滞納されたマンションの管理費及び修繕積立金対応の4つのポイント

 

目次
昨今の我が国のマンションについての現状
マンション管理において大切なこと
滞納を予防するための取り組み
徴収のためのマニュアル作成
管理費及び修繕積立金の必要性の周知
滞納した場合の対応の公示
徴収方法の簡易化
滞納が発生した場合の初期対応
早期の支払催促
請求状況及び交渉条項の記録化
理事会での報告及び管理組合の対応の検討
回収のための簡易迅速な法的手続
支払督促
少額訴訟
民事調停
たちが悪い区分所有者の排除
まとめ
 

■昨今の我が国のマンションについての現状

平成29年7月5日に総務省の発表した『住民基本台帳に基づく人口,人口動態及び世帯数(平成29年1月1日現在)』によりますと,日本人住民は,平成21年をピークに8年連続で減少しているものの,全国の世帯数は,毎年増加しています。そして,国土交通省の発表によりますと,現在のマンションストック総数は約633.5万戸(平成28年末時点)で,マンションの居住人口は約1,508万人と推定されており,毎年着実に増え続けています。
このように,マンションは,重要な居住形態として定着してきており,永住志向がますます強くなる傾向にあるといえ,マンションを巡る問題は私たちの身近なものとなってきています。
そのうえ,マンションは大都市地域のほか,地方の都市にも建築が進んでいることから,マンションを巡る問題はもはや大都市特有の問題ではなくなっています。しかも,マンションの種類をみても,超高級マンション,リゾートマンション,大規模マンション,シニア向けマンション等とバリエーションが広がっており,管理の高度化・複雑化が進んでいるといえます。
そして,マンション運営の内情をみると,マンションの住人の高齢化による管理組合の担い手不足,高経年化の進行等による管理の困難化,管理費滞納などによる管理不全,暴力団排除の必要性,民泊対策,災害時における意思決定のルールの明確化など,社会環境の変化などによる管理方法の見直しが欠かせない状況にあります。
このように,マンション管理の問題は多様かつ複雑なため,1年ないし2年で交替となる理事役員が対応するのは大変です。また,マンション管理の知識や経験を積み重ねて,管理組合として運営のノウハウを蓄積していくことも難しいのが現実であり,外部の専門家の関与を求める声が高まる場面も増えてきているといえます。
 

■マンション管理において大切なこと

分譲マンションを購入した者は,区分所有建物として,自己の名義で所有権の登記をすることができることとなっており,その分譲マンションの所有者を「区分所有者」といいます(建物の区分所有等に関する法律(以下,「区分所有法」といいます)第1条参照)。区分所有者は,法律上,当然にして区分所有者を構成員とする団体の構成員となります。その団体が「管理組合」ということになります(区分所有法第3条参照)。
そして,マンションには,各住戸以外に,廊下,階段,エレベーター,配管及び配管スペースなどの部分があり,このような部分を「共用部分」といいます(区分所有法第4条参照)。

共有部分の管理の主体は管理組合であり,管理組合が,共有部分のメンテナンスや工事を行っています。よって,共有部分の日々の清掃や,定期的なエレベーターの点検,共有部分の光熱費などがかかっていることから,管理組合は,これらを「管理費」として区分所有者から徴収しています。
また,分譲マンションにおいては,将来予想される修繕工事に要する費用を長期的な計画に基づいて計画的に積み立てています。この計画を「長期修繕計画」といいます。管理組合は,この積み立てに充てる費用を「修繕積立金」として区分所有者から徴収しています。
したがって,マンションの購入には必然的に管理費及び修繕積立金の負担がともなっています。もし管理費及び修繕積立金の負担額が安すぎたり,適正に徴収されていなかったりすると,いざ修繕計画を実施しようとするとする際に不足額が生じ,臨時徴収しなければならなくなる事態にも陥りかねません。よって,区分所有者は,マンション全体の資産価値を維持するためには,自己の管理費及び修繕積立金の支払義務を果たすだけにとどまらず,マンション全体の管理費及び修繕積立金の滞納状況にも関心を寄せることが必要になります
国土交通省の平成25年度マンション総合調査結果によると,管理費などの滞納でお困りのマンションが27.2%あるとなっています。つまり,マンションの管理費及び修繕積立金の滞納問題は,決して珍しいことではなく,どのマンションにおいても起こり得るものといえます。また,長期間にわたって管理費及び修繕積立金を滞納する者がいると,組合間に不公平感が広がり,新たな滞納問題を誘発するおそれもあります。だからこそ,管理組合による日ごろからの適切な徴収と早期の滞納解消が求められているといえます。
そこで,以下に,マンション管理費及び修繕積立金の滞納対応の4つのポイントを解説いたします。
 

■1 滞納を予防するための取り組み

・徴収のためのマニュアル作成

管理費及び修繕積立金の滞納が発生した場合,滞納が少額にとどまる初期段階から早期に手を打つこととし,以降の催促方法を明確にしておくことは非常に重要なことです。
管理会社が入っている場合,管理会社が一定程度の督促行為はやってくれるのことが一般的ですが,管理費及び修繕積立金の管理の主体は,あくまで管理組合となります。管理組合の役員は,それぞれに善良な管理者としての義務があることを自覚し,適切に滞納解消に向けた決断をしていくことが必要になります。理事会を開催する際には,その度に,管理会社より,管理費及び修繕積立金の支払状況や滞納者情報について報告を受けるようにルーティン化しておきましょう。
管理組合として管理費及び修繕積立金の徴収業務に関するマニュアルを作成しておくことも有効といえます。作成の際には,国土交通省から出されている『マンション管理標準指針』などを参考にすると良いでしょう
 

・管理費及び修繕積立金の必要性の周知

管理費及び修繕積立金は,マンション全体としての資産価値を長期的に維持していくために必要な費用であることや,管理費及び修繕積立金の支払いは区分所有者の義務であることを周知していきましょう。また,区分所有者が公平に分担しているものであることを説明し,1人の債務不履行があれば全体でその損失をカバーしなければならない仕組みであることも周知しておきます。その中で,管理費の使途を示すとともに,修繕積立金が長期修繕計画に裏付けられたものであることを示し,それぞれが十分な根拠に基づいて徴収されているものであることを説明していくことも意味があることです。
 

・滞納した場合の対応の公示

管理費及び修繕積立金が滞納した場合,どのような措置を受けるのかを公示しておきましょう。たとえば,滞納があった場合,まずは管理会計から連絡があること,その後も滞納が続く場合には理事会に報告をされて理事会名義での文書による請求が来ること,内容証明郵便による請求を経ても支払いがない場合,最終的には裁判所を通じた法的手続をとられること,場合によっては退去を余儀なくされること等を公示します。その他,滞納した場合には,遅延損害金を課されて更なる負担を負うことや,規則に基づき氏名公表等のペナルティを受け得ることも公示しておきます。このように,滞納時に受け得る対応を公示しておくことは,区分所有者からみれば一定の心理的プレッシャーになりますので,滞納抑止を図ることができます。
 

・徴収方法の簡易化

区分所有者が管理費及び修繕積立金の徴収には,「自動振替方式」を採用することを強くお勧めします。区分所有者にとっても管理会社にとっても支払いないし徴収の手間とコストを減らし,かつ回収の確実性を高めることが出来ます。
 

■2 滞納が発生した場合の初期対応

・早期の支払催促

まず,滞納額が大きくなるにつれて回収が困難になることは肝に銘じておくべきです。したがって,早期対応を心がけましょう。まずは,管理会社が滞納を認知した時点で,最初は管理会社から区分所有者へと電話連絡を入れて滞納の理由を確認します。まだこの段階では滞納の理由が分からない状態ですから,丁寧な対応を心がけましょう。区分所有者の単なる失念や,自動振替方式を採用している場合の一時的な残高不足であれば速やかな支払いを促します。経済的困窮が理由であれば,その主たる原因は何か,それは早期に解消される性質のものか,いつになれば支払いが出来る見込みか,等の事情を確認します。意図的な支払拒否であれば,そのような態度に至った背景事情を丁寧に聴取するとともに,管理費及び修繕積立金の重要性やその支払いが義務であることを説明し,支払うよう説得します。
もし電話が通じない場合には,自宅訪問をする等します。このように,管理組合による滞納時の初期対応についてはルール化しておくことが有効です。
 

・請求状況及び交渉条項の記録化

滞納者への請求状況及び交渉状況については,日時,対応者なども含めて詳細に記録を残しておきましょう。後に,弁護士へと交渉を依頼した際に大変役に立ちますし,法的手続に移行した場合でも重要な証拠として利用されることになります。
 

・理事会での報告及び管理組合の対応の検討

管理組合による初期対応については,直近で開催される理事会に報告を行います。理事会においては,管理組合からの報告を受けて,その後の対応を検討します。滞納に至った事情に応じて,滞納者に対して念書の差入れを求めたり,内容証明郵便による請求を検討することとなります。滞納額が高額になった場合には諸般の事情を考慮してマンションの掲示板に貼りだす可能性があることを事前に公示していたような場合には,そのような公示を行うかどうかについても検討します。
さらに段階が進むと,滞納者に対する法的手続を検討することとなります。
法的手続をとる場合の手続については,管理規約に法的手続に関する定めがあるかどうかで異なってきます

区分所有法第26条第4項においては,「管理者は,規約又は集会の決議により,その職務に関し,区分所有者のために,原告又は被告となることができる。」

との定めがありますので,規約がればその定めにより,規約がない場合には決議により,原告となって法的手続をとることができるとなっているからです。
よって,管理規約に法的手続に関する定めがある場合,その管理規約に則った手順を踏んでいくこととなります。たとえば,国土交通省から出されている『マンション管理標準指針』がありますが,この指針において示されている第67条第3項においては,理事会の承認で足りるとされていますので,このような規定がある場合には理事会で決議をとることになります。
他方,管理規約に法的手続に関する定めがない場合には,管理組合の最高意思決定機関である「総会」による決議が必要になります。近い時期に通常総会があればその際に決議をとることとし,そうでない場合には,臨時総会を開催して決議をとります。そして,法的手続をとる場合に,その時の総会議事録を裁判所に提出することになります。
 

■3 回収のための簡易迅速な法的手続

・支払督促

支払督促は,書類審査のみですので,訴訟の場合のように審理のために裁判所に行く必要はありません。訴額の上限はないうえに,手数料は,訴訟の場合の半額です。滞納者からの督促異議の申立てがなければ,確定判決と同様の効力を有することになり,強制執行することができるようになります。
ただし,滞納者が支払督促に対して,2週間以内に異議を申し立てた場合には通常の訴訟手続に移行することになります。支払督促は,法的手段の中で最も簡易な方法といえ,異議がないと見込まれる場合には,この手段をとることが良いでしょう。
 

・少額訴訟

少額訴訟は,60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用可能な手続となっていますので,管理費及び修繕積立金の滞納額が60万円以下であれば,少額訴訟が選択肢に入ってきます。原則として1回出頭すれば判決に至ることになっていますので,負担が少ないうえ,迅速な解決が期待できるといえます。管理組合の主張が認容される場合であっても,滞納者からの意見を聴取して,分割払,支払猶予の判決がなされたり,遅延損害金免除の判決がなされる場合があります。これは,裁判所が主導してより現実的な解決を図るために裁判所に広く裁量を与えたものです。もちろん和解を判決がでるまでの間にすることもできます。判決書または和解が成立すると,強制執行を申し立てることが可能となります。
 

・民事調停

民事調停は,話し合いをベースに進められる手続であり,調停委員が申立人と相手方から意見や事情を聴きながら,調整を進めていくことで,合意形成を図っていきます。デメリットとしては,滞納者が調停を欠席する場合には無意味となる点ですが,メリットは,円満解決が期待できる点です
 

■4 たちが悪い区分所有者の排除

区分所有法第6条においては,「区分所有者は,建物の保存に有害な行その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の協同の利益に反する行為をしてはならない。」と規定されています。そして,区分所有法第59条においては,「第6条に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは,管理組合法人等は,集会の決議に基づき,訴えをもつて,当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。」と規定されています。

これらの規定によって,管理組合には,非常に強力な手段である競売手続が制度として整えられています。これにより,管理組合は,たちが悪い区分所有者をマンションという共同生活の場から退去させるということが出来るようになっています。

ただし,区分所有法第59条に規定された要件である,他の方法では共同生活の維持を図ることが困難だと認定してもらうには,裁判所はかなり厳格な判断基準を用いており,この要件を充足するのは相当厳しいという心積もりが必要です。

実際に,管理費等の滞納を理由に管理組合が行った競売請求が棄却された事例もあります(東京地方裁判所平成18年6月27日判決)。したがって,弁護士にアドバイスを受けて進める方が良いでしょう
 

■まとめ

以上みてきたとおり,分譲マンションにおいては,区分所有者の管理組合活動への無関心化とともに居住者の高齢化が進んで役員のなり手不足が課題となっている一方,マンションの管理組合による運営には,高度な判断を要求される場面がますます多くなってきいます。
よって,常時から弁護士などの専門家による支援を受けて,管理組合の円滑な運営や大規模修繕工事の適切な実施を進めていくことがマンション全体の資産価値の維持に向けてより重要となってきています。

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