はじめに

法律が改正されたため新たに過払い金が生じることはなくなりましたが、すでに生じているものについては今も取り戻せる可能性があります。改正前にカードローン、クレジットカードのキャッシングなどを利用したことのある人は念の為に調べてみることをおすすめします。
そのうち調べればいいと先延ばしにしている人もいるかもしれませんが時効のため権利がなくなってしまうこともあります。
手続きをとることでなにか不利益を受けるのではないかと心配される人もいますが特に問題はありません。
仮に調査の結果過払い金がなかったとしても借金が減ることはあります。債務整理によって借金を根本的に解決することも可能です。

ここでは多くの人が疑問に思うことや基本的なことについてわかりやすく解説していきます。

ポイント1~どのようなものか

クレジットカードのキャッシングなどを利用した際、本来支払わなくてもよかった余分に返済したお金のことを過払い金といいます。元本に関しては返済義務があることは当然ですが利息を余計に支払ってしまうことがあるのです。

なぜこういったことが起きるのかというと法律によって金利の上限が決められているためです。わかりやすい利息制限法という名前の法律です。
消費者金融や信販会社の多くがこの上限を無視してお金を貸し付けていたため契約どおりに返済を続けていると完済し終わっているのにも関わらずお金を返していたことになります。
業者は法律に違反して余分に受け取っていたわけですからその部分については不当な利得ということになり借主に返さなくてはいけないのです。しかも違法に受け取っていたお金に貸金業者側が利息をつけて返さなくてはいけないこともあります。債務者から債権者に立場が逆転するのです。

グレーゾーン金利

ではなぜ貸金業者は違法な金利をとっていたのでしょうか。ヤミ金業者だったからというわけではありません。だれでも知っているような大手の消費者金融や信販会社もこういった貸し付けをしていたのです。そのため自分はテレビコマーシャルもやっているような大手の会社しか利用していないから過払い金なんて発生しないと考えるのは大きな間違いです。

原因は利息制限法のほかにもう一つ出資法という法律がありこちらでも利息の規定があったからです。出資法の金利は29.2%までとされておりこれを超えると刑罰が科されるのに対し、利息制限法では15~20%(元本により変わります。)までとされており刑罰の規定はありません。
その上で、貸金業法という法律により一定の条件(返済が任意であることや特定の書面の交付)を満たせば適法な返済とみなされるという仕組みがあったことも理由です(みなし弁済)。
つまり、金利が29.2%までであるが利息制限法を超えるものについても有効とされる余地があったためほとんどの業者がこの範囲で貸付けを行うことになったのです。

しかし、このようなややこしい仕組みとなっていたため数多くの訴訟が起こされることになりました。その結果最高裁によりみなし弁済の規定が厳しく解釈され基準を満たすことが実際上困難となり有効な返済として扱われなくなりました。
そのため利息制限法に基づいて利息を計算し直すことで借金がなくなり払いすぎていた分について返還を求めることができるようになったのです。

もちろんこのような状態は放置できないため2010年6月に法律が改正されたため新たに過払い金の問題が起きることはなくなりました。そのため改正前に取り引きを行っていた人だけが対象となります。すでに完済していたとしても対象となりえます。
たとえカードや契約書、明細書などをなくしていたとしても取引履歴の開示を請求できるためあきらめる必要はありません。

ポイント2~対象となる条件

2010年6月以前に消費者金融や信販会社などのカードローンやキャッシング等の利用経験のある人が対象です。
もっとも実際には多くの会社が2007年までに金利を適法なものに引き下げたため返還してもらえる期待が高いのは2007年以前に借り入れをしたことのある人ということになります。
もちろん違法な金利で貸付けを受けていたことが前提です。
適法な金利は借り入れていた金額によって変わり、また利息がいつ変更されたのかは業者により違いがあるため弁護士に相談してください。

ポイント3~メリット

まとまったお金が返ってくる可能性があることが一番の利点といえます。これまで借金で苦しんでいたのにも関わらずむしろお金が返ってくるため生活が大きく改善します。
たとえ少額しか返ってこないケースであったとしても借金がなくなるだけで大きな意味があります。

ブラックリストに載らないことも重要です。
通常の債務整理手続きでは信用情報機関に事故情報として記録されてしまい新たにクレジットカードを作ったり借り入れをしたりすることがしばらくの間できなくなってしまいます。過払い金の場合には債務を減らすというより債権者としてお金を請求していくわけですから信用情報に記録する理由がないのです。

業者は法律上根拠のないお金を受け取っているわけですから逆にそのお金に利息をつけてもらえるのではないかという疑問がわくかもしれません。実際業者が悪意の受益者にあたれば利息も請求できます。

ポイント4~デメリット

単に自分のお金を取り戻すだけですから特に問題となることはないといえます。
ひとつ気をつけなければならないこととしては、いま現在返済を続けている状況で利息の再計算をした結果借金が残ってしまうケースというのがあります。このようなときには信用情報に記録されてしまうため弁護士とよく話し合いどのように対応してもらうか決めることになります。

また借金がない場合であれば信用情報機関には登録されないわけですが、内部情報としては記録されるため請求相手の業者については利用できなくなることがあります。

官報などに掲載されるわけでもないため家族など身近な人に知られる心配も通常ありません。弁護士事務所からの郵便物によって同居人に気づかれるおそれがあるときは事前に連絡方法を相談しておけば適切に対応してもらえます。

ポイント5~注意すべきこと

法改正前の借り入れであればそのすべてが対象となるというわけではありません。
あたりまえですが違法な金利で貸し付けられていなければ問題とはならないのです。
例えば銀行についてはもともと適法な貸付けしかしていないため対象外です。

誤解されやすいものとしてクレジットカードの利用が挙げられます。
クレジットカードの場合にはショッピング機能とキャッシング機能の2つがあります。
これらのうちショッピング機能については対象外となっています。
理由は法律の対象となっているのが「消費貸借」つまり借金だからです。買い物をしたときはカード会社は代金を立て替えてくれたにすぎずお金を借りたわけではないからです。一般用語として債務全般を借金と呼ぶこともありますが法律上は別物なのです。
分割払いの場合にはカード会社に手数料を取られますが利息ではないためこれも対象外です。
例えば、予備校やエステの代金、自動車教習所などの高額な支払いをクレジットカードで支払ったとしても過払い金の対象外です。

よく借金の相談は早めに行うことが大切だといわれますがその理由は借金が更に増えてしまい債務整理の手段が狭くなったり、強制執行を受けたりするおそれがあるというだけではありません。時効にも気をつける必要があるからです。
一定の時間が経過してしまうと持っていた権利を失うことになりますが、過払い金請求権も最後に返済したときから10年がすぎてしまうと請求することが難しくなります(ケースによっては更に短くなることがあります。)。調査にも時間がかかるため少しでも請求できる可能性があると思ったらとりあえず相談されることをおすすめします。

手続きとしてはまず適法な利息で計算し直すことが必要です。そのためには業者側に取引データを提供するよう求めることになります。これにより残債の有無などが判明することになります。
違法な高金利での貸付けが行われ利息を余計に取られていた場合にはその分は元本に充当されることになります。その結果元本がなくなった状況でさらに返済していることがわかれば過払い金が生じることになるのです。

これらの計算は簡単ではないため専門の弁護士に頼ることが重要です。
仮に調査により過払い金がないことが判明しても借金が大きく減ることは少なくありません。
また、違法な高金利で借りていなかったとしても債務整理をすることで債務の負担を軽くすることができます。
すでに完済済みの人も現在借金を抱えていて返済に困っている人も専門の弁護士に一度相談されることをおすすめします。

まとめ

  • カードローンやキャッシングなどにより利息を払いすぎてしまうことがあります。違法な金利で貸付けが行われていたからです。大手の会社も少なくありません。弁護士に任せれば取り戻すことができます。
  • 2010年6月に法律が改正されたためそれ以前に借り入れていた人に可能性があります。
  • 過払い金の返還を請求したとしてもブラックリストに載ることはありません。ただし手続きをしても債務が残ってしまうときには登録されることがあります。
  • 家族などに知られずに手続きをとることが可能です。
  • クレジットカードの場合キャッシング機能は対象となりますがショッピングについては対象外です。
  • 銀行カードローンなど低利のものについては対象外です。
  • 時効があるため早めに手続きをとる必要があります。
  • カードや明細書などを紛失していたり記憶があいまいであったりしてもあきらめる必要はありません。
  • 適法な金利に基づいて計算し直すことは簡単ではないため専門の弁護士に相談することが大切です。