通信販売で後払いを認めている店舗の場合、一定の割合で未払いの問題が生じます。

顧客層を広くしたいという目的と未払い対策を両立させることに苦心することになります。

しかし、不払いによるリスクを低下させることができれば集客力の増加というメリットの方が大きくなります。

 

この記事では、通信販売における後払い代金の未払い対策などを解説していきます。

 

通販代金を後払いにする業者側のメリット

後払いにする販売店側のメリットは顧客を広く取り込めることにあります。

支払方法の選択肢が増えることで、これまで獲得できていなかった潜在的な客層を開拓することができます。

個人情報保護の意識が高まりクレジットカード情報の入力を避ける顧客もいます。先払いについては不安を感じて利用してもらいづらく、代金引換も手数料がかかる上、在宅が強制されるため敬遠されがちです。

先に商品を届けてもらうことで安心して注文できることから集客力がアップします。

 

通販代金を後払いにする業者側のデメリット

通信販売を後払いにすると未払いとなる可能性があります。先払いと異なり支払いが不確実となるのです。

しかし後払いを重視する消費者も多く、特に知名度の低いショップを利用する際には後払いでなければ利用しない人も多くいます。

そのため未払いのリスクと集客力のアップによる売り上げ増のバランスをとることが大切です。

 

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後払い代金の未払いを予防する対策

未払いのリスクを減らすことで後払いのメリットの方を大きくすることができます。

 

代金の支払期限を明記する

商品に同封する請求書に代金支払期限を明記しておきます。できるだけ日付を特定して記載します。

 

念のため規約にも「商品が到着してから○日以内」といったように後払い代金の支払期限を明記しておきます。

 

代金後払いシステムが使える購入合計額を制限する

一定金額以上は後払いではなく、クレジットカードや代引きなどで支払ってもらうようにすることでリスクを減らせます。

 

後払いシステムは消費者に安心して買い物をしてもらうためのシステムですが、リスクを限定することも必要です。

 

利用者には後払いシステムを利用した低額の買い物で店舗に対する安心感を持ってもらい、その後クレジットカード等を利用した高額な買い物をしてもらいます。

 

入金確認まで後払いシステムの使用を制限する

前回の買い物での後払い代金の入金が確認できるまでは、後払いを使えないようにすることも有効です。

 

商品の所有権を留保しておく

後払い代金の入金が確認できるまで商品の所有権が売主に留保されるとする条項を規約に記載しておきます。

 

「お買い上げの商品の所有権は、その商品にかかわる債務が完済されるまでは当社に保留されます。」などと記載します。

 

商品の所有権を会社に留保しておくメリットは、利用者が後払い代金を支払えないまま破産してしまった場合に、「別除権」という権利を行使できる点にあります。

 

買主が破産した場合、売主は所有権を留保している商品を金銭に換価して、その金銭を代金債権に充当することができるのです。

 

ただし、この処分は他の破産債権者の利益を損なわないよう、破産管財人の監督の下で行うことになりますし、場合によっては破産管財人が自らその商品の価値を評価することもあります(破産法154条2項)。

 

また、無事に商品を金銭に換価できたとしても買主に売った時よりも商品の価値が下がっていることもあります。

換価した金額が代金債権を下回る場合には、その不足分については損害賠償請求に基づく破産債権者として破産手続に参加してできるだけ回収します。

 

販売時の価格よりも換価時の方が高くなった場合は、売主が換価金を全額自分のものにすることはできず債権額を超えた分は清算金として破産管財人に返さなくてはなりません。

 

このように所有権を留保していた商品の換価・債権への充当が可能である一方で、売主は破産管財人に対して「その商品の所有権はうちの会社に留保してあるのだから、返してほしい」という主張をすることはできません。

実務上、所有権留保は担保権の一種として扱われているため、担保権者として上記の「別除権」を使うことはできますが、所有権者として「取戻権」を使うことはできないのです。

 

遅延損害金の存在を明記しておく

遅延損害金については特に規約を置いていなくても、民法の規定を直接使って請求することもできます。

しかし、代金の支払を促す意味でも規約の中に遅延損害金についての条項を入れておいた方がいいでしょう。

 

「利用者が支払を遅滞したときは、支払日の翌日から支払日に至るまで、支払金に対して年○%を乗じた額の遅延損害金をお支払いいただきます」のように記載します。

 

また、遅延損害金の利率についての特約を置いているからといって、幾らでも高い額を請求できるわけではありません。遅延損害金の利率は法律で上限が年14.6%と定められています。これより大きな利率を規約で定めていたとしても14.6%を超える部分については無効となり請求できません(消費者契約法9条2号)。

 

一定の条件を充たした場合に期限の利益を喪失させる

購入者の資産状況が悪化した場合に備えて、期限の利益喪失条項を入れておくのが賢明でしょう。

 

期限の利益喪失条項とは、「弁済期が来るまでは債務を履行しなくても良い」という債務者の利益(期限の利益)を喪失させ、すぐに弁済しなければならないようにする条項のことです。

 

具体的には、債務者が破産・民事再生を申立てた場合や、財産の差押え・仮差押えの申立てを受けた場合、債務者の重大な規約違反があった場合等に、債務者は「期限の利益を喪失し、直ちに債務の全額をお支払いいただきます」といった内容になります。

 

ちなみに破産手続開始決定がなされたときは、債務者は期限の利益を主張することができなくなることが法律で定められています。

 

会社の側から契約を解除できるようにする

破産や差押えといった状況が生じた場合に、会社の側からの意思表示により契約を解除できるようにする条項もあります。

 

利用者が期限の利益を喪失したときは、「当社はなんらの通知および催告を必要とせず、ただちに本契約を解除できるものとします」などと規約に記載します。

債務者が破産や差押えといった状況に陥ってしまったら期限の利益を喪失させることができても、すでに債権を回収するのは難しい状況に陥っています。

 

しかし売買契約が解除できれば売買代金を請求できなくなる一方で商品の返還を請求できるようになります。

商品を返してもらってもまだ会社に損害がある場合には、解除と合わせて損害賠償請求もすることができますが(民法545条3項)、破産者から十分な損害賠償金を回収するのは難しいでしょう。

 

ただし、消費者契約法に反する内容の規約は無効となります。

例えば「消費者の利益を一方的に害する」契約の条項は無効となります(消費者契約法10条)。

一般的な規定で抽象的なため、これに抵触するかどうかの判断は難しいところがありますので、規約の内容に心配があるときは弁護士に相談してください。

 

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未払いとなった後払い代金を回収する方法

通信販売で未払いが発生したときにはケースに応じて回収業務を行っていきます。

 

電話やメールなどで支払いを催促する

後払い決済の支払が遅れた場合は、まずはメールや電話など簡易な方法で催促します。

届け先と請求先の住所が異なる場合に備えて、購入時に請求先も登録してもらうようにしておきます。電話などで連絡が取れないときには書面で請求していきます。

 

内容証明郵便で督促状を送付する

通常の書面での催促では効果がない場合には内容証明郵便を検討します。

内容証明郵便は、郵便局のサービスで誰あてのどのような内容の文書を送ったかを証明してもらえます。

証拠として残るため相手に与えるプレッシャーが大きくなります。法的手続きを予告する内容を記載することも有効です。

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

法的手段を使って回収する

最終的には法的手段を使うことになりますが、訴訟以外にも種類があります。

 

支払督促

支払督促は、簡易裁判所の書記官から支払いを命じてもらう手続きです。

ただし、相手が支払督促に異議を唱えると通常の訴訟に移行します。

裁判所には管轄がありますが、支払督促から訴訟に移行した場合の管轄裁判所は、債務者の居住地の近くの裁判所になるため遠方の裁判所で訴訟を行うこともあります。

そのため支払督促は相手が異議を出す可能性があるか、相手の住所地を管轄する裁判所が会社から近いかどうかを考慮します。

 

<関連記事>売掛金回収のための法的手段とは?具体的な手順を解説

 

少額訴訟

少額訴訟は、請求金額の元本が60万円以下の場合に使える通常よりも易しくした訴訟手続きです。原則として1日で審理し判決を出してもらえます。

 

ただし、少額訴訟は利用できる回数が制限されています。同じ人が同じ裁判所で使えるのは年間10回までです。

 

また、相手が「通常の訴訟に移行したい」と言った場合は通常の訴訟に移行します。通常訴訟は時間や手間がかかるため注意が必要です。

 

<関連記事>少額の売掛金の回収と少額訴訟のやり方、費用、メリット、デメリットを解説

 

まとめ

・通信販売における不払いを予防するには、後払いできる金額を制限したり、利用規約で遅延損害金を明記したりすることが大切です。

・未払いが発生したときには状況に応じて回収方法を変えていきます。内容証明郵便で督促することも効果的です。

・法的手段には通常の訴訟のほかに、支払督促や少額訴訟などがあります。

 

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