実務家が徹底解説!!通信販売の後払い代金を確実に回収するためにできることとは?

 

目次
はじめに
どのような回収方法があるか?
・前もって通信販売の利用規約の内容を確認しておく
・会社が自分で催促する
・弁護士に依頼して催促する
・仕方がない場合には法的措置をとる
まとめ 

 

■ はじめに

通信販売をしている会社にとって頭の痛い問題が、後払い代金の未収債権の回収です。
 
代金後払いというシステムは消費者にとって大変便利なものです。商品が手元に届いてから代金を支払うことができるため、通販詐欺に引っかかる心配もなく、安心してインターネットで買い物することができるからです。
 
代金後払いは、これを導入することで利用者が増えるため、会社側にとってもぜひ導入しておきたいシステムであることは間違いありません。その反面、商品を届けたのに支払をしてもらえないといった問題が生じてしまうことがあります。
インターネット通販はいつでもどこでも簡単に買い物ができる便利なシステムであるため、あまり先のことを考えずにポチっと商品を買ってしまう消費者も多くいるためです。そして、そうした消費者は後から支払ができなくなることがあります。
多くの場合、通信販売は商品の価格が高くないということも、購入に対する心理的ハードルを下げ、また、債務を履行しないことに対する罪悪感を薄めてしまっているのです。
 
一つ一つの債権が少額だからといって、未収債権をそのまま放っておくわけにはいきません。悪くすれば会社の倒産にも繋がってしまいます。
 
通販会社としては、未収債権の債務者にどのように対応していけばよいのでしょうか。今回の記事ではその対応法を説明していきます。

■ どのような方法があるか?

通販会社が未収の後払い代金を回収するにはどのような方法があるのでしょうか。
代金の支払が遅れているといっても、単に忘れてしまっているだけである可能性もありますし、相手はあくまでお客さんです。そのため、いきなり厳しい内容の書面を送りつけたり、強行的な法的手段を取ったりするのは避けておきたいところです。
最初は穏当な手段を取り、どうしても支払ってもらえない場合に法的手段に訴えるようにしましょう。
 
だからといってあまり悠長に構えている暇もありません。
相手方の資力は、こちらにはわかりません。もしかしたら、どんどん債務状況が悪化しているかもしれないのです。迅速な行動が、債権回収率アップへの一番の近道となります。
 
以下では、債権者である通販会社が取るべき行動を順に説明していきます。

  • 前もって通信販売の利用規約の内容を確認しておく

利用規約は、消費者と会社の間の契約内容です。この契約内容をしっかり整備しておくと、いざ未収債権が発生した際に、会社側が対応を取りやすくなります。
もちろん、遅延損害金の請求や契約の解除など、規約を定めていなくても民法の規定によって可能になっている対応もあります。しかし、規約に明記しておくことで支払を促すこともできますし、後々のトラブル発生を最小限に抑制することができます。
未収債権が発生したときのために、前もって利用規約の内容を確認しておきましょう。そして、もし不備があるようでしたら、規約の修正をする必要も出てくるかもしれません。
 
代金後払いの債権回収を見越して、例えば以下①〜⑦のような条項を規約の中に入れておくことが考えられます。
①代金の支払期限を明記する
当然、商品に同封する請求書にも、代金支払期限は記載してあるかと思います。
しかし、念のため規約にも「商品が到着してから○日以内」といったように後払い代金の支払期限を明記しておいたほうがよいでしょう。
②代金後払いシステムが使える購入合計額を制限する
合計額が高額になる場合は、後払いではなく、クレジットカードや代引きなどで支払ってもらうようにするというのも一つの手です。
後払いシステムは消費者の方に安心して買い物をしてもらうためのシステムですが、その後払いシステムで売り手の会社の側が不安になってしまっては仕方ありません。場合によっては、高額な買い物に限っては後払いシステムを使えないようにしておく必要もあるでしょう。
利用者の方には、後払いシステムを利用した低額の買い物で会社に対する安心感を持ってもらった後で、クレジットカード等を利用した高額な買い物をしてもらうようにしましょう。
③入金確認まで後払いシステムの使用を制限する
前回の買い物での後払い代金の入金が確認できるまでは、後払いシステムを使えないようにすることも考えられます。
支払を遅らせてしまう利用者が後払いシステムの利用するのを制限することで、回収できない債権の額が増えないよう未然に防ぐのです。
④商品の所有権を留保しておく
後払い代金の入金が確認できるまでは、送った商品の所有権が売主である会社側に留保されるとする条項です。
「お買い上げの商品の所有権は、その商品にかかわる債務が完済されるまでは当社に保留されます。」といった具合です。
通信販売で扱う商品によっては、債務の完済までは質入れや譲渡などといった所有権を侵害するおそれのある行為を禁止しておくことも必要かもしれません。
 
商品の所有権を会社に留保しておくメリットは、利用者が後払い代金を支払えないまま破産手続が開始してしまった場合に、「別除権」という権利を行使できるようになるという点にあります。
 

つまり、買主である利用者が破産した場合、売主である会社は、所有権を留保している商品を金銭に換価して、その金銭を代金債権に充当することができるのです。

ただし、この処分は他の破産債権者の利益を損わないよう、破産管財人の監督の下で行うことになりますし、場合によっては破産管財人が自らその商品の価値を評価することもあります(破産法154条2項)。
 
また、無事に商品を金銭に換価できたとしても、最初に買主に売った時よりもその商品の価値が下がっていたということも十分に考えられます。
換価した金額が代金債権よりも小さくなってしまった場合には、その不足分については損害賠償請求に基づく破産債権者として破産手続に参加することで、回収することができます(もちろん、破産手続ですので、全額回収できない可能性も大いにあります)。
 
また、ほとんどないとは思いますが、最初に売った時の価格よりも換価時の金額のほうが高くなった場合はどうすれば良いのでしょうか。
この場合は、売主が換価金を全額自分のものにすることはできず、債権額を超えた分は清算金として破産管財人に返さなくてはなりません。
このように所有権を留保していた商品の換価・その代金の債権への充当が可能である一方で、売主は破産管財人に対して「その商品の所有権はうちの会社に留保してあるのだから、返してほしい」という主張をすることはできません。
ここの区別が少し難しいかもしれません。
一言で説明すると、実務上、所有権留保は担保権の一種として扱われているため、担保権者として上記の「別除権」を使うことはできますが、所有権者として「取戻権」を使うことはできない、ということです。
⑤遅延損害金の存在を明記しておく
遅延損害金については、特に規約を置いていなくても、民法の規定を直接使って請求することもできます(民法419条1項)。
しかし、代金の支払を促す意味でも、規約の中に遅延損害金についての条項を入れておいたほうが良いでしょう。

「利用者が支払を遅滞したときは、支払日の翌日から支払日に至るまで、支払金に対して年○%を乗じた額の遅延損害金をお支払いいただきます」といった具合です。

この遅延損害金について特約を置いていない場合、請求できる利率は年6%となります(商法514条)。
また、遅延損害金の利率についての特約を置いているからといって、幾らでも高い額を請求できるわけではありません。遅延損害金の利率は法律で上限が年14.6%と定められています。これより大きな利率を規約で定めていたとしても、14.6%を超える部分については無効となり、請求できませんので気をつけましょう(消費者契約法9条2号)。
⑥一定の条件を充たした場合に期限の利益を喪失させる
後払い代金の支払期日は、通常は商品到着後数日〜数ヶ月以内と定めている会社が多いかと思います。
しかし、購入者である債務者の資産状況が悪化した場合に備えて、期限の利益喪失条項を入れておくのが賢明でしょう。

期限の利益喪失条項とは、「弁済期が来るまでは債務を履行しなくても良い」という債務者の利益(期限の利益)を喪失させ、すぐに弁済しなければならないようにする条項のことです。

具体的には、債務者が破産・民事再生を申立てた場合や、財産の差押え・仮差押えの申立てを受けた場合、債務者の重大な規約違反があった場合等に、債務者は「期限の利益を喪失し、直ちに債務の全額をお支払いいただきます」といったような内容になるでしょう。
ちなみに、破産手続開始決定がなされてしまえば、債務者は期限の利益を主張することができなくなることは法律で定められています(民法137条1号)。
⑦会社の側から契約を解除できるようにする

破産や差押えといった上記⑥のような状況が生じた場合に、会社の側からの意思表示のみによって契約を解除できるようにしておく条項です。
利用者が期限の利益を喪失したときは、「当社はなんらの通知および催告を必要とせず、ただちに本契約を解除できるものとします」といった内容になるでしょう。
債務者が破産や差押えといった状況に陥ってしまったら、いくら⑥の条項で期限の利益を喪失させることができても、すでに債権を回収するのは難しい状況に陥ってしまっていると言えます。

しかし売買契約が解除できれば、売買代金は請求できなくなる一方で、引渡し済みの商品の返還を請求することができるようになるのです。
商品を返してもらってもまだ会社に損害がある場合には、解除と合わせて損害賠償請求もすることができますが(民法545条3項)、破産者から十分な損害賠償金を回収するのは難しいでしょう。
 
以上、代表的な規約の内容を説明してきましたが、これらを取り決めるときに共通して気をつけるべきなのが、消費者契約法の存在です。
消費者契約法に反する内容の規約は無効となりますので、気をつけましょう。
上で説明した遅延損害金の利率についての規定(消費者契約法9条2号)もそうですが、「消費者の利益を一方的に害する」契約の条項も無効となる、より一般的な規定もあります(消費者契約法10条)。
一般的な規定で抽象的なため、これに抵触するかどうかの判断は難しいところがありますので、規約の内容に心配がある会社は早めに弁護士に相談するとよいでしょう。

  • 会社が自分で催促する

さて、上記のように規約をきちんと定めていても、支払の遅滞は起こるときには起こるものです。そのときは、まずどうすれば良いのでしょうか。
 
後払い決済の支払が遅れた場合は、まず請求先の住所に催促状を送ることが考えられます。
 
通信販売の場合、利用者の住所や電話番号は会社側にわかっていることがほとんどです。これらの情報は、商品の届け先や連絡先として購入時に登録されるためです。
届け先と請求先の住所が異なる場合は、購入時に請求先も登録してもらうようにしておきましょう。
 
単に代金の支払いを忘れているだけの人であれば、この段階で気づいてすぐに支払ってくれるでしょう。
また、この催促状には、未収債権の消滅時効を中断するという催告の意味もあるので(民法147条。ただし、催告から6ヶ月以内に裁判上の請求等をしなければ、時効中断の効果はなくなってしまいます。)、できれば内容証明郵便を使いたいところです。
 
この催告のときに、遅延損害金の存在や、それを定めた規約の存在についても触れておくと良いでしょう。遅延損害金がかかるとわかれば、いつかは支払うという意思を持っている人なら、早めに支払ってくれるかもしれません。
さらに、この時点で、今後弁護士やサービサーに債権回収を委託する可能性についても触れておくと、穏やかに、しかし確実にプレッシャーをかけることができます。
 
この催促状の送付については、法律で回数が制限されているわけではありませんので、何度送っても大丈夫です。
しかし、10回も20回もこのような催促状を出すというのは回収率の観点からすると有効な策ではありません。
「『支払わなければ弁護士に委託する』と書面で何度も言っているけれど、何も起こらないからこのまま放っておいても大丈夫だ」と思われてしまうからです。
また、催告によって時効を6ヶ月延長しても、その間にまた催告すればさらに6ヶ月時効が伸びる、といったことはありません(大判大正8年6月30日)ので、時効完成が迫っている場合には注意が必要です。
3、4回ほど督促状を送っても支払の意思が感じられない場合や、そもそも債務者に連絡がつかない場合には、実際に回収を弁護士に委託するように準備を進めましょう。
 
また、書面だけでなく電話でも支払を催促するというのも手段の一つです。
様々な連絡手段を使って催促することで、例え穏やかな言葉を使っていてもこちらが本気であるということが債務者に伝わります。
 
そして直接連絡がついたら、なぜ支払いをしないのか相手に確認しましょう。
ここでもし、「支払の意思はあるけれど、お金がなくてどうしても支払えない」といった事情が判明した場合には、会社側から分割払いの提案をするのも一つの手です。
 
こうした、書面や電話での催促が功を奏さない場合は、次のステップへ進みましょう。

  • 弁護士に依頼して催促する

弁護士に債権回収を委託して、弁護士の名前の入った書面を債務者に送付することは、債務者に大きなプレッシャーをかけられるというメリットがあります。
もちろん、そうなってくれば弁護士費用はかかります。しかし、複数の未払い代金回収をまとめて請負ってもらえれば、自分で一つ一つ個別に対応する必要がなくなり、会社の負担は軽くなります。また、何より法律のプロに任せることで債権が回収できる確率が大幅に上がります。
 
弁護士から書面を送ってもまだ支払いの意思が感じられない場合には、そのままその弁護士に法的措置による対応をお願いしましょう。

  • 仕方がない場合には法的措置をとる

ここまで説明してきたことをやってみても、どうしても後払い代金を支払ってもらえない場合には、やむを得ず法的措置を採る必要があるかもしれません。
具体的には、支払督促の利用や、訴訟の提起、その先にある強制執行、といった手段が考えられます。
 
このうち、支払督促は簡易・迅速に債務名義が得られ、かつ手数料も安いので便利な手続といえます。
しかし、相手がこの支払督促に異議を唱えると、自動的に通常の訴訟に移行してしまうため(民事訴訟法390条、同395条)、余計に時間がかかってしまうおそれもあります。
さらに、支払督促から訴訟に移行した場合の管轄裁判所は、債務者の居住地の近くの裁判所になるため(民事訴訟法382条、同383条1項、同395条)、場合によっては債権者である会社の所在地から遠く、手続が面倒になってしまうおそれもあります。
そのため、支払督促を使おうとするときは、相手が異議を出す可能性があるか、相手の住所地を管轄する裁判所が会社から近いかどうかを考慮するようにしましょう。
 
また、通信販売で生じる債権は少額の債権が多いことから、少額訴訟の提起を考えている会社もあるかもしれません。
少額訴訟は請求額が60万円以下である場合に限って利用できる制度で、これも支払督促と同様、簡易・迅速・低コストといった点が魅力です。

しかし、少額訴訟は提起できる回数が年間10回に限られているので注意が必要です(民事訴訟法368条1項、民事訴訟規則223条)。

多くの債務者から債権を回収しようとすると、すぐにこの制限にひっかかってしまいます。
さらに、相手が「通常の訴訟に移行したい」と言った場合は、これも通常の訴訟に移行してしまいます(民事訴訟法373条1項2項)ので、余計に時間がかかってしまうおそれがあります。
 
回数制限の存在と、通常訴訟へ移行する可能性を考えると、少額訴訟が可能な場合であっても、最初から通常の訴訟を提起したほうがメリットの大きいことも多いかもしれません。
 
訴訟等によって会社が勝訴し、それでも代金を支払ってもらえないという場合も中にはあります。
しかし勝訴判決を得ていれば、債務名義に基づいて強制執行手続を開始して債務者の財産を競売にかけてもらうことが可能ですので、よっぽどのことがなければ自分から支払ってもらえるでしょう。

■ まとめ

後払い代金の未払いは、多く発生しやすい問題な上に一つ一つが少額なため、費用対効果を考えるとどうしたら良いのかわからず困ってしまう会社も多いと思われます。
とにかく早めの対応が肝心ですので、既に多額の未収債権が溜まってしまっている会社はすぐに弁護士に相談しましょう。
また、未だそんなに未収債権には悩んでいないという通販会社も、いざというときのために、債権回収に強い弁護士に規約内容等を確認してもらうことをおすすめします。

債権回収 相談金・着手金 0円 無料法律相談のご予約 TEL:03-5251-0003 お電話は平日9:30~18:00
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