フリーランスにとって報酬の未払いは死活問題となります。

未払いの原因はいろいろなものがあるため、ケースに応じて対応を変える必要があります。

また、未払いへの対策は、事前に予防する段階と実際に未払いが生じた段階に分けて考えます。

 

この記事では、フリーランスが報酬の未払いに悩んだときの対策を解説します。

 

報酬未払いの原因

報酬が未払いとなる原因は一つではありません。先方のミスであることもあればこちらに責任があることもあります。

 

クライアントが忘れている

普段はしっかりとやり取りしている依頼者や、今までの付き合いでは支払いを忘れたことのない依頼者でも、時に忘れてしまうことがあります。単に忘れているだけであれば未払いを連絡するだけで問題が解決します。

 

報酬を支払うことができない

依頼者の資金繰りが悪いため報酬を支払うことができないこともあります。

資金繰りの悪化が一時的な場合には支払いを猶予することも考えられます。

一方で、経営状況が悪いケースであれば債権の回収を急ぐ必要があります。相手が倒産してしまえば報酬の支払いを受けることは難しくなります。

 

フリーランスの仕事内容や成果物に不満や疑問がある

報酬未払いの原因がクライアントにあるとは限りません。

納品物に問題があったため対応を検討していることもあります。そのため未払いの原因が先方にあると決めつけないように気を付けることが大切です。

 

法的なトラブルに発展している

クライアントが契約の解除や違反を主張している場合には、進んで支払いに応じてくれる可能性は低くなります。

 

弁護士に相談した上で適切な債権回収方法を選択することが必要です。

クライアント側が法的な解決を求めてきた場合(訴訟や調停を提起した場合)もフリーランス個人で応じるのではなく弁護士に相談した方が安全です。

 

報酬未払いに遭ったときの対処法

報酬の未払いが発生したときには落ち着いて対応することを心がけます。

 

直接連絡をとる

未払いとなっている原因を突き止めることが大切です。そのためにはできるだけ早く依頼主に連絡をとることです。単純な支払いミスであればクライアントも早く対応したいと考えているはずです。

 

メール・内容証明郵便での催促

まずはメールや電話、手紙などで催促していきます。依頼者が「忘れていた」「お金の支払日を勘違いしていた」という場合は、電話やメールで催促するだけで解決する可能性があります。メールは送信履歴が残りますので、催促したという証拠作りにも有効です。

 

しかし、中には素直に支払いに応じてくれないクライアントもいます。

そこで考えたいのが「内容証明郵便」による催促です。

 

内容証明郵便とは、誰から誰宛にどのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明するサービスです。

 

文書の内容は郵便局に保存されるため強力な証拠となります。債権の回収をはじめとして、様々なトラブルで活用される方法です。メールや電話、通常の郵便では「見ていない」「捨てたかも」「受け取っていない」「聞いていない」などの言い訳をされることがあります。言い訳できないよう、しっかりと証拠が残る方法で催促することが望ましいと言えます。

 

内容証明郵便を送る場合や、電話などで督促するときには、弁護士に依頼すれば代わりに行ってもらうことができます。弁護士がついたという心理的な圧迫感や法的な方法をとられることへの懸念から、未払いの相手方が支払いに応じることがあります。クライアントの資金繰りや支払いへの態度によっては、弁護士に相談した上で契約の変更や支払いのための話し合いを持つことも、未払い債権の回収につながることがあります。

 

裁判所から支払督促を送付

電話やメール、内容証明による督促では効果がない場合もあります。どうしても支払いをしてもらえないときには法的な手段を検討することになります。

 

裁判所と言われると、すぐに訴訟と結びつけがちですが、裁判所でできる手続きは訴訟だけではありません。他にも色々な債権の回収に使える手続きが可能です。

 

比較的一般の人でも利用しやすい手続きとしては、「支払督促」が考えられます。

 

電話やメール、内容証明郵便で督促できるのではないかと思うかもしれません。

ですが「支払督促」は裁判所の手続きであり、裁判所の書記官に督促文書を送付してもらうものです。

 

支払督促は裁判所から送付されるため、相手は「裁判所から通知が来た」と驚くことになります。心理的なプレッシャーは、フリーランス個人からの督促の比ではありません。また、支払督促は、所定の期間内に異議がなかった場合、裁判をしなくても強制執行をすることができるという強力な効果があります。

 

ただし、支払督促にはデメリットがあります。

支払督促は、異議があると訴訟に移行してしまうのです。つまり、相手が異議を申し立てることが予想できる状況では効果があまり期待できません。相手から異議の提出があると訴訟手続きに移行して決着をつけるという流れになるため使いどころが難しいのです。手続き自体はフリーランス個人でもできますが、訴訟などほかの方法が適切なこともあるため事前に弁護士に相談されることをおすすめします。

 

弁護士を立てて訴訟

内容証明郵便や支払督促で報酬の回収ができない場合には訴訟を検討することになります。

 

裁判所には管轄があり請求する金額によって手続きをとる裁判所が異なります。訴えを提起する第一審裁判所は「簡易裁判所」か「地方裁判所」となっています。

このうち簡易裁判所は請求額が140万円以下の場合に第一審裁判所になります。140万円を超えるときには地方裁判所が第一審となります。

 

簡易裁判所は手続きが簡易化されていて比較的利用しやすい裁判所です。

フリーランスは報酬額が大きくないことが多いため簡易裁判所で手続きをとることが多いと思います。

また、請求額が60万円以下の場合には「少額訴訟」も利用することができます。

少額訴訟は簡易裁判所の訴訟の中でも特に手続きが簡素化されています。原則として1日で審理が終わり判決もその日のうちに出してもらうことができます。

 

フリーランス本人が自分だけで訴訟をすることも不可能ではありませんが、必要な主張立証をしなければ敗訴してしまうため、弁護士に一度相談されることをお勧めします。

 

<関連記事>少額の売掛金の回収と少額訴訟のやり方、費用、メリット、デメリットを解説

 

報酬未払いを起こさない為の対策

報酬の未払いへの対策は未払いが生じた後だけではなく事前対策も重要です。

 

信頼できるクライアントか見極める

信頼できる依頼主なのか情報を集めることが大切です。WEBサイトやSNSで評判を確認することは有効な対策となります。

過去にトラブルを起こしていないか評価実績を確認できる場合には低評価がないか、ある場合にはその理由を確認しておいた方がいいでしょう。

 

きちんと契約書を作成する

トラブルを防ぐ基本は契約書を作成することです。約束したことが明確になりますし、法的な手続きをとる際にも重要な証拠となります。

契約書を作ることでお互いに契約を守ろうという意識が高まるため、大きなトラブルに発展しにくくなります。

 

<関連記事>債権回収に関するひな形(フォーマット)を紹介

 

請求に関するフローの漏れがないように気をつける

請求しなければ支払いを受けることができません。請求書の送付や専用サイトでの請求手続きを忘れないように注意する必要があります。債権の回収は時間が経過するほど難しくなっていきます。

 

仕事上のやりとりを記録しておく

メールやSNSの記録は重要な証拠となります。定期的にログを保存するようにしておきましょう。ログの出力機能がついていないSNSもありますが、スクリーンショットをとるなどできる限りのことはしておきます。

 

締日・支払日を十分に確認する

締め日に間に合わなければ支払いが遅れる原因になります。また、支払日はクライアントによって異なるため報酬の未払いなのか支払日が到来していないだけなのかチェックする必要があります。

 

弁護士に相談できる環境を調えておく

企業と異なりフリーランスの場合には法務部がありません。

トラブルが生じたときに、いつでも専門家に相談できるようにしておけば問題が起きたときにあわてる必要がなくなります。

 

なんでも一人で行う必要はありません。企業も専門外の分野はアウトソーシングすることが一般的です。

 

煩わしいことは専門家に任せることで時間や労力を節約し、本業に専念することができます。

 

顧問契約をすることでホームページや請求書で顧問弁護士名の表示を認めている事務所もあります。

顧問弁護士がいることをアピールすることで未払いのけん制になるだけでなく、クライアントからの信頼を高めることもできます。

 

<関連記事>顧問契約とは?弁護士事務所と契約するメリットを解説

 

まとめ

・報酬の未払いがあったときには原因を突き止めることが大切です。

・クライアントに原因があるときには早めに連絡をとり、支払いに応じてくれないときには内容証明郵便で督促します。どうしても支払いに応じてもらえないときには法的手段を検討します。

・未払いを防ぐためには適切な契約書を作成することが重要です。

・クライアントとのやり取りを保存し証拠として残しておくことが有効です。

弁護士にいつでも相談できる体制を整えておくことが大切です。

 

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