内容証明郵便を送付しても無視されたり受け取りを拒否されたりすることがあります。内容証明郵便にはいろいろなメリットがありますが、相手に無視された場合の対処法も考えておく必要があります。

 

この記事では、内容証明郵便を無視・拒否された場合の対処法について解説していきます。

 

内容証明郵便を拒否・無視されたらどうなる?

内容証明が拒否・無視された場合の影響を説明します。

 

受け取りを拒否できるか

内容証明郵便の受け取りを拒否された場合にはどうなるのでしょうか。そもそも内容証明郵便の受け取りを拒否できるのか疑問に感じるかもしれません。

内容証明は郵便局が取り扱っています。郵便局は郵便法という法律や自社で定めた郵便約款に基づいて郵便物を取り扱っています。

 

約款には、「受取人に交付することができない郵便物は、差出人に返還します。」と規定されています(内国郵便約款87条1項(日本郵便株式会社))。

 

内容証明郵便は一般書留ですが(同121条3項)、一般書留は原則として「受取人に配達し、若しくは交付…するときは、郵便物の配達証に受取人…の受領の証印又は署名を受けること。」が必要です(同109条2項3号)。

 

受取人が押印や署名その他の代替措置をとらないときは、内容証明は受取人に交付することができないため差出人に返還されることになります。

したがって、受取人は署名等をしなければ内容証明の受け取りを拒否できることになります。

 

なお、裁判所から送付される書類について「特別送達」と呼ばれる特殊な書留郵便が利用されることがあります。特別送達については正当な理由なく受け取りを拒否されたときには配達人がその場に差置くことができることになっています(民事訴訟法106条3項)。

 

拒否された場合の効果

内容証明郵便を利用するのは、何らかの事実を通知したり意思表示をしたりするためです。金銭などの支払いを請求したり、契約を解除したりするときには相手に意思表示することが必要であり法的な効果も生じます。

 

この場合に重要なことは相手に意思表示が「到達」したかです。意思表示は原則として相手方に到達することで効力が生じるからです。

 

到達とは、意思表示が相手の勢力圏内に入ることとされています。つまり内容を知ることができる状態にすることです。相手が内容を実際に知る必要はありません。郵便物であれば郵便受けに投函されれば通常は到達したことになります。

 

内容証明郵便の受け取り拒否のケースでは、内容を知ることができる状態にあることが普通であり、到達が認められることが多いと考えられます。

ただし、念のため後述する「特定記録」郵便を併用することをおすすめします。

 

無視された場合

内容証明郵便を受け取っていながら何も返答がないこともあります。内容証明を無視されたとしても、意思表示は到達しているため法的な効力は生じていることになります。

 

不在の場合

内容証明郵便を送付しても受取人が不在で返送されてしまうことがあります。受取人が不在の場合には一定期間郵便局で保管され、受取人が受け取らないときには返送する取扱いです。

このような場合に意思表示が到達したといえるかはケースによって異なると考えられます。例えば、不在が短時間で不在通知書の記載などから内容を推知でき、受け取ろうと思えば容易に受け取れるようなときには到達したと判断される可能性があります。

しかし、到達していないと判断される可能性があるため「特定記録」郵便等の対処法が必要となります。

 

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内容証明郵便を拒否・無視された場合の対処法

前記のように内容証明郵便を拒否・無視されたとしても意思表示の効果が否定されることにはなりません。法的に相手方に「到達」したといえれば効力が生じることになります。ただし、法的な効果が生じても相手が自分から行動してくれないときには別の対処法が必要となります。

 

特定記録郵便を別便で送る

内容証明を相手が受け取らない場合の対処法としては「特定記録」郵便を併用する方法があります。特定記録というのは差出の記録を残してくれる郵便局のサービスです。郵便受けに投函されるため、内容証明が受け取り拒否や、不在通知を無視して保管切れで返送された場合でも意思表示が到達したと判断されやすくなります。

特定記録は内容証明の効果がない点に注意が必要です。特定記録で送った書面の写しを取っておき証拠にする方法もありますが、できるだけ内容証明に「同内容の特定記録郵便を同時に送る」と記載し同時に発送する方法がいいでしょう。

 

弁護士から内容証明を送付する

内容証明郵便をご自分で送付したのであれば弁護士から再度送付してもらうことで別の結果になることがあります。

内容証明郵便は意思表示をしたことが証拠として残るため相手にプレッシャーを与えることができますが、一般の人が送付をしても無視されてしまうことが少なくありません。法的な手段を予告したとしても本気にしてもらいにくいのです。

これに対し弁護士から内容証明を送付すると無視することが難しくなります。弁護士から送付された内容証明を無視すると法的手段をとられる可能性が高いからです。

 

支払督促

内容証明を無視されたときの対処法として裁判所の支払督促を利用する方法があります。支払督促は、簡易裁判所で手続きをとる方法であり相手に支払いを命じてもらう方法です。お金や有価証券などの支払いにしか利用できませんが、相手から異議が出されなければ相手の財産を差し押さえていくこともできます。

ただし、異議が出されると訴訟に移行してしまう点に注意が必要です。

 

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少額訴訟

内容証明を無視されたときの対処法として少額訴訟も有効です。利用できるのは元本60万円以下の金銭を求める場合です。

通常の訴訟と異なり短期間で解決できることに特徴があります。原則として1日で審理が終了し判決も出ることになっています。

ただし、1日で終わってしまうため事前にしっかりと準備をすることが必要です。

 

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通常訴訟

内容証明を無視されたときは最終的に訴訟を行うことになります。判決が出るまで時間がかかりやすいというデメリットもありますが、和解で終了することも少なくありません。

 

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内容証明郵便の効力

内容証明郵便には法的な効果や事実上の効果があります。

 

法的手段をとる際に証拠になる

訴訟などの法的手段をとる際には証拠が必要となります。例えば、訴訟において契約の解除などの意思表示を証明する場合や、仮差押えの申立ての際に疎明資料として内容証明郵便が重要な証拠となることがあります。

 

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弁護士が送付すると強いプレッシャーとなる

内容証明郵便を弁護士から送付することで心理的な圧力を加えることができます。一般の人からの内容証明郵便では、ハッタリと思われてしまうことも多いため相手に影響を与えられないことがあります。

弁護士から送付された内容証明であれば無視することは難しくなります。弁護士から送付された内容証明郵便を無視したり拒否したりすれば法的手段を行使されるのではないかと考えるからです。

 

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消滅時効の成立が猶予される

権利には通常時効があります。例えば、お金を請求できる権利のことを「金銭債権」といいますが、原則として5年で時効にかかる恐れがあります(ケースによっては1年など短いこともあります。)。

時効期間は一定の事由があるとリセットされますが、時効期間が迫っているときは相手に催告するだけで1度だけ6か月間猶予されることになっています。口頭で請求しても効果はありますが証明できることが大切です。

内容証明郵便(配達証明付き)を利用すれば催告したことが証明できるのです。

 

時効期間など詳しくは、「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご覧ください。

 

確定日付が付与される

債権の回収方法として第三者に債権を譲渡することがあります。この場合、二重に債権が譲渡されることがありますが、第三者に対しては確定日付ある証書での通知がなければ対抗できないことになっています(民法467条)。

確定日付のある証書は民法施行法という法律によって規定されていて、内容証明郵便がその一つとなっています(同法5条1項6号)。

そのため、債権譲渡をするときには内容証明郵便が重要となります。

 

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相殺に利用する

相殺とは、二人が互いに金銭債務などを負担しているときに意思表示だけで債務をなくすことをいいます。お互いに貸金や売掛金を持っているようなときには相殺することで債権を回収することができます。

相殺するには相手に意思表示するだけですが証拠として残すことが重要です。

そのため内容証明郵便を利用し確実な証拠を残すことが大切です。

 

相殺について詳しくは、「自働債権と受働債権とは?相殺について分かりやすく解説」をご覧ください。

 

まとめ

・内容証明は受け取りを拒否されることがあります。ただし、拒否されたとしても意思表示が到達したと判断されることがあります。対処法として「特定記録郵便」を併用することが効果的です。

・内容証明を受け取ったのに無視されることもあります。この場合には意思表示は到達しているので法的な効果は生じます。

弁護士から内容証明を送付すれば無視することが難しくなります。

 

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内容証明郵便は契約の解除など法的な効果が問題となるときには重要な手段となります。もっとも、内容証明は万能ではなく費用もかかり相手との関係を悪くするなどケースによっては適切でないこともあります。

トラブルの解決手段は内容証明だけではありません。訴訟などの法的手段が必要とも限りません。弁護士から普通の郵便を送るだけで解決することもあります。

 

法的なトラブルでお困りの方はお気軽にご相談ください。