ADR えーでぃーあーる

■裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)とは裁判によらない解決法

 

企業間や私人間でトラブルが起きると、解決のために裁判や調停の利用を検討する場合があります。ただ、トラブルが起きたからといって、必ず裁判所の裁判手続きを利用しなければならないわけではありません。裁判所で裁判を提起する以外にも解決法が用意されています。

 

裁判によらない裁判外のトラブル解決の方法が「裁判外紛争解決手続(代替的紛争解決)」です。裁判外紛争解決手続は裁判以外の紛争を解決する方法を広く指す言葉として用いられています。

 

裁判外紛争解決手続は英語で「Alternative Dispute Resolution」と書きます。「Alternative(代替的) Dispute(紛争) Resolution(解決)」の英単語の頭文字をとって「ADR」とも呼ばれています。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は、金融や不動産など、多種多様なトラブルに対して使われています。それぞれの分野ごとに法務大臣の認証を受けた裁判外紛争解決手続機関が存在しており、会社と個人や個人と個人などのトラブルを解決するための手助けをしています。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)では、トラブル解決のために次のような方法がとられています。

  • 調停
  • 仲裁
  • あっせん
  • 和解

4つの他に、ADR機関によっては相談や助言といった方法を取り入れていることもあります。

 

・1、調停

 

専門家という第三者が関わる当事者間の話し合いによる解決が「調停」です。

 

トラブルの当事者がラウンドテーブルなどにつき、事実関係の確認や証拠の整理をしたり、トラブル当事者の言い分などを確認しあったりします。その上で、話し合いでの解決を目指します。調停に関わる専門家が解決案を示し、その解決案に添っての解決がなされることもあります。

 

当事者が紛争解決への意欲を持っている。トラブルの当事者双方がある程度の妥協を見せている。解決案がトラブル当事者双方にメリットをもたらす。こんな場合は、調停によって解決できる可能性が高くなります。

 

対して、当事者が紛争解決への意欲を持っていない場合や、トラブル当事者の言い分が大きく食い違っている場合、当事者の片方だけが解決案で大きなメリットを得ることが明確である場合、当事者の片方が解決案により大きなデメリットを受ける場合は、調停で解決することが困難になる可能性があります。

 

・2、仲裁

 

トラブルの当事者が仲裁を受ける合意(仲裁合意)をしていることを条件に、仲裁人が解決内容を提示する方法が「仲裁」です。仲裁法を根拠法にして行われています。

 

仲裁人の提示した解決内容(仲裁判断)は確定判決と同様の効果を持ちます。非常に強い効果です。トラブル当事者は仲裁を使う前提として仲裁合意をしているため、仲裁判断を拒否することは許されません。

 

仲裁判断が出たトラブルに対しては、裁判を起こすことができなくなります。控訴や上告、不服申し立て、異議申し立てといった制度も存在しないため、仲裁によってトラブルに明確な終結がもたらされることになります。

 

・3、あっせん

 

当事者間の話し合いによりトラブルの解決をはかる方法が「あっせん」です。

 

あっせんの話し合いでは、あっせん人がトラブル当事者の間に入って話し合いを進めることになります。あっせん人が間に入るという点で調停に似ています。

 

仲裁のように、あっせん人の解決案を拒否することが許されないというわけではありません。あっせん人の案を拒否することもできます。また、あっせん人の解決案には、仲裁判断のような強力な効力もありません。

 

4、和解

 

トラブルの当事者が妥協点を見出すことによりトラブルを解決する方法が「和解」です。専門的な見識を持つ第三者がトラブル当事者の間を取り持ち、交渉や歩み寄りを促すことも行われています。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)での和解は、裁判所での和解と異なり強制力を持ちません。

 

和解に合意したにも関わらず、和解の当事者に不履行が発生しても、即座に強制執行をすることはできません。

裁判外紛争解決手続(ADR)での和解に強制執行力がないという点には、特に気をつける必要があります。

 

■裁判外紛争解決手続(ADR)の6つの特徴とは

 

裁判外紛争解決手続(ADR)には、「手続き」「期間」「本人たちの解決」「コスト」「非公開」「専門家の関与」という6つの特徴があります。

 

1、手続きが全体的に簡便かつ柔軟である

 

裁判外紛争解決手続(ADR)の手続きは、全体的に簡便であるという特徴があります。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は裁判手続きよりも厳格ではないため、より臨機応変にトラブルへと対処できると言われています。裁判外紛争解決手続(ADR)という制度自体が、柔軟なトラブルの解決を目的の1つにしています。

 

2、トラブルを解決するまでの期間が短い

 

裁判所で裁判を行う場合は、判決までに一定期間を要します。

 

少額訴訟などのすぐに判決のでる訴訟形態もありますが、少額訴訟や手形訴訟は条件に合致していないと使えません。少額訴訟や手形訴訟が使えない場合、通常訴訟で判決を得ることになります。判決までの期間はケースバイケースですが、短くても半年程度の期間を見る必要があります。

裁判が長期化すると、1年以上の期間を要することもあります。
裁判外紛争解決手続(ADR)もケースバイケースという側面があります。

しかし、一般的に通常訴訟より短期で決着させることができる可能性があります。

 

3、トラブル当事者の主導で解決することができる

 

裁判では、訴訟指揮権は裁判長(裁判所側)にあります。トラブルの当事者が通常訴訟を決断したとしても、進行は裁判所側の主導で行われることになります。トラブル当事者たちが指揮して進めることは難しくなります。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は、当事者同士の話し合いが主軸です。当事者が中心になって進めやすいという特徴があります。

 

4、費用などのコスト軽減が期待できる

 

裁判には、印紙や切手代などの他に交通費や弁護士費用なども必要になります。裁判の場合、訴額が大きくなればそれだけ印紙代などが大きくなり、費用面が膨らむ傾向にあります。

 

弁護士費用も、裁判が長くなればそれだけ高額になります。裁判に必要なコストも、ケースバイケースという側面があります。一概には言えませんが、裁判が短期間で終了したとしても30万円~くらいが相場であると言われます。100万円以上の費用が必要になることもあります。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)では、これら費用の軽減を期待することができます。

 

5、裁判外紛争解決手続(ADR)は基本的に非公開

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は基本的に非公開で行われます。非公開なので、プライバシーや仕事上の秘密を世間に知られることを防ぐことができるという特徴があります。

 

裁判手続きは基本的に公開で行われます。法廷での裁判手続きは一般の人でも傍聴することができます。裁判手続きが公開されるため、人に知られたくない秘密を知られてしまう可能性があります。

 

6、裁判外紛争解決手続(ADR)の手続きには専門家が関与する

 

裁判外紛争解決手続(ADR)では、トラブルの解決のためにそれぞれの分野の専門家が関与します。

 

専門家は当事者のうち片方の肩を持つことはしません。あくまで第三者としての立場です。公平かつ客観的な立場で、トラブル解決のために尽力します。

 

手続きの中で、それぞれの分野に精通した専門家の補助を受けることができるという特徴があります。

 

■裁判外紛争解決手続(ADR)の手続きに関与する第三者とは

 

裁判外紛争解決手続(ADR)に関与する第三者とは、経験豊富な弁護士や司法書士、元裁判官、学識経験者などです。医療分野のトラブルや建築関係のトラブル、知的財産権に関するトラブルなどは、それぞれの分野の専門知識に精通した専門家が仲裁人などの立場でトラブル解決の手助けをします。

 

■裁判外紛争解決手続(ADR)の代表的な例

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は多種多様な分野でトラブル解決のために活用することができます。

 

たとえば、金融関係のトラブルであれば、金融ADRがあります。金融ADR機関に解決の手助けをしてもらえるトラブルは、金融機関と利用者の間のトラブルです。金融に造詣の深い第三者が公平かつ中立の立場で介在し、非公開でトラブルの解決をはかることができます。

 

この他にも、不動産トラブルを裁判外で解決するための不動産ADRや災害時ADR、医療ADRなどがあります。

 

不動産ADR機関では、不動産売買や不動産管理、不動産の相続や不動産の施行についてのトラブルを裁判外で解決する手助けをしています。医療ADRは治療に関する説明のトラブルや、治療ミスによるトラブル、具体的な治療法に関するトラブルなどを広く扱っています。

 

災害時ADRは常時実施されているわけではなく、大規模災害時に実施が決定されることによりはじめて利用できる利用できるADRです。

災害時ADRは、大規模災害によって起きた数々のトラブルを解決するために利用することができる手続きです。

 

災害により隣の家の塀が倒れてしまったために自分の家や車に損害が出てしまった場合や、災害で壊れた借家を家主が修理してくれず住居に困っている場合などのトラブルが代表例になります。

 

この他の分野でも、裁判外紛争解決手続(ADR)が実施されています。

 

■裁判外紛争解決手続(ADR)を利用する上での注意点

 

裁判を使うか、それとも裁判外紛争解決手続(ADR)を使うかで迷ったら、裁判外紛争解決手続(ADR)と裁判の特徴やメリットを慎重に比較して決めることが重要になります。加えて、裁判外紛争解決手続(ADR)でトラブルの解決ができるのかどうかを検討する必要があります。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は「トラブル当事者と第三者による話し合い」という性質が強い手続きになります。当事者間の紛争解決意欲によって結果が左右されるため、当事者間の紛争解決への意欲が低い場合や当事者の片方にだけ意欲がある場合は、思うようにトラブルを解決できないことがあります。

 

トラブル当事者の言い分が大きく食い違っているケースや、トラブル当事者の双方が積極的に争う姿勢を見せているケースでも、裁判外紛争解決手続(ADR)での解決が期待できない可能性が考えられます。裁判のように判決が下ることがないからです。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)では解決できない種類のトラブルもあります。また、裁判外紛争解決手続(ADR)を利用しても、話し合いが決裂してしまうという可能性も考えておく必要があります。これらの点にも注意が必要です。

 

仲裁判断には強い力がありますが、結果に納得できなくても裁判の提起が封じられてしまうというデメリットもあります。

 

さらに、裁判外紛争解決手続(ADR)による和解にも、強制執行力がないというデメリットがあります。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)には費用負担の軽減や、比較的短期間でトラブルを解決できるというメリットがあります。しかしデメリットも存在していることを忘れず、「トラブルの解決に役立つか」という冷静な視点で活用するかどうかを検討しましょう。

 

・裁判外紛争解決手続(ADR)に適した案件かどうかは弁護士に相談を

 

裁判外紛争解決手続(ADR)は、代理人を弁護士に依頼することができます。裁判外紛争解決手続(ADR)を行う前提として、弁護士に相談することも可能です。

 

大切なのは、トラブルを解決できるかどうかです。裁判外紛争解決手続(ADR)を利用しても、トラブルの相手方がきちんと応じず、失敗に終わってしまうことがあります。トラブルが深刻化していたり、複雑化していたりする場合も、裁判外紛争解決手続(ADR)での解決に馴染まないことがあります。裁判外紛争解決手続(ADR)を利用しても、トラブルの根本的な解決ができなければ、手続きを利用する意味がありません。

 

裁判外紛争解決手続(ADR)を利用する前段階で弁護士に相談することにより、そのトラブルが裁判外紛争解決手続(ADR)での解決に馴染むかどうかを判断することができます。トラブルの解決に使える他の方法と色々な面から比較し、最も解決に適した方法を導き出すこともできます。

 

地域の弁護士会によっては、裁判外紛争解決手続(ADR)を利用する前提として、先に弁護士へと相談することを推奨していることがあります。

 

そのトラブルが裁判外紛争解決手続(ADR)に馴染むかどうかや、いきなり裁判をした方がトラブルの解決に繋がるかどうかを法的な観点から判断するためです。

 

弁護士が裁判外紛争解決手続(ADR)の代理人を務めない場合は、先に弁護士へと法律相談を行い、弁護士に裁判外紛争解決手続(ADR)がトラブル内容に馴染むかどうかを判断してもらってください。その上で弁護士に紹介状を用意してもらってくださいというADR機関もあります。

 

トラブルを解決するためにも、制度を適切に活用することが重要です。

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