競売は「けいばい」と読みます。債権を回収するための競売には判決などを基にした「強制競売」と担保権をもとにした競売があります。

 

この記事では、不動産を対象とした強制競売の流れについて解説していきます。

 

強制競売とは

強制競売とは、不動産などの財産を差し押さえて強制的に売却し代金から債権回収を行う手続きのことです。誰でも強制競売を申し立てられるわけではなく、「債務名義」という強制執行できる力が認められている文書が必要です。

 

担保不動産競売

よく似た手続きとして担保不動産競売というものもあります。これは抵当権などの担保権を持つ債権者が担保権の実行として目的不動産を競売し代金から債権を回収する方法です。債務名義は不要です。

 

強制競売開始決定に必要な要件

強制競売を利用するためにはいくつか条件を満たす必要があります。

 

債務名義の取得

強制競売を利用するには債務名義が必要です。

債務名義とは、強制執行により実現したい請求権の存在を証明する公文書のうち執行力が認めるもののことです。

債務名義にはいくつかありますが、一般的には訴訟を行い取得する「確定判決書」や和解で終了した場合における「和解調書」などがあります。

つまり、訴訟を行う主な目的は強制執行に必要な債務名義を取得することにあります。

 

その他の債務名義については「債務名義とは? 取得方法と債権回収までの流れを分かりやすく解説」をご参照ください。

 

予納金及び申立手数料の納付

裁判所に納める費用は原則として債務者の負担ですが、手続きを利用する段階では債権者が納めることになります。申立費用は「4,000円(収入印紙)」ですが、予納金と呼ばれる概算の費用が高額です。東京地裁の場合には少なくとも80万円以上が必要となります。

 

<関連記事>強制執行にかかる費用とは?裁判所に強制執行を申請する手順をご紹介

 

強制競売の流れ

不動産強制競売の流れを解説していきます。

 

競売申立て

不動産強制競売は不動産所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる必要があります。その際に下記のような書面を提出することになります。

 

・申立書

・執行力のある債務名義の正本

・債務名義の送達証明書

・不動産登記事項証明書

・租税公課証明(固定資産税評価証明書等)

・地図、建物所在図等

・債務者の住所証明書(住民票の写し、資格証明書等)

・不動産所在地に至るまでの通常の経路及び方法を記載した図面

 

※ケースや裁判所によって必要書類が異なることがあります。

 

裁判所による競売開始決定

申立てに不備がなければ競売開始決定が出されます。裁判所書記官が対象不動産について登記を嘱託し登記官が差押登記を行います。差し押さえがされると債務者による処分が制限されます。債務者と債権者には差し押さえの事実が通知されます。

 

現況調査・価格評価

裁判所は他に債権者がいないか調査し債権届出などを促すほか、対象不動産について調査します。

 

現況調査報告書

競売の流れにおいて特に重要なものの一つが不動産の現況調査です。執行裁判所は執行官に不動産の状態や権利関係等を調べさせます。執行官というのは実力行使を伴う民事執行などを担当する国家公務員です。調査のために必要であれば鍵屋さんに同行してもらい建物などに強制的に立ち入ることもできます。

必要書類の確認や関係者への事情聴取などを行って現況調査報告書を作成します。その内容は、外観や室内の写真のほか「ペット飼育の有無」、「表札の有無」、「内壁クロスの小傷」など細かい点に及ぶこともあります。

 

競売物件は事前に情報を入手しにくいことから現況調査報告書は執行官が足を運び集めた信頼のおける情報であるため入札希望者にとって重要な資料となり、「評価書」、「物件明細書」とともに「3点セット」と呼ばれます。

 

評価書

対象不動産の経済価値が分からないと適正な価格で売却することができません。そこで、強制競売の流れの中で執行裁判所は評価人に不動産価格を評価させます。評価人は裁判所があらかじめ選定した不動産鑑定士から選ばれます。執行官と帯同して調査することもあります。評価人は調査結果を評価書にまとめて裁判所に提出します。

 

物件明細書

現況調査報告書と評価書が提出されると裁判所書記官が物件明細書を作成します。これは買受人が引き受けることになる権利や競売により発生する法定地上権等の概要などが書かれています。例えば、賃借権を買受人が引き受ける必要がある場合にはその内容が含まれます。

 

これら3点セットは「BIT(不動産競売物件情報サイト)」システムによりインターネットから閲覧可能となっています。特に料金はかからず会員登録も不要です。

 

入札・売却

売却を実施するために執行裁判所は評価書に基づき売却基準価額を設定します。買受けの申出は売却基準価額から10分の2に相当する額を控除した価額以上が必要です。このような制限を設けているのは売却価額があまりに安くなると債権者や債務者に不利益になるからです。

入札の方法は競り売りなどの方法がありますが一般的に期間入札が行われています。

原則として最高価で買い受けを申し出た者が売却を受けられることになります。

 

債権者への配当

強制競売の流れの最後に配当が実施されます。買受人が指定された金額を納付することで配当原資が確保されます。

債権者が強制執行を申し立てた方しかいなかったときには、執行費用と請求債権額分が交付されます。債権者が複数の場合であっても全員の債権が全額回収できるときにも同様です。余れば債務者に返還されます。

債権者が複数の場合で全額の回収ができないときは法律上の優先順位を考慮しながら配当表が作成されます。配当手続きはまず代金納付から原則1か月以内に配当期日が指定されます。債権者は指定された日までに債権計算書を提出し書記官により配当表が作成されます。配当異議がなければ配当が行われます。

 

債権者は全額の回収ができなかったときは他の財産に強制執行することもできます。めぼしい財産がなく強制執行が難しいケースでは貸倒損失として税金面で対応することも検討します。

 

<関連記事>売掛金が回収不能な場合の対応方法(貸倒損失)とは?対策も徹底解説

 

まとめ

・強制競売とは、財産を差し押さえ売却して債権を回収する強制的な手続きです。

強制競売を利用するには「債務名義」という書面が必要です。確定判決書が代表的です。

・強制競売の流れは、「申立て」、「開始決定」、「不動産の調査・評価」、「入札・売却」、「配当」となります

 

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強制執行には不動産を対象とした強制競売のほかにも動産執行や預金や売掛金、給料などを対象とした債権執行があります。

それぞれ費用面でのリスクやメリットなどが異なります。

債権回収において大切なことはケースに合わせて臨機応変に適切な回収方法を選択することです。債権は単に回収できればいいのではなくコストや時間、労力などの面から効率よく行うことが必要です。

強制執行は簡単とは言い難く専門家のアドバイスを受けながら行うことをおすすめします。

 

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