時効によって権利を失わないためには一定の手続きをとる必要があります。時効の中断と呼ばれる手続きです。しかし法律の改正により「時効の中断」という呼び方はしなくなりました。

この記事では、時効の中断とは何かを民法改正に基づいて解説していきます。

 

時効の中断とは

時効の中断とは、時効による効果を生じさせるのに必要となる時効期間が一定の事実の発生によりリセットされ始めから数え直すことです。「時効の中断」は民法改正前の呼び方で、現在は「時効の更新」という制度に変わっています。

 

時効の停止(完成猶予)とは

時効の停止とは、時効による効果を生じさせるのに必要となる時効期間が一定の事実の発生により一時的に完成が猶予されるものです。「時効の停止」は民法改正前の呼び方で現在は「時効の完成猶予」という制度に変わっています。

 

2020年4月の民法改正による変更点

時効制度は民法で基本的な内容が決められています。民法は2020年4月1日から改正法が施行され時効についても変更がありました。

 

旧法における時効の中断、時効の停止

改正前の時効の中断は次のような意味を持っていました。

 

時効の中断

時効の中断とは、改正前の民法において時効期間の進行が一定の事実が生じたことで中断する制度でした。具体的には「完成の猶予」と「時効期間の更新」(期間のリセット)の2つの意味を持っていました。

 

時効の停止

時効の停止とは、改正前の民法において権利者が時効の中断をするのに障害となる事実がある場合に一時的に時効の完成を猶予する制度でした。

 

新法における時効の更新と完成猶予

時効の中断の効果には完成を猶予する部分と時効期間のリセット部分があり分かりづらいという問題がありました。そこで「完成猶予」の部分と「時効期間のリセット」部分が明確に分けられることになりました。時効期間のリセット部分を「時効の更新」、猶予部分については「完成猶予」として整理されました。時効の停止も完成猶予として整理されています。

また改正前に存在した短期消滅時効は複雑であったため廃止されました(改正前に発生した債権については旧民法の期間が適用されます。)。債権の時効期間は原則として5年とされました。

 

債権の消滅時効(原則)

起算点

時効期間

権利を行使できることを知った時から

5年

権利を行使することができる時から

10年

※損害賠償請求権や労働基準法上の債権など例外もあります。

 

損害賠償請求権については「損害賠償請求権とは?損害賠償債権の回収について詳しく解説」をご参照ください。

 

時効が中断(更新)されるケース

時効が中断(更新)されるケースは法律で規定されています(民法147条以下)。

 

債務の承認

債務者が権利を承認すると時効が中断されます。つまり時効期間がリセットされるためその時から時効期間を数え直します。直接権利があることを認める場合だけでなく、支払いの猶予を求めてきた場合や一部弁済をしてきたような場合も権利の承認になります。時効期間満了後に債務を承認するケースもあります。この場合には原則として時効による利益を得られません。時効期間の経過を債務者が知らなかったとしても支払い義務があることを認めたことから債権者としては支払いを受けられることを期待するため信義則上時効を主張できないとされています。債務の承認はできるだけ書面にするなど証拠に残すようにします。

 

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裁判上の請求

訴訟を起こして相手方に請求することで時効の完成が猶予されます。訴えの取り下げなどがあったとしてもその時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。確定判決や確定判決と同一の効力を有するもの(裁判上の和解等)により権利が確定したときは時効期間が更新されるためはじめから数え直します。判決や同一の効力をもつものにより確定した権利については10年未満の時効期間のものであっても期間が10年となります(民法169条)。

 

調停・和解

訴え提起前の和解手続きや調停手続きによっても完成猶予や時効の更新が認められます(民法147条1項3号)。和解調書や調停調書は確定判決と同一の効力をもつため調停等により権利が確定したときには時効期間が10年より短いときであっても10年となります。話し合いがまとまらず権利が確定しなかったときには6か月の完成猶予しか認められないため時効期間を更新するには裁判上の請求などが必要となります。

 

<関連記事>債権回収における民事調停とは?手続きの流れを分かりやすく解説

 

支払督促

支払督促は簡易裁判所の書記官から金銭その他の代替物の支払いを命じてもらうものです。支払督促も裁判上の請求と同様に時効の完成が猶予されたり時効期間が更新されたりします。権利が確定せずに終了したときに6か月の完成猶予しか認められないのも同様です。

 

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強制執行

強制執行や担保権の実行、財産開示手続によっても時効の中断がなされます。手続き終了まで完成が猶予され終了時から新たに時効期間が進行します。ただし申立ての取下げなどにより終了したときには6か月の完成猶予となります。

 

仮差押え、仮処分

仮差押えや仮処分をするとその事由が終了したときから6か月間時効の完成が猶予されます(民法149条)。

 

催告(裁判外)

債務者に支払いを催促することでも時効の完成が6か月間猶予されます。ただし催告により時効の完成が猶予されているときに再び催告しても完成は猶予されません(民法150条)。口頭でも催告にあたりますが内容証明郵便を使い証拠にすることが重要です。

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

協議を行う旨の合意

権利に関して協議を行う旨の合意を書面でしたときにも時効の完成が猶予されます。以下のいずれか早い時まで完成は猶予されます。

 

・合意のあった時から1年を経過した時

・合意の中で当事者が協議する期間(1年未満に限る。)を約束したときはその期間経過時

・一方の当事者から相手に対して協議を続ける意思がないと書面で通知された時から6か月経過した時

※書面には電磁的記録を含む(民法151条4項、5項)。

 

合意による完成猶予中に再度の合意をすることも可能ですが通算で5年までです。催告による猶予中は合意による猶予の効力はありません(民法151条3項前段)。合意による猶予中は催告による猶予もありません(同項後段)。

 

天災その他避けることのできない事変

大地震や戦争などの避けることのできない事変により時効中断の手続きがとれないときには、その障害がなくなった時から3か月経過するまでの間は時効の完成が猶予されます(民法161条)。

 

時効問題は弁護士に相談すべき理由

時効の中断(時効の更新、完成の猶予)は権利を守るために重要な手続きです。長期間支払いが滞っている場合には時効により権利を失う恐れがあります。売掛金や損害賠償請求権など権利によって時効期間が異なることもあります。弁護士に相談することでいつ時効にかかる可能性があるのかアドバイスを受けることができます。時効中断の手続きも種類がありケースによって適切な方法が異なります。弁護士であれば事案に応じて適切な時効中断手続きをとることができます。大切な権利を失わないために不安なことがあれば弁護士に相談されることが大切です。

 

まとめ

・時効の中断とは、一定の事実が生じたときに時効期間をリセットする制度です。現行法では「時効の更新」といいます。旧法の時効の中断は、「完成猶予」と「期間のリセット」の2つの効果がありましたが、改正により「完成猶予」と「時効の更新」に分けて整理されました。

・時効の中断方法には「債務の承認」や「裁判上の請求」などの方法があります。

・時効の中断方法には種類がありケースによって使い分けるため弁護士に相談することが大切です。

 

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