事実の概要」

被告は、原告に対し「大当たりを出す攻略法ではなく、小役をたくさん揃えてトータルで儲けるものです。」「違法なものではありません。素人の方が、誰でも出せる方法です。」と勧誘しパチンコの攻略法を記載した冊子を40万円で売却した。原告は購入した冊子をもとにパチンコを打ったが、儲けることはできず20万円を支出するだけに終わった。そのため、原告は被告販売の冊子に記載された攻略法は、素人には到底実践できるものではなく虚偽であるとして損害賠償を求める訴訟を提起した事案

「判決の要旨」

原告に対し、40万円という一見高額な金額であるが、そこに記載されたものは必ず資金を回収できる方法であること、すなわち必ず儲かることを直接に告げ、または当該勧誘を受けたものが必ず儲かると信じ込んだことを認識しつつ、その誤った認識を利用いて契約を締結させたものと考える…以上によれば、被告の行為は不法行為に該当すると言える。

「解説」

インターネットを通じた通信販売が多用した今日においては、必ず儲かるなどを売り文句とした情報商材が多々存在します。そのような情報商材を購入し、実践した場合に記載された利益を得られなかった場合、その情報商材が損害賠償の原因となりうるのかが問題となりました。
この事案では、被告側は必ず儲かるといった断定的な説明はしていないと反論しています。しかし、パチンコ攻略法の冊子が40万円という一般的に見て極めて高額なものであることからすれば、価格に見合う情報を提供するものと誤信しやすいこと、及びパチンコのために費やした費用は回収できると述べており、これは必ず損をしないことを指すため、必ず儲かると信じても仕方ないことを挙げ、被告の反論は成り立たないとしています。
仮にこの事案の冊子が儲かるようなものでなかった場合、どこまで損害賠償の額が認められるのかについても問題となります。この点、冊子の購入価格40万円自体は損害賠償として認められることについて問題はありません。しかし、実際にパチンコに費やした20万円も損害賠償として認められるかは、やや問題があります。この事案では、原告が金銭を稼ぐ目的のみで、冊子を利用してパチンコを打っている以上、パチンコに費やした費用も損害賠償として認められるとしています。他方、パチンコ自体は遊戯目的な点もあるため、原告が遊戯目的を少なからず有していたような場合は、費やした費用全額を損害として認めることはできない可能性もあります。
また、被告の甘い言葉を疑わずに信じ、パチンコで儲けるという安易な手段を実践しようとした点に原告側にも落ち度があるとして、慰謝料の請求は認められないとしています。