差し押さえ(強制執行)

強制執行手続の概要

裁判所の手続によって判決等を得たとしても、相手方がそれに従わずに支払いをしない場合には、その判決等に基づき強制的に債権回収を図るのが強制執行手続です。

この強制執行手続は、債権回収における最終的な回収手段です。このような強制執行には、「不動産執行」「動産執行」「債権執行」がありますが、通常の債権回収においては「債権執行」(預金差押・債権差押等)が一般的です。

これらの裁判所の手続を利用して債権回収を図るためには、それぞれの手続のメリット、デメリットを踏まえて、その回収する債権の額、回収相手方の財産状況、回収相手方との契約形態等を考慮して、その方法を決めなければならず、迅速的かつ効果的な方法を採るためには弁護士等専門家の的確なアドバイスが必要となります。

〇強制執行とは

ここまで、債権回収の一連の流れについて、支払督促という債権回収方法、訴訟の手続の流れ、少額訴訟手続の概要と、順にみていきました。支払督促を行うことにより仮執行宣言付支払督促を得ることができた場合、あるいは、訴訟により勝訴判決を勝ち取ることができた場合、債権回収の実現にむけた大きな進展であるといえます。

みなさん方の中には、勝訴判決等が得られれば、すぐ債権回収が実現すると考えている方も多いのではないでしょうか。しかしながら、これらを得たからといって、すぐ債権回収が実現するかというと、そうでもないのです。訴訟の相手方が、すぐに判決を受け入れて支払いに応じてくるかというと、実際のところはそうでもないのです…。

確実に債権回収を完遂するためには、勝訴判決で確定した権利の実現を図る手続き、すなわち強制執行手続を迅速かつ適切におこなうことが必要なのです。強制執行手続は民事執行法22条から174条までの条文に規定がされています。

〇強制執行の種類

強制執行の種類は大きく分けて、金銭執行非金銭執行の2種類に分かれます。

まず、金銭執行とは、金銭の支払いを目的とする請求権を実現するための強制執行のことをいいます。具体例を挙げるとすると、売買契約に基づく売買代金支払い請求権を実現するための強制執行等が挙げられます。この売買契約に基づく売買代金支払請求権とは、売買契約の売主が、買主に対しておこなった「売ったお金を支払って」という請求のことをいいますが、この請求が認められたときは、その「お金を支払」えという判決がなされることになります。そして、その「お金を支払」えという判決内容を実現するための執行手続きは、金銭の支払いを目的とするものなので、金銭執行と呼ばれるのです。

これに対して非金銭執行とは、金銭の支払いを目的としない強制執行のことをいいます。具体例を挙げるとすると、所有権に基づく建物明渡請求権を実現するために強制執行をする場合が挙げられます。この所有権に基づく建物明渡請求権とは、所有権を有する建物の所有者が、建物を占有している相手方に対してする「建物を明け渡してください」という請求のことをいいますが、この請求が認められたときは、その「建物を明け渡」せという判決がなされることになります。そして、「建物を明け渡」せという判決内容を実現するためには、金銭ではどうしようもできないですよね。こうした請求に基づく執行は、金銭では解決できない請求を実現するための執行手続きなので、非金銭執行と呼ばれるのです。

〇債務名義とは

債務名義という言葉、皆さんも一度は聞いたことがあるのではないのでしょうか。

債務名義とは、「強制執行に適する請求権の存在および範囲を証明する構成の証書」のことをいいます。強制執行に債務名義を要する趣旨としては、執行手続きの迅速性を確保するために、執行機関は、請求権の存在および範囲を確定して公証した文書を通じて形式的に執行の要件を確認すべきものとした点にあります。

このような趣旨に基づいて、強制執行は、執行力のある債務名義の正本(このことを「執行正本」といいます)に基づいて実施されます(民事執行法25条本文)。

では、具体的に債務名義としてどのようなものが挙げられるのでしょうか。民事執行法22条には、「次に掲げるもの」について、債務名義であるとしています。

①確定した給付判決(民事執行法22条1号)

②仮執行宣言付判決(2号)

③抗告によらなければ不服を申立てることができない裁判(3号)

④仮執行の宣言を付した損害賠償命令(3号の2)

⑤仮執行宣言付支払督促(4号)

⑥訴訟費用等の費用の負担額等を定める裁判所書記官の処分(4号の2)

⑦執行証書(⑤)

⑧確定した執行判決のある外国裁判所の判決、確定した執行決定のある仲裁判断(6号、6号の2)

⑨確定判決と同一の効力を有するもの(7号)

具体例)和解調書(民事訴訟法267・275条)、和解に代わる決定(民事訴訟法275条の2)、請求認諾調書(民事訴訟法267条)、調停調書(民事調停法6・24条の3第2項)、調停に代わる決定・審判(民事調停法17・18条3項等)

〇金銭執行について

前述のとおり、金銭執行とは、金銭の支払いを目的とする請求権を実現するための強制執行のことをいいます。

では、具体的に金銭執行はどのような流れで行われるのでしょうか。

債権者が債務者に対して金銭執行により債権回収を行う場合、まず債務者がその債権額よりも金銭を有している場合には、その債務者の金銭自体を差し押さえることができます。

もっとも、債権回収の場面では、債務者に金銭的余裕がある場合というよりは、むしろ債務者が有している財産が債権者の債権を完済するのに不十分である場合あるいは見当たらない場合の方が多いといえます。このような場合には、①債務者の金銭以外の財産を差し押さえて、②強制的に金銭に換え、③債権者の債権の弁済に充てる、という一連の手続きをへることにより、債権回収を実現することになります。そして①~③はそれぞれ、①差押え、②換価、③満足といわれます。ここでは不動産の強制執行を例にして、各手続の無いようについて触れていきたいと思います。

〈①差押え〉

①差押えは、事実関係や法律関係を固定するための手続きです。なぜ差押えという手続きが必要であるかというと、債務者が債権者に金銭を支払うために財産を金銭に換える(換価する)作業には、ある程度の時間が生じてしまいます。そして、時間的間隔があるということは、その間隔の間に換価対象の財産の価値が減少してしまうおそれも考えられるということです。

〈②換価〉

②換価は、前述の通り、債務者が債権者に金銭を支払うために財産を金銭に換える行為のことをいいます。代表的な換価手段としては、競売が挙げられます。

換価を行う前提として、その準備のために、㋐現況調査報告書、㋑評価書、㋒物件明細書という3つの書面が作成される必要があります。㋐現況調査報告書は、執行前に不動産の形状や占有関係等を把握しなければならないため、裁判所が執行官に対して不動産の現況の調査を命じて、執行官が調査の上、記載した書類のことをいいます。㋑評価書は、不動産がどのくらいの価値を有するものなのか、評価・鑑定した結果が記載される書類です。そして、㋒物件明細書は、当該不動産についての権利関係や仮処分の執行で変化する権利関係が存在しないか等について記載がなされる書類です。この書類により、不動産を買い受ける人がどのような権利義務関係を負うのかについて示されるのです。

これらの書類が作成されると、いよいよ換価が行われます。換価は、①売却の実施方法の決定→②売却の実施→③売却許可決定→④代金納付、の4段階を踏んで実施されます。

〈③満足〉

そして、換価され得られた金銭を債権者が債権回収(債権の弁済)することにより、③満足を得ることになるのです。

〇非金銭執行について

非金銭執行とは、金銭の支払いを目的としない強制執行のことをいいます。非金銭執行は、債権者が請求する権利の性質により、①物の引渡し(明渡し)の強制執行、②作為・不作為の強制執行、③意思表示の強制執行、の3つに大きく分類されます。そして、権利の性質により行うことができる手段は異なりますが、直接強制・間接強制・代替執行といった手段を用いて、実施されることになります。

以上が強制執行の概要となります。強制執行手続は複雑な手続きですが、債権回収を確実に完遂するためにも、とても大切な手続であるといえます。弁護士をはじめとした法律専門家のアドバイスの下、訴訟で認められた権利を確実に回収することが必要であると考えます。

 

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