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大企業に限らず中小企業や個人事業主にとっても顧問弁護士は重要な存在です。特に法務部のない中小企業や個人事業主にとっては重要度が高くなります。顧問弁護士は法務部を設置したような意義があるからです。
法務部を設置している企業であっても専門性の高い業務については顧問契約をするメリットがあります。
顧問契約の内容にはいろいろなものがあります。法律事務所によって提供するサービスが異なります。提供するサービスの内容によって顧問料も変わるため事業の規模や内容に合っているか確認することが大切です。
この記事では、顧問契約の内容や顧問料の相場、顧問弁護士をもつメリットなどについて解説していきます。
顧問料の相場
顧問契約とは、専門家から必要なときに助けてもらえる契約のことです。単なる相談にとどまらず業務を優先的に行ってもらえるなど優遇措置を受けられることも多いです。
顧問弁護士の場合には、相談にすぐに応じてもらえたり相談料が一定の範囲で無料になったり、事務処理の費用が割引になることを内容とするものが多いです。
弁護士の顧問料については特に規定がありません。そのため法律事務所によって異なります。依頼する企業の規模や業務内容によって違いが生じることもあります。
ですが弁護士の顧問料の相場についてはある程度の目安があります。
日本弁護士連合会が弁護士費用・顧問料についてアンケートを行っているためこれを参考にすることができます。
中小企業を対象とした顧問契約の場合、半数近くの弁護士が月5万円と回答しています。
<中小企業を対象とした顧問料(目安)>
顧問料(月額) |
1~10万円 ※5万円が多い |
※2009年度アンケート結果版 アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(日本弁護士連合会)参考
専門性の高い企業法務など業務内容によっては月額10万円以上とする弁護士も少なくありません。一方で個別の業務の際に手数料を支払う仕組みにして1万円程度の安い顧問料にすることで負担を軽くしている弁護士事務所もあります。
顧問料内で委託可能な業務内容
顧問契約の本質は必要なときにアドバイスを求められることにあります。そのため顧問契約を結んでいたとしても個別の業務については別途報酬費用がかかります。
ですが法律事務所によっては顧問料の範囲内で一定の業務をしてもらえることがあります。
法律相談
調査を要しない即答可能な相談や、月に数時間程度の相談までは無料にしている弁護士事務所もあります。企業としての相談のほかに役員や従業員からの相談を顧問料の範囲内とするところもあります。
契約書や就業規則のチェック
契約書の内容に不備があるとトラブルのもととなるため弁護士によるチェックは欠かせません。契約書のチェックを顧問料の範囲に含めている弁護士事務所もあります。
取締役会、株主総会への出席など
顧問料を高めに設定している弁護士事務所の場合、取締役会などの社内会議への出席や社内研修、内容証明の作成などを一括して顧問料に含めていることもあります。
多くの業務内容が顧問料の範囲に含まれていればいいというものではありません。その分顧問料が高額になるからです。
売掛金の回収に悩んでいる会社や個人事業主の方であれば、ホームページ上に顧問弁護士を表記するだけでも支払いを受けやすくなり、いざというときに回収の依頼もしやすくなります。また、取引先からの信用を得やすくなるメリットもあります。
顧問契約は最低限の内容のものにして必要に応じて個別に依頼することで固定費を抑えることも可能です。
大切なことは事業の内容や目的に合わせて顧問弁護士を選ぶことといえます。
顧問契約外の業務を委託した場合の弁護士費用の相場
顧問契約の範囲内で処理できない業務については個別に費用がかかります。顧問契約をしている場合には個別の料金が割引になることもあります。
書類作成の費用相場
事業で作成する書類にはいろいろなものがありますが典型例として契約書の作成があります。
弁護士会によるアンケートによれば、手数料として、年間取引予想額3,000万円の契約書の作成では、顧問契約がある場合には5~10万円前後、顧問契約がない場合には、5~20万円前後が多くなっています。
<契約書作成手数料(目安)>
顧問契約がない場合 |
5~20万円前後 |
顧問契約がある場合 |
5~10万円前後 |
※2009年度アンケート結果版 アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(日本弁護士連合会)参考
売掛金回収における着手金・報酬金の相場
成功報酬金は回収額の10~30%程度です。着手金については0円の事務所もあります。
<売掛金回収手数料(目安)>
2,000万円の売掛金について訴訟を提起し全額回収した場合(強制執行はしていない)
|
着手金 |
報酬金 |
顧問契約がない場合 |
50~100万円前後 ※100万円前後が多い |
100~200万円前後 ※200万円前後が多い |
顧問契約がある場合 |
50~70万円前後 ※50万円前後が多い |
100~200万円前後 ※100万円前後が多い |
※2009年度アンケート結果版 アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(日本弁護士連合会)参考
債権回収の着手金や報酬金については事案や法的手続きの有無、債権額などによって異なるので弁護士とよく相談してください。
<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説
株主総会指導
株式会社にとって株主総会は今後の経営を左右する重要なイベントです。不備があれば訴訟を起こされることもあります。そのため弁護士に株主総会の指導を受けることが大切です。
<株主総会指導報酬(目安)>
想定問答の検討やリハーサル、株主総会当日に出席した場合(株主総会は1時間で終了)
顧問契約がない場合 |
20~50万円前後 ※50万円前後が多い |
顧問契約がある場合 |
10~30万円前後 |
※2009年度アンケート結果版 アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(日本弁護士連合会)参考。
会社の規模や株主の数、議案、出席予定の株主の属性などにより報酬額は異なります。
社内セミナーの実施
役員や社員による不用意な言動が原因で企業イメージが損なわれ経営が傾くことがあります。また、社内でのハラスメントが問題となり訴訟を起こされることもあります。このようなトラブルを防ぐためにはコンプライアンスを徹底する必要があり社内研修の実施が有効です。
<社内セミナーの報酬(目安)>
コンプライアンス、セクハラ防止に関する研修を実施した場合(研修時間2時間、資料作成5時間)
顧問契約がない場合 |
5~10万円前後 ※10万円前後が多い |
顧問契約がある場合 |
2~10万円前後 ※5万円前後が多い |
※2009年度アンケート結果版 アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(日本弁護士連合会)参考
セミナーのテーマや時間、準備にかかる時間などにより費用は異なります。
顧問弁護士を雇うメリット
顧問弁護士がいることで取引先から信用される効果がありますが他にもメリットがあります。
法的トラブルの予防
顧問弁護士がいることを自社のホームページや請求書で明らかにしておけば売掛金等の未払いが生じにくくなります。優先的に支払いを受けやすくなるため債権の回収効率が上がります。
また、契約書や就業規則等の書類のチェックを受けることで適切な内容にすることができ、取引先や従業員とのトラブルを防ぐことができます。
トラブルに対して迅速な対応ができる
顧問契約を結んでいない場合には弁護士を探すだけで苦労することになります。トラブルが生じたときには迅速な対応が必要となりますが弁護士に依頼するだけで時間がとられることになります。初動対応が遅れることで問題が大きくなり法的なトラブルに発展しやすくなります。
顧問契約の大きなメリットは、トラブルが起きたときにすぐに依頼に応じてもらえることです。優先的に相談に応じてもらえるため何かあったときに問題解決までの時間を短縮できます。
顧問契約をすることで依頼主の基本情報を把握しているため、すぐに本題の相談に入ることができます。
法務部を設置するより低額
大企業であれば業務に合わせて専門の部署を設置することも多いですが、中小企業や個人事業主の場合には専門の部署を設置することは簡単ではありません。
専門的な業務については外部に委託することでコストを抑え効率を上げることができます。
債権回収業務や契約書の作成など法律業務が日常的に発生するのであれば法務部を設置することも選択肢となりますが、そうでなければ必要なときにいつでも弁護士に依頼できるようにした方がコストを削減することができます。
また、法務部を設置したとしても法的手段が必要となったときは自社での対応に限界が生じることも多いです。
専門家の力をいつでも借りられる状態にしておくことは保険をかけることに似ています。何か起こったときのために弁護士と顧問契約をしておくことで経営に安心感が生まれ、経営を土台から安定させます。
弁護士との顧問契約は、経営に法的な安定性をもたらし、トラブルに遭遇する確率を低くし、トラブルが生じたとしても速やかに解決することが可能となり、自社のブランドイメージを高めることにもなります。
<関連記事>法人での顧問契約とは?弁護士事務所と契約するメリットを解説
まとめ
・弁護士の顧問料は月額1~10万円程度が多くなっています。提供するサービスが多くなるほど高めになり10万円以上の事務所もあります。
・顧問契約の主な目的は優先的に相談に応じてもらえることにあります。ですが顧問料の範囲で法律相談や書類のチェックなどを行っている所もあります。
・顧問契約をしていると顧問料の範囲外の依頼をするときに費用を安くしてもらえることがあります。
・顧問契約をすることでトラブルが起こる確率を減らすことができ、問題が起きたときでも迅速に対応可能です。
・中小企業や個人事業主にとっては法務部のような存在です。
・大企業にとっては債権回収など専門性に特化した弁護士を顧問にすることで経営効率を上げることができます。
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