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債権の回収方法としては、話し合いによる方法と法的手続きをとる方法に大きく分けることができます。
法的手続きをとる方法としては裁判(訴訟)を思い浮かべる方が多いと思います。
ですが法的手続きにもいろいろなものがあります。
民事調停は裁判所を利用した手続きではありますが、相手方と話し合い円満な解決を目指す方法です。
一般の督促による債権の回収方法と、訴訟による回収方法の中間的な方法といえるでしょう。うまくいけば相手との関係を維持しながら債権の回収を無理なく行うことが可能となります。訴訟の場合には判決に従ってくれないため強制執行をせざるを得ないことも多いですが、調停であれば自分から支払いに応じてくれることも多くあります。
この記事では、債権回収における民事調停について解説していきます。
民事調停とは
民事調停とは、民事に関する争いについて第三者である調停委員会を仲介役として、話し合いによる解決を目指す裁判所の手続きです。裁判外紛争解決手続き(ADR)のひとつです。
取引先や近隣とのトラブル、お金の貸し借り、交通事故などで問題を抱えてしまうことがあります。このような問題が起こると裁判で解決するしかないと思われるかもしれません。ですがなるべくなら円満に話し合いで済ませたいと考える人も多くいます。裁判になると時間や費用、手続きのことを考えるとハードルも高くなります。
民事調停は当事者による話し合いで問題を解決するものなので、円満な解決が期待できます。
「話し合いがこじれているから困っているのに」と思われるかもしれません。そのため、民事調停では「調停委員会」がお互いから話を聞き、問題の解決を手助けしてくれます。
調停委員会は、調停主任1人と調停委員2人以上(普通は2人)で構成されます。
調停主任は裁判官または弁護士から選ばれる民事調停官が務めます。
調停委員は一般市民から選ばれることになっていますが、専門知識や社会経験を備えた人達です。例えば、法律家や医師、建築士、不動産鑑定士などから選ばれています。
民事調停では、訴訟と異なり必ずしも法律に縛られずに妥当な解決を目指すことになります。そのため裁判よりも柔軟な解決が可能とされています。
民事調停のメリット
民事調停にはいろいろなメリットがあります。訴訟などほかの手続きと比較することで債権回収に適切か判断することができます。
手続きが簡単
民事調停を利用するには裁判所のホームページや簡易裁判所で手に入る申立書を作成し提出します。見本もあるので手間はかかりますが自分で手続きをすることも可能です。
民事調停の申立ては原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所に行います。
費用が安い
民事調停を利用するときには裁判所に手数料を納めることになります。費用の額は請求金額により変わりますが訴訟よりも安くなっています。
例えば、10万円を請求するときには手数料として500円と郵便料金がかかります。手数料は収入印紙で納めることになります。
裁判より早く終わる
民事調停では訴訟よりも早く終了することが多いです。多くのケースで調停期日は2~3回開かれることになり、ほとんどは3か月以内に終わります。
時効の進行をストップできる
貸金や売掛金などの債権には時効があります。時効は一定の事由があると期間が更新されたり猶予されたりします。
民事調停を利用すると手続きが終わるまで消滅時効の完成が猶予されることになります。
調停が成立すれば消滅時効がリセットされて期間がはじめからになり、しかも期間が当初よりも長い10年に伸びることになっています。
<関連記事>債権回収には時効がある!消滅時効とその対処方法について解説
穏便な解決が可能
訴訟では問題の解決を判決という形で白黒つけることになります(和解をすることは可能です。)。
民事調停では話し合いで解決するため円満な解決が期待できます。しかも第三者である調停員会が間に入ってくれるため当事者だけでの話し合いよりも感情的な対立を和らげることもできます。
相手と面と向かって話し合うことに抵抗があるときには、個別に調停委員会が話をする方法も可能です。
調停は法廷ではなく調停室という普通の部屋で行います。
訴訟では一般の人が傍聴できますが民事調停では非公開となっており、プライバシーに配慮されています。調停主任や調停委員は守秘義務も課せられています。
調停調書に強制執行力がある
民事調停が成立すると調停調書が作られます。調停調書は判決と同等の効果が認められているため、万が一、相手が約束を守らないときには財産を差し押さえることもできます。
民事調停のデメリット
民事調停は万能ではありません。話し合いで解決できるというメリットは見方を変えるとそのままデメリットになります。
相手が出頭しないことがある
調停期日に呼び出しを受けた場合には出頭する義務があり、正当な理由がないのに出席しなかったときは5万円以下の過料に処せられることになっています。
ですが実際には過料になるケースはあまりなく、相手が期日に現れないこともあります。民事調停は話し合いをするための手続きであり、相手が話し合いに応じてくれないのであれば問題の解決ができません。
話し合いが不調になる可能性
民事調停は話し合いがまとまらなければ成立しません。お互いの主張が平行線をたどり妥協点が見いだせないのであれば調停は不成立となってしまいます。
お互いの主張が真っ向から対立しているようなケースでは、はじめから訴訟を起こした方がいいこともあります。
相手の居所が不明だと調停ができない
民事調停は話し合いをするための手続きのため相手がどこにいるのかわからないときには利用することができません。
ただし、就業場所がわかるのであれば呼び出し状の送付をすることは可能です。もっとも、就業場所は管轄の基準とはならないため、申し立ての際には最後の住所地や非訟事件手続法の規定などを利用することになります(民事調停法3条、22条)。
当事者間で解決できるなら示談で十分
相手との関係がそれほど悪くないのであれば当事者間での話し合いだけでも解決可能です。和解契約書を作成すれば証拠にもなります。強制執行できるようにしたいのであれば公正証書を作成するか簡易裁判所で即決和解手続きをとる方法があります。
公正証書や即決和解については、「売掛金回収のための法的手段とは?具体的な手順を解説」をご参照ください。
民事調停の手続き
民事調停の基本的な流れについて見ていきます。
調停の申立て
民事調停は原則として相手の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てをして行います(契約書で定めているときには地方裁判所で行うこともあります。)。
裁判所のホームページや簡易裁判所に置かれている申立書に指定された内容を記載し提出します。
申立書には手数料分の収入印紙を貼る必要があります。書類の郵送費用も必要となりますがケースによって異なるため裁判所に確認します。
調停委員の指定
申立書を提出するとケースごとにふさわしい調停委員が指定されます。
専門性のある事案ではなるべくその分野の知見を持った人が選ばれているようです。
例えば、不動産関連のケースでは不動産鑑定士や土地家屋調査士、医療関連では医師や歯科医師、建築物に関しては建築士などです。
調停期日の決定・呼び出し
調停期日が決定されると当事者双方に対して呼び出し状が送られます。
民事調停の呼び出し状は普通郵便で送付されることが多いはずです。訴訟の場合には「特別送達」という特別な書留郵便で送られてくるのとは対照的です。
普通郵便のため裁判所から送られたものなのか怪しむ方もいらっしゃいますし、突然裁判所から書類が届くと感情的になる方も多いため、なるべく調停を申し立てることを相手方に伝えておいた方がいいでしょう。
調停期日
調停期日になると基本的に裁判所の調停室で話し合いをすることになります。非公開のため傍聴人はいません。相手と直接会いたくないときには別々に調停委員会の人たちと話をすることになります。
所要時間についてはケースや調停委員会によって異なりますが、一般の民事調停の場合には1期日当たり1~2時間前後が目安となります。
調停期日は2~3回程度実施され3か月以内に終わることが大半です。
調停の終了
調停の終了は、「合意ができた場合」と、「合意ができなかった場合」の2つの場合があります。
話し合いがまとまり無事に合意できた場合には、その旨が調停調書に記載され調停が成立します。その記載された内容は判決と同じ効果があるため約束が守られなかったときには相手の財産を差し押さえることができます。
合意ができなかった場合にも調停は終了します。その際、裁判所が「調停に代わる決定」を出すことがあります。この決定は17条決定と呼ばれており、当事者が2週間以内に異議を申し立てないと調停が成立したのと同じ扱いとなります。
当事者は調停の不成立や17条決定への異議があったときには裁判で決着をつけることも可能です。
まとめ
・民事調停とは、民事の紛争について調停委員会が仲介となり交渉による解決を図る裁判所の手続きです。
・調停委員会は調停主任1人と調停委員2人で構成されます。調停主任は裁判官か弁護士が務め、調停委員は社会経験や専門知識を持つ一般の人から選ばれます。
・民事調停のメリットは、「手続きが簡単」、「費用が安い」、「手続きが早く終わる」、「プライバシーが守られる」ことなどがあります。
・民事調停のデメリットは、「相手が出頭しない」、「話し合いがまとまらない」ことにより問題が解決しないことがあげられます。
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債権の回収はケースに応じて適切な対応をとることが大切です。
民事調停など話し合いで解決した方が適切な場合もあれば、プレッシャーをかけて迅速に回収しなければ目的を達成できないケースもあります。
専門の弁護士に相談することで適切な債権の回収が可能となります。
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