マイナス金利の影響で、銀行にお金を預けてもほとんど金利がつかなくなりました。預金より金利の高い運用方法として再注目されているのが不動産運用です。

不動産運用は、まとまった金額を用意しなければ難しいと言われていました。しかし近年は、アパートやマンションの1室のみを購入することや、インターネットの情報を検索して遠隔地の割安な不動産を購入することも容易になっています。退職金などを使って不動産オーナーになる方が増えています。父母から賃貸不動産を相続し、二代目オーナーとして運用に乗り出す方もたくさんいます。「不動産オーナー」や「不動産運用」という言葉は、かなり身近な存在になっています。

しかし、不動産オーナーが増えれば、比例してトラブルも増えます。不動産を運用するということは「家賃や地代が定期収入になる」「預金よりも高い金利で資産運用できる」というメリットだけではありません。メリットを得られるのは、あくまでトラブルなく不動産を運用できたケースにおいてです。不動産運用によるメリットを得るためには、トラブル対策が必須になるのです。

不動産運用の中で最たるトラブルが、家賃滞納のトラブルです。家賃や地代の滞納があった場合や、将来的に賃料債権の回収トラブルが発生しそうな場合はどのように対策すればいいのでしょうか。不動産オーナーが弁護士に賃料債権の回収を相談するメリットを4つのポイントで解説します。

不動産オーナーが不動産運用で対策すべき4つのリスク

不動産で運用すれば、銀行の定期預金より高い金利で運用できる。家賃を年金のように老後の定期収入にできる。アパートやマンションを1棟購入しなくても、1室からオーナーになることができる。そんな不動産運用の説明文を新聞の折り込みチラシなどで目にする機会が増えています。

不動産運用は確かにメリットのある方法です。しかし、リスクもある方法です。
不動産オーナーが気をつけたいリスクは、「倒壊や損壊のリスク」「経年のリスク」「空室リスク」「滞納や建物明渡におけるトラブルのリスク」の4つです。

不動産運用の「倒壊や損壊のリスク」「経年のリスク」「空室リスク」

「倒壊や損壊のリスク」とは、災害や経年により不動産が損壊や倒壊を起こしてしまうリスクのことです。日本各地で豪雨や地震が相次いでいる近年、不動産オーナーにとって気にかけておきたいリスクの1つになっています。

不動産を購入する時は、耐震設計がしっかりなされているか、不動産に大きなダメージがないかをよく確認し、保険への加入や定期的な保全をしっかりすることがリスクの軽減に繋がります。

「経年のリスク」とは、経年により不動産の価値が下がるというリスクです。たとえば、800万円で中古のアパートを購入して家賃収入を得ようと考えていたとします。800万円の中古のアパートは、何時までも800万円という資産価値を有するわけではありません。

物は経年により劣化します。不動産も同じで、時が経つにつれて価値が減少します。月8万円の家賃収入を1年継続して得ていた不動産オーナーが不動産を売却するとします。不動産の売却価格が700万円だった場合、年間の家賃収入が96万円ですから、4万円の損失を出している計算になります。固定資産税などの税金も含めれば、さらに損失は膨らむことでしょう。

不動産は地域的要因などでも価値が下がってしまうことがあります。損益分岐点をしっかりと見定めて運用しなければ、不動産オーナーの赤字ばかりが膨らむ結果になってしまいます。税理士や不動産屋、不動産鑑定士などに相談し、リスクの軽減をはかることが重要になります。

「空室リスク」とは、アパートやマンションに空室が出てしまうことにより家賃収入が途絶えてしまうリスクです。不動産や土地の借り手を募集しても、必ず誰かが借りてくれるわけではありません。1室のみの不動産オーナーの場合、1室を誰かが借りてくれなければ家賃収入は基本的にゼロです。土地も同じです。

1棟のアパートを所有していても、全室が入居者で埋まるわけではありません。入居者の出入りによって空室が出てしまい、家賃収入が上下します。入居者が少なければそれだけ家賃収入は少なくなります。税金や不動産の保全にもお金が必要になるため、空室が多くなれば多くなるほど赤字になるリスクが高くなります。不動産屋への相談や広告などを活用し、空室が出ないように対策をすることが空室リスクの主な対処法になります。

不動産は「所持していれば家賃や地代という金の卵を産む鶏」ではありません。リスク対策をしっかりしておかないと、思わぬ損失を招く恐れがあるのです。

対策が難しい「家賃滞納や建物明渡によるトラブルのリスク」

4つ目のリスクが「家賃滞納や建物明渡におけるトラブルのリスク」です。家賃滞納への督促や建物明渡に応じてもらえないことにより起こるリスクのことです。4つある不動産運用のリスクの中で最も対策が難しいと考えられるのが、この家賃滞納や建物明渡請求によるトラブルのリスクです。

前の3つのリスクは、保険や修繕積立金などによって対処することが可能です。アパートが老朽化したら、修繕積立金を使って修繕を行う。火事や地震などに対しては保険や積立金によって対処する。このように、不動産オーナーの方で様々な対策をすることができます。空室リスクに関しても、広告などによって入居者を募るなど、ある程度の対処が可能です。もともと入居者のいる不動産を購入することによって、最初から空室リスクをヘッジしつつ不動産オーナーになるという方法もあります。

これに対し家賃の滞納や建物明渡のトラブルは、一般的なサービスの利用や不動産オーナーの事前の対策によって対処することが難しいリスクです。アパートの部屋や土地を貸す段階で、借主がきっちりと家賃を払ってくれるかもわかりません。建物明渡の要請に応じてくれるかどうかは、借主の顔を見ただけではわかりません。予想がつかないのです。

入居希望者の経済状況や態度は判断材料の1つになります。ですが、あくまで判断の材料になるというだけです。絶対に払ってもらえるという保証はありません。経済状況の良好な借主でも、リストラや経営破綻によって収入が途切れ家賃の滞納が発生する可能性があります。そもそも、お金があっても家賃を払わない人や、お金や期限にルーズなために滞納を繰り返す人もいます。建物明渡についても同じです。

家賃を滞納し続けた入居者に対して不動産オーナーが断固とした態度をとった結果、アパートの借主から不動産オーナーへの慰謝料請求を認める判決が出たこともあります。2018年3月22日の東京地裁の判決です。
不動産オーナーによる家賃の回収や建物明渡請求では「法的なラインを見極めること」と「慎重さ」「方法の選択を見誤らないこと」が求められます。

不動産オーナーが賃料債権の回収を弁護士に相談する4つのメリット

家賃を回収しつつ、法的なラインや賃料債権の回収に講じる方法を見誤らないこと。これは、深い法的知識がないと難しいことです。だからといって家賃の滞納を許していると、収入が減ります。甘く見られて、ずるずると滞納状態が続くという懸念もあります。

不動産オーナーは賃料債権の回収を得意とする弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。家賃などの賃料債権の回収を弁護士に相談することには、4つのメリットがあります。

法的なラインについてのアドバイスを受けられる

家賃を滞納しているからといって、回収のために何をしてもいいというわけではありません。家賃を滞納している借主の財布からお金を取れば、窃盗の罪に問われる可能性があります。また、家賃を滞納している借主の家財を許可なく売却することも問題があります。2018年3月22日の東京地裁の判決のように、不動産オーナーと入居者の間で家賃の滞納や建物明渡についてのトラブルが多発しています。

賃料債権の回収は法律に則って行う必要があります。不動産オーナーが軽率な行動をとってしまうと、後に借主から慰謝料や損害賠償を請求される可能性があります。
「できること」「してはいけないこと」について、不動産オーナー側で明確なライン引きをしておくことが重要になります。

しっかりと法的なラインを引き、「できること」の中から賃料債権を回収する方法や建物明渡の進め方を選択することになります。しかし、法的なラインを引くことは、深い法的な知識や家賃の回収についての実情や判例を把握していなければ難しいことです。

弁護士に相談することによって、賃料債権の回収や立ち退き拒否への効果的かつ合法的な対処法を知ることができるというメリットがあります。慰謝料や損害賠償を請求されるリスクが低くなるというメリットもあります。

賃料債権の回収を一任できるため手間がかからない

所有不動産の部屋数が多いと、賃料債権を回収するために時間と労力が必要になります。100部屋の不動産オーナーだと、100部屋のうち滞納が起きているのは何部屋かを把握するところからはじまって、滞納状況の確認や、状況ごとに賃料債権の回収手段を講じなければならないなど、大変な手間になります。この他にも、不動産オーナーとして、不動産の管理維持に力を尽くさなければいけません。時間的な負担もかなりのものです。

不動産オーナーの中には、会社員との兼業オーナーもいます。兼業オーナーも、家賃の滞納だけに時間を割くわけにはいかない状況のはずです。滞納への法的対処をしている時間がないという方も珍しくありません。だからこそ、弁護士へ賃料債権の回収を相談するメリットがあります。

弁護士には相談のみも可能ですが、賃料債権の回収を一任することも可能です。また、1件のみ賃料債権の回収を依頼するのではなく、不動産オーナーの所有する不動産すべての賃料債権の回収を依頼することもできます。一括で賃料債権の回収を依頼すると、弁護士の方で賃料債権の回収にあたり、不動産オーナーへ定期的な報告を行います。弁護士に相談し、賃料債権の回収そのものを一任することにより、賃料債権の管理が楽になり、不動産オーナーの回収の手間がなくなるというメリットがあります。

弁護士と顧問契約を結ぶことも可能です。顧問契約を結べば、賃料債権の回収以外の法的なトラブルにも速やかに対処できるというメリットがあります。

不動産オーナーに必要な法的措置を提案してもらえる

賃料債権の回収や退去の請求は法律に則って行うことが必要です。しかし、法律に則った方法はいくつもあり、ケースによって適切な方法は異なります。

賃料債権を回収する方法にはそれぞれメリットとデメリットもあるため、適切な方法の選択が賃料債権の回収において成功と失敗をわけると言っても過言ではありません。

弁護士に相談すれば、通常訴訟や調停、支払督促や少額訴訟など、状況に応じて回収率の高い方法の提案を受けられるというメリットがあります。回収方法それぞれのメリットやデメリット、他に採るべき手段があるかも合わせて検討することができます。

建物明渡などのトラブルに対しても適切な方法の提案が受けられるというメリットがあります。

将来的なトラブルへの対策を講じることができる

弁護士に相談することで、将来的なトラブルへの対策を講じることも可能です。

たとえば、不動産オーナーが土地を貸していたとします。しかし、借主が地代を滞納していました。貸主は債務不履行を理由に土地賃貸借契約を解除しました。土地上には不動産があり、取り壊しについて借主と貸主の間でトラブルになるかもしれないという懸念がありました。地代の督促をするにしても、契約の解除をするにしても、トラブルを未然に防ぐためには、タイミングや文言が重要になります。

法的な知識がないと、賃貸契約を解除するタイミングや不動産の引き渡し、原状回復義務などの問題でタイミングや文言を誤り、トラブルに発展する可能性があります。
弁護士に相談することにより、トラブルになり難い文言の選択ができ、タイミングをはかることができるというメリットがあります。
契約書のリーガルチェックを受けられるというメリットや、ケースごとのトラブル防止についてのアドバイスも受けられるというメリットもあります。

最後に

不動産オーナーが不動産運用をする上で気をつけたいリスクは4つです。リスクの中には保険や修繕積立金などで軽減できるリスクもありますが、事前の対策が難しいリスクもあります。対策が難しいリスクの最たるものは、家賃の滞納や建物明渡によるリスクです。不動産オーナーに対しての慰謝料や損害賠償を認めた判例もあるため、家賃の滞納や建物明渡への対処は、慎重な行動と法的な知識が求められます。

不動産オーナーが弁護士への相談で得られるメリットは4つです。家賃の滞納に対して行動を起こす前に、まずは「リスクはないのか」「他に適切な方法はないのか」を弁護士に相談してみてはいかがでしょう。賃料債権の回収経験が豊富な弁護士が、よりリスクの少ない方法を提案すると共に、スムーズな回収のために協力させていただきます。