踏み倒されそうになったリース代金を回収したケース

これはリース代金の回収のご相談を受け、無事回収した事例です。
依頼主のA社はB社に営業用の自動車・OA機器などのリースをしていましたが、支払いがストップし、未収のリース代は損害金・延滞金を含めておよそ270万円になっていました。ご相談を受けた時点でB社の経営状態は悪化していました。
既に再三請求しても連絡がなかったとの事なので、早速A社の代理人として内容証明郵便を送りましたが応じませんでした。そこで裁判の手続きを準備し、仮差押えを申し立てました。

■仮差押えで銀行取引を停止させる

仮差押えに先立って、債務者であるB社の資産状況を調査しました。
不動産・動産・預貯金などが仮差押えの対象になりますが、たとえ差押えになっても充分な支払い能力がなければ効果が上がりません。そのため相手の資産状況を把握する事も重要です。
B社の場合、所有していた不動産および動産は根抵当権が設定されており、資産価値はほぼゼロでした。一方預貯金は充分にあったため、預貯金を仮差押えする事で債権を回収できる目処が立ちました。
債務者の預貯金を仮差押えするには、裁判所に30%程度の保証金を納める必要があります(保証金の割合は事例によって異なりますが、20%~30%位が目安になります)。
A社は保証金として約80万円を納め、裁判所による決定で仮差押えの手続きが確定しました。
なお、保証金は債権者が申し立てするための供託金で、債権回収が済んで仮差押えが解除になれば、その時点で返還されるのが通例です。

■資金繰りができなくなり、支払いに応じる

仮差押えが実行され、B社は預金の引き下ろしが不可能になりました。それだけでなく、B社が融資を受けていた銀行との取引も停止されました。
経営状況が悪化していたB社は追加融資を受けられなくなり、A社が請求しているリース代金を支払わなければ立ち行かない状態になりました。
結局B社はA社に対し、未納のリース代270万円を分割で支払うよう申し出ました。これによりリース代金の踏み倒しを回避し、債権回収に成功しました。
このケースではB社が未納の料金を無視して経営を続けており、銀行から融資を受けていた為に、預金の仮差押さえが有効に機能した例です。
裁判所の命令により、銀行を通じて資金の流れがストップする事で、すぐにでも支払いに応じるような状況を作り出せたのが仮差押えの効果と言えます。

個人の金銭トラブルを解消したケース

仮差押えは企業間に限らず、企業と個人・また個人間の金銭トラブルの解決にも活用できます。
ここで紹介するのは、個人の金銭トラブルを調停し、債権回収に成功した事例です。

■友人に貸したお金を取り戻したい

以前友人に120万円を貸したが何年も返済してくれず、訴えるしかないと相談された例です。
貸した際には便箋に手書きの念書を取り交わしただけで、はっきりとした返済期限は設けていませんでした。
その後メールや口頭で何度か催促したものの一切支払う様子もありませんでした。
そこで貸主の代理人として自宅や勤務先に電話で問い合わせたところ、借金の事実を認めず、内容証明郵便を送っても反応が無かったため、債権の差押えに向けて法的手続きを進める事となりました。
個人間でのお金の貸し借りは、弁済日(約束した返済期限)の翌日から10年で時効になります。
ちなみに会社同士や、会社と個人の間での貸し借りでは5年が消滅時効です。
今回の場合は貸した時に返済期限を定めていませんでしたが、時効の前に裁判所で債務の支払い義務が認められれば、その時点から10年間の時効が起算されます。
手書きの念書やメールで催促した履歴なども参考資料として有効です。

■銀行口座の仮差押えで支払いに応じる

当事者間の話し合いで済むようであれば訴訟の必要は有りませんが、お金を貸した事実関係がはっきりしているのに返済の意志が認められなければ訴訟に踏み切る事になります。
その際に重要なのは相手に支払い能力があるかどうかです。折角勝訴しても充分な債権回収ができない場合もあります。
この友人は勤務先が判っており、調査したところ給与の振込み先の銀行名・支店名・口座名義が判明しました。
返済能力が有ると確認できたため、依頼者の意向に沿って訴訟の準備をします。
貸金が60万円以下ならば、少額訴訟で済ませる事ができます。原則1回の出頭で簡便に行えるのが利点ですが、今回は120万円なので通常訴訟として取り扱う事になります。
仮差押えの申し立てが裁判所に認められ、この友人=債務者の銀行預金が凍結されました。
仮差押えの処分を受けて、友人は当方と連絡を取り、初めて返済の意志を示しました。
預金残高だけでは完済できませんでしたが、次月の給与からも一部が仮差押えの対象になります。
これは債務者の生活を保障する為で、手取り額の4分の1(手取り額が44万円以上なら手取り額から33万円を差し引いた額)が差押えの上限となっています。
このように個人間の金銭トラブルでは、銀行口座を凍結して債務回収を進めるケースがポピュラーです。

→ その他の解決事例