差し押さえをするには裁判所費用や弁護士費用が必要となります。費用は裁判所やケースによって異なりますが、ある程度の目安はあります。

 

この記事では、差し押さえにかかる費用や弁護士に差し押さえを依頼した方がいい理由などを解説していきます。

 

差し押さえとは

差し押さえとは、強制執行をする際に最初に行う財産を確保する手続きです。差し押さえにより財産の処分を禁止することで、債権者がその財産から債権を回収できるようにします。

強制執行とは、私法上の権利を公権力によって強制的に実現する手続きのことです。

 

債権回収のために強制執行を申し立てたときは、不動産などの財産を差し押さえて財産が処分されないようにしてから、競売などを行って売却代金から配当を受けることになります。強制執行は裁判所や執行官が行います。

 

このように、「差し押さえ」は強制執行の際に行われる手続きのうち、財産の処分を制限するものということです。

ただし、一般的に「差し押さえ」と「強制執行」が同じ意味として使われることもあります。この記事でも特に区別せずに説明していきます。

 

<関連記事>債務名義とは? 取得方法と債権回収までの流れを分かりやすく解説

 

強制執行にかかる費用

差し押さえは裁判所や執行官にお願いして実施してもらいます。そのため、裁判所や執行官に費用を納める必要があります。

差し押さえは、対象となる財産によって手続きや費用が異なります。債権回収における強制執行には、「債権執行」、「動産執行」、「不動産執行」があります。

 

債権執行

債権執行は、第三債務者(債務者の債務者)から債権を回収する方法です。債務者の持っている預金債権や、売掛金債権、給料債権などを差し押さえて、債権者が直接銀行などから支払いを受けられるようになります。

 

取引銀行や勤め先などが分かれば、不動産執行などよりも時間や費用をかけずに債権の回収ができる可能性があります。

 

<債権執行費用(目安)>

内訳

費用

申立費用(収入印紙)

4,000円

郵便切手

3,000円~

送達証明

数百円~

執行文付与(必要な場合)

数百円~

登記事項証明書(関係者に法人がいる場合)

数百円(1通)

※債権者1名、債務者1名、債務名義1通の場合の目安。ケースや裁判所により異なります。

 

債権執行については、「債権回収における第三債務者とは?第三債務者が拒むとどうなるのか詳しく解説」もご参照ください。

 

動産執行

動産執行は、債権回収のための強制執行のうち、現金や商品、貴金属等の動産を差し押さえ対象として行うものです。

個人を対象として差し押さえを行うときには差し押さえが禁止される財産も多いですが、法人であれば現金の差し押さえが禁止されないため、店舗等への動産執行は有効性の高い方法の一つです。

 

動産執行は執行官が主催します。そのため執行費用は執行官に支払います。動産執行は状況によって具体的な内容が異なるため費用も事前に確定できません。そこで予納金という形で費用を納めることになります。

 

<動産執行費用(目安)>

内訳

費用

申立予納金

2万円~(東京地裁は3万5,000円~)

開錠費用(必要な場合)

8千円~3万円くらい

※金庫の開錠が必要なときは別途8千円~

送達証明

数百円~

執行文付与(必要な場合)

数百円~

     

※運搬や保管が必要なときには別途費用がかかります。差し押さえ費用はケースや裁判所により異なります。

 

<関連記事>動産と債権に対する強制執行!債権回収に強い弁護士がわかりやすく解説!!

 

不動産執行

不動産執行は、債権回収のための強制執行のうち、不動産を差し押さえ対象として行うものです。不動産執行には「強制競売」と「強制管理」という2種類の方法がありますが一般的には強制競売が利用されます。

差し押さえ費用は原則として債務者の負担となりますが、申し立ての際には債権者が立て替える必要があります。不動産執行の場合には予納金が高額なため債権者の負担が大きい点に注意が必要です。

不動産執行の場合、不動産に差押登記が入るため登録免許税も必要となります。

 

<不動産執行費用(目安)>

内訳

費用

申立費用(収入印紙)

4,000円

予納金

80万円~200万円(東京地裁の場合)

※請求債権額が2000万円未満は80万円

予納郵便切手

94円~(東京地裁の場合)

登録免許税(差押登記費用)

確定請求債権額の1000分の4

送達証明

数百円~

執行文付与(必要な場合)

数百円~

※差し押さえ費用はケースや裁判所によって異なります。

 

<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説

 

弁護士に差し押さえを依頼した場合の費用

差し押さえするには、裁判所費用のほかに弁護士への報酬費用も必要となります。

 

相談料

弁護士による法律相談料は、30分5,000円以上となっていることがほとんどです。ただし、条件付きで無料にしている事務所も多くなっています。相談する前に料金について確認することが大切です。

 

着手金

着手金は差し押さえの成否に関係なく必要となる費用です。訴訟の段階から依頼をしている場合には差し押さえ費用が安くなる傾向があります。

 

<差押着手金(目安)>

内容

着手金

金額での目安

訴訟

債権額の8%~

10万円~

債権執行

債権額の4%~

5万円~

動産執行

10万円~

不動産執行

15万円~

※(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬等基準など参考。実際の費用は事務所や事案によって異なります。

 

報酬金

差し押さえに成功した場合には成功報酬費用も発生します。

 

<差押報酬金(目安)>

成功報酬費用

回収額の10~35%

 

着手金が高い場合には成功報酬費用が安くなる傾向があります。差し押さえ費用は着手金と成功報酬のトータルで考える必要があります。

 

その他の実費

交通費や日当(出張料)が費用としてかかることもあります。

 

<関連記事>顧問弁護士の費用・顧問料相場と顧問弁護士を雇うメリットを解説

 

弁護士に差し押さえを依頼したほうがよい理由

差し押さえを弁護士に依頼するメリットについて解説します。

 

費用倒れのリスクを回避できる

差し押さえをする理由は債権を回収することにあります。差し押さえの費用が回収金額を上回ってしまったのでは本末転倒です。

差し押さえる財産によって手続きが異なり時間や費用などが大きく違ってきます。

例えば、動産執行は差し押さえが禁止される財産も多いため、執行不能となり債権の回収ができないケースが多くあります。

弁護士であれば費用倒れのリスクがある差し押さえについて事前にアドバイスをすることが可能です。

 

相手の財産状況に応じた提案をしてくれる

債務者がどのような財産を持っているか、また債権額がいくらあるのかによって差し押さえの方針も変わります。

債務者が多額の預金を持っているのであれば債権執行が有力となりますし、預金がないのであれば給料への債権執行や動産執行、債権額が高額であれば不動産執行も選択肢となります。

債務者に財産がほとんどないケースでは、動産執行をあえて行い執行不能として貸倒損失により税金面で対処する方法もあります。その際に隠し財産が見つかることもあります。

 

貸倒損失については、「滞留債権とは?不良債権との違いや回収方法を解説」をご参照ください。

 

確実な財産調査ができる

差し押さえをするには債務者の財産を調べる必要があります。預金であればどの金融機関と取引をしているのか、不動産であれば所有の有無や担保権がついていないか、給料債権であれば勤め先はどこかなど調査する必要があります。

弁護士は法律に基づいた財産開示手続きや弁護士会照会などの方法により適切な財産調査をすることが可能です。

 

専門知識不要で裁判を有利に進められる

訴訟の段階から弁護士が代理していれば差し押さえに必要な勝訴判決も得やすくなります。自力で訴訟を行うためには法的な知識や経験が必要となるため債権回収が難しくなります。

また、差し押さえをすると債務者が不服申立てをしてくることがあります。執行抗告や執行異議がなされたときには有利な決定が出るように適切に対処していく必要があります。

弁護士であれば不服申し立てに対しても柔軟に対応することが可能です。

 

差し押さえは専門性が高く難しいため弁護士に依頼することをおすすめします。

 

<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説

 

まとめ

・差し押さえとは、強制執行をしたときに最初に行う財産の処分を禁止する手続きのことです。つまり、強制執行の一部として差し押さえがあります。

差し押さえにかかる費用には、裁判所に関する費用と弁護士費用の2つがあります。

・差し押さえは、債権執行と不動産執行は裁判所が行い、動産執行は執行官が行います。

・債権執行と不動産執行では、申立費用として4,000円分の収入印紙や郵便切手などが必要となります。不動産執行では数十万円以上の予納金や登録免許税も必要となります。

・動産執行では、予納金などとして「3万円~」が必要となります。

・弁護士費用としては、相談料が「5,000円~/30分」、着手金「債権額の4%~」、成功報酬金「回収額の10%~」などが必要となります。

 

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