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支払いが滞納した場合、債務者や物上保証人の不動産から債権回収を検討することができます。抵当権など担保権を持っている場合にはそれを利用して、担保を持っていないときには事前に訴訟をするなどして不動産競売手続きに備えます。
この記事では、不動産競売手続きにおける換価について解説していきます。
不動産競売とは
民事執行法により不動産を競売し換価・配当する手続きのことです。不動産競売手続きには3つの種類があります。
・不動産強制競売 ・担保不動産競売 ・形式的競売 |
不動産強制競売は、判決などの債務名義を根拠に債務者の不動産に強制執行をして競売による換価により債権回収を図るための手続きです。
担保不動産競売は、抵当権などあらかじめ不動産に担保権を設定しておき債務不履行時に担保権の実行として行う不動産競売手続きです。
形式的競売は、債権回収を直接の目的とせず換価自体を目的とした競売のことです。
通常は不動産競売というと「強制競売」と「担保不動産競売」のことを意味します。
不動産競売手続きの流れは、1.競売申立て、2.差押え、3.換価、4.配当となります。
裁判所に競売を申し立てると、対象不動産が差し押さえとなり、売却手続きにより換価され、売却代金が債権者に配当されます。
この記事では不動産競売手続きのうち、「換価」の部分に焦点をあてて解説します。
<関連記事>強制競売とは?強制競売の流れをわかりやすく解説
換価のための売却準備
不動産を購入するときには事前にどのような物件なのか調べることが普通です。しかし不動産競売手続きでは所有者である債務者から十分な情報を提供してもらえません。そこで裁判所が「現況調査報告書」、「評価書」、「物件明細書」を公開することで換価しやすくしています。この3つの書類を合わせて「3点セット」と呼びます。
現況調査報告書
現況調査とは、執行官が不動産の現在の状況や誰が実際にその不動産を占有しているのかといったことを調べて現況調査報告書を作成するという手続きです。この現況調査報告書は執行官から裁判所へ提出されます。
評価書
不動産競売手続きでは現況調査と同時に「評価」手続きが進められます。これは評価人が不動産の換価価格を評価する手続です。不動産鑑定士が裁判所の命令によって評価人となり、競売される不動産の近隣にある同じようなスペックの不動産の価格等を参考に、差押え不動産の価格を評価します。その後、評価の結果をまとめた「評価書」を作成して裁判所へ提出します。
物件明細書
裁判所書記官は、登記事項証明書や現況調査報告書、評価書などをもとに売却条件を検討・確定して、「物件明細書」を作成します。
物件明細書とは、その不動産を買い受けた場合に、どのような権利関係を引き継ぐことになるのかを記載した文書です。
具体的には土地の一部が一般の人に通路として利用されていることや法定地上権の成立の有無などが記載されることになります。
3点セットの写しは、執行を担当する裁判所に置かれていて閲覧することができます。またインターネットでも見ることができるようになっています。
売却実施の流れ
3点セットが揃い売却の準備が済めば売却の実施に入ります。
売却方法の決定
不動産競売手続きにおける換価の方法には種類があります。競り売りなどいくつかありますが不動産競売における買受人の選出は、ほとんどの場合は期間入札によって行われます。
期間入札
期間入札とは、2〜3週間の決められた期間に買受希望者に入札書を提出させて、その中で最高額の入札価額を書いていた人が優先して買受人となるものです。この人は最高価買受申出人と呼ばれ、売却許可決定の確定により正式に買受人となります。
特別売却
期間入札で誰も入札せず、どうしても売れない場合には特別売却が行われます。
特別売却の具体的な方法は裁判所書記官の裁量によりますが、ほとんどの場合は決まった期間中に最初に売却基準価額以上の価格での買受けを申し出た人に売却するという方法が採られています。
物件の内覧
差押え債権者の申立てがあった場合、裁判所から執行官に対して内覧の実施が命じられます。買受希望者に差押えた物件を内覧させることができるのです。ただし、内覧にかかった費用は債務者が負担すべきものですが差押債権者が立て替える必要があります。また内覧時のトラブルによって物件が損傷し価値が下がるおそれもあり不動産競売手続において内覧はほとんど行われていません。
買受申出があった場合
買受けの申出があった場合、裁判所が申出人に売却基準価格の2割、もしくはそれ以上の額の保証金を積ませます。
これは冷やかしによる入札を防ぐためで、この保証金は後に支払代金に充当されます。
また債務者自身は買受申出をしてはいけないことになっています。そのようなお金があるのだったら債務の支払いに充てるべきだからです。
買受申出がなかった場合
期間入札と特別売却を3回繰り返しても買受申出が無く売却の見込みが立たない場合は、裁判所は不動産競売手続きを停止することができ、その場合差押債権者に通知します。差押債権者が手続停止の通知から3か月以内に買い手を探し売却申出をしないときは、裁判所は手続きを取り消すことができます。
崖の下にある不動産などは価値が低いためどうしても売れず、不動産競売手続きが停止されることがよくあります。
開札期日
期間入札で買受申出人があった場合は、開札期日に最高価買受申出人が決まります。
最高価買受申出人は不動産に対して保全処分を申し立てることができるため強い影響力を持っています。
売却許可決定
裁判所は、開札期日後の売却決定期日に売却の許可または不許可決定をします。
売却不許可事由があった場合には売却許可はおりません。売却不許可事由には以下のようなものがあります。
・執行文の付与された債務名義の正本がないのに強制競売が開始された ・売却基準価額や物件明細書の作成などの手続に重大な誤りがある ・最高価買受申出人が不動産を買い受ける能力や資格を持っていない など手続きに重大な誤りがあるケースが多い |
開札期日から1週間ほどで最高価買受申出人に売却不許可事由がなければ売却許可決定が出されます。売却許可決定が出されることによって最高価買受申出人は正式に「買受人」となります。
その後1週間内に不服申し立てがなければ売却許可決定は確定します。売却許可決定の確定後裁判所書記官が代金納付の期限を指定します。この期限は売却許可決定が確定した日から1か月以内の日が指定されることになっています。
差押債権者による競売申立て取下げの制限
不動産競売手続きが進み買受申出があった後は、差押債権者は自由に競売の申立てを取下げることができなくなります。これは買受けを申し出た人の期待を損なわないためです。どうしても競売の申立てを取下げたいときは、開札期日に最高価買受申出人が決まった後で、その人の同意を得なければなりません。
買受人による代金納付
買受人による代金の納付は指定された期限内に現金で全額を一括納付することになっています。代金の納付が完了した時点で買受人に不動産の所有権が移ります。代金納付後に裁判所が登記官に所有権移転登記を嘱託し必要な登記がなされます。
もし買受人が期限までに代金を納付しなかった場合には売却許可決定の効力がなくなり、買受人はあらかじめ納めていた保証金を返してもらえなくなります。
次順位買受申出人がいるときはその者について売却許可の判断を行います。もし次順位買受申出人がいないときや売却不許可決定が出されたときは再び期間入札から不動産競売手続きをやりなおさなければなりません。
買受申出の際に保証金を積ませることには、不動産競売手続きを繰り返すという面倒な事態を防ぐという意味合いもあるのです。
売却の効果
不動産競売手続きが進み代金が納付されたことで換価が無事に済んだことになります。買受人は所有権者となるため、前の所有者である債務者に対して不動産の引渡しを求めることができます。債務者が引き渡しに応じない場合は、裁判所に申し立てをして引渡命令を発してもらうことができます。
<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説
まとめ
・不動産競売手続とは、不動産を競売し換価・配当する手続きをいいます。不動産競売には種類があり、「不動産強制競売」、「担保不動産競売」、「形式的競売」があります。
・不動産競売手続きは、1.申立て、2.差押え、3.換価、4.配当という流れで行います。
・不動産を換価するには買受希望者に情報公開する必要があり、「現況調査報告書」、「評価書」、「物権明細書」(3点セット)を裁判所が公開します。
・換価手続きは期間入札で行うのが基本であり最高価買受申出人が買受人候補者です。売却不許可事由がなければ売却許可決定がされ代金を納付し換価が終わります。
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