有料老人ホーム滞納トラブル6つのポイント!債権回収と滞納予防のコツ

 

目次
はじめに
施設の種類
ポイント1~本人に対する請求(契約)
ポイント2~本人に対する請求(その他)
ポイント3~親族に対する請求(親族名義)
ポイント4~保証人に対する請求
ポイント5~相続人に対する請求
ポイント6~トラブル・滞納予防
まとめ
 

■はじめに

内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、2017年10月1日現在、全人口の27.7%が65歳以上の高齢者となっています。
さらに高齢者の割合は増加し続け、2025年には全人口の3割以上が65歳以上の高齢者となると推定されています。

 
高齢者の増加に伴い老人福祉施設の利用者も増加しています。
 
デイサービスセンターや特別養護老人ホームなどのほか、民間企業による老人ホームの利用者も増加しています。
 

一方で、老人福祉・介護事業関連の企業の倒産件数も増えており、深刻な問題となっています。

 
倒産の理由は様々考えられますが、施設利用料等の滞納が一つの理由となっている可能性があります。特に老人ホームの場合、これまで住んでいた家などを処分し、生活の本拠を移していますから、滞納したとしても出ていってもらうことは簡単にできません。できるだけ早期に債権の回収や滞納予防の対策をとることが必要となります。
 

■施設の種類

老人向けの福祉施設には、様々な種類があります。
行政や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームや、その他の企業が運営する有料老人ホームなどさまざまです。

 
このうち特別養護老人ホームは国からの支援があるため利用者の経済的負担も軽く、人気があり、希望してもすぐには利用できず、要介護度が一定以上に重いことが必要など条件も厳しく、利用したくてもできない人が多いという問題があります。
 
その受け皿となっている民間の有料老人ホームは、サービスも多様であり、その分費用も高くなるという特徴があります。
 
それだけ利用料の滞納の問題が顕著になるといえます。
 
そして、「介護付き」、「住宅型」、「健康型」と種類が分かれます。

このうち利用者が多いのは、介護付きと住宅型であり、介護保険サービスを受けられる介護付き老人ホームが特に人気が高いといえます。

 
住宅型は介護サービスを外部の業者に任せるため、介護サービス分の利用料についての滞納リスクは小さくなると考えられます。
 

ここでは、利用者が多く滞納額も大きくなりやすい、介護付き有料老人ホーム(利用権方式)を念頭に解説していきますが、その他の施設でも参考になる部分があると思います。

 

■ポイント1~本人に対する請求(契約)

契約を行う場合、本人自身が行う場合や、代理人により行われる場合などが考えられます。
利用料の支払いを誰に対しいくら求められるかは、契約の内容のほか、手続きを誰が行ったかによって変わります。
 
・本人が手続きした場合
本人の判断能力に問題がない場合、原則として本人自身が手続きをします。
契約時に本人の判断能力に問題がない場合、契約は有効ですから全額の利用料を請求でき、支払ってもらえない場合には訴訟等を行った上で、債務名義を取得し、強制執行等の法的手続きを行っていくことが可能です。
 
契約後に判断能力に問題が生じ、そのままでは訴訟手続を進めることができないときは、後記のように後見人をつけてもらうか、特別代理人の選任を裁判所に求めることが必要になってきます。
 
・本人に判断能力があるが署名を親族がした場合
傷病等により本人が自書できない場合、親族が代わりにサインすることがあります。
このような書面であっても無効ではありません(自筆証書遺言など一部の書面については自署が必要なものもあります。)。
 

重要なのは本人の意思が示されることであり、契約書がなくても原則として契約は成立するからです(保証契約など書面でしなければならないものもあります。)。

このような書面は、契約するという意思を明確にし、証拠として残すという意味があります。
 
したがって、利用者本人の意思が示された契約である以上、本人に対して請求できます。
 
・本人以外の者が手続きした場合(代理)

成年後見人やその他の権限のある代理人が入居手続きをした場合、契約は有効ですので本人に対し請求できます。
これに対し、法律上も,本人からも代理権が与えられていない場合、原則として無権利者の行為となりますので、契約は有効とはいえず、契約に基づいて請求することはできなくなります。親族であったとしてもそれだけでは本人を代理する権限はありません。

 
この場合、無権代理行為を行った者に請求していくことが考えられます。
ただし、施設側が代理権がないことを知っていたか、知ることができたようなときは請求できません。
 
例外的に、本人に請求できる場合も考えられます。
実際には代理権がなかったとしても、代理権があったのと同じような責任を本人に負ってもらえる可能性があるのです。
 
どのような場合かといいますと、事前に何らかの代理権限が親族に与えられ、その親族が入居契約をした場合に、施設側が有効な代理権があると判断し、それが正当だといえるようなときです。
 
例えば、介護施設に関する契約を親族に任せたことがある場合に、その親族が代理人として手続きをした場合です。
 
また、後見人をつけてもらい、その人に追認してもらうことで契約を有効にできます。
 

施設利用契約時に本人に判断能力がなかったとしても、それによって代理権が消滅するわけではありません。意思能力があるときに代理権が与えられていることが重要です。

 

■ポイント2~本人に対する請求(その他)

仮に契約が無効であった場合、契約に基づいて利用料を請求することはできません。
しかし、利用者本人は利益を受けたわけですから支払い義務がないとすることは公平ではありません。

そこで、本人に対する請求の根拠が問題となります。
・不当利得返還請求
法律上の根拠がない状態で他人の財産や労働などによって利益を受けた場合に、それによって損失を与えたときは、現在利益が残っているのであれば、それを返さなければならないとされています。

 
契約が無効であれば法律上の根拠がありませんし、損失も生じています。
問題は利益が残っているかという点ですが、本来減少すべき財産が減少しなかったといえる場合には、その分について利益が残っていると考えられます。
 
例えば、建物の利用や介護サービスを受けざるを得ないような状況のときは、それらの費用をいずれにしても支払わなければならなかったわけで、その支出を免れている以上、本来減少すべき財産が減少しなかったことになり、利益が残っているといえます。
 
ただし、施設の利用料が他の通常の施設よりも高額な場合などには、本来減少すべき財産とは言いづらくなりますので、全額の請求は難しいかもしれません。
 

・事務管理
法律上の義務がない状態で他人のために仕事をした場合に、有益な費用を建て替えていたようなときは、その費用について請求できるとされています。

 
現存利益に限られないので、不当利得と併せて考慮すべきと考えられます。
 
いずれにせよ、個々の事案により請求の可否や請求可能金額は異なりますので、弁護士に相談することをおすすめします。
 

■ポイント3~親族に対する請求(親族名義)

・第三者のためにする契約
親族が手続きをとった場合に、親族自身が利用料を支払うという内容の契約をしたときは、親族が債務者となりますので利用料をその人に請求していくことができます。
 
任意に支払ってもらえない場合には、その人に対し訴訟等を起し強制執行等の法的手続きをとることになります。
 

■ポイント4~保証人に対する請求

利用契約自体が有効である場合には、支払い義務を負う利用者本人や親族が支払わない場合、保証人に対して請求できます。

 
連帯して支払うという内容でないときは、保証人から求められた場合、原則として、本来の債務者に対し請求したり強制執行をしたりすることが必要です。
 
利用契約自体が無効である場合、保証契約は主たる契約を前提とした契約ですから、保証契約も無効と解される可能性があり、これも注意が必要です。
 

■ポイント5~相続人に対する請求

支払い義務を負った者が亡くなった場合には、その相続人に対し支払いを請求できます。
相続人が誰かということが判明しづらいことがあり、また請求できるのは相続分の範囲とされていますから、戸籍調査や相続人の判断、相続分の計算になれていないと大変手間と時間がかかります。
 
そのため、はじめから弁護士に依頼したほうがいいと思います。
 
ただし、相続放棄をされてしまうと請求はできなくなります。
 

■ポイント6~トラブル・滞納予防

滞納したからといって簡単には利用者にでていってもらうことはできませんし、介護等のサービスを打ち切ることもできませんから、事前にトラブルの可能性を小さくし、すでに滞納があるような場合にはそれ以上に増やさない対策が必要です。
 

・成年後見制度
認知症を発症している場合など、判断能力に問題があるようなときには、入居契約の前提として、本人や親族に対し、後見制度の利用を求めることも一つの方法です。

 
判断能力に問題がある状態で本人と入居契約をした場合、契約が無効であるとして、利用料の支払いを拒絶される可能性があります。
 
代理権のない親族が代理人として契約した場合も、争いとなりやすく、他の親族から施設側が訴えられた事案もあります。
 
後見人との間で契約をすることはトラブルを防ぐために重要なことといえます。
 
・保証人
老人ホームに限ったことではありませんが、主たる債務者が滞納した場合、別の人に支払ってもらえるようにしておくと、リスクが小さくなります。
 
できれば、債務者と連帯して支払う旨の、連帯保証人となってもらうことが好ましいといえます。これにより、あらかじめ債務者の財産に対して強制執行を行う必要がなくなるなど、債権回収のハードルが下がるからです。
 
・生活保護
一定の基準額を世帯収入が下回っている場合、生活保護の対象となります。
生活費等のほか介護費用も対象となります。
ここから利用料を支払ってもらうことが期待できるわけです。
 
生活保護は原則として福祉事務所に対して申請をすることではじめて行われます。
申請できるのは、本人や扶養をする義務のある者(一定範囲の親族)、その他の同居の親族です。
そこで、これらの人たちに生活保護を申請するよう求めることが一つの方法といえます。
ただし、生活保護費を抑えるために一部の福祉事務所では申請を受け付けない違法なことを行っています。
このような場合には弁護士が介入することで申請が通ることがあります。
うまくいかないときは弁護士に相談することをおすすめします。
 
なお、年金を受給していたとしても保護基準を満たすときは生活保護を受給できます。
 
・親族による年金等の使い込み
支払いが滞っている場合、特にまったく支払われていない状態のときは、年金や生活保護を受けていないのかという疑問が起こります。
 
借金の返済などにあてられている可能性もありますが、親族が年金等を使い込んでいる可能性があります。
 

そのような場合には、成年後見制度を利用し、後見人を選任してもらい、年金等の財産を勝手に使えないように防止することができます。
また、すでに使い込んだ財産についても返還請求をしていくことができます。

 
これによって得られた財産から利用料を支払ってもらうことが考えられます。
 
問題なのは成年後見制度を利用する場合、申立てが必要ですが、申立人が限定されており、単なる債権者では認められないことになっている点です。
 
申立て資格を有する4親等内の親族の中に協力を得られる人がいればいいのですが、いない場合には、申立て資格者である検察官や市町村長(老人福祉法32条)に働きかけることになります。
 
市町村長は積極的に申立てを行ってくれるとは限りませんが、法律家が役所に働きかけることで申立てを行ってくれるケースがあります。また、高齢者虐待防止法による通報を行うことで行政が動くことも考えられます。
 
弁護士が介入することで初めて役所が動くことも珍しくありません。
 

■まとめ

・親族であっても代理権のない人が代理人として入居手続きをすることは問題があり、原則として契約は無効です。
・契約が無効であったとしても、代理した親族に利用料を請求できる可能性があります。
・契約が無効の場合でも、本人に対し不当利得を理由に利用料を請求できる可能性があります。
・保証人を立てた場合、保証人に対し請求できます。ただし、入居契約自体が無効な契約とされた場合には、保証契約も無効となり、請求できない可能性があります。
・債務者が亡くなった場合、相続人に対し請求できます。ただし、相続分の割合が限度です。
・本人の判断能力に問題があるときは、後見制度の活用を検討します。
・世帯収入が基準額を下回るときは、生活保護が受給できます。介護費用も扶助の対象であり、年金を受け取っていたとしても受給可能です。
 
老人ホームにおける利用料の債権回収については、法律家が介入しなければ実現が難しい部分があります。直接老人ホームの利用関係を定めた法律はなく、施設の利用契約が法律上いかなるものかという点についてもさまざまな考え方があるところです。
早い段階から弁護士が関わらないと問題が大きくなりやすい分野といえます。
 
また、債権回収全般にいえることですが、時効の問題もありますので、出来るだけ早く専門家を頼ってください。

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