目次
予防方法① 契約書を作る
予防方法② お金のやり取りの履歴を残す
予防方法③ 保証人、担保を立てる
まとめ

 

■ はじめに

あなたに未収債権があるとします。
お金を貸した、売買代金をもらえなかった、仕事の報酬をもらえなかったなど、理由は様々でしょうが、本来もらえるはずのお金ですから、必ず回収したいと考えるはずです。しかし、債権回収は、必ず成功するわけではありません。失敗してしまうケースがあります。
法律は万能ではありませんので、あなたに未収金があることが真実であるとしても、思わぬ落とし穴で回収ができないということがあります。
今回は、債権回収を確実にする3つの予防法務についてをまとめました。
これから契約をする際に、以下の点に留意することで、債権回収がより確実なものになります。
ご参考にしていただければと思います。
【債権回収を失敗してしまう例】
契約内容に食い違いがあり、予定していた金額を回収できなかった。
・裁判で勝訴するだけの主張立証をすることができず、敗訴してしまった。
・主張は認められたが、相手にお金が無く、回収ができなかった。
法律問題を事前に防ぐこと、法律用語で、これを予防法務といいます。今回は、債権回収を確実にするため、気を付けていくべき予防法務についてみていきたいと思います。

予防方法① 契約書を作る

・口頭契約の危険性
あなたに何かの未収債権があるのであれば、その債権が損害賠償などを原因とするものであるので無ければ、何かしらの契約から発生している債権であるはずです。例えば、売買契約、賃貸借契約、請負契約、消費貸借契約など、債権の発生原因は、多くの場合が契約によるものです。
契約は、一部の契約以外は口頭、つまり口約束でも成立します。
しかし、口頭での契約の場合、契約内容のお互いの認識がズレてしまうことがあります。気心知れた相手方の場合、つい書面ではなく口頭で契約してしまいがちですが、口約束で済ませてしまうと、こちらが思っていた契約内容と相手が思っていた契約内容にズレが生じてしまうことがあります。
トラブルに発展していない段階だったら、口頭でもう一度確認しあえばいいわけですが、何かしらのトラブルに発展している場合、当初の契約がなんだったのが争点になるわけです。
・認識の違いの例
例えば、あなたはAさんに車を30万円で売ったとして、頭金として20万円をもらい、車を引き渡しました。しかし、残りの10万円をAさんは一向に支払いません。
そこで、あなたはAさんに対して、残りの10万円の支払いを請求するわけですが、Aさんは、「車は20万円で買い、全額を支払い、引き渡しを受けた」と言ってきたとします。この場合、車の売買代金がいくらだったのかという点において、あなたとAさんの認識に違いがあります。
通常、売買契約は、目的物の引き渡しは、現金と同時履行の関係にあります。すでに目的物である車を引き渡しているあなたは、代金をまだ全額受け取っていないと主張するわけですが、契約書がないと売却代金がいくらだったのかを立証することが難しくなるわけです。
・契約書の必要性
上記の契約が、契約書によってされなかった場合、売却代金がいくらかということは当事者である2人にしかわかりません。Aさんは全てわかった上で、10万円を得してやろうとして20万円と言っているのかもしれないし、単純に聞き間違って20万円と思っているのかもしれません。しかし、契約書があれば、売却代金がいくらなのかは一目瞭然です。
Aさんとしては、契約書がないことを承知したうえで、どうせ立証できないだろうという、悪い気持ちが後から出てきたのかもしれません。例え友人や近しい人間との契約だとしても、後のトラブルを防止するために、しっかりと契約書を結んでおくことは非常に重要です。
若干堅苦しい気もしますが、「こういうことはキチンとしておく」ことで、後のトラブル回避にもつながるわけです。仮に、Aさんは20万円で買ったと勘違いした場合でも、契約書を見れば自分の勘違いであったことがわかるわけですから、残りの10万円についての支払いをすんなりと行いやすくなります。もちろん、証拠としての価値もありますので、その点においても重要です。

予防方法② お金のやり取りの履歴を残す

・証拠を残す
契約書を作るということは、証拠を残すという点において非常に重要なのですが、お金のやり取りの履歴を残すことも非常に重要です。例えば、あなたがAさんに100万円を貸したが、Aさんが返済しなかったので、債権を回収したいと考えたとしましょう。
しかし、Aさんは、100万円を受け取っていないと主張したとします。この場合、あなたが、100万円を貸し渡したという証拠があるかどうかが重要となります。
・お金のやり取りの証拠
では、お金を貸し渡したりというお金のやり取りの証拠にはどのようなものがあるでしょうか。お金を渡したということを証する書面で一般的なものは以下のもの考えられます。
・領収書
・振り込み明細票
・契約書
・お金を領収したことを認める内容のメールや手紙
『領収書』
まず、領収書はお金を確かに受け取ったことを証する書面ですので当然証拠になります。領収書には、日付や宛名、但し書きが記載されます。領収書の存在があれば、基本的に相手はお金を受け取っていないとは言えません。
『振り込み明細票』
金員のやり取りが銀行振り込みだった場合、振り込み明細票も証拠になり得ます。また、仮に振り込み明細が無くても、お金の移動自体は通帳に履歴が残りますので、少なくともお金が移動したという事実の証拠になります。
『契約書』
契約書に、100万円を渡したという事実を記入してくことも、お金を渡しているという証拠になり得るものの一つになります。消費貸借契約書には、「〇年〇月〇日、甲は乙に金〇〇〇円を貸し渡した」などと記載するので、この文書をもって、現金のやり取りを証することが可能です。
『メールやLINE』
少し証拠としては弱いのですが、メールやLINEでお金を借りたことを確認する文章のやり取りも、証拠として認められるケースがあります。現金で渡して領収書も何も貰わなかったという場合に、苦肉の策として、相手に借りた事実を認めさせる時に使われる手法です。
・証拠の重要性
あなたが債権を回収しようとした場合、相手がそれに応じないのであれば、最終的には裁判による解決を図ることになるかと思います。その場合、契約書はもちろんですが、実際にお金の移動があったかどうかについての証拠がなかった場合、あなたの望む判決が得られない危険があります。実際にお金を貸したのに、それを立証することが出来ず、裁判で負けてしまう。そんなことは、珍しい話ではないのです。

予防方法③ 保証人、担保を立てる

・回収不能で一番多いケース
未収金の債権回収で失敗してしまうケースとして、一番多いのは、相手に支払い能力がない場合があります。返すアテもなくお金を借りるケースなどがそれにあたります。契約書など、必要な証拠はそろっており、相手も支払い義務があるのは重々承知しているが、お金がないから支払えない。
法律も万能ではありませんから、結局、無いところからは取れないということになってしまうのです。返すアテがない人にお金を貸すほうも貸すほうですが、貸した以上は何とか回収したいと考えるはずです。そういった回収不能を防ぐには、連帯保証人や、担保を設定しておくということが考えられます。
・連帯保証人、担保を取っておく
相手方に支払い能力があるか疑わしいという場合は、連帯保証人や担保をとっておくことが望ましいです。仮に債務者から債権回収が不能になったとしても、連帯保証人から回収出来たり、担保を競売にかけて債権を回収することが出来ますので、債権回収を確実にする方法といえます。
・連帯保証についての注意点
連帯保証人とは、債務者と連帯して債務の責任を負う者ですので、債務者が支払いに応じなくても、連帯保証人からの回収が可能になります。ここで、注意してほしいのは、保証人ではなく「連帯」保証人であるということです。連帯保証ではない保証人に場合には、「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」というものがあります。要するに、自分より先にまず債務者に請求して欲しい、財産の調査をしっかりして欲しいなどと主張することが法律上認められているということです。一方、連帯保証人は、債務者と同等の責任を負いますので、先に連帯保証人に請求を出しても構いませんので、債権者にとっては連帯保証人であるほうがメリットがあるといえます。
・担保について
連帯保証人も広い意味でいえば担保になります(人的担保といいます)。しかし、連帯保証人ではなく、物について担保を付けることが出来ます。
不動産の場合は、抵当権の登記をしておくことで、第三者に不動産を転売されることを防ぐこともできます。もちろん、不動産に限らず、車や時計、宝石等、動産を担保とすることも可能です。
相手が、お金が無くなった時はもちろんですが、仮にお金を持っていたとしても、支払いに応じない場合は、担保から回収することが可能ですので、絶対にとりっぱぐれをしたくないという人は、必ず何らかの担保を取っておくとことが大事です。

まとめ

どれも、契約をする上で非常に基本的な事項ではありますので、当然のことのようにされていることだと思います。しかし、どれかが欠けてしまうと後にトラブルになった際に未収債権の回収不能という事態に直結してしまう重要な事項です。弁護士に頼んだとしても、証拠が無かったり、相手にお金が無ければ、結局回収不能という事態になってしまいます。確実に債権を回収したいと考えるのであれば、まず気を付けていただきたい点ですので、ぜひ知っておいていただければと思います。