売掛金の回収は迅速に行うことが基本です。そのためには状況に合わせて回収手段を変えていくことが必要です。

 

この記事では債権回収の基礎知識と回収するためのステップを解説していきます。

 

売掛金とは

売掛金を回収していくために必要な基礎知識から見ていきます。

 

「売掛金」と「売上」の違い

売上とは、商品やサービスを提供したことにより受け取る金額を表す勘定科目です。代金は売上と同時に回収することもあれば後日回収することもあります。売上高は一定期間に発生した売上の合計金額を指します。

売掛金とは、営業活動によって生じた代金を後払いにした場合の金銭債権のことです。

 

「売掛金」と「買掛金」「未収金」の関係

買掛金とは、営業活動である仕入によって生じた代金を後払いにした場合の債務のことです。いわゆる「ツケ」のことです。

未収金とは、営業取引以外によって生じた金銭債権を指します。営利法人が資産を売却した場合の代金請求権や医療機関の治療費などで使われます。

 

売掛金の回収のためのステップ

売掛金の回収は状況に応じて柔軟に行うことが必要です。そのための基礎知識を解説します。

 

電話やメールで確認

売掛金の入金が確認できなかった場合の初めのステップは支払いがされなかった原因を突き止めることです。そのためには債務者に電話などで連絡をとることが大切です。支払い忘れであれば問題は解決します。資金繰りの問題で支払いができないときには支払い可能日を確認します。期日を明確にすることで再び滞納があったときに次の回収ステップにスムーズに移行することが可能となります。

 

訪問する

売掛金が高額であるような場合には訪問による回収も検討します。相手にプレッシャーを与えて支払いに応じてもらいやすくする意味もありますし、分割払いなど支払方法の変更をする場合には債務承認弁済契約書など書面にサインをもらうことが重要だからです。

 

<関連記事>債務承認弁済契約とはなにか?売掛金の確実な回収につなげる3つのポイント

 

内容証明郵便の送付

売掛金の回収をする場合には内容証明郵便の利用は必須ではありません。しかし、内容証明郵便は証拠として残ることから相手に心理的な圧力を加えることができます。特に弁護士から送付されることで法的手段をとられるのではないかと不安になり支払いに応じてもらえることがあります。

 

<関連記事>内容証明郵便を拒否・無視された場合の対処法|内容証明郵便の効力を弁護士が解説

 

支払督促の利用

法的な回収手段は訴訟以外にもあります。支払督促は簡易裁判所で手続きをとることで滞納している相手方に支払いを命じてもらうものです。相手方は異議を申し立てることができますが一定の期間内に手続きをしないときには「仮執行宣言付支払督促」を送付してもらうことができ債務者に送達されると財産から強制的に回収することが可能となります。

ただし、債務者から期間内に異議の申し立てがあると訴訟に移行することになっている点には注意が必要です。

 

<関連記事>支払督促とは? 取引先にする場合のメリット・デメリット、手続きの流れを解説

 

売掛金が小さいときは少額訴訟

売掛金が60万円以下の回収には少額訴訟を利用することもできます。少額訴訟は60万円以下の金銭債権の場合に利用できる簡易な訴訟手続きであり、簡易裁判所に申し立てることで原則として1回の期日で審理をして判決を出してもらう手続きです。

ただし、1日で終わらせるため証拠をすべて用意しておく必要があり、控訴も認められていません。回数制限もあり同一裁判所の利用は1年に10回までとなっています。

 

<関連記事>少額の売掛金の回収と少額訴訟のやり方、費用、メリット、デメリットを解説

 

強制執行を行う

勝訴したとしても債務者が支払いに応じてくれないことがあります。その場合には債務者の財産から強制的に回収できないか検討します。

対象となる財産はいろいろありますが、不動産、商品や貴金属などの動産、預金や給料、売掛金などの債権が代表的です。

例えば、預金などの債権を差し押さえれば債権者が債務者の代わりに銀行などから回収することができます。

 

<関連記事>強制執行にかかる費用とは?裁判所に強制執行を申請する手順をご紹介

 

売掛金の未回収を未然に防ぐ方法

売掛金の回収率を高めるには取引前の基礎知識も必要です。

 

与信管理を徹底する

与信管理とは、契約の中身や取引相手の信用の程度に応じて取引の可否や与信限度額を調整することでリスクをコントロールすることを指します。

無理のない取引を徹底することで売掛金の未回収のリスクを最小限にすることができます。特に新規の取引や大口の取引の場合には念入りな情報収集を行い未回収となるリスクを抑えることが必要です。

与信管理は新規の取引の際だけでは不十分です。与信管理は継続的に行うことが必要であり取引内容に変更があるときなど適宜実施していきます。

 

所有権留保など契約書を工夫する

債権の回収率を高めるためには契約書を工夫することも必要です。大前提として契約書を交わすことが重要です。契約は法律で書面が必要とされていなければ口頭でも成立します。しかし、契約書を作成しておくことで合意した内容が明確になるため無用なトラブルを防ぐことにつながります。契約書に書かれていないことはお互いに請求することが難しくなりますが、反対に守ってほしいことを契約書に明記しておけば法的な拘束力が生じるため請求が容易になります。

契約書の内容を工夫することで債権の回収の難易度を下げることも可能です。例えば、所有権留保条項を入れることで回収の可能性を高める方法があります。

所有権留保というのは、商品を販売する際に特約として代金を完済するまで所有権を売主に残すというものです。このようにしておくことで債務者が自己破産したとしても別除権という扱いになり破産手続きによらずに回収できる可能性があります。

 

<関連記事>企業における債権回収対策・契約上の注意点!トラブルを未然に防ぐ契約書作成のポイント

 

債権回収を弁護士に依頼するメリット

回収の基礎知識だけでなく専門的な知識経験をもつ弁護士に依頼することで回収効率を上げることができます。

 

相手にプレッシャーを与えることができる

債権回収のケースはさまざまであり債務者にもいろいろな人がいます。支払に応じない理由も経済的事情から商品やサービスに不満があるケース、代金を踏み倒そうとする悪質な場合もあります。

いずれのケースであっても債権回収にあたっては主導権を債務者に取られないようにする必要があります。そのためには相手にプレッシャーを適切に与えることが必要です。支払いに応じないことで不利益が生じることを認識してもらいます。弁護士が回収に着手することで相手方は法的手段という不利益が生じることを意識することになります。そのためこれまで支払いに応じてこなかった相手方が態度を変化させて支払いに応じることや交渉に柔軟に応じてくれることがあります。

 

相手との交渉を全て任せることができる

債権回収業務は本業とは異なるものであり時間や労力をかけすぎると経営効率の点から問題があります。また債務者との交渉は精神的にも疲労しやすいものです。回収業務のご担当者の性格にもよりますが債務者との交渉が苦手な方もいらっしゃいます。

弁護士に債権回収を依頼することで煩わしい交渉や法的な書面などの作成も任せることができます。専門家に任せているという安心感からストレスも軽減されることになります。

 

スピーディーに回収ができる

債権回収は迅速に行うことが求められます。時間が経過するほど相手の経済力や時効の問題から回収の難易度が上がってしまいます。

債権の回収は慣れていないと時間や労力がかかりやすくなります。必要書類の作成をするだけでも簡単ではありませんし状況に応じて柔軟に対応することも必要です。

弁護士であればケースや状況に合わせて柔軟に対処することが可能であり必要に応じて法的な回収手段を用いることもできます。

 

法的な回収手続きがスムーズに実行できる

法的な回収は基礎知識だけでは難しい面があります。支払督促、訴訟、強制執行などの法的手続きは債権者自身で行うことも可能です。しかし、裁判所を利用した手続きは約束事も多く書類の作成だけでも容易ではありません。また、法的な回収手段といっても種類があるため状況に応じて適切に使い分けることが求められます。例えば、相手方との関係から交渉を重視するのであれば民事調停が選択肢となりますし、相手が財産を処分・隠匿する恐れがあるときには仮差押えも必要となります。また、勝訴したとしても財産が見つからなければ回収ができないため、不動産や取引先金融口座などの調査も必要となります。

債権回収を専門にしている弁護士であればケースに合わせて適切な法的手段を用いて効果的に回収することが可能です。

 

<関連記事>顧問弁護士の費用・顧問料相場と顧問弁護士を雇うメリットを解説

 

まとめ

・売掛金回収における基礎知識のポイントは、「迅速に回収すること」と「状況に柔軟に対応すること」です。

・売掛金回収の最初のステップは、電話などにより滞納の原因を確認することです。原因に応じて回収手段を選び必要に応じて支払督促など法的手段も検討します。

 

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