民法改正後の債権回収はどう変わる?気になる点をチェック(2017年9月時点)

 

目次
はじめに
連帯債務者制度はどう変わる?
連帯債務という制度の目的と、改正で変わったこれからの連帯債務
民法改正で追加された連帯債権とは何か?債権回収に与える影響は?

 

■ はじめに

数年後に控えている民法大改正、大きく変化した債権法は、金融業界の
実務にどのような影響を与えるのでしょうか?
債権回収の際に、今までの法律知識では対応できない場面がでてきます。
今回は連帯債務者と連帯保証人について、改正があった部分と、
融資するときに気をつけたい点についてお話しします。

■ 連帯債務者制度はどう変わる?

1. 連帯債務者と普通の債務者の違い

連帯債務者について話すにはまず、連帯債務者という制度の趣旨について理解する必要があります。
ここでは、連帯債務者という制度の趣旨を確認しつつ、それが民法改正でどのように変わり、実務にどのような影響を
与えるのかも一緒にみていきましょう。

■ 連帯債務という制度の目的と、改正で変わったこれからの連帯債務

1. 連帯債務という制度の目的

一言で言えば「債権者の利益を守るため」の制度です。
連帯債務は、絶対的な効力、つまり「ひとりの債務者にある行為をすれば、他の債務者にも同じ効果が発生する」ことを特徴としています。

2. 請求

A、B二人の債務者がいて、連帯債務ではなかったとします。そのとき、債権者がAだけに請求してもBの債務の時効は中断しません。

そして当然ながら、Aの債務は請求の結果、時効が中断します。ではAとBが連帯債務者だった場合はどうでしょうか。ここで連帯債務の絶対効、すなわち「一人の債務者に対してした行為が、他の債務者にも効力を与える」が働きます。
Bの債務も請求を受けた場合と同じように時効が中断するのです。
「事項の中断とは」
債権は、行使しなければ20年の時間経過によって消滅します。それを防ぐために「請求」という方法があります。厳密には裁判上の請求が必要なのですが、請求を行うことによって債権の消滅の時間カウントを0に戻すことができます。0に戻った時効は、請求が終わったときから再びカウントをはじめるのです。これを事項の中断と呼びます。

3. 民法改正で変わった請求の方法

ところが民法改正によって、この「請求」の効力が変わりました。
連帯債務者Aに請求をすれば、Aの債務だけが時効中断し、他の連帯債務者Bが負っている債務には何の効力も及ばなくなりました。

これによって、債権者がAのみに請求したことで、Aの債務は時効が中断し、再び10年間の消滅時効がスタートするのに対して、Bの債務は中断せず、そのままAの債務より早く時効消滅してしまう、といった事態になってしまいます。

4. 請求に絶対的効力を与えることはできないのか?

では請求に絶対的な効力を与えることはできるのでしょうか?答えはイエスです。
改正後の民法にはこんな条文が追加されています。
「債権者および他の債務者の1人が別段の意思を表示したときは、その意思に従う」
つまり債権者はお金を貸すときに
「債権者が、連帯債務者Aに請求したときは、その請求の効果はBに対しても及ぶこととする」という文言を契約書にいれておけばいい、ということです。
民法改正によって基本ルールは変わりますが、契約内容によって当事者間で自由にできるということです。

5. 免除

債権者が一人の連帯債務者Aに対して「あなたの債務を免除します」と意思表示をした場合,
当然ですがAの負っている債務額は0になります。
このとき他の連帯債務者Bの債務額も、全額ではありませんが一定の割合だけ免除されることになっています。
A、B二人の債務者がいて、債務が1000万だった場合を想定してください。
連帯債務者A、Bには負担部分というものがあります。
特に約束がなければ、負担部分は平等です。つまりAとBはそれぞれ500万円の負担部分を負っているということです。
Aが債権者に債務免除を受けた場合、Aの債務は当然ながら0になります。そしてBの債務も
「Aの負担部分500万円」だけ免除されます。
するとBの債務は、1000万-500万=500万です。
ところが民法改正でこの免除の効果が変わったのです。
Aが受けた債務免除の効果が、Bに対して影響を及ぼさないことになったのです。
連帯債務という制度の趣旨は、債権者の利益を守るためでした。
それなのにAの債務を免除したことによりBの債務までが一部免除されるというのは
連帯債務という制度の趣旨に反すると批判が強かったのです。
連帯債務者にお金を貸すときは、この免除の効果について注意すべきです。

6. 時効の完成

時効の完成についても免除と同じように考えることができます。連帯債務者Aについて時効が完成すれば、Aの債務は消滅することはもちろんですが、
、Bの債務も免除の場合と同じように、「Aの負担部分」だけが消えます。

時効の完成についても免除と同じように改正され、
他の債務者に効果が及ばないことになりました。
理由についても免除と同じです。
以上が連帯債務者についてのお話でした。次は連帯保証人についてお話しします。

7. 保証人

保証人がもっている権利として、
「自分より先に、まずは主債務者に請求してください」と主張できる権利である、催告の抗弁権
「財産に強制執行するときは、まず主債務者の財産から執行すべきです。」と言える権利である、検索の抗弁権
があることはご存知だと思います。連帯保証人にはこの2つの権利がなく、保証人に比べると圧倒的に責任が重いということです。
この部分については改正後も変わりありません。大切なのはここからです。
保証人に対して債務の履行を請求しても、主債務者へ効果は及びません、しかし連帯保証人に対して
履行を請求した場合には、請求の効果が主債務者にも及ぶことになっています。
しかしここも改正で変化しました。
請求の効力は主債務者には及ばないことになったのです。
その結果、このような事態になる可能性があります。
債権者が連帯保証人に債務の履行を請求し、請求の効果としての時効中断が起こったとします。
しかしそれはあくまで連帯保証人の債務についての話であり、主債務者の時効は中断せずにどんどん進行します。そして主債務者の債務だけが時効完成し、消滅します。
ここで気を付けていただきたいのですが、民法では、連帯保証人は、主債務者の時効完成を援用できるというルールがあります。

つまり主債務者の時効が完成した後で、債権者が連帯保証人に「払え」といったところで、連帯保証人に「主債務が時効で消滅しているから私はそれを援用する。よって払う義務はない」と主張されてしまったらそれまでなのです。

■ 民法改正で追加された連帯債権とは何か?債権回収に与える影響は?

民法改正で新たに追加された概念「連帯債権」とはどのようなものなのでしょうか。
数人の債権者がひとつのものを誰かに売った場合、その代金債権は「不可分債権」となります。
不可分債権とは、わかりやすく言えば「債権者が何人いようと、人数で分割できない債権」という意味です。
ですから、
例えば債権者がA、B、Cと3人いた場合で9000万円の不可分債権をもっていた場合、Aが債権者に対して請求できる金額は、3000万円ではなく、9000万円全て、ということです。
債務者も、Aが全額請求してきた場合は全額払う義務があります。
全員がひとつのものを売ったときの代金債権など、性質上分割できない債権を不可分債権といいます。
連帯債権を一言で言うと分割できる分割債権を、特約をつけることによって不可分債権にしてしまう。という制度です。債権者同士でそういう特約を結ぶのです。
例えば、A、B、Cの3人が共同で9000万円の金銭を貸し付けた場合、そのままでは分割債権となりますから、Aが債務者に請求できるのは3000万円分だけということになります。

しかし、連帯債権とする旨の特約を盛り込んでおけば、Aが請求できる額は9000万円全額になるということです。

貸金業者がこの制度を利用するメリットは現時点ではあまりないと言わざるを得ませんが、今後の実務界の動き次第では、有効な運用方法が確立されるかもしれません。
いかがでしたでしょうか。今回は民法改正のうち、債権法の中の連帯債務、連帯保証を中心に実務に与える影響をお話しました。

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