マンション管理費の滞納を放置すると時効にかかり請求できなくなることもあります。

この記事ではマンション管理費の滞納の予防策や回収方法について解説します。

 

マンション管理費の役割と滞納による影響

マンション管理費に滞納があった場合にどのような影響があるのか説明していきます。

 

維持管理が困難になる

マンション管理費は管理会社の委託料や共用部分の光熱費等、マンションの日常的な維持管理に必要なものです。

そのため、マンション管理費に滞納があるとマンションの維持管理が困難となり住民の日常生活に不便が生じたり、治安に影響を与えたりする恐れがあります。

 

マンションの価値が下がる

マンション管理費の滞納があると資産価値にも影響があります。管理がずさんなマンションとのイメージが広まってしまうと購入希望者が少なくなり売却価格に影響します。

また、管理費の滞納者が部屋を売却した場合、買主に対しても滞納管理費の請求ができます(区分所有法8条)。その結果、滞納者の物件価格が下落することで他の部屋の売却価格にも影響する可能性があります。

 

必要な修繕を行えなくなる

マンション管理費とともに修繕積立金も滞納しているとマンションの修繕にも影響します。修繕が計画通りに行えなくなると資産価値が下がることにもなります。

 

マンション管理費滞納への予防策

マンション管理費が滞納された場合に備えて事前に対策を立てておくことが大切です。

 

徴収のためのマニュアル作成

マンション管理費及び修繕積立金の滞納が発生した場合、滞納額が少額にとどまる初期段階から早期に手を打つこととし、また以降の催促方法を明確にしておくことは非常に重要です。

 

管理会社が入っている場合、管理会社が一定程度の督促行為はやってくれることが一般的ですが、管理費及び修繕積立金の管理の主体は、あくまで管理組合となります。管理組合の役員は、それぞれに善良な管理者としての義務があることを自覚し、適切に滞納解消に向けた決断をして債権回収することが必要になります。理事会を開催する際には、その度に、管理会社より管理費及び修繕積立金の支払状況や滞納者情報について報告を受けるようにルーティン化しておきましょう。

 

また、管理組合として管理費及び修繕積立金の徴収業務に関するマニュアルを作成しておくことも有効といえます。作成の際には、国土交通省から出されている「マンション管理標準指針」などを参考にすると良いでしょう。

 

管理費及び修繕積立金の必要性の周知

管理費及び修繕積立金は、マンション全体としての資産価値を長期的に維持していくために必要な費用であることや、管理費及び修繕積立金の支払いは区分所有者の義務であることを周知していきましょう。また、区分所有者が公平に分担しているものであることを説明し、1人の滞納があれば全体でその損失をカバーせざるをえないことも周知しておきます。

その中で、管理費の使途を示すとともに、修繕積立金が長期修繕計画に裏付けられたものであることを示し、それぞれが十分な根拠に基づいて徴収されているものであると説明していくことも大切です。

 

滞納した場合の対応の公示

マンション管理費及び修繕積立金を滞納した場合、どのような措置を受けるのかを公示しておきましょう。

例えば、滞納があった場合はまず管理会社から連絡があること、その後も滞納が続くと理事会に報告をされて理事会名義での文書による請求が来ること、内容証明郵便による請求を経ても支払いがない場合は最終的に裁判所を通じた法的手続をとられること、場合によっては退去を余儀なくされること等を公示します。

 

その他滞納した場合には、遅延損害金を課されて更なる負担を負い、また規約に定めがあれば弁護士費用の負担の可能性も示しておきます。このように、滞納時に受け得る対応を公示しておくことは、区分所有者からみれば一定の心理的プレッシャーになるので滞納抑止を図ることができます。

 

マンション管理費を支払わない人への対処法

マンション管理費の支払いを拒否し滞納する人がいる場合、管理組合としてはマニュアルに従い必要な手続きをとっていきます。

 

管理会社から滞納状況の報告を受ける

マンション管理費の滞納状況を正確に把握することが大切です。誰がどのくらいの期間、金額を滞納しているのかを知ることで必要な行動が変わるからです。

管理費の徴収業務は管理会社が行っていることが多いため滞納状況について報告してもらいます。

管理会社は基本的な督促を行うだけで、法的な手続きなど踏み込んだ滞納管理費の回収はしてくれません。債権回収業務は原則として弁護士にしかできないからです。

そのため、管理費の支払いを明確に拒否していたり滞納が長期に及んでいたりするケースでは管理組合が回収するか弁護士に依頼する必要があります。

 

理事会での報告及び管理組合の対応の検討

マンション管理費の滞納があった場合、管理組合の初期対応としては直近で開催される理事会に報告を行います。理事会においては管理組合からの報告を受けて、その後の対応を検討します。滞納に至った事情に応じて滞納者に対して念書の差入れを求めたり、内容証明郵便による請求を検討したりすることとなります。

さらに段階が進むと滞納者に対する法的手続を検討することとなります。

法的手段をとる場合の手続については、管理規約に法的手段に関する定めがあるかどうかで異なってきます。

区分所有法26条4項においては、「管理者は、規約又は集会の決議により、その職務…に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」との定めがあるので、規約があればその定めにより、規約がない場合には決議により原告となって法的手続をとることになっているからです。

 

よって、管理規約に法的手続に関する定めがある場合、その管理規約に則った手順を踏んでいくこととなります。例えば、国土交通省から出されている「マンション標準管理規約」では理事会の承認で足りるとされており、このような規定がある場合には理事会で決議をとることになります。

他方、管理規約に法的手続に関する定めがない場合には、管理組合の最高意思決定機関である「総会」による決議が必要になります。近い時期に通常総会があればその際に決議をとることとし、そうでない場合には臨時総会を開催して決議をとります。そして、法的手続をとる場合に、その時の総会議事録を裁判所に提出することになります。

 

氏名公表について

マンションの掲示板に管理費を滞納している人の氏名を公示すると規約に定めていることがあります。しかし、名誉毀損やプライバシー侵害の恐れがあるため問題があります。他に方法がないか弁護士に相談することが大切です。

 

駐車場(駐輪場)契約の解除

マンション管理費に滞納がある場合に駐車場の使用契約を解除できる旨を「駐車場使用細則」や「駐車場契約書」に記載しておくことも有効です。実際に管理費の滞納があったときは駐車場の解約を予告し必要に応じて解除を実施します。滞納者の日常生活に影響が出るため滞納の抑止効果があります。

 

マンション管理費については時効があります。時効については「マンション管理費の滞納を回収する方法|解決策や時効について解説」をご参照ください。

 

マンション管理費を支払わない人への法的措置

マンション管理費が滞納され支払いが拒否された場合には、最終的には法的手段をとる必要があります。

 

支払督促

支払督促は書類審査のみなので、訴訟の場合のように審理のために裁判所に行く必要はありません。手数料は訴訟の半額です。滞納者からの督促異議の申立てがなければ、確定判決と同様の効力を有することになり強制執行可能になります。

 

ただし、滞納者が支払督促に対して2週間以内に異議を申し立てた場合には通常の訴訟手続に移行してしまう点には注意が必要です。

 

話し合いによって解決を目指す民事調停という方法もあります。

 

民事調停については、「債権回収における民事調停とは?手続きの流れを分かりやすく解説」をご参照ください。

 

内容証明郵便の送付

マンション管理費の滞納が長期に及んでいる場合、内容証明郵便を使うことでプレッシャーをかけていく方法もあります。

法的措置を予告する内容を含むことで状況が深刻であることを理解してもらいやすくなります。特に弁護士から送付すると効果的です。

 

<関連記事>内容証明郵便を拒否・無視された場合の対処法|内容証明郵便の効力を弁護士が解説

 

裁判を起こす

訴訟は手間や時間がかかるイメージがあるかもしれませんが、途中で和解することも多いです。マンション管理費の滞納金が60万円以下の場合には少額訴訟を利用することもできます。これは1日で審理し判決まで出してもらえる簡易的な訴訟です。

 

<関連記事>少額訴訟の費用相場は?費用倒れを回避する方法も解説

 

強制執行を行う

判決をもらっても管理費の滞納者が自分から支払いに応じてくれるとは限りません。その場合には滞納者の財産を差し押さえる必要があります。預金などを差し押さえて滞納したマンション管理費に充てることになります。

 

<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説

 

まとめ

・管理費に滞納があるとマンションの維持管理に支障が生じ資産価値にも影響します。

・滞納管理費の徴収対策として対処法を書いたマニュアルを作成することが有効です。

管理会社は管理費の滞納があっても法的な手続きを行うことはできません。管理組合が行動するか弁護士に相談する必要があります。

 

マンション管理費の回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

マンション管理費の滞納でお困りの方へ。

 

マンション管理費の滞納を放置すると金額がすぐに大きくなり、支払いもより難しくなっていきます。マンション管理費の滞納金を回収するには迅速に行動することが必要です。時間をかけすぎると時効にかかる恐れもあります。

 

当事務所は債権回収に強い事務所です。

管理費の滞納が高額になっているような場合にはお気軽にご相談ください。