更改 こうかい

〇 更改契約とは

更改とは、当事者が債務の要素を変更することによって、もとの債権を消滅させて新たな債務を成立させる契約のことをいいます。

プロ野球のシーズンオフの時期に、次のシーズンに向けて契約を続ける場合に球団が各選手との間で、契約更改をしていることがよくスポーツニュース等で流れると思いますが、それも「更改」契約の1つであるといえます。だいたいのイメージをもっていただいたうえで、さっそく詳細について以下で説明をしていきたいと思います。

〇 更改契約の成立要件について

更改契約を締結するための成立要件としては、①旧債務の存在、②新債務の成立、③「債務の要素」を変更する旨の契約の存在、の3点が挙げられます。
①旧債務の存在
更改は、契約を変更する契約なので、当然にもとから契約が存在していないと成立しません。旧債務が不存在であった場合、また、旧債務の発生原因である法律行為が無効であったり、取り消されてしまったりした場合には、更改契約における新債務は発生しません(大審院大正8年3月7日判決)。
②新債務の成立
旧債務が存在しないと更改契約が成立しないのと同様の理由で、新債務が成立しない限り更改契約は成立しません。なお、新債務の発生原因である法律行為が向こうであったり、取り消されたりした場合には、新債務は当然に効力を持たず、一方で消滅する予定であった旧債務は消滅せずに存続します(民法517条参照)。
③「債務の要素」につき変更があること
旧債務と新債務との間に内容の変更があったとしても、その変更が「債務の要素」に変更が無ければ、更改契約であるとはいえません。そのため、契約内容に若干の変更点があったとしても、当事者が債務の同一性を維持しようとしていた場合、つまり更改する意思が認められない場合には、更改契約は成立しないのです。
では、いかなる場合が「債務の要素」に変更があったといえる場合に該当するのでしょうか。その点については、「債務の要素」の変更とは、“旧債務が消滅し、新債務が成立した”といえるほどの、重要な部分に変更があったことをいうとされており、

具体的には、ⅰ)債務者の交替による更改(514条)、ⅱ)債権者の交替による更改(515条)、ⅲ)債務内容の変更による更改(513条)の3点に分けられるといえます(この分類がそのまま更改契約の類型でもあります)。

〇 更改契約の類型

更改契約は民法513条以下にその規定が定められており、その類型としては、

ⅰ)債務者の交替による更改(514条)、
ⅱ)債権者の交替による更改(515条)、
ⅲ)債務内容の変更による更改(513条)

の3つに分かれます。
そして、それぞれの類型ごとに、契約を行う際の相手方や制約が異なってきます。
ⅲ)の契約は、債権者と債務者との間で契約を行えばそれで成立します。一方で、ⅰ)の類型では、更改を行うためには債権者と新債務者との契約のみで足りますが、その契約の締結においては旧債務者の意思に反する内容で契約を結ぶことはできないという点で、一定の制約があります。また、ⅱ)の類型では、通常の場合は、新債権者と旧債権者と債務者との三者で三面契約が行われることが多いです(三面契約とは、立場の異なる三者で締結する契約のことをいいます)。
そのため、ⅰ)やⅱ)の類型(債務者の交替、債権者の交替)については、使い勝手があまりよくないという点が指摘されているのです。
例えば、債権者の交替の類型(515条)で具体例を挙げて検討してみましょう。
Aさんとの間で100万円の債権を有している債権者Bさんが新たにCさんに債権者になってもらおうと考えた場合を想定してみてください。新債権者Cさんが「Aさんを債務者とする100万円の債権」を有するためには、旧債権者Bさんと新債権者Cさんのみならず、債務者であるAさんも加わって、三面契約を行わなければならないのです。二者間でさえ、契約の締結のためには諸々の手続きを行うことが考えられますが、それが当事者がもう1人増えるとなると、さらに契約関係が複雑になることは明らかでしょう。そのため、使い勝手が悪いといえるのです。
そして、実はこのようなAさん・Bさん・Cさんの関係であれば、更改契約を結ばずとも当初の“債権者の地位を移転したい”という目的を達成できるといえるのです。民法に債権譲渡という規定があります(民法466条以下参照)。
 

民法466条1項 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
467条1項 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2項 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

債権譲渡の規定によれば、債権を「譲り渡す」者とそれを譲り受ける者との間の合意のみで原則契約が成立することになります。あとは、債務者に対して対抗要件としての「通知」だけ行えば、債権者の地位を移転することができてしまうのです。
さきほど挙げたAさん・Bさん・Cさんの具体例に沿って、債権譲渡という手段で債権者の移転を行った場合を考えてみると、旧債権者であるBさんと新債権者であるCさんとの間で「BさんからCさんへ債権を譲渡する」旨の契約を締結し、

その上で、対抗要件(対抗要件とは、すでに当事者間で成立した法律関係・権利関係(特に権利の変動)を当事者以外の(一定の)第三者に対して対抗(主張)するための法律要件のことをいいます。

いわば、自己の有する権利を主張するための“盾”とでもいえる様なものです。) として、債務者のAさんに対して、「もともとBさんが有していた100万円の債権をCさんに譲渡しました」と通知をおこなえばそれで移転が完了してしまうのです。
以上から、三面契約が要求されている更改という手段に拠るよりも、むしろ債権譲渡という手段に拠った方が、二者間で迅速かつ事務処理上の煩雑さを減らしながら、債権者の地位を移転できてしまうといえるのです。
したがって、代替手段によってもほぼ同様の効果を見込め、むしろ簡便であるということから、実質的に更改契約が用いられる場面はⅲ)債務の内容を変更することを目的としてなされる契約、の場合に限られ、またその使用頻度もかなり少ないといえるのが現状です。

〇 更改と債権回収との関係

上述の通り、実質的に更改契約が用いられる場面は債務の内容を変更することを目的としてなされる契約の場合がほとんどであるといえます。また、用いられる場面としては、契約当事者に何らかの状況の変動などがあり、旧契約の債務では契約を維持することが困難と考えられる場合に、契約を解除するのではなく、契約内容を変更することを目的になされることが一般的です。
債権回収という観点から、更改契約の中で注意をしなければならない点としては、更改契約がなされた場合には、旧債権と新債権とに同一性がないという点が挙げられます。
したがって、旧債権を担保するために存在していた物的担保や保証についても、被担保債権について同一性がないといえるため、更改契約によって、原則として消滅してしまいます(ただし、当事者間の合意が必要なのですが、合意に基づいて旧債権から新債権へとそれらを移転することは可能です(518条参照))。また、旧債務に付着していた抗弁権についても原則として消滅し、これが新たな債権債務関係には移転しないということが原則となってしまいます

もっとも、債権者の交替による更改(516条)の場合において、債務者が更改契約の承諾の際に意義を留めたときは、旧債務に付着していた抗弁事由は新債権者に対抗することができるといえます(468条1項本文参照)。

〇 まとめ

更改契約による契約の変更は、今日では一般的にも債権譲渡(466条)や債務引受、代物弁済(民法482条)など、他の方法によって簡易かつ有利に実行されるといえ、更改はかつて債権譲渡などの方法が認められていなかった時代に利用されていた方式が残存しているものと捉えていただいても問題ないと考えられます。そのため、更改契約を用いる形で法律関係が形成されている場合は、他のより簡便かつ有効な手段への切り替え等も視野に入れながら事務をすすめていく必要があると考えられます。法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けながら、自己に不利な形での更改契約を避けつつ個別具体的な事情に即した対応を検討することが求められるといえます。
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