養育費が不払いの場合に使える債権回収の5つの手順

 

目次

養育費は不払いが多い!不払いは10件に8件という厳しい現実

手順1 まずは電話やメールで督促を行う

手順2 内容証明郵便を送付する

元配偶者の所在がわからない時の対処法とは

手順3 債務名義の有無を確認し訴訟や調停を

養育費の取り決めを公正証書に残していればいきなり強制執行も

手順4 履行勧告と履行命令を行う

手順5 差押さえと強制執行で養育費を回収

将来的に発生する養育費も差押え手続きが可能

最後に

 

子供を1人育てるためには、多額のお金が必要になります。子供の健康状態や、進学先が私立なのか公立なのかにもよりますが、単純計算で約3千万円は必要になると言われています。学費が高額になりがちな私立の医療系大学に進学する場合は、独り立ちまでに5千万円以上のお金が必要になることもあるとか。

 

子供を1人育て上げるための親の労力や金銭的な負担はかなりのものです。離婚後にひとり親として子供を育てると、親一人に負担が集中しがちです。なおさら大変だという現実があります。

 

子供の人生を支えるお金が養育費です。しかし、日本では養育費は債権の中でも不払いが多く、回収の悩みを抱えている人が多いという現状です。子供のための大切なお金である養育費が不払いの場合、どのような手順で債権の回収を進めればいいのでしょうか。養育費を回収するための基本的な流れをお話します。

 

■養育費は不払いが多い!不払いは10件に8件という厳しい現実

 

養育費は債権の中でも特に不払いが多いことで知られています。離婚問題の特集があると、よく養育費の不払いがクローズアップされます。ニュースや新聞をよく読む人は、養育費は家賃などの債権よりもかなり不払いが多いという印象を抱いているのではないでしょうか。実際、その通りだという結果が出ています。データで見ると、養育費の不払いがどれだけ深刻な状況にあるのかよくわかります。

 

厚生労働省が発表した「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」を見ると、ひとり親世帯の養育費の回収状況がわかります。父親から養育費を回収できているのは約20%になります。10件に2件しか回収できていない状況です。母親から養育費を回収できているのは約3%と非常に低い状況です。中には養育費の取り決めをしていない離婚ケースもあります。「相手に支払う意思や能力がないだろう」と回収自体を諦めている人が多いことも調査結果から読み取ることができます。

 

養育費の取り決めをしていないケースは、協議離婚によって離婚したケースで多いという結果でした。しかし、養育費の取り決めをしていても、それだけで安心するのは早計です。なぜなら、養育費の取り決めをしても、回収できなければ意味がないからです。

 

子供の将来を支える大切なお金が養育費です。不払いが発生したら、迅速に回収へと着手することが必要なのではないでしょうか。債権の回収は早めの着手によって回収率が上がるという特徴があります。養育費の回収も、早め早めに回収の手段を講じることが重要です。

 

養育費を回収する手順は、「督促」→「内容証明郵便の送付」→「訴訟や調停」→「履行勧告と履行命令」→「差押さえと強制執行」という流れになります。ただし、状況によっては途中の手順をカットして、いきなり履行勧告や強制執行を行うことも可能です。ケースバイケースで回収を行うことが重要です。

 

■手順1 まずは電話やメールで督促を行う

 

養育費の回収では、まずは不払いの相手方に対して電話やメールで督促を行います。大勢の人に見えないかたちで督促できるのであれば、LINEなどでも問題ありません。「〇月〇日まで払ってください」と支払いの期限を決めて督促を行います。

 

債権の回収は、ソフトな方法からスタートし、相手が応じない場合は少しずつ力の強い方法に変えて行くことがポイントです。メールや電話での督促は個人間の貸し借りでもよく用いられています。メールや電話での督促は、養育費を回収する手順の中でもスタート地点的な手順になります。

 

養育費の回収では、相手方に連絡を取りたくないというケースがあります。厚生労働省が発表した「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」でも、養育費の回収において「相手と関わりたくない」という事情が影響を及ぼしていることがわかります。

 

離婚の原因や元配偶者との関係によっては、メールや電話での督促が難しいケースもあります。メールや電話での督促が難しい場合は、弁護士に相談して養育費をどのような手順で回収するか計画を立てることが回収への近道になります。また、既に何度もメールや電話で督促している場合は、手順2からはじめても問題ありません。

 

■手順2 内容証明郵便を送付する

 

メールや電話で督促しても養育費の回収に繋がらなかった場合、次は内容証明郵便による督促を行います。内容証明郵郵便は、日本郵政で取り扱っているサービスの1つです。

 

通常の手紙は、誰に何時どのような内容の手紙を送付したか、記録に残りません。特定記録では、郵便物を差し出した記録は残りますが、封筒内の文書の内容までは記録されません。内容証明郵便の場合、誰が何時どこにどんな内容の郵便物を送付したかが記録に残り、日本郵政側で内容を証明してくれます。つまり、養育費の督促をしたという記録がはっきり残るのです。

 

内容証明郵便も電話やメールと同じ督促の1種ではありますが、証拠が残るという点でより強い督促であると言えるでしょう。

 

内容証明郵便は法的手段を取る前段階として用いられる方法でもあります。内容証明郵便を受け取るだけで相手方は心理的なプレッシャーを受けて支払いに応じることもあります。

弁護士の名義で内容証明郵便を送ることで、さらなるプレッシャーを与えることができます。

 

内容証明郵便は、郵便局の窓口またはインターネット(24時間対応)で送付することができます。

 

・元配偶者の所在がわからない時の対処法とは

 

内容証明郵便を送付したい。内容証明郵便を送付した後に法的手段を検討している。しかし、元配偶者の所在がわからない。こんな場合はどうすればいいのでしょうか。

 

離婚後に元配偶者が転居することは珍しくありません。養育費の支払いから免れるためという悪質な理由での転居や、働いていた会社の業績悪化により給与が少なくなり、養育費の支払いのために新しい職に就くために転居するなどが考えられます。他にも、再婚によって転居することもあります。リストラや会社の倒産によって、別の地域に転居して仕事に就くこともあります。もともと転勤の多い仕事に就いていて、連絡を取ろうとしたら転勤によって所在がわからなくなってしまうこともあり得ます。特に養育費の支払いが長期間に渡る場合は、元配偶者が転居する可能性についても考えておかなければいけません。

 

所在がわからなければ、内容証明郵便を送付することができません。法的手段を取るためにも、元配偶者の住所が必要になります。養育費を払う相手が行方不明だと、法的手段はおろか督促すらままなりません。こんな時は、まず、元配偶者を探すことになります。

 

元配偶者が行方不明になっている場合、住民票や戸籍の附票を確認することによって足取りを追うことができます。戸籍の附票には住所の履歴が記載されているのです。

 

戸籍の附票を確認することによって元配偶者の現住所を確認することができます。ただ、戸籍の附票を取得するためには、請求事由の記載や本人との関係を証明することを求められます。養育費を回収するために、元配偶者の住所の確認から内容証明郵便の発送まで弁護士に委任することもできます。

 

■手順3 債務名義の有無を確認し訴訟や調停を

 

督促をしても不払いが続く場合は、訴訟や調停といった法的手段を検討することになります。法的な手段には、訴訟や調停、支払督促などの方法があります。養育費の支払い状況や元配偶者の態度、事情に合わせて法的手段の中から適切な方法を選択することになります。

 

訴訟や調停の最大の目的は、債務名義となる確定判決や調停調書を取得することです。訴訟や調停をすることが目的ではありません。

 

訴訟や調停をしても、養育費の支払いがあるわけではありません。確定判決や調停調書を使い、養育費を回収することになります。

債権の回収において強力な手段となる強制執行のためには、債務名義が必要になります。

確定判決や調停調書は債務名義になるので、後の強制執行の布石にするためにも、まずは訴訟や調停で確定判決や調停調書の取得を目指すことになります。

 

ただ、全てのケースにおいて、訴訟や調停といった法的手段を講じる必要はありません。たとえば、既に訴訟によって確定判決を得ている場合や調停をしており調停調書が手許にある場合などは、再び訴訟や調停をすることなく、すぐに強制執行や履行勧告をすることも可能です。

 

・養育費の取り決めを公正証書に残していればいきなり強制執行も

 

養育費の取り決めを公正証書に残していれば、訴訟や調停を経ずに強制執行ができる可能性があります。

 

公正証書が手許にある場合、まずは文面の確認をしてください。なぜなら、公正証書であればどんな文面でも即座に強制執行できるというわけではないからです。「養育費の支払いを履行しない場合はただちに強制執行に服する旨の記載(執行受諾文言)」があるかどうかがポイントになります。執行受諾文言が記載された「養育費の支払いを命じた公正証書正本」があれば、訴訟や調停を経ずに公正証書をもって強制執行をすることが可能です。

 

■手順4 履行勧告と履行命令を行う

 

養育費の支払いの確定判決や調停調書がある場合、すぐに強制執行をせず、まずは履行勧告や履行命令を行うこともできます。

 

履行勧告は、訴訟や調停での取決めを守らない人に対して家庭裁判所から「取決めを履行しなさい」と勧告してもらう制度です。履行勧告の手続きを取ると家庭裁判所が相手方を説得したり、勧告したりしてくれます。家庭裁判所からの勧告ですので、相手方がプレッシャーを感じて養育費の支払いに応じる可能性があります。

 

履行勧告の手続きに費用はかかりませんが、強制力がないという特徴があります。あくまで説得や勧告に留まるため、無視する相手から強制的に養育費を回収することはできません。

 

履行命令は訴訟や調停での取決めを守るよう「命令」してもらう制度です。相手方が正当な理由なく履行命令に従わない場合は過料が科されることがあるなど、履行勧告よりもさらに強いものとなっています。

 

履行勧告や履行命令によって相手方の態度をうかがうことも方法の1つです。履行命令や履行勧告によるプレッシャーが相手方に有効かどうかで判断するといいでしょう。状況によっては手順4を飛ばしていきなり強制執行を申立てた方がスムーズに養育費を回収できることがあります。

 

■手順5 差押さえと強制執行で養育費を回収

 

強制執行は債務名義(確定判決や調停調書などの公文書)がなければできない債権の回収法です。督促や履行勧告に強制力はありません。対してこの強制執行は、公権力によって強制的に養育費の回収をはかるという特徴があります。公権力が強制的に行うからこそ強制執行は非常に強力です。強力な方法だからこそ、強制執行をするためには厳しい条件があるのだと思ってください。

 

養育費を回収するための強制執行においては、元配偶者の給与を差押えることがよく行われています。給与は毎月の安定収入なので、養育費を回収しやすいのです。また、給与の差押えは、元配偶者が給料をもらっている会社へ通知が届きます。そのため、給与の差押えをする旨を元配偶者に告げれば、職場への体面を気にして養育費の支払いに応じてくれる可能性があります。

 

・将来的に発生する養育費も差押え手続きが可能

 

養育費の強制執行では、不払いの養育費があれば、支払期限が未到来の養育費(将来の養育費)も一括で差押えできるという特徴があります。

 

不払いの養育費と一緒に将来の養育費も合わせて差押えの申立てをしておけば、将来的な不払い対策にもなります。また、子供との時間や仕事時間を削って何度も手続きをする必要がなくなります。

 

■最後に

 

養育費は不払いが多く、ニュースや新聞でも度々問題として取り上げられています。厚生労働省の調査を見てみると、10件中8件が不払い状態であることがわかります。子育てには多額のお金が必要になります。

子育てを金銭的な面で支える養育費は、子供の生活や将来のためにも迅速に回収したいものです。

 

不払いの養育費を迅速に回収する手順は、電話やメールでの督促からスタートします。支払いに応じてもらえない場合は、債務名義の有無や公正証書の有無によって回収の方法を適切に変える必要があります。基本的な流れは5つの手順通りなのですが、状況によっては1部の手順をカットしたり、順番を変えたりすることでより迅速な回収が可能になります。

 

養育費も含め、債権の回収は早めの着手が鍵になります。手順を把握したら、どの手順からスタートすべきかを判断するためにも、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。早めの弁護士への相談と迅速な着手が、養育費の回収率を高めるコツになります。

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