目次
フランチャイズとは?
フランチャイザー側のメリット
ロイヤリティ未払い防止の5策
契約書の内容確認
保証金を受け取る
加盟店に対する教育指導
期限の利益喪失
遅延損害金
未払いの際の債権回収方法
フランチャイズの本部構築にあたって
まとめ 

 

日本で1960年代から導入されたフランチャイズ経営。ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドといった飲食店や、セブンイレブンなどのコンビニエンスストアなどが有名です。そのフランチャイズ経営は、今やチェーン数が1335チェーン、店舗数は26万店舗以上、総売上高は25兆円を超える規模にまで発展しています。
 
いずれは自分もフランチャイザー(本部)として加盟店を増やし、自分の事業を拡大していきたいと考えている経営者の方もいると思います。
その場合、フランチャイジー(加盟店)からきちんとロイヤリティを回収するには、どういったことに気をつければ良いのでしょうか。

※ロイヤリティとは:フランチャイザーの商標利用やノウハウの代金として、加盟店のオーナーが支払うものです。
 
この記事では、フランチャイズの本部を構築した場合に加盟店からロイヤリティ等を回収する方法を解説していきます。

 

■ フランチャイズとは?

 

そもそも、フランチャイズとはどういった経営形態なのでしょうか。
なんとなくわかっているけど、どういった法律でどのような定義がされているかは知らない人が多いかもしれません。
 
フランチャイズ経営は、中小小売商業振興法の中で定められる「特定連鎖化事業」にあたります(中小小売商業振興法11条1項)。

この法律では、「連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの」と定義されています。

簡単に言うと、加盟者に店の看板を使う権利を与えて、その対価としてロイヤリティを支払わせるという経営を指しているのです。
 
しかしほとんどの場合は、店の看板だけでなく、仕入れ先や宣伝方法、接客方法といったマニュアル全体を一つのパッケージにした形で加盟店に提供しています。
そういったパッケージの提供の対価として加盟店が本部に支払うお金を、通常「ロイヤリティ」と呼びます。

 

ちなみに、このフランチャイズ契約は代理店契約とは異なります。
代理店契約というのはいわゆる委託契約で、製造者が販売する側(代理店)に「これを売って下さい」と頼んで販売してもらうという経営形態になります。
つまり、代理店契約の場合は、委託者からノウハウを提供する必要はなく、代理店は自力で販売方法などを考えることになります。一方で、ロイヤリティが支払われることもないのです。

 

■ フランチャイザー側のメリット

 

自分の会社の直営店を増やすのではなく、フランチャイズという形で店舗を増やしていくメリットとにはどういったものがあるでしょうか。

 

・ロイヤリティ等の形でキャッシュが得られる

まずは、加盟店から毎月ロイヤリティを徴収できるという直接的なメリットが挙げられます。
また、加盟時に徴収する加盟金や保証金、加盟店に販売する商品代金に上乗せするマージンなどを得られる場合もあるため、こうした収入によって本部の経営が潤います。

 

・大きなコストをかけずに知名度を上げられる

フランチャイズの場合、新規開店の費用は加盟店が拠出するため、本部としてはあまり費用をかけずに自社ブランドの店舗を増やすことができます。
同じ名称の店舗が増えることで、消費者の目につく機会が増え、知名度が向上します。見たことのある店だと消費者も安心感を覚えるため、お客がつきやすくなり全体としての売上アップに繋がるのです。

 

・労務管理が楽になる

直営店の場合は、店舗で働くスタッフの労務管理は本部が自ら行うことになります。しかし、フランチャイズの場合は、それぞれの加盟店が自分の店舗のスタッフの労務管理を行います。そのため、本部の負担が軽くなるのです。

 

■ ロイヤリティ未払い防止の5策

 

なんといっても、加盟店から毎月ロイヤリティをきちんと回収していくことがフランチャイズ経営の肝です。
ロイヤリティを得られること以外にもフランチャイズのメリットはたくさんありますが、直接的にはロイヤリティこそがフランチャイズの旨味なので、ここは厳しく債権回収していきましょう。
ではまず、ロイヤリティの未払いを防止するために本部としてどのようなことができるでしょうか。

 

・契約書の内容確認

 

一番大事なのが契約書をきちんと作成することです。当たり前のことですが、ロイヤリティの支払についての条項を置いて、その金額の計算方法や支払方法、支払期限などを明確化しておきましょう。
 
ロイヤリティの金額を決めるにはいくつかの方法があります。
代表的な決め方としては、売上歩合方式、定額方式、そして粗利分配方式が挙げられます。

一番ポピュラーなのが売上歩合方式です。これは、加盟店の売上のうち一定の割合をロイヤリティとする方式です。この割合は業種によって大きく異なりますので、自分の業種での相場を確認しましょう。
一般的に飲食業はロイヤリティの割合が低く、数%〜10%の間で定められることが多いです。
 
定額方式は、売上に関係なく毎月同じ額のロイヤリティを支払う方式です。稼げば稼ぐほど、そのまま加盟店の利益となるため、加盟店のインセンティブを引き出せるというのがこの方式の特徴でしょう。
 
最後が粗利分配方式ですが、これは総売上高から売上原価を差し引いた総売上利益のうち一定の割合をロイヤリティとする方式です。
 
契約書を作成するときは、これらのうちいずれの方式を採るのか、割合はどれほどにするのか等を詳細に定め、記載するようにしましょう。

 

・保証金を受け取る

 

フランチャイズ契約の締結時に、ロイヤリティの支払を担保する保証金を支払わせることがあります。また、この保証金はロイヤリティ以外にも、商品代金等、加盟店の他の債務を担保すると定められていることがほとんどです。

保証金は契約期間終了時に返還することになりますが、もしロイヤリティ等の支払がなされなかった場合は、本部のロイヤリティ請求権とこの保証金返還請求権と相殺するという形でロイヤリティ等の、権回収することになります。
つまり保証金は、建物賃貸借契約における敷金のような役割を果たすのです。

 

・加盟店に対する教育指導

 

加盟店の売上が低いと、ロイヤリティを支払いようがありません。無い袖は触れないのです。これはロイヤリティの決め方が売上歩合方式であろうが、定額方式であろうが同じことです。

そのため、本部としては加盟店の売上が上がるように適切な教育・指導をしていく必要があります。
各加盟店にはスーパーバイザーを定期的に派遣し、加盟店が契約内容を遵守しているか、ブランドイメージに合った販売方針を採っているか、などを確認し、指導し、さらに必要な場合は相談に乗るようにしましょう。
 
また、ロイヤリティを支払ってもらえないがために、本部側が加盟店を相手取って訴訟を提起することもあるかもしれません。そうした訴訟沙汰に備えるという意味でも、加盟店に対する教育指導を徹底しておく必要があるのです。

これは、ロイヤリティを請求する訴訟において、加盟店側が「本部がフランチャイズ契約の債務を履行しなかった」と主張してくる可能性があるからです。本部側が加盟店を指導するという債務を履行していなければ、加盟店側がロイヤリティを支払う債務を履行していなかったとしても、その責めは負わないことになりえるのです。
また、ひどい場合には、加盟店側からの本部に対する損害賠償請求が認められることもあります。
 
よって、訴訟でこちらの主張を認めてもらうためにも、フランチャイズ契約で本部が負う債務、つまり加盟店への教育指導を行う債務などはきちんと履行しましょう。
そして、個別の指導やセミナーを行ったら毎回その記録を残しておくようにしましょう。いざというときに証拠として使用でき、債権回収へ有利に働きうるからです。

 

・期限の利益喪失

 

加盟店の経営者が破産した場合や、手形の不渡り、営業を廃止した場合にはロイヤリティの支払期限が到来したことにする、という内容の期限の利益喪失条項を入れましょう。

このような場合は、明らかに加盟店の支払能力が著しく低くなっているため、ロイヤリティの回収を所定の期限まで待っていると全く回収できなくなる可能性が高いためです。

そのため、期限の利益を喪失させ、債権回収のためにすぐに動けるようにしておきましょう。

 

・遅延損害金

 

ロイヤリティをはじめ、各種の支払が遅れた場合に加盟店が支払うことになる遅延損害金を規定しておきましょう。

商事法定利率は年6%なので(商法514条)、遅延損害金の利率をこれより少し高めに設定しておくことで、期限内に支払うインセンティブを高めることができます。

ただし、公序良俗に反するような高額の遅延損害金を設定してしまうと、その特約は無効になる可能性が高いです(民法90条)。不安があるときは、どの程度の利率ならば大丈夫なのか、詳しい弁護士に相談して決めるようにしてください。

 

■ 未払いの債権回収方法

 

上記のことに気をつけていても、加盟店を増やしていけばその中にはロイヤリティの支払を滞納してしまう経営者も出てくるでしょう。
そうした場合にはどう対処するのが良いのでしょうか。

 

  • 繰り返し催促する

まずは根気強く催促することです。
初めはメールや電話によって催促しても良いですが、遅滞の程度によっては弁護士の名前を使った催促状を内容証明郵便で送るなど、より強力な手段によって催促する必要が出て来ます。

 

  • 民事訴訟を提起する

どんなに催促してもロイヤリティを支払ってもらえない場合には、民事訴訟の提起も視野に入れなければならないでしょう。
もちろん、訴訟の前に支払督促を使うことを考えても良いでしょうし、金額によっては、少額訴訟も使えるかもしれません。
こうした方法には訴訟に比べて簡便であるというメリットがありますが、もちろんその反面デメリットもあります。
このあたりの話は「通信販売の後払い代金を回収するには?」という記事に詳しいので、こちらもぜひ読んでみてください。

 

  • 差押え・仮差押えから始まる強制執行によって回収する

上記の訴訟に勝訴するなどの形で債務名義を得ていれば、債務者である加盟店が所有する不動産・動産・債権等を差押えて競売にかけ、そこから債権回収を図ることができます。
また、まだ債務名義を得ていない場合でも、仮差押えという形で債務者が財産を処分しないよう一定の制約をかけておくことができるのです。
 
さらに、自分が競売手続を開始しなくても、「すでに債務名義を得ている」といったような条件を満たせば、他の債権者が開始した強制執行に参加して配当を要求することもできるのです。
この条件は差押えの対象によって異なるので、「不動産競売手続〜換価の後の配当」や、「動産と債権に対する強制執行!その概要をつかもう。」といった他の記事を参照してみてください。
ただし、他の債権者が開始した強制執行に参加した場合は、その強制執行が債権者の申請取下げ・取消によって終了してしまうと、自分も配当を得ることはできなくなるので注意が必要です。

 

  • 預かっている保証金から回収する

どうしてもロイヤリティの回収が見込めない場合には、契約締結時に預かった保証金から未収分のロイヤリティを回収しましょう。
契約期間終了時には、その回収分を差し引いた額の保証金を加盟店に返還することになります。
 
ロイヤリティ以外にも、加盟金や商品の代金の支払が遅れている場合には、上記の措置を採ることを検討しなければなりません。
他の加盟店のロイヤリティ支払遅滞を防ぐためにも、未払いには厳しく対応していきましょう。

 

■ フランチャイズの本部構築にあたって

 

ロイヤリティの債権回収について説明してきましたが、もちろん他にもフランチャイズの本部構築にあたって気をつけるべきことは山のようにあります。
代表的なものだけでも、以下の注意点が挙げられます。
 

  • 商標登録を行っておく
  • 契約前に提示する売上予測を立てる際には楽観的になりすぎない
  • 加盟店に対する勧誘行為等が独占禁止法に抵触していないか確認する
  • 加盟店に秘密保持義務を課しておく
  • 加盟店に一定期間の競業避止義務を課しておく
  • できるだけ既存の加盟店の近くには出店させない

 
他にもまだまだたくさんあります。こうした問題を全て自分でクリアしていくのは大変です。
フランチャイズの本部構築を考えているなら、まずは一般社団法人フランチャイズチェーン協会の相談窓口に相談してみるなど、専門家のアドバイスをもらうようにしましょう。

 

■ まとめ

 

フランチャイズという経営形態が世間に浸透するのにあわせて、フランチャイズに関する情報も多く流布するようになりました。
しかし、その多くは加盟店や、加盟店になろうとする個人事業主を対象としたもので、本部を設立しようとする人向けの情報は未だ少ないというのが現状です。
フランチャイズ経営を始めようと考えているならば、法的手続や契約書の内容については、必ず詳しい弁護士に相談するようにしてください。