歯科医院経営トラブル3つのポイント!債権回収のコツと対処法

 

目次

はじめに

ポイント1~歯科医院における債権の発生原因

ポイント2~債権回収の方法

ポイント3~トラブルの予防

カルテ開示請求

証拠の保全

時効とカルテの保存期間

まとめ

 

■はじめに

歯科医院の倒産件数が拡大しています。

東京商工リサーチ社の分析報告によると、2017年度は20件と前の年度の2倍ほどとなり、23年ぶりの高い数値となっています。

 

主な原因の過半数は業績不振ですが、一般企業の倒産原因の一つである債権回収の不備が一つの要因となっている可能性も否定できません。

 

販売はうまくいっても支払いがなされなければすべて損失となるからです。

特に歯科医院におけるインプラント治療や矯正治療は費用が高額であり、1件でも回収できなければ経営に重大な影響を与えます。

 

本来充てることができた設備の増強や人件費を捻出できなくなれば、長期的にみて経営に致命的なダメージを与えることになりかねません。

 

滞納の原因は様々ですが、歯科医院において特徴的なこととして、一般の病院と比べて自由診療の割合が大きいことにより費用が高額となりやすいこと、患者さんの想像と異なる事態が生じやすいことが挙げられます。

 

想像と異なる事態とは具体的には、外貌の変化が期待と異なっていたことや、痛みがすぐに消えると思っていたのに消えないことなどがあります。

 

期待に反していた場合、信頼関係が失われ、その結果として支払いを拒否されたり、場合によっては訴えられたりしてしまうこともあります。

歯科医が訴訟に巻き込まれるケースは他の診療科目と比べて少なくありません。

最高裁判所の司法統計「医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数」によれば、平成29年(速報値)では88件(全体の11.7%)と、内科(24%)、外科(14.9%)、整形外科(13.3%)についで4番目に多くなっています。5番目である産婦人科(7.2%)以下を大きく上回っています。

 

ここでは、歯科医院の遭遇することの多いトラブルの対処法を中心に解説していきます。

 

■ポイント1~歯科医院における債権の発生原因

歯科医院で債権が発生するためには、治療がされることが必要となります。治療行為は大きく、健康保険の対象となるものと、対象とならない自由診療となるものに分けられます。

 

・保険対象

当該治療としては、う蝕(虫歯)の切削、一般の根管治療、プラスチックによる詰め物や銀歯、一般の入れ歯、歯周病治療としての歯石除去、虫歯治療の一環としての歯磨きの指導などがありますが、保険対象となるものは、患者さんの自己負担額が限定されるため、債権額は比較的小さなものが多いといえます。

 

・自由診療

これに対し、自由診療となるインプラントや歯列矯正、ホワイトニングなどについては保険の適用がなく、また技術料も高くなるため治療費が高額となり、債権額も大きくなりがちです。

 

一件あたりの金額では自由診療のほうが大きいため、より深刻な影響を与えるとも考えられますが、保険対象となる治療費も積み重なることで大きな影響を与えることになりますので注意が必要です。

 

■ポイント2~債権回収の方法

歯科医院による自力での回収方法として、電話や一般郵便での催促をすることが考えられます。

 

これらにより支払いをしてくれないときは、内容証明や調停、少額訴訟、通常訴訟といった法的な手続きを行っていきます。

 

内容証明は郵便局のサービスであるため、一般の人でももちろん可能ではありますが、通常郵便で効果がない場合、効果に疑問があります。

 

弁護士が送付した場合と比べて心理的なプレッシャーの度合いは大きく異なります。

弁護士からの督促であれば、内容証明郵便や裁判所を利用した手続きをとらなくても、電話やメールでの督促をするだけで素直に支払ってくれることも少なくありません。

 

問題を早期に解決し、歯科医療に専念するためにも、早めに弁護士に相談することが必要です。

 

■ポイント3~トラブルの予防

診療報酬の未払いは、資力の不足のほか、歯科医院との信頼関係が崩れる何らかの出来事に端を発していることがあります。

 

・説明責任

正当な治療であるにもかかわらず支払いを拒否される原因の一つとして、患者さんが治療結果に納得していないことがあります。

これを防ぐには、事前にしっかりと説明することが大切なのは当然ですが、説明内容を書面にしたものを交付することも重要です。

 

なぜなら、患者さんは自分にとって都合のいいことのみ覚えていたり、都合のいいように解釈することがあったりするからです。書面にしておけば、患者さん自身が読み返すことで納得することもありますし、客観的な証拠にもなりますので訴訟等になったときにも有効だからです。

特に、痛みがすぐに引くと思っている患者さんが少なくないため、一般的にどれくらいで痛みが引くのかということについて記載するなど、可能な限り患者さんの不安を取り除いていくための説明は重要です。

 

・同意書

高額な治療や外貌に大きな影響を与える治療など、トラブルになりやすい医療行為をする際は、具体的な治療行為について記載した書面につき、署名押印をしてもらうことが重要です。

これにより、同意していなかったという言い分を封じることができます。

 

・カルテ開示請求

カルテの開示を求められたとき、正当な理由なくこれを拒否することは許されません。

もちろん、手数料を取ることはできます。

医療契約は準委任契約と一般に解されているところ、受任者は事務処理の状況や結果について報告する義務があるからです。

地裁レベルではありますが、カルテの開示等を求めたのに拒否され損害賠償請求した事案で、カルテを開示しなかったこと等により損害を被ったとして、30万円程度の損害賠償請求が認められたケースがあります(大阪地判平20.2.21など)。

 

したがって、治療費が未払いであったとしても、相殺を主張されて、支払いを拒否される可能性があります。

 

・証拠の保全

ある日、いつもと変わらず診療をしているときに、執行官から書類を交付され、1~2時間後にカルテ等の検証を行うと告げられることがあります。

 

その後、裁判官や相手方の代理人弁護士などがあらわれます。

歯科医院に対する手続きは、検証と呼ばれる証拠調べ手続によって行われることが多いといえます。検証は、裁判官の五官により対象となるものを調べる作業です。

 

具体的には、診療録などを目で見て確認します。

カメラマンが同行し、対象物を撮影することもあります。

 

歯科医院としては、診療時間中に行われると他の患者さんの手前もありますから、なるべく穏便かつ迅速に証拠保全手続きが行われるように、協力することが望ましいといえます。

 

執行官から渡された書面には証拠保全の対象となるものが記載されていますので、それらを予め準備しておきます。写真撮影などの手間を省くため、カルテ等の文書についてはコピーも取っておいたほうが手続きの時間を短縮できます。また、文書を確認するための部屋を用意しておきます。何人もの場違いな雰囲気を持った人達がやってきますので、他の患者さんたちに不安を与えないために重要なことといえます。

 

証拠保全は強制的な手続きではありませんから、応じないという選択肢もありますが、その後の訴訟において患者側の主張が正しいと認められてしまうことがありますので、原則として応じたほうがいいといえます。

 

証拠保全手続きは、証拠が改ざんされたり無くなったりして証拠調べができなくなる恐れがあることから、これを防ぐための手続きですので、執行官による謄本送達から、具体的に実施されるまでの時間があまりありません。

 

そのため、証拠保全手続きがいつ行われても対応可能なように、あらかじめ対策マニュアルなどを作成し、スタッフに対応策を周知徹底しておくことが望ましいといえます。

 

また、いつでも相談できるように弁護士と顧問契約をしておくことも対策として考えられます。決定書の交付から時間があまりありませんから、弁護士が立ち会うことは難しいかもしれませんが、電話等によりアドバイスを受けられる可能性はあるからです。

 

このような手続きを受けるような事態になることは、予見が難しいといえます。

予兆として考えられることとしては、患者から説明と違うなどとクレームが寄せられていたり、治療期間中にもかかわらず予約がキャンセルされ、連絡も取れなくなったりしていることなどがありますが、これだけでは直ちに法的な手続きがとられるわけではないので、事前に把握することは難しいといえます。

したがって、証拠保全に対する対策として医療機関ができることは、常に証拠保全という手続きがとられることがあるということを想定し、日頃から備えておくことしかありません。

 

なお、証拠保全手続きは、勝訴できる見込みを判断するためにも行われますので、必ずしも本格的に長い裁判を闘うことになるとは限りません。もちろん、集められた証拠が歯科医側にとって不利に作用するとも限りません。「カルテが改ざんされた」などの主張がしにくくなりますから、カルテの信頼性が高まり、かえって歯科医側の主張が通りやすくなることもあるからです。

 

カルテなどに患者さんの情報をしっかり記載し文書等を適切に管理してあれば、患者側弁護士が勝訴見込みがないと判断し手続きをこれ以上とってこないこともあります。いたずらに不安がる必要はありません。

 

・時効とカルテの保存期間

契約上の債権は原則として10年(診療債権は3年)で時効でしたが、民法改正(2020年4月1日施行)により、請求可能日から10年のほか、債権者が請求可能なことを認識した日から5年経った場合でも消滅することになりました。

 

ただし、人の命や身体傷害による損害賠償債権については、請求可能日からの期間は20年です。

 

問題となるのは、診療録の保存期間(5年間)との関係です。

歯科医師としては最終の診療日から5年を経過していれば廃棄しても歯科医師法上の責任を果たしたことになります。

 

しかし、カルテは患者さんから訴訟を起こされた場合などに反論する有力な証拠となるため、5年では少なすぎます。適切な治療を行ったことを示す客観的な証拠が他にないからです。

 

では、どのくらいの期間が必要かといいますと、少なくとも10年、インプラントなど長期間経過してから問題となることも多い治療を考慮すれば、20年以上が無難です。

 

保管する物理的スペースの問題もありますが、PCカルテの導入や、カルテ保管サービスを利用する対策が考えられます。

 

なお、民法改正日より前に発生した診療債権は、原則として3年で消滅時効にかかります。手続きに必要な時間も考え、早めに相談してください。

 

・逆恨みによる滞納

患者さん自身による迷惑行為(セクハラなど)等により、以後の診療を拒否することが正当とされることがあります。これにより、患者さんがそれまでに行われた治療行為に対する支払に応じないことがあります。

診療拒否が適法であっても、客観的な証拠がなければ、不当な診療拒否にあたるとして逆に告訴されることも考えられます。

 

このような場合に備えて、証拠として録音しておいたり、監視カメラに迷惑行為が記録されているのであれば、記録が失われないように保存しておいたりすることも重要なことといえます。

 

客観的な証拠があるのとないのとでは、立証の難易度が大きく変わるからです。

もちろん、歯科医師は原則として診療を拒否することはできないので、個々具体的なケースによって診療拒否の正当な理由があるか慎重に検討する必要があります。

 

・高額療養費、医療費控除の周知

高額療養費制度や医療費控除によって患者さんの経済的な負担が軽減されますから、滞納のリスクを低減できます。したがって、これらの制度について患者さんに周知するということも重要なことといえます。

 

・歯科専門クレジット

高額な治療を行う場合に備えて、歯科専門のクレジットを導入することも滞納対策の一つとなります。

信販会社から治療費が振り込まれますので未回収とならないことが利点といえます。

 

しかし、手数料がかかりますし、連帯保証人が必要となることがあったり、ローンを利用することに患者さんに抵抗感があったりすることもあり、いつでも利用できるわけではないため、滞納を完全には防げません。

滞納予防という観点からは補助的な位置づけとなります。

 

■まとめ

・債権の回収を怠ることは倒産原因の一つです。

・歯科医院は自由診療の割合が大きく1件あたりの未回収金額が多くなりがちです。

自力での回収に限界を感じたら時効との関係もあるため、早めに弁護士に相談してください。弁護士が督促すれば速やかに支払ってもらえることがあります。

・治療内容について説明書を交付したり同意書をもらったりすることでトラブルを予防できます。

・証拠保全手続きに備えて、対策マニュアルや、弁護士にいつでも相談できる体制を整えておくことが大切です。

・カルテの開示請求は基本的に拒否できません。また、保存期間は少なくとも10年、可能であれば20年以上が無難です。電子カルテやカルテ保管サービスの利用も検討対象です。

・人の記憶に頼らず、客観的な証拠を確保することがトラブル対策の基本です。

 

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