契約書作成は契約を無事に行うために重要なものです。契約書の内容に不備があれば思わぬトラブルが発生するかもしれません。

この記事では契約書作成における注意事項について解説します。

 

そもそも契約書とは

契約とは複数の相対立する意思表示の合致により成立する法律行為のことです。契約書とは契約の内容を書面にしたものです。

保証契約など一部の契約については契約書作成が必要ですが、通常の契約については口頭の約束でも契約は成立します。契約書を作成する意義は以下のような点が挙げられます。

 

・契約内容を明確にすることで意思を統一する

・契約を守りやすくなる

・トラブルが生じた際に証拠となる

・トラブルが生じた際の解決方法を決めておける

 

契約書作成におけるチェックポイント

契約書は契約の内容によって盛り込むべき内容が異なりますが一般的な契約書は以下のような形式となっています。

 

表題(タイトル)

契約書作成の際は表題をつけます。表題は契約の内容を正確かつシンプルに表したものにします。「売買契約書」、「請負契約書」、「委任契約書」などです。後で契約書が必要となったときにすぐに判別できる程度に具体的に記載しておくと管理がしやすくなります。

 

印紙

契約書作成の際、契約の内容によっては印紙を貼らなければならないものがあります。

金額によって印紙税の額が異なるため文書ごとに確認が必要です。仮に印紙を貼らなかった場合、契約書自体が無効になるわけではありませんが張り付けなかった場合、懈怠税がかかる可能性があることに注意が必要です。

 

前文

契約書作成において前文を入れると分かりやすくなります。前文とは契約当事者やどのような契約を締結するのかを示す部分です。当事者や目的物などの用語を定義することもあります。これにより契約書が読みやすくなり管理もしやすくなります。

 

前文例

株式会社〇〇(以下「甲」という。)は、株式会社〇〇(以下「乙」という。)との間で、商品の売買に関し、以下の通り契約を締結する。

 

目的

契約書には契約の目的を記載することが一般的です。契約の目的を明確にすることで各契約条項の趣旨が明確になりトラブルが起こりにくくなります。

 

権利義務の内容

契約書作成の要素となる部分です。当事者の権利と義務がいかなるものなのかをできるだけ具体的に記載します。売買や賃貸借契約であれば目的物を特定する必要がありますし、請負や委任の場合には業務の内容に疑義が生じないようにします。必要に応じて物件などの詳細は別紙に記載します。

 

条件、期限、契約期間

権利や義務に条件を付けることがあります。条件とそれを満たしたときの効果を明示することで疑義を残さないようにします。

義務を果たすべき期限を設けた場合には期限を経過した場合の効果も記載します。遅延損害金や期限の利益喪失条項などが代表例です。

賃貸借やサブスクリプションなど継続的な契約書作成の場合、有効期間を定めるとともに途中解約や更新の可否や方法についても定めます。契約期間の開始日も記載します。

 

契約解除

債務不履行があった場合には一定の条件のもとで解除することが可能です。しかし信用不安が生じているのに債務不履行があるまで解除できないのでは損害が生じる危険があります。そこで一定の事由が生じたときには解除できるようにしておくことが基本です。

 

解除条項例

第〇条(契約の解除)

1.甲又は乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、何らの通知若しくは催告をすることなく、直ちに本契約を解除することができる。

(1)監督官庁より営業許可の取り消し、停止等の処分を受けたとき

(2)支払停止又は支払不能の状態に陥ったとき

(3)差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、又は公租公課の滞納処分若しくはその他公権力による処分を受けたとき

(10)その他、前各号に準じた事態が生じたとき

2.甲又は乙は、相手方が本契約に定める条項に違反し、相当の期間を定めて催告したにもかかわらず是正されない場合は、本契約を解除することができる。

3.前各項の規定により解除権を行使する場合、相手方の責めに帰すべき事由の有無を問わず解除することができる。

 

損害賠償

損害賠償が生じる場合や範囲、損害賠償額の予定(違約金)なども必要な範囲で記載します。

 

費用負担

契約締結時や履行する際に費用が生じる場合、誰がどの範囲で負担するのか明示しておくとトラブルを減らすことができます。

 

規定外条項

契約書に記載のない事態が生じた場合に当事者の協議で解決するとの条項です。実際上の意味はあまりありません。

 

紛争解決条項(合意管轄、準拠法)

契約当事者間でトラブルが生じた場合の解決方法を指定しておきます。どの裁判所を利用するのか、どの国の法律に従うのか、裁判ではなく仲裁にするのかなどを定めておきます。近隣の裁判所を指定しておくことにより遠方で裁判をするリスクを減らせます。

 

後文

契約書を何通作成し誰が保管するのかを記載します。契約書作成方法に指定があればその方法も記載します。

 

契約書作成日

実際に契約書を作成した日を記載します。通常は両当事者の署名がなされた日です。契約書を郵送して署名をもらうケースでは自社で日付を入れたものを送付した方が日付のずれが生じません。契約書作成日と契約の効力発生日は同じとは限りません。契約書作成日の前から効力が生じている場合には作成日を遡らせるのではなく効力発生日を記載します。

 

署名押印

契約当事者が署名や押印を行います。法人であれば代表者の署名や押印が必要です。署名や押印があれば紛争となった際に重要な証拠となります。

 

<関連記事>債権回収を見越した契約書の内容と作成方法

 

契約書作成における注意事項

契約書作成に関して法令で規定されている場合を除き特に形式が決まっているわけではありません。一般的には以下の点に注意して作成するといいでしょう。

 

法律に反していないか確認する

契約書に法律に反した内容が入っている場合、契約自体が無効とされるケースがあります。どのような契約もできるのが民法上の原則ですが法に反している場合はその限りではありません。契約書作成の際には法律に反していないか確認しておく必要があります。部分的に無効とされるケースもありますが全体として無効とされてしまう場合もあります。関連法令をよく確認した上で契約書を作成するようにしましょう。

 

できるだけ具体的に記載する

契約書作成の目的は当事者間でのトラブルを避け、万が一紛争が生じたときにも解決をしやすくするためです。そのためには契約書の内容はなるべく具体的に記載してあいまいな表現は避けるようにします。解釈があいまいになりそうなときには用語の定義をしっかりと記載し、期間や商品などを示す際には数字を用いるなど明確に表現することを心がけます。

 

契約書のひな形をそのまま使わない

市販の契約書のテンプレートがありますがそのまま利用することはリスクがあります。ひな形は一般的な契約を想定して作成されており個別の契約に適切とは限らないからです。通常はひな形を参考に実際の契約の内容に合わせて修正したり、足りない部分を補ったりすることになります。ひな型は一方の当事者に不利な内容が含まれていることがあるため自社に不利な条項を知らずに入れてしまうこともあります。

ひな形は契約書作成の形式面の確認や契約条項の漏れがないかをチェックするために使うと効果的です。

 

誰が読んでもわかりやすい表現にする

契約書は当事者間の意思を統一する役割だけでなく紛争が生じた際の証拠ともなります。そのため裁判官や調停委員など第三者が読んでも理解しやすい表現を心がけるようにします。当事者だけで理解できる表現を使ってしまうと紛争が生じたときに解決に時間がかかる原因となります。専門用語についてもできるだけ一般用語に置き換えたり補足説明を加えたりすると分かりやすくなります。

 

契約書作成の際は割印や契印を忘れずに

契約書が1枚であればともかく複数にわたるときにはすり替えなどの問題が生じます。そこで契約書が複数枚となるときには割印や契印を押すことが重要です。

割印とは、書面を2部以上作成する際に書面を重ね各部にまたいで押印するものです。同一内容の契約書であることや関連性があることを証明するために行います。

契印とは、書面が複数ページある場合に各ページにまたがって押印するものです。契約書のページが連続していることを証明するために行います。

割印や契印がなかったとしても契約書が無効になるわけではありませんが契約書の有効性を高めることになります。

 

契約書作成は専門的な知識や経験が必要です。顧問弁護士に相談しリーガルチェックを受けることが大切です。

 

<関連記事>顧問弁護士とは?役割や弁護士との違いを解説

 

まとめ

・契約書を作成することで契約の内容が明確になり証拠ともなるため紛争の防止や解決に役立ちます。

契約書作成日は効力発生日の後でも構いません。効力発生日を契約書に記載し契約書作成日を遡らせないようにします。

・契約書のテンプレートをそのまま使わないようにします。実際の契約に適合せず不利益が生じることがあります。

 

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