弁護士以外の士業事務所が自分でできる債権回収の手順と知っておきたい3つの注意点

 

目次

1、未払いの債権を回収する方法は大きく2つ!状況に合わせて使い分けが必要

メールや電話での督促などの裁判所での手続きを必要としない回収方法

支払督促や通常訴訟などの裁判所での手続きを要する回収方法

2、未払いの報酬はどの時点で弁護士に回収を依頼すべきなのか

回収費用が気になる場合や小口の報酬をまとめて回収した場合も弁護士が有効

3、ブランドイメージを守りつつ督促をするにはどうすべきか

督促の文書やマニュアルを弁護士事務所に相談することが可能

最後に

 

司法書士や社会保険労務士、税理士、公認会計士、測量士、海事代理士、弁理士、行政書士など、色々な士業があります。士業の共通点は、法律トラブルや法的な手続きを専門にしている弁護士や司法書士以外も、法律と接する機会が多いという点です。たとえば社会保険労務士は労働問題をよく扱います。弁理士は特許申請などを行うために関連の法律をよく確認します。測量士も、筆界特定制度と馴染み深いという点で関係する法律に接する機会は多いことでしょう。

 

士業の多くは、自分の職域に関わる法律を心得ている。つまり、法律に接する機会の多い仕事です。法律に関わる機会が多いからこそ、士業資格を使って仕事をしている人は、民法などの法律の基礎をおさえていることが多いと考えられます。

 

基礎がわかっているからこそ、報酬の未払いが発生したら、まずは事務所または有資格者自身で対応しようとすることがほとんどです。しかし、職分に関わる法律や、法律の基礎知識に馴染んでいるといっても、常日頃から債権の回収を行っているわけではありません。

 

基礎知識を持っているからこそ報酬の未払いに対し、自分で対処しようとする。しかし、日常的に債権の回収をしているわけではない。だからこそ、債権を回収する上で大切な注意点を見逃してしまうことがあります。士業事務所が未払い報酬を回収する上で注意したい3つのポイントがあります。

 

■1、未払いの債権を回収する方法は大きく2つ!状況に合わせて使い分けが必要

 

社労士や税理士などの士業が未払いの報酬を回収する方法は、大きく2つにわけられます。

 

2つのうちどちらに分類される方法を選択するかは、「未払い債権の状況」や「内容」「事情」「債務者の態度」「督促はしたのか。したなら、何度しているのか」「未払いの状態がどれくらい続いているか」などを総合的に見て検討する必要があります。

 

報酬を回収する際は必ず督促からはじめて段々と強力な回収手段に切り替えていくというふうに、段階を踏む必要はありません。総合的に見て適切だと考えられれば、いきなり強力な回収手段を講じた方が得策であるケースもあります。

 

・メールや電話での督促などの裁判所での手続きを必要としない回収方法

 

1つは電話やメールなどでの督促のように、個人や事務所で行える方法です。

 

郵便局などで相応の手続きが必要になり、切手代や通信費などの費用が必要になります。また、「あくまで報酬の支払いを促す」だけで、強制力がないという特徴があります。ただ、費用負担は次に紹介する2つ目の方法より軽くなることが多いというメリットがあります。

 

1、電話やメールでの督促

 

電話やメール、普通郵便などを使い報酬の支払いを促す方法です。費用負担は債権の回収方法の中では最も軽くなります。あくまでも促すだけなので、強制力はありません。

 

依頼人が単純に支払いを忘れていたなどのケースでは効果が期待できます。対して、依頼人との間に報酬について争いがある場合や、連絡を無視している場合、支払いする気がない場合は、督促だけでは報酬の回収が難しいと考えられます。

 

2、内容証明郵便による督促

 

内容証明郵便は日本郵政のサービスの1つで、日本郵政側に「誰が何時どんな内容の郵便を誰に送ったか」を証明してもらうことができます。報酬などの債権の回収では、よく用いられる方法です。

 

内容証明郵便というサービス自体、士業には馴染み深いものです。電話やメール、普通郵便より、債務者に対して精神的なプレッシャーを与えることができるというメリットがあります。

 

内容証明郵便による督促も、あくまで支払いを促すことしかできません。強制力はありません。ただ、内容証明郵便の場合は、時効を中断するという効果を期待して使う場合があります。

内容証明郵便などで裁判外の催告をし、催告後6カ月以内に裁判手続きなどを行うことにより、時効の完成を6カ月延ばすことができます。

このため、内容証明郵便は単純に督促として使うだけでなく、時効の完成を阻むためであったり、後の法的な措置を考えたりして使われるケースがあります。

 

内容証明郵便さえ送れば時効完成を阻むことができるわけではありません。続く裁判などの手続きとワンセットであると考えて使う必要があります。また、内容証明郵便を何度も送れば、その都度、時効の完成を阻むことができるというわけではありません。闇雲に送ればいいというわけではないため、使いどころをよく考える必要があります。

 

・支払督促や通常訴訟などの裁判所での手続きを要する回収方法

 

2つ目の方法は、裁判所で手続きをすることによってはじめて取ることのできる回収方法です。通常訴訟や調停、少額訴訟、支払督促、強制執行などがこの方法にあたります。

裁判所で手続きすることによってできる回収方法の多くは、方法ごとに強い効果を持っています。

ただし、手続きに応じた印紙や切手を納める必要があり、そして弁護士に依頼すると弁護士費用が必要になることが基本なので、自分で行う督促などよりも費用負担が大きくなります。費用倒れとのバランスや、未払い報酬の額や事情を考慮した上で最も回収率が高くメリットのある方法を選択することが債権の回収を成功させるための鍵になります。

さらに、強制執行のように、債務名義の取得など、発動に条件のある手続きもあります。自分で行う手続きとは異なり、条件を満たさなければ使うことができない回収方法があるという点に注意が必要です。

 

■2、未払いの報酬はどの時点で弁護士に回収を依頼すべきなのか

 

同じ士業同士の横繋がりを持っていることは、珍しくありません。たとえば、税理士に税務相談が舞い込んだとします。しかし、その相談の中には企業年金の話も含まれていました。また、土地の売買の話も含まれていました。こんな時は税理士だけで対応せず繋がりのある社労士や司法書士、測量士などに、それぞれの職分の仕事をお願いすることになるはずです。士業同士は全てが全て商売敵ではありません。一緒に仕事をするパートナーとして、密接に関わることがあります。だからこそ、「あまりに身近過ぎて、弁護士に債権の回収を依頼することを見落としていた」ということが少なくありません。

 

弁護士にも得意分野があります。離婚問題を得意としている弁護士もいますし、相続問題を得意としている弁護士もいます。民事よりも刑事事件を中心に仕事をしている弁護士もいます。そして中には、債権の回収を得意としている弁護士もいます。弁護士は身近な存在で、「依頼する」ということを選択肢から無意識に外してしまっているかもしれません。

 

債権の回収を得意としている弁護士は報酬などの回収実績もあります。また、報酬を回収する上での注意点やノウハウもよく理解しています。

 

士業は横繋がりで、それぞれの職域に関する仕事を協力して行うことがあります。だからこそ、それぞれの仕事の専門性はよく理解しているはずです。

債権の回収を行うには、深い法的な知識が必要です。
回収方法を一通り把握し、債権額や事情を考慮して回収方法を選ぶことが回収率に直結します。

特に、

 

1、未回収の小口報酬がある程度の量たまっている

2、未回収の報酬について依頼者と揉めている(債権の発生についての疑義、債権額など)

3、未回収の大口報酬がある

4、報酬の時効が心配。時効にかかる恐れがある

5、仕事に追われており督促などをする時間がとれない

6、督促など自分でできることはやり尽くしたが報酬を払ってもらえない

7、有効な報酬の回収手段が思いつかない

 

という上記7つのケースでは、弁護士へ債権の回収を依頼することが有効です。時間や労力、回収率の面で、弁護士に債権の回収を任せてしまった方がよりスムーズに報酬の回収ができる可能性があります。

 

・回収費用が気になる場合や小口の報酬をまとめて回収したい場合も弁護士が有効

 

弁護士に報酬の回収を依頼すると、手許に報酬が何も残らないのではないかという懸念があります。実際に、債権額に対して適切ではない方法で報酬の回収をはかると、費用倒れになることがあります。これは測量士や社労士などの士業事務所だけでなく、一般の企業でも同じことです。

 

債権の回収は弁護士費用や方法ごとの回収費用を差し引いて、プラスになってこそ回収が成功したと言えるのではないでしょうか。マイナスになっては回収する意味がありません。債権の回収においては、何よりマイナスになることを避けるべきです。

 

額の小さな報酬の場合、債権の回収を依頼してしまうとマイナスになるという印象が強いかもしれません。しかし、小口債権がある程度の数まとまって存在していれば、弁護士に回収を依頼してまとめて回収した方が、手続き的な負担や時間的な負担、そして費用面での負担が軽減される可能性があります。小口債権がある程度まとまっていれば、弁護士に回収を一任するという判断を下すのも方法の1つです。

 

■3、ブランドイメージを守りつつ督促をするにはどうすべきか

 

未回収の報酬を回収する場合、気をつけたいのは回収の方法や費用や事務の負担軽減だけではありません。どのように事務所のブランドイメージを守りながら報酬を回収するのかも注意しておきたいポイントになります。

 

士業の事務所にはそれぞれブランドイメージがあります。たとえば、祖父の代から地域に根ざして仕事をしてきた税理士事務所は「歴史が長い」というブランドイメージを持つことでしょう。特定の分野に特化している事務所には「その分野に強い」というブランドイメージがあるはずです。どうやって事務所のブランドイメージを損なわずに債権を回収するかが重要になります。これは、会社も同じです。会社も売掛金や売買代金の回収を行う際はブランドイメージを損なわないか、特に注意しながら進めます。

 

督促などは、メールの文面や文書の文言に気をつける必要があります。債務者が支払いに応じていない状況でも、督促も含めて債権の回収は法律を守って進めることが重要です。この「法律に則った回収」と「ブランドイメージを守る」ことが特に大切になります。

 

・督促の文書やマニュアルを弁護士事務所に相談することが可能

 

督促は言葉遣い1つにも気をつける必要があります。そのため、個別にオルジナルの文面を作成するのではなく、一括して基本的な文面を作成しておくと便利です。

 

督促にもルールがあります。ルールに反する督促をしてしまうと、債務者から反対に訴えられる可能性もあります。弁護士のリーガルチェックを受けたテンプレートを用意しておければ、報酬の未払いに対してスムーズに督促を行うことができます。事務所に合ったテンプレートを用意することによって、ブランドイメージを守ることにも繋がります。

 

未払いの報酬を回収するために何より大切なのは、放置しないということです。日常の業務や依頼人への督促の難しさを理由に放置してしまうと、未回収のまま消滅時効を迎えてしまうことになります。弁護士に相談した上で事務所に合った回収マニュアルを作成し、どのくらいの未払い期間でどのようなリアクションを取るか決めておくと効果的です。

 

■最後に

 

社会保険労務士や測量士などの士業も、仕事をすれば報酬が発生します。会社の売掛金や売買代金の未払いと同じく、報酬の未払いが発生したら自ら回収のために動くことになります。

 

士業事務所にはブランドイメージがあります。依頼によって発生する報酬も、仕事内容に合わせて小口から大口と、多種多様です。ブランドイメージを守りながら個別の債権を回収することは、非常に悩ましい問題です。そんな時は弁護士に報酬の回収を依頼してはいかがでしょう。

 

小口債権もある程度まとまっていれば、回収を依頼することができます。大口債権の場合も、ブランドイメージを守りたい場合や、督促をしても応じてもらえない場合、債権自体に争いがある場合は弁護士事務所に依頼した方が事務の負担が少ないだけでなく、債権トラブルが悪化することを防止できます。

債権回収 相談金・着手金 0円 無料法律相談のご予約 TEL:03-5251-0003 お電話は平日9:30~18:00
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