債務名義とは、強制執行を開始するのに必要な、債権者の持つ具体的な権利内容であって、強制執行によって保全すべき性質を備えたものを文書で示したものです。(民事執行法22条)
〇債務名義にあたる公文書の種類とは
債務名義は公文書に限られています。私的に強制執行に服する旨の書面や私的な金銭消費貸借の契約書などを作成しても、債務名義にはなりません。私文書は債務名義にはなり得ないからです。
現実に金銭の授受があり、通帳の記載などがあったとしても、それ自体は証拠でしかありません。債務名義ではありません。
強制執行は公権力によって行う強力な回収法だからこそ、条件は厳格に定められています。債務名義を持っていることも条件の1つだからこそ、債務名義になり得る文書についても厳しく定められているのです。
強制執行の執行機関は、債権の存否や証拠を自ら精査しません。「債務名義」という裁判所や公証人などの国家機関が作成した公文書を確認することで、強制執行を発動することになります。
具体的には、
①確定判決
②和解調書
③調停調書
④認諾調書
⑤仮執行宣言付支払督促等
が債務名義に当てはまります。この他に、仲裁判断や家事審判調書なども債務名義になります。
〇債務名義を取得するための手続きについて
強制執行を検討していながら、債務名義を所持していないケースでは、まずは債務名義を取得することになります。
債務名義を取得するためには、通常訴訟や少額訴訟、調停といった裁判所の手続きで争うことが基本的な流れになります。
または、公証役場で「強制執行に服する旨(強制執行認諾文言)の入った公正証書を作成するという方法もあります。