整骨院(接骨院)経営トラブル5つのポイント!債権回収のコツと対処法

 

目次

はじめに

ポイント1~施術契約の法的性質

ポイント2~請求相手

ポイント3~施術料回収

ポイント4~健康保険

ポイント5~その他の注意すべき事項

まとめ

 

■はじめに

整骨院(接骨院)の数が増加しています。

平成18年にはおよそ3万件だった施術所の数が平成28年には4万8千件にまで増えています。平成26年からの増加率は5.4%にのぼります(厚生労働省「平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」)。鍼灸院なども含みますと9万件近くになります。

 

コンビニエンスストアの数がおよそ5万5千件ですから(JFAコンビニエンスストア統計調査月報(2018年8月度))、かなりの数であることがわかります。

 

その結果、競争が激しくなっています。グループ化し、全国にチェーン店を展開したり介護事業など多角的な経営を行ったりしているところも増えています。

 

一方、療養費は、平成24年度以降減少傾向にあります(厚生労働省「柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具にかかる療養費の推移(推計))。

 

これは、保険対象となるものの範囲があいまいであったり、本来保険対象とならない施術について保険請求を行ったりするなど、療養費に不適切なものが含まれていることが社会問題化したことを受け、療養費の適正化の動きが広がっているためと考えられます。

 

このように、競争の激化や、療養費認定の厳格化などにより、整骨院の経営は楽観できない状況となっています。

 

また、新規顧客の開拓など経営努力をしていたとしても、施術費の支払いを受けることができなければ意味がありません。

 

整骨院にまつわるトラブルの特徴としては、骨折、脱臼、捻挫、打撲などの急患への対応が挙げられます。保険証券を持ち合わせず、お金が足りないことがあり、後日に精算してもらわざるをえません。素直に支払ってくれる方であればよいのですが、何かと理由をつけて支払ってくれない人もいます。

 

また、過度な期待を患者さんが抱いているような場合、まだ痛みが残っているなどの理由で支払いを拒否されることも考えられます。

そして、交通事故によるむち打ち症の患者さんなどの場合には、加害者の損害保険会社から支払いを受けられることがありますが、これを突然拒否されるような問題もあります。

 

健康保険組合から療養費の支払いについて拒否されることもあります。この場合、患者さんに請求していくことを検討しますが、負担がないと思っていた患者さんから支払いを拒絶されることがあります。

 

ここでは、主に整骨院の立場から経営上よく見られるトラブルについて、債権の回収方法や対処法について解説していきます。

 

■ポイント1~施術契約の法的性質

病院と患者との間で締結される診療契約の法的な性質は、基本的に委任に準じたものとされています。その結果、受任者である病院は診療を行う債務が発生し、患者は対価を支払う債務が生じます。

病院には、適切に任務を遂行する債務である「善管注意義務」も生じます。

 

もっとも、整骨院(接骨院)は病院と異なります。

しかし、法令によって医業類似行為を行う施設です。

骨折や脱臼への応急的な対応やリハビリなど、病院で行われる行為に近い行為が行われています。

 

そのため、整骨院における施術契約も診療契約と同様に準委任契約と考えられます(長野地裁松本支判昭和47.4.3)。

 

請負と異なり、仕事の結果発生により報酬請求権が生じるわけではありませんから、痛み等の症状をなくせなかったとしても報酬請求権が発生します。

 

一方で善管注意義務も生じることに注意が必要です。

注意義務を怠ったことで支払いを拒絶されたり、悪くすると損害賠償請求をされたりすることもあるからです。

 

■ポイント2~請求相手

・施術を依頼した人

前記のとおり、施術を依頼してきた患者さんに請求できます。

 

・施術を依頼した人(交通事故の場合)

誰かの権利や法的な保護に値する利益に害を加えた場合、それによって損害が発生したときは、その人に賠償責任が生じます。

 

損害賠償金として加害者に請求できるものとして、治療費、慰謝料等がありますが、整骨院にかかったことによる施術費も一定の要件を満たすことで認められています。

 

交通事故の被害者が患者さんの場合、相手の任意保険会社が支払いをしてくれることがあります。

そのため、患者さんに対して請求できないと勘違いをすることがあります。

 

しかし、施術契約を結んでいるのが患者さんである限り、その人に対して準委任契約に基づいて請求できます。

たとえ、損害保険会社が支払ってくれる場合であっても、権利がなくなるわけではないのです。

 

仮に、損害保険会社が施術料の全部または一部が損害に当たらないとして支払いを拒否した場合、後述のADR等の手続きを使っても埒が明かないときは、患者さんに請求することを検討します。

 

・損害保険会社

「任意、自賠責一括払い制度」というものがあります。

これは任意保険会社が自賠責保険でまかなわれる部分も含めて、被害者側に保険金を支払う取り扱いのことをいいます。後日、任意保険会社が自賠責保険会社に求償することになります。

 

損害額がはっきりしていない状況にあっても、速やかに賠償金が支払われることにより、適切な治療施術が行われるというメリットがあります。

 

この取り扱いをする場合、保険会社は前もって、保険会社が被害者の情報を医療機関から取得することについて被害者の同意を得ることになります(その結果、治療は十分だと判断されると支払いを中止されることがあります。)。

 

整骨院にとって重要なのは、この制度によって直接保険会社から施術料の支払いを受けられることにあります。

 

問題なのは、支払うという話だったのに応じてもらえない場合です。

支払うという話があり、これに応じたのであれば、契約が成立し請求権が生じそうです。

 

しかし、この場合、整骨院は保険会社に支払いを請求する権利はありません。

 

この問題における代表的な裁判例である大阪高判平元.5.12は、「一括払い」と呼ばれるものは、被害者の便宜上、病院、患者、自賠責会社などと意思疎通し、費用を立替払いする扱いをいうのであって、病院と行う話合いなどは、スムーズに手続きを行うためにすぎず、支払請求権を認めるものではないとしています。

 

■ポイント3~施術料回収

・郵便、FAX等

請求相手が患者さんですから、なるべく穏便な方法を取りたいと考え、郵便などによる催促を行うと思います。

 

しかし、これで効果がない場合には、支払督促など、より心理的な圧力がある方法を取らざるをえなくなります。

 

整骨院の経営を維持することは極めて重要なことです。

他の患者さんたちだけではなく、スタッフの生活を守るためにも施術料の回収は確実に行われるべきです。仮に、一部の人の回収を行わなければ、他の患者さんたちには不公平だと映るはずです。

 

弁護士が請求すれば、訴訟などに至らずに回収できることは少なくありません。時効の問題もありますので早めに相談してください。

 

・ADR

ADRというのは、裁判によらない紛争の解決手続のことを指します。

弁護士などの委員から、和解案などの提示を受けることができます。

訴訟と異なり、非公開で行われるという特徴があります。

 

損害保険会社が相手方の場合、「一般社団法人そんぽADRセンター」の活用が検討できます(外資系保険会社の場合には、「一般社団法人保険オンブズマン」、自賠責保険については、「一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構」の利用を検討します。)。

 

これらの法人は国から指定された機関であり、中立公正であることが認められています。

 

損害保険会社が支払いに応じてくれないような場合、これらの法人に対し、苦情申し立てを行うだけで支払ってくれることもあります。

 

加盟保険会社には報告義務等が課されていますので、理不尽な対応をされたような場合にはとても効果的な方法です(例えば、医師の承認があるのにもかかわらず支払いを拒否された場合。)。

 

苦情申し立てで解決しなかった場合には、解決委員を交えた紛争解決手続を活用することもできます。

 

これらの手続を利用する場合、必要書類や証拠を適切に揃えることが大切です。そのため、弁護士が手続きを取ることで解決されやすくなります。

不利な結果にならないためには当初から弁護士が関わることが重要です。

 

ただし、正当な権利または権限がなければ取り扱ってもらえないため、損保のADRについては、基本的に被害者から申し立ててもらうことになると考えられます。

 

■ポイント4~健康保険

・対象

健康保険の利用ができる点で、整骨院と、カイロプラクティックや整体などとは異なります。

しかし、整骨院での施術のすべてに健康保険の適用があるわけではありません。

健康保険の適用があると思っていたのにそれが否定されたときは、患者さんへの請求を検討することになりますが、支払いを拒絶される恐れがあり、トラブルの原因となります。

 

対象となるのは、捻挫や肉ばなれ、打撲、脱臼や骨が折れた場合です。

ただし、脱臼と骨折に関しては医師の同意が必須です(緊急であれば不要です。)。

 

慢性の腰痛や肩こりなどは含まれないので注意が必要です。

 

・重複受診

整形外科で同じ怪我を治療中に整骨院で施術を受けたとしても原則として対象になりません。

そのため、病院で治療中か聞き取りする必要があります。

もし、重複受診を理由として不支給となった場合には、後日、患者さんに直接請求していくことになります。

 

・業務中や通勤中の怪我

業務中や通勤中の怪我は原則として労災保険の対象です。

健康保険を使ってしまいますと、被災者は自己負担を除いた7割分を保険者に返さなければいけないなど、手続きが面倒なことになりますのでトラブルのもとです。

 

作業着を着用した状態や、営業車で来院されたり、怪我の原因を確認する過程で疑問が生じたりした場合には、労災に当たるか確かめることが重要といえます。

 

■ポイント5~その他の注意すべき事項

・不正請求

患者が交通事故による負傷と説明していたのに実際には全く異なる原因ということがあります。そもそも痛みなどの症状が一切ないことさえあります。

 

事故により負傷し医療機関を利用すると、通院日数に応じて慰謝料が認められることになっています。整骨院も要件を満たすと認められています。

 

この賠償金目的で整骨院を利用する人がいるのです。

 

この場合、損害保険会社から一括払いを拒否されることになり、依頼者に求めていくほかありません。しかし、お金を取ることが目的で通っていたわけですから、支払ってもらうのは困難です。

 

このような相手には、はじめから弁護士によって請求することが問題の早期解決につながります。

 

・整形外科での治療の継続のアドバイス

交通事故にあった方が整形外科で診てもらっていないことがあります。

病院を受診していなかったり、していても医師の承認を得ないで通院していたりすると、損害金として認めてもらえなくなる恐れがあり、患者さんとの間でトラブルになる恐れがあります。

そのため、病院を受診し、施術について医師の承認を得るようアドバイスすることも必要なことといえます。

 

また、整形外科を受診していたとしても、途中で通わなくなることがあります。

 

しかし、柔道整復師は医師ではありませんから、診断などを行うことはできません。

 

損害賠償金額の算定に重要な後遺障害の認定を行うには、経過観察が必要であり、後遺障害の認定のみを依頼されても医師から断られることになります。

 

無事認められると賠償金額も増えるため、未払い施術費があれば回収可能性が上がりますし、本来受け取れたはずの賠償金を受け取れなかったとして、患者さんからクレームを付けられるという問題を避けることもできます。

 

そのため、患者さんが整形外科への通院をやめていないか、注意を払う必要があります。

 

・不当利得

任意保険会社が一括払いしてきた場合、これで安心できるとは限りません。

一括払いをしたとしても損害賠償義務を認めたことにはならないため、損害賠償額とすでに交付した金額とを比較して、払いすぎたと判断した場合には、不当利得として医療機関に返還請求してくることがあります(東京地判平成23.5.31)。

これを防ぐには、過剰な施術にならないように注意する必要があります。

 

■まとめ

・施術契約は準委任契約です。そのため、症状の改善がなかったとしても代金を請求できます。一方で善管注意義務があるため、適切な施術をしないと支払いを拒否されたり損害賠償請求されたりすることがあります。

・交通事故の被害者の代わりに損害保険会社が一括払いしてくれることがあります。しかし、サービスで支払ってくれるだけですので、請求権は否定されています。

催促しても患者さんが支払ってくれない場合でも、弁護士が請求すると素直に支払ってくれることがあります。

・ADRを使うことで穏便に紛争を解決できることがあります。この場合も弁護士が関わることが大事です。

・健康保険の不支給決定が増えています。対象外の施術でないか注意を要します。また、通勤中や業務中の怪我は労災の対象です。

・交通事故にあった場合、病院を継続的に受診することが重要です。整骨院への通院は医師の承認のもと行うようアドバイスすることが大切です。

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